農福連携は、農業の人手不足と福祉分野の就労支援を同時に実現できる取り組みとして注目されています。特に、最近では厚生労働省・農林水産省を中心に、農業参入企業や新規就農者が、実際に活用しやすい補助金制度が複数用意されています。

本コラムでは、農福連携の基本概要とメリットをわかりやすく整理したうえで、令和8年度に利用可能な補助金を4つご紹介します。

補助金額の目安や対象者、申請のポイントまで解説し、農業参入を検討する企業や新規就農者の意思決定をサポートします。

※情報は2026年2月時点のものです。
※ご紹介している補助金情報は、作成時期によって名称や内容が異なっている場合があります。申請を希望される方は、補助金を交付している該当機関のホームページをご確認ください。

目次

  1. 農福連携とは?
  2. 農福連携が注目される背景
  3. 農福連携のメリット
  4. 活用できる主な補助金制度
  5. 補助金を活用するなら押さえておきたい3つのポイント
  6. ご相談はイノチオアグリへ

農福連携とは?

農福連携とは、農業分野と福祉分野が協力し、就労支援を必要とする方々が農業で活躍できる環境を整える取り組みを指します。

農林水産省では、農福連携を「障がい者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組」と定義しています。

さらに、この取り組みは障がい者の就労支援の場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が深刻化する農業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性があるとされています。


出典:農福連携の推進(農林水産省)

農福連携が注目される背景

農福連携が広がっている背景には、以下のような社会的課題と産業構造の変化があります。

農業人材の慢性的不足

農業就業人口は年々減少し、65歳以上の割合が7割を超える地域もあります。

収穫・選別・袋詰めなどの軽作業は特に人手が不足しがちで、農業経営に与える影響は大きくなっています。

福祉分野における就労機会の確保

就労継続支援A型・B型事業所では、利用者の働く場や収入向上が常に課題です。農作業は比較的取り組みやすく、得意を活かしやすい工程が多いため、就労支援の場として適しています。

国が農福連携推進を強化

厚生労働省は農業者と就労施設をつなぐ「伴走支援」や「マッチング支援」を行う制度を用意し、農林水産省も農福連携型の地域整備事業を進めています。

政策的後押しにより、農福連携は“単なる福祉施策”から“地域活性化・産業振興”の柱へと進化しているのです。


参考:農福連携等に関する施策について(厚生労働省)

農福連携のメリット

農福連携には農業者・企業・福祉施設・利用者それぞれに大きなメリットがあります。

人材確保と作業の安定化

農業の繁忙期・天候による作業量変動など、不安定要素は多いものです。しかし、福祉施設と連携することで、作業日数・人数を計画的に確保しやすくなります。

さらに、障がい者の方は丁寧でコツコツとした作業を得意とする方も多く、野菜の選別や袋詰めなど工程の品質が安定しやすいというメリットがあります。

企業評価・地域貢献性の向上

企業が農業参入する際、地域社会とのつながりは避けて通れません。農福連携は以下のような成果につながります。

  • 企業ブランディング・広報効果が高い
  • ESG経営の実践として対外的評価が向上

ESG経営とは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の3つを重視して企業を運営する経営スタイルのことです。単に利益を追うだけではなく、持続可能な成長と社会的責任の両方を満たす経営を指します。

農福連携の取り組みは、企業の社会的責任を示す具体的な事例となり、社内外からの評価が高まりやすいのが特徴です。

補助金の活用による初期投資の軽減

農業参入や農福連携開始時に必要な設備投資は決して小さくありませんが、補助金をうまく活用することで初期負担を大幅に抑えることができます。

作業場の整備や、設備の導入など幅広い用途に補助が用意されており、参入障壁を下げる強力なサポートになります。

活用できる主な補助金制度

農福連携を始める際、初期投資や体制づくりの負担を軽減できるのが国と自治体の補助金です。

農林水産省・厚生労働省は、人材育成から施設整備まで一体的に支援する制度を多数用意しており、農業者や企業が安心して連携を進められる環境が整っています。

具体的な補助金制度についてご紹介します。

地域資源活用価値創出推進事業(農福連携型)

