農業法人とは?農家が法人化するメリット・デメリットと設立方法について解説
農業の法人化には、経営の安定化や信用力向上、資金調達の拡大など多くのメリットがあります。
一方で、設立手続きや運営コストなど、事前に知っておきたいポイントも少なくありません。
本コラムでは、法人形態の違いから農地所有適格法人の要件、メリット・注意点まで分かりやすく解説します。
目次
農業法人とは

「農業法人」とは、会社形態などの法人として農業を行う組織を指す総称です。
学校法人や医療法人のように法律で名称が定められているわけではなく、農業を営む法人が任意で名乗るものです。
法人形態としては「会社法人」と「農事組合法人」の2つに分けられます。
会社法人とは
会社法人とは、営利を目的とした法人の一形態であり、法律上独立した存在として認められています。
日本国内に住所を置く15歳以上の日本人であれば原則誰でも設立でき、外国人の場合は永住権などの在留資格を取得していれば設立できます。
農事組合法人とは
農事組合法人は、農業を営む者が共同で設立する法人形態の一つで、農業の生産性向上や経営の安定を目的としています。
設立の条件として、3人以上の「農民」が発起人となって、共同で設立する必要があります。 この法人形態では、農業者が集まり、共同で農作物の生産や販売を行うことで、個々の農家では実現しにくい規模の経営を可能にします。
農事組合法人は、農業の効率化やコスト削減を図るために、資源や情報を共有し、協力して活動することが特徴です。
農地所有適格法人とは
農業法人のうち、農地法第2条第3項で定められた要件を満たし、「農業経営を行うために農地を取得できる法人」を「農地所有適格法人」と呼びます。
農地所有適格法人となるためには、次の4つの条件を満たす必要があります。
- 法人形態要件
- 事業要件
- 議決権要件
- 役員要件
法人が農地を所有(売買)して農業を行いたい場合は、これらの条件をすべて満たしていなければなりません。
農地所有適格法人になるための条件やその他の注意点について、詳しくはこちらのコラムで紹介しています。
農家が法人化するメリット

農家が法人化すると、さまざまなメリットがあります。
法人化によるメリットを、経営・制度の2つの視点からそれぞれ解説していきます。
経営上のメリット
経営管理能力の向上
経営者としての責任を自覚し、意識改革を進めるとともに、家計と事業を切り分けて管理を徹底することで、より適切で健全な経営体制を築くことができます。
対外信用力の向上
法人化すると、会計管理を徹底や、設立登記や経営報告などの法定義務を適切に履行することが求められます。手間はかかりますが、これが金融機関や取引先からの信用力を高めます。
また、「企業」としてのイメージが向上することで、商品取引の拡大や従業員採用の円滑化にもつながります。
人材の確保・育成
労働環境を整備することで従業員の待遇を向上できれば、雇用の円滑化が期待できます。
さらに、農業法人での就農は初期負担なく経営スキルや農業技術を習得できるため、新規就農者の受け入れ・育成もしやすくなります。
経営継承の円滑化
法人内の適任者を、栽培の後継者として育成・選抜しやすくなるほか、法人として事業や取引を行うことで、事業承継後も外部からの信用を維持できます。
制度上のメリット
税制面での優遇
農家が法人化することで、税負担が軽減される可能性があります。
個人事業主としての農業経営では、所得税が累進課税であるため、所得が増えるほど税率も高くなります。しかし、法人化することで法人税が適用され、一定の利益までは低い税率が適用されるため、結果的に税負担が軽くなることがあります。
さらに、法人化により経費として認められる範囲が広がるため、経費計上を通じて課税所得を減少させることが可能です。
社会保障制度
法人化による社会保険・労働保険の適用で、農業従事者の福利厚生を向上させることができます。
あわせて、就業規則の整備や給与制度を明確にすれば、働きやすい職場環境の構築につながります。
制度資金
法人化することで事業体としての信用力が高まり、融資や補助金の上限額が大きくなる傾向があります。
たとえば、スーパーL資金(農業経営基盤強化資金)の融資限度額は、個人が3億円であるのに対し、法人では10億円と大きく設定されています。
関連記事:スーパーL資金(農業経営基盤強化資金)とは?審査ポイントを徹底解説!
このほかにも、法人のほうが高い限度額を利用できる支援制度が多数存在します。
より大きな投資を必要とする農地拡大や事業の多角化を進める際には、法人化が有利に働くケースが多いといえます。
農家が法人化するデメリット
法人設立・維持のための費用がかかる
法人には、設立および運営に一定のコストが発生します。
設立の際は、定款認証手数料や登録免許税などの費用が必要となり、株式会社ではおおよそ20万円程度の初期費用がかかります。
また、利益が出ていない場合でも、最低7万円の法人住民税を毎年負担する必要があります。こうした継続的なコストが生じる点に注意が必要です。
社会保険料の負担が発生する
会社法人および確定給与支払制を採用した農事組合法人は、労災保険への加入と雇用保険の適用が義務となるため、従業員数に応じて社会保険料の負担が増加します。
さらに、法人は健康保険と厚生年金保険への加入が必須であり、その保険料の半額以上を事業主が負担する必要があります。
法人化すると解散・事業廃止に手間がかかる
法人を解散する場合は、清算手続きや債権の回収・整理など、複数の法的手続きが必要となり、完了までに最低でも2ヵ月半程度を要します。
清算や財産の売却など専門的な作業が伴うため、状況によっては専門業者へ依頼するケースもあります。個人事業主のように廃業届だけで事業を終了できるわけではない点に注意が必要です。
発起人の年齢や後継者の確保状況によっては、無理に法人化を進めないほうが望ましい場合もあります。
農業法人を設立する方法

