初心者必見!農薬散布の基礎知識と効果的な散布方法について解説
農薬散布は、農作物を病害虫や雑草から守り、安定した収穫と品質を確保するために欠かせない作業です。しかし、効果を最大限に引き出すには、正しい知識と適切な散布方法が必要です。本コラムでは、農薬の基本的な役割から、散布時の適切なタイミング、気象条件への配慮、安全な作業のための服装や装備、さらには最新の散布技術まで、農薬散布における基礎知識と実践的なポイントを解説します。
※今回の記載内容は、農薬散布に関する一つの考え方の例となります。実際に使用する際には、ご自身で使用する農薬の内容をしっかりと確認して使用しましょう。不安な方は、購入された販売店等で使用方法について伺ってみることを推奨します。
目次
農薬散布の目的

農薬散布の目的は、農作物を害虫や病気から守り、収穫量と品質を安定させることで、効率的な農業経営を支援することです。また、農薬の適切な使用は、労力やコストの削減にもつながります。さらに、気候変動や病害虫の拡大に対応するためにも、農薬は重要な役割を果たしています。環境や人への影響を最小限に抑えつつ、安全で持続可能な食料生産を実現するために不可欠な存在です。
一方で、過剰な農薬使用や不適切な散布は、土壌や水質の汚染、生態系への悪影響、人への健康被害を引き起こす可能性があります。そのため、使用量やタイミング、対象作物に応じた農薬の選定など、正しい知識と管理が求められます。持続可能な農業の実現には、農薬の効果とリスクを理解し、バランスの取れた運用が重要です。
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農薬散布の基礎知識
農薬散布は、いつやっても効果を発揮するわけではありません。適切なタイミングで使用することで、農薬の効果を最大限に引き出すことができます。
農薬散布は早朝や夕方の気温が低い時間帯
農薬散布は、いつ行っても効果が発揮されるわけではありません。適切なタイミングで使用することで、農薬の効果を最大限に引き出すことができます。できるだけ気温の低い早朝や夕方に散布することが推奨されています。日中の高温時に散布すると、葉の表面についた薬液の水分が蒸発し、高濃度の薬剤が残ることで薬害が発生しやすくなります。特に気温が30℃以上の暑い時間帯は、散布を避けるようにしましょう。
雨天・強風は避ける
自然を相手にする農業では、天候も散布のタイミングを決める重要な要素です。雨が降りそうな日は、薬剤が流れ落ちてしまい効果が失われる可能性があるため、散布は控えることをおすすめします。散布後に雨が降った場合でも、薬液が作物に吸着して乾いていれば、再散布の必要はありません。
また、風が強いときも薬液が飛散しやすく、周囲の作物や環境に影響を与える可能性があるため、散布は避けましょう。
病害虫の発生に備える
病害虫が発生した場合には、発生箇所だけでなく、広範囲に散布することが重要です。病害虫の防除は予防が基本であり、発生規模が小さくても広がっている可能性があるため、早期かつ広域の対応が求められます。
農薬散布前の準備

農薬散布時には、薬剤が体表面に付着したり、口や目に入らないよう服装に注意しましょう。ハウス内は年間を通して高温になりやすいため、農業用マスク、ゴーグルタイプの眼鏡、ゴム手袋、帽子、長袖、長ズボンなどを着用し、肌の露出を極力減らして農薬の付着リスクを避けてください。
農薬は“薬品”であるため、使用時には必ず注意事項を確認しましょう。ラベルには成分や毒性、使用可能な作物、対象となる病害虫や雑草、使用濃度・量・時期・回数・注意点などが記載されています。使用方法や希釈倍率を守らないと、期待する効果が得られないだけでなく、薬害や健康被害を引き起こす可能性があります。
農薬は、決められた希釈倍率で希釈し、散布機で散布するのが一般的です。農薬ごとに希釈倍率が表示されており、作物に応じて濃度、散布間隔、使用時期などが定められています。農林水産省は人の健康に影響が出ないよう残留基準を設定しており、これを守らないと検査で基準値を超え、出荷停止となる恐れがあります。違反が発覚すると、個人だけでなく部会や地域全体の農家に影響が及ぶ可能性もあるため、必ず規定を守ってください。
また、農薬は長期保存が難しいものが多いため、余った場合は適切な方法で処分しましょう。水路や土壌に流すことは絶対に避けてください。
効果的な農薬の散布方法
農薬の散布位置は作物の高さによって異なるため、散布方法にも工夫が必要です。前進しながら散布すると、薬剤を浴びるリスクがあるため、後退しながら散布するのが基本です。果樹など高所への散布では、薬液が滴となって落ちてくるため、長柄ノズルを使用し、滴下する場所に入らないよう注意しましょう。
ドローンや無人ヘリコプターを使用する場合
広範囲の畑や水田では、ドローンや無人ヘリコプターによる空中散布も一般的になってきました。農業展示会でも多くのメーカーが出展しており、操作に慣れれば簡単で、作業負担の大幅な軽減につながることから導入が進んでいます。
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農薬を散布する際の注意点

