農業収入はどれくらい?作目別・規模別の目安と押さえておきたいリスク
農業を始めたいと思ったとき、最初に気になるのが「農業でどれくらい収入(年収・手取り)が得られるのか?」という点ではないでしょうか。
農業は自然相手の仕事で収入が安定しづらいイメージがありますが、作物や経営規模によって収入は大きく変わります。
本コラムでは、農林水産省のデータをもとに、作物別・規模別の農業所得の目安をわかりやすく解説します。
目次
農家の平均年収・手取りはどれくらい?

農業収入(農業所得)は、
農業粗収益 - 経費 = 農業所得(手取り)
で計算されます。
農業は経費比率が高く、資材費・燃料・肥料・荷造運賃などが大きな負担になります。
農林水産省の統計によると、主業農家の農業所得は 約415万円(令和2年) となっています。
農業粗収益は1,993万円、経費は1,578万円で、手元に残るのは約4分の1という構造です。
参考:農林水産省「令和3年度 食料・農業・農村白書(令和4年5月27日公表)」
【作物別】年間農業所得の目安
農作物は種類によって収益性が大きく異なります。
農林水産省の営農類型別データから、作目ごとの農業所得の目安は以下のとおりです(令和2年)。
| 作目 | 農業所得の目安 |
| 水田作 | 約278万円 |
| 露地野菜 | 約418万円 |
| 施設野菜 | 約520万円 |
| 果樹 | 約376万円 |
| 花き | 約412万円 |
| 酪農 | 約774万円 |
| 肥育牛 | 約-213万円 |
| 養豚 | 約2,500万円 |
| 採卵鶏 | 約1,1800万円 |
※畜産は価格変動・飼料費の影響を強く受けます。
特に養豚・採卵鶏は高収益ですが、初期投資が大きく、リスクも高い点に注意が必要です。
【規模別】農業収入はどこまで増える?
農業は規模を拡大することで所得が伸びる場合がありますが、作目によって増加幅や“限界点”が異なります。
ここでは、水田・露地野菜・酪農において、各規模でどの程度の所得が見込めるのか、農林水産省データをもとにご紹介します。
参考:農林水産省「営農類型別経営統計」
水田作
水田作では、規模拡大するほど増収する傾向にあります。

50ha以上で年1,300万円超の所得を目指すことも可能です。
露地野菜
10〜20haが高収益、20haを超えると所得が減る傾向にあります。

20ha以上の所得減の要因は、付加価値額の増加よりも労働時間の増加割合が上回っているためです。
労働生産性の向上をめざし、雇用した人材に対して労務管理を実施する、業務を効率化するといった取り組みが重要といえます。
酪農
規模別の農業所得は以下の通りです。

200頭以上になると経費が急増する傾向にあります。100~200頭の規模がもっともバランスがよく、安定的に経営可能だといえます。
農業収入はいくらあれば生活できる?
一般的な生活費の目安は以下の通りです。
単身:180〜250万円
家族世帯:300〜450万円
農業所得のみで賄うのが難しい場合は、兼業収入(パート・会社勤務)や副収入(加工品づくりなど)などを組み合わせるケースが多く見られます。
農業経営を安定して続けるには

