新規就農者や農業参入企業を検討する際に、もっと課題としてあがるのが「農地」についてです。

農地を売買や賃借するとき、農地を農地以外にするときには「農地法」によって規制されており許可や届出が必要になります。

今回のコラムでは、「農地」の定義や種類について解説するとともに、実際に農地を取得して新規就農されたイノチオのお客さまの事例をご紹介します。これから農業をはじめようと検討している方、農地について情報収集をされいる方は、参考にしてみてください。

そもそも農地とは?

はじめに、そもそも農地とはどのような土地のことなのか解説していきます。

農地

農地は、農地法第2条第1項より「耕作の目的に供される土地」と定義されています。
家畜の飼料用の牧草を育てる土地は、「採草牧草地」に分類されており農地には該当しません。

農地は不動産登記簿に「畑」「田」と登記されています。
現在は、高齢化や担い手不足の影響から農作業を行わず遊休農地として放置されている土地が多く見受けられます。

採草放牧地

採草放牧地は農地ではないものの、農地と同様に農地法による規制と対象となっています。

農地法第2条第1項において採草放牧地は、「農地以外で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるもの」と定義されています。

また、耕作又は養畜の事業とは「耕作又は養畜の行為が反復継続的に行われることをいい、必ずしも営利の目的であることを要しない」のことです。

農地法の定義について理解しよう

農地法とは農地の保護を目的に、転用や売買についてを規制する法律のことです。
農地を農業以外の用途に転用する場合は、農地法に基づき、都道府県や市町村に置かれた農業委員会からの許可を申請が必要です。

しかし、食料自給率維持の観点から転用できない農地が存在します。原則として転用できない農地が「農用地区域内用地」「甲種農地」「第1種農地」です。

農用地区域内用地は、市町村が定めた計画に基づき農用地区域と定められた農地のことです。転用にはこの地域からの除外を申請しなけないため、条件を満たすことが困難な傾向にあります。

甲種農地は、市街化調整区域において8年以内に土地改良事業が行われた農地のことです。

第1種農地は、面積が100,000㎡以上の集団農地であり、土地改良事業などの対象となった農地のことです。

参考サイト:農地制度-農林水産省

農地の種類について解説

ここからは、具体的な農地の種類について解説していきます。

遊休農地

遊休農地とは農地法で定められた法令用語で、「かつて農地だったが現在農地として利用されておらず、今後も農地として利用される可能性も低い土地」と、「農地ではあるけれど周辺の農地と比較した時に利用の程度が著しく低い土地」の両方を指しています。

この定義からすると、土地の一部でわずかに自家用野菜を栽培している場合なども、遊休農地に分類されます。

参考サイト:農地法 第四章 遊休農地に関する措置

荒廃農地

荒廃農地とは、「現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地」と定義されています。

荒廃農地の調査については、2021年に廃止されました。

耕作放棄地

耕作放棄地とは、「以前耕地であったもので、過去1年以上作付けせず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と定義されています。耕作放棄地の調査についても、

耕作放棄地は、2020年に統計上の調査項目から外れました。

農用地区域

農用地区域は、農振法(農業振興地域の整備に関する法律)により各都道府県知事が指定した「農業振興地域」の中で指定される区域のことです。

とくに農用地区域は、農業振興地域の中において農業基盤の整備を進める区域であり、農業関係の公共投資が重点的に投入されています。

農振法とは?

総合的に農業の振興を図るべき地域の整備に関し、必要な施策を計画的に推進するための措置を定めた法律として1969年に制定されました。
正式名称は、「農業振興地域の整備に関する法律」といいます。

農振法では、農用地の確保や農業経営の近代化等を図るべき地域を農業振 興地域と指定して「農用地区域等の指定」「農業基盤の整備」「農業上の土地利用の調整」など、農業振興地域整備計画を定めることとしています。計画を達成するため「土地の交換分合」「農用地区域内における開発行為の制限」などの措置も規定しています。

農用地区域の種類

農振法第3条によって、農用地区域は次の4つの土地から構成されています。

農用地農
地法でいう農地と採草放牧地です。

混牧林地
主に木竹の生育に利用される土地で、あわせて耕作または養畜のために採草や家畜の放牧のために主に利用される農用地を除いた土地です。

土地改良施設用地
上記1と2の土地の保全や、その土地の利用上必要な施設のための土地です。ため池・排水路・農道などが該当します。

農業用施設用地
耕作や養畜のために必要な施設に利用される土地です。
温室、畜舎、農産物集出荷施設、堆肥舎、農機具収納施設、農畜産物加工施設、農畜産物販売施設、上記の3つの土地に紐づく休憩所・駐車場・便所などが該当します。

市街化区域・市街化調整区域

市街化区域・市街化調整区域について解説していきます。

市街化区域・市街化調整区域とは?