この事業は、農福連携を地域に広げていくための“ソフト面”を支援する仕組みです。研修、マニュアル作成、人材育成、地域協議会づくりなど、農福連携を「始める」「広げる」ために必要な基盤整備が中心です。

1. 農福連携支援事業のうち農福連携の取組
障がい者等が農林水産業に従事するための「技術面」「作業面」「環境面」を整える支援。

支援対象となる取組の例

  • 農林水産業に関する 技術習得研修
  • 作業工程のマニュアル化(図解・標準化など)
  • 農業体験を提供するユニバーサル農園の開設
  • 移動可能なトイレのリース導入等に必要な経費を支援

補助額・期間

  • 事業実施期間:事業実施期間:3年間(支援期間:最大2年間+自主取組:1年間)
  • 定額補助:上限300万円/年標準額150万円
  • 整備事業を経営支援型で同時実施する際:上限600万円/年標準額300万円に嵩上げ可能
  • マニュアル作成などに取り組む場合:初年度+40万円加算可能

2. 農福連携支援事業のうち地域協議会の設立及び体制整備
地域協議会が地域における農福連携の推進のために行う活動内容の検討、調査、先進地視察、意見交換会、ワークショップの実施、活動計画の策定等に必要な経費を支援します。

補助額・期間

  • 事業実施期間:3年間(支援期間:最大2年間+自主取組:1年間)
  • 定額補助:上限600万円/年標準額300万円

3. 都道府県専門人材育成支援事業
農林水産業の現場において障がい者等の特性を踏まえた技術支援を行う農福連携技術支援者※の育成・派遣等に必要な経費を支援します。
※ 農林水産省のガイドラインに基づく研修を受講し、認定された者
※ 事業実施主体は都道府県のみ

補助額

  • 事業実施期間:1年間
  • 定額補助:上限500万円/年

地域資源活用価値創出整備事業(農福連携型)

こちらは、障がい者等が実際に仕事として農業に参加できる施設整備・設備導入など“ハード面”を支援する仕組みです。生産施設や加工施設、ユニバーサル農園のほか、トイレ・休憩所などの附帯設備の整備も対象となります。

整備可能な施設(助成の対象)

  • 農林水産物生産施設(簡易な農園整備を含む)
  • 農林水産物加工・販売施設(※高度経営・経営支援のみ)
  • 機械器具の購入
  • 給排水施設
  • 休憩所、トイレ等

交付率及び助成額

  • ハードの総事業費の1/2以内または各上限額のうちいずれか小さい方
  • 事業期間:基本1年間
整備区間上限額内容の目安
簡易整備200万小規模で安価な生産施設整備
介護・機能維持400万高齢者のリハビリ等に活用
高度経営1,000万生産・加工・販売を一体化させた高度化
経営支援2,500万農福連携を通じて経営改善を行う大規模経営

整備事業の主な要件

  • 原則 ソフト(農福連携支援事業)とセットで実施 ※条件を満たせばハード単独も可能
  • 3年目までに 障がい者等5名以上の増加(生活困窮者・ひきこもり等を加える場合は、過半は障がい者であること)
  • 加工・販売施設は、加工する農産物の過半が自ら(または連携者)が生産したもの

出典:令和8年度農山漁村振興交付金(農林水産省)

農福連携等による障害者の就労促進プロジェクト
(工賃向上計画支援等事業特別事業)

この事業は、障がい者が農業・林業・水産業などに参加し、工賃向上・働く場の拡大・地域の担い手確保 を同時に実現するための、厚生労働省の中核的な農福連携支援制度です。

令和7年度当初予算額は 2.1億円 とされています。(前年度と同額)

支援内容(補助率:1/2|実施主体:都道府県)

  1. 農業等の専門家派遣
    農業等に関するノウハウを有していない障がい者就労施設に対する技術指導・助言や6次産業化に向けた支援を実施するための専門家の派遣等に係る経費を補助する。

  1. 農福連携マルシェ開催支援事業
    農業等に取り組む障がい者就労施設による農福連携マルシェの開催に係る経費を補助する。(ブロック単位でも開催可)