農業法人を設立するには、まず会社形態や商号、事業目的、本店所在地、資本金などの基本事項を決め、定款に記載する準備が必要です。
その後、定款を作成し、株式会社の場合は公証人役場で認証を受けます。認証後は代表者の口座へ資本金を払い込み、通帳コピーや払込証明書を整えて登記書類に備えます。
続いて、発起人の議決により設立時役員を選任し、取締役会設置会社の場合は代表取締役も決定します。
最後に、法務局で設立登記を行い、税務署・社会保険事務所・労働基準監督署などへ必要な届け出を行うことで、法人として正式に運営を開始できます。
農業法人設立後のよくある課題
事務作業が負担となる可能性がある
法人では、個人事業主に比べて複雑な手続きや経理業務をする必要があるため、事務作業が増える傾向があります。事務負担が大きくなると、農作業に充てられる時間が減り、結果的に経営へ悪影響を及ぼす可能性もあります。
とくに経理関連の業務は複雑で作業量も多いため、税理士や会計士に依頼することも有効です。もちろん、委託料や顧問料といったコストは発生しますが、工夫次第で費用を抑えることも可能です。
たとえば、会計ソフトを活用して日々の帳簿づけを自社で行えば、記帳代行費用を削減できます。
本業である農業に支障をきたさないためにも、法人化にあたっては「いつ・誰が・どの業務を担当するのか」を事前に整理しておくことが重要です。
期待していた節税効果が得られない
法人化には税負担を軽減できるメリットがありますが、すべての農業法人で節税効果が出るわけではありません。所得が高いほど節税につながりやすい一方で、所得が低い場合は、逆に税負担が増えてしまう可能性もあります。
損益分岐を正しく見極めないと、「節税のために法人化したのに、期待したほど効果が出なかった」という状況に陥ることがあります。
また、法人は利益が出ていなくても、最低7万円の法人住民税を必ず支払う必要があります。つまり、法人化による節税効果が7万円に満たない場合は、結果として負担が増えることになります。
一般的には、課税所得が400万円を超える農家であれば、法人化による節税効果が見込めるといわれています。ただし、実際の損益分岐点は経営状況によって異なるため、ご自身の決算書をもとに、法人化後に手元に残る金額が増えるのかどうかを確認することが大切です。
不安な点や判断に迷う場合は、農林水産省が運営する「農業経営・就農支援センター」に相談することをおすすめします。各都道府県に窓口が設置されており、農業経営の改善や法人化に関する相談を受け付けています。
参考:農林水産省「農業経営等に関する相談」
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