農薬を散布する際には、取り扱い方だけでなく、以下のポイントについても十分注意をしてださい。
農薬の取り扱い
農薬を使用する際は、取り扱いだけでなく、使用量・濃度・散布タイミング・回数などのポイントにも十分注意してください。容器に記載された使用上の注意を守ることで、薬害や残留農薬のリスクを防ぎ、使用者の健康も守ることができます。
また、農薬の使用には法律による規制があり、基準を逸脱した使用には罰則や罰金が科されることもあります。作業時には、農薬が皮膚や目に触れないよう、適切な装備を整えることが大切です。
近隣への飛散防止
農薬散布時には、周囲の環境への配慮も欠かせません。隣接する農地や住宅、養魚場などに薬剤が飛散しないよう、散布方法やタイミングを工夫しましょう。特に風の強い日は、薬液が予期せぬ方向へ流れる可能性が高いため、散布は控えるのが基本です。
農薬が他の作物に付着し、残留成分が検出されると、食品衛生法に基づき出荷が制限される場合があります。基準値(0.01ppm)を超えると違反となり、販売できなくなる恐れがあるため、風向きや周囲の状況を事前に確認することが重要です。近隣とのトラブルを避けるためにも、散布予定を事前に住民へ知らせるなど、コミュニケーションを取ることが望ましいです。
耐性菌への対策
農薬を長期間にわたって繰り返し使用すると、病害虫が成分に慣れてしまい、効き目が薄れる「耐性」が生じることがあります。これを防ぐには、同じ薬剤を連続使用しない、異なる作用機構の薬剤を交互に使う、使用回数を減らすなどの工夫が必要です。
農薬散布のおすすめ製品
自走式防除・灌水システム マスプレー

イノチオアグリのオリジナル製品「マスプレー」は、ビニールハウス内での防除・灌水作業の労力軽減と効率化を目的に開発された自走式の散布システムです。既存の動力噴霧機に接続して使用できるため、導入コストを抑えつつ、作業の省力化と安全性向上が期待できます。
散布方法にはナイアガラタイプ、縦ノズルタイプ、ベンチタイプの3種類があり、作物の種類や栽培方法に応じて選択可能です。薬剤のムラなく均一な散布ができるほか、ドリフト(薬剤の飛散)を抑える設計で、周囲への影響も軽減。特にキクやイチゴの高設栽培での導入が進んでおり、風向きや散布範囲に配慮した安全な作業が可能です。また、防除と灌水の切り替えも簡単です。
また、防除と灌水の切り替えも簡単で、作業の柔軟性にも優れています。特に高設栽培では、作物の高さや配置に応じた散布が求められますが、マスプレーはその点でも優れた対応力を持っています。薬液の均一な散布により、病害虫の予防効果も高まり、品質の安定にもつながります。
関連製品:自走式防除・灌水システム マスプレー
【導入事例】イチゴ栽培 愛知県生産者さま
愛知県豊川市でイチゴの高設栽培を営まれているお客さまは、所有するハウスのうち3カ所(計26a)でマスプレーを導入されています。防除作業の労力と時間の削減を目的に導入され、以前は1カ所あたり手作業で約2時間かかっていた農薬散布が、マスプレーの活用により約45分に短縮されました。出荷作業後の暑い時間帯に汗を流しながら行っていた防除も、今ではボタン一つで自走してくれるマスプレーの効果を実感されており、作業負担の軽減と効率化を高く評価されています。
このように、マスプレーは現場のニーズに応じた柔軟な運用が可能であり、農業の省力化と安全性向上に貢献する製品です。今後の提案やフォローアップの際にも、実際の導入事例を踏まえた説明が信頼性を高めるポイントとなります。
関連事例:マスプレー導入で防除作業の省力化に成功!
農薬へのお悩みもイノチオへご相談ください!
イノチオアグリでは、ビニールハウスや栽培設備だけでなく、作物の生育に必要な農薬・肥料も作物・用途に合わせて多数ご用意しています。店舗を構えている拠点だけでなく、各地域の営業所またグループ会社でも農薬を扱っています。また、作物の生育不良の原因である病害虫や土壌環境を検査する専門の研究所も設置していますので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。