農業収入を安定させるためには、価格変動や天候、労務管理といったリスクに備えた経営方針が必要です。
以下ではそのポイントを具体的に解説します。
価格が安定した作物を選ぶ
販売価格の安定した作物を選ぶことがポイントのひとつです。
たとえば、「指定野菜」を選択肢に入れることが挙げられます。
指定野菜とは、キャベツ・たまねぎ・だいこんなど14品目の主要野菜で、国が需給バランスを見ながら生産や出荷量を計画するため、市場価格が大きく乱れにくいという特徴があります。
さらに、これらの野菜には「野菜価格安定制度」が適用されており、もし価格が著しく下落した場合には生産者に補給金が交付されます。
この制度は「野菜生産出荷安定法」に基づいて運用されており、過去6年の平均価格を基準として平均価格の90%が保証基準額、60%が最低基準額として設定されます。補てん率も原則90%(産地によって70〜90%)と高いため、価格変動から農家の収入を守る制度として非常に優れています。
つまり、価格が安定しやすい作物を選ぶことは、長期的に安定した農業収入を確保するための確実な方法と言えるでしょう。
リスクを分散する
農業経営において天候や市場価格の変動は避けられませんが、作物を一つに絞らず複数の品目を組み合わせることで、自然災害や不作のリスクを抑えることができます。
また、販売方法についても、直売所、市場出荷、契約栽培など複数の販路を確保しておくことで、特定の市場価格の影響を受けにくくなり、収入が安定しやすくなります。
関連記事:直売所がアツい!農業と地域をつなぐ販路開拓とその魅力
データと技術を活用した「スマート農業」で生産性を高める
近年、農業経営の安定において重要度が増しているのが「スマート農業」の活用です。
ハウス内の温度・湿度・日射・CO₂を自動で調整する環境制御装置や、灌水を適切に管理できる自動灌水システム、さらにはドローンによる圃場管理など、さまざまな技術が農業現場で導入されています。
これらの技術を活用すると、経験に依存しがちな作業・管理をデータに基づいて実施できるため、もし栽培技術に自信がなくても、高品質・高収量を目指すことができます。また、作業の省力化が進むことで、少人数でも安定した規模の経営が可能になり、長期的な労働負担も軽減されます。
スマート農業は大規模農家向けの印象がありますが、近年は小規模農家でも導入しやすい製品が増え、段階的に取り入れることもできます。生産性向上と働き方の改善を同時に実現できる点で、農業経営の安定に大きく貢献する取り組みです。
労務管理を徹底して無駄を減らす
農業経営を安定させるためには、作業量や作業者ごとの負担を正確に把握し、ムダや偏りをなくす「労務管理」が欠かせません。
どの作業にどれだけ時間がかかっているかが見えない状態だと、無駄な人件費が発生したり、特定のスタッフに作業が偏ったりと、非効率が積み重なってしまいます。
こうした課題を解消するために役立つのが、イノチオアグリが提供する労務管理アプリ「アグリボード」です。アグリボードでは、日々の作業内容や所要時間をスマホ・タブレットで簡単に記録でき、作業の進捗を簡単に“見える化”できます。
これにより、どの作業にムダがあるか、どの工程を改善すべきかが一目で把握でき、適正な人員配置や労働時間の最適化が実現します。
労務管理を強化することで、働く人の負担を抑えつつ、適切な人件費で効率的に経営を進められるようになります。
補助金・融資制度を活用する
就農初期は資材購入や設備整備などで多くの資金が必要になりますが、国や自治体の補助金を活用することで負担を軽減できます。
特に「就農準備資金」や「経営開始資金」は、新規就農者の生活費や営農初期の経営を支える代表的な制度です。
さらに、大型の設備投資などに活用するために3,700万円を無利子で借り入れることが「青年等就農資金」といった融資制度もあります。
そのほか、自治体独自の補助金や農業公庫の低利融資なども組み合わせることで、初期投資の負担を和らげ、経営を軌道に乗せやすくなります。
関連記事:農業で使える補助金一覧!新規就農・設備導入・販路拡大まで幅広く紹介
経営数値の把握と改善
農業経営を長く続けるためには、日々の経営状況を数字で把握し、改善につなげることが欠かせません。
作物別の粗収益、資材費や燃料費などの経費内訳、作業時間、利益率などを定期的に記録・分析することで、問題点が明確になります。こうした“経営の見える化”を習慣づけることが、収益性の高い農業経営を続けるための基本となります。
「農業法人への就職」で収入確保の選択肢も
農業を始めたいものの、いきなり独立に踏み出すのが不安な人にとって、農業法人への就職は非常に現実的で安定した選択肢です。
給与収入が確保でき、社会保険に加入しながら農業の技術や知識を身につけることができます。近年では、法人で経験を積んだ後に独立するケースも増えています。
関連記事:農業の仕事内容は?農業法人に就職する際の注意点を解説
農業の確定申告とは
農業者は事業者として確定申告をする必要があります。
特に青色申告を選択すれば、例えば以下のようなメリットを受けられます。
- 青色申告特別控除
- 家族への給与の経費化
- 赤字の繰越控除
確定申告の詳細はこちらで詳しく解説しています。
関連記事:農業経営における確定申告の重要性とは?経費や必要書類を徹底解説
イノチオアグリは安定的な農業経営をサポートします

農業経営には、天候リスク、価格変動、労務確保、設備投資の負担など、多くの課題が伴います。しかし、これらの課題は「適切な作物の選択」「補助金の活用」「データに基づく経営判断」「技術導入」を組み合わせることで大幅に軽減できます。
イノチオアグリでは、これから農業を始めたい方から、すでに営農している方まで、安定した農業経営の実現に向けたさまざまなサポートをご提供しています。
農業経営を長期的に続けるには、適切な情報と伴走支援が欠かせません。
「農業で生活したい」「将来の柱になる経営に育てたい」という想いに寄り添い、あなたの営農を総合敵にサポートします。