市街化区域と市街化調整区域は、都市計画法第7条において下記のように定められています。

市街化区域
すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とされています。

市街化調整区域
市街化を抑制すべき区域とされています。
市街化区域はすでに整備が進んでいる区域、またはこれから進めていく区域、反対に市街化調整区域は整備を抑えていく区域と理解しましょう。

市街化区域と市街化調整区域の違い

市街化区域と市街化調整区域の違いについて解説します。

開発行為
農業をするにあたり農機具の格納庫等が必要となる場合があります。また、農産物の販売所や加工所などを造ることも想定されます。

このような建築物を建てる際には、開発行為の許可が必要となります。
市街化区域では緩く規制がされていますが、市街化調整区域では原則認められおらず、この開発行為が限定されています。

農地転用
市街化区域では農地を農地以外にする農地転用には、農業委員会への届出のみで済みますが、市街化調整区域では都道府県知事などの許可が必要となります。

用途地域
市街化区域では建物の用途や高さ・規模などが制限されていますが、市街化調整区域では制限が原則定められています。

農業振興地域
農業振興地域は、市街化区域には指定してはいけないとされています。

税制
市街化区域内の農地の固定資産税は、宅地並み課税の制度があります。
その他の制度においても市街化区域と市街化調整区域との間ではさまざまな違いがあります。

生産緑地

生産緑地は、市街化区域内に定められた生産緑地地区内にある土地と森林のことであり、生産緑地法によって定められています。

生産緑地法は、生産緑地地区に関する必要な事項を定めて、農林漁業との調整をし、良好な都市環境の形成をすることを目的としています

一部を除き、生産緑地法第8条より、生産緑地地区内では建築物の新築・改築・増築や宅地の造成などは市町村長の許可を受けなければ行うことができません。通常であれば、農地転用の届出だけで可能ですが、生産緑地地区内では市町村長の許可が必要となってきます。

田園住居地域

田園住居地域は、平成29年の都市計画法の改正によって新たに設けられた用途地域です。

都市計画法第9条では、「田園住居地域とは、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域とする。」と定められています。

そのため、都市計画法第52条にも定めれていますが、田園住居地域内の農地では、土地の形質の変更、建物などの建築、土石などの堆積をするときには、市町村長の許可が原則必要となります。

例外として、農業の利便性を高めることや良好な住環境の保護に支障がない規模(300㎡未満)であれば、許可されることとなっています。

農地取得からの新規就農へ 
苺屋ガルテンベーレン

大阪府で新規就農をされた苺屋ガルテンベーレンの立花さん、ご自身で研修先の門を叩きイチゴ栽培を学ばれ、農地取得をして新規就農をされた事例をご紹介します。

農地取得をして新規就農でいちご農園を開園

非農家である立花さんは、農地を借りること、農地を買うこともできない難しい状況でした。

仮に農家になることを前提に農地を借りるとしても、異業種からの新規就農に対する理解のある地主を探さなければいけないという課題もありました。

また、行政期間が行っている地権者とのマッチングサービスがありましたが、そこも農業従事者でないと借りられないという状況でした。

立花さんは、イチゴの観光農園用にビニールハウス建設を念頭にしていたため、すべてを借地にするのではなく、一部の農地は所有したいと考えていました。そこで、地域の土地情報に長けている地元の不動産会社へ相談しました。

実際に相談をしてみると、農地を売りたい地主さんは一定数おりました。不動産会社から紹介していただいた土地がビニールハウスが建てやすい地質、地形かどうか、イノチオアグリの担当営業と調査を行いながら検討していきました。

続きは、下記リンク先のイノチオお客さま事例から閲覧ください。

関連事例:新規就農で大好きないちご農園を開園

農地取得からビニールハウスまで
ご相談はイノチオアグリへ!

イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトに、ビニールハウスに携わり50年以上、培ってきたノウハウを活かし、これから農業をはじめられる方をご支援します。

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