  1. 意識啓発等
    農業等に取り組む障がい者就労施設の好事例を収集し、セミナー等を開催する経費を補助する。

  1. マッチングから事業実施までの支援
    伴走型コーディネーターを活用するなど、農業等生産者と障がい者就労施設による施設外就労とのマッチングや事業の立ち上げ、事業実施の支援に係る経費を補助する。

  1. 障がい福祉分野と農業等の分野の関係者の相互理解促進
    障がい者就労支援施設等の支援員や農業者等の相互理解が進むように、相互の事業所の訪問や農業体験会等を実施する経費を補助する。

農福連携等プラス推進モデル事業

こちらは、農業以外の産業にも農福連携を広げるためのモデル事業で、厚労省の中でも特に強力な “全額国費(10/10)” 補助 が特徴です。令和6年度の補正予算は 1.3億円でした。

林業、漁業等とのマッチングに係る費用や、機器等導入や初期運用支援など立ち上げ支援に係る費用を補助し、モデル事例の報告を受け、全国へ事例の共有を行い、農業以外の分野も含めた障がい者の就労支援の取組を推進します。

対象・補助率

  • 実施主体:都道府県・指定都市・中核市
  • 補助事業者:社会福祉法人等の民間団体
  • 負担割合:国10/10(自治体・施設の負担なし)

※この事業に限り、農林水産省の補助金とは併用できない仕組みとなっています。


参考:農福連携等に関する施策について(厚生労働省)

補助金を活用するなら押さえておきたい3つのポイント

農福連携は「農業の労働力確保」と「福祉の就労ニーズ」を同時に満たせる取り組みですが、成功させるには事前準備が非常に重要です。

ここでは、農福連携で補助金を活用する際に押さえておくべき3つのポイントを解説します。

1. 連携パートナー(就労支援施設)の早期選定

農福連携の成否は「誰と組むか」が重要です。
補助金申請や事業計画作成にも関わるため、早い段階でパートナー施設を決めることが重要です。
選定時に確認すべきポイントは下記のとおりです。

  • A型 / B型どちらが適しているか
  • 作業人数・時間の確保が可能か
  • 送迎の有無
  • 指導員の配置状況

2. 事業計画書の内容で決まる

補助金審査は事業計画の質が大きなポイントです。

  • 連携の目的
  • 役割分担
  • 生産計画と収支計画
  • 安全管理体制
  • 地域への波及効果
  • 持続可能性(3年後、5年後の計画)

農福連携の“社会的価値”をしっかり示すことで採択確率が高まります。

3. 自治体窓口・支援機関に相談する

制度は年度ごとに内容が変わることも多く、窓口から直接最新情報を得ることが最も確実です。自治体担当者は「どの制度が使えるか」を熟知しているため、早期相談が成功の鍵です。

令和7年度は、農福連携に取り組む農業者・企業にとって追い風となる年です。厚生労働省・農林水産省が連携した補助金制度が整備されているだけでなく、自治体の独自支援も充実しています。

農業の労働力不足と、福祉の就労ニーズの双方に応える農福連携は、地域社会全体の持続可能性を高める重要な取り組みです。

初期投資を補助金で軽減しつつ、パートナー施設との連携を深めることで、企業も農家も無理なく参入できます。

ご相談はイノチオアグリへ

イノチオアグリは「農業総合支援企業」として、50年以上にわたり農業用ビニールハウスに携わってきた経験と技術を活かし、お客さまの農業経営を多角的にサポートしています。

近年注目されている 農福連携の取り組みにも積極的に対応し、地域に根ざした持続可能な農業づくりをお手伝いしています。

お客さまのご要望や条件に沿って、就農に向けた事業計画の作成や収支シミュレーションをご提案します。さらに、ビニールハウスや内部設備の設計も一貫してお任せいただけます。農福連携モデルを取り入れた施設運営や作業計画についてのご相談も可能です。

加えて、労務管理のアドバイス、気象災害時のフォロー、機器メンテナンスまで、運営面に関するトータルサポートを提供しています。地域福祉との連携を含む新しい農業の形づくりも、ぜひお気軽にご相談ください。

※一部サービスは内容によりご対応が難しい場合がございますので、詳細はお気軽にお問い合わせください。