イチゴの病害虫対策【アザミウマ類】
イチゴ栽培ではさまざまな害虫が発生します。その中でアザミウマ類は、イチゴの花や幼果を加害するため、果実の「着色不良」や「肥大不良」など品質及び収量の低下に直結する被害を引き起こします。
本コラムでは、イチゴにおけるアザミウマ類の基礎情報から、侵入・増殖の流れ、現場で実行しやすい防除のポイントなどを整理してご紹介します。
イノチオでは、病害虫診断や対策のご提案も行っています。アザミウマ類以外でも、お困りの症状があればお気軽にご相談ください。
イチゴ栽培におけるアザミウマ類

アザミウマ類(スリップス)は、体長約1〜2mmほどの、とても小さく細長い昆虫です。
成虫になると翅(はね)を持ち、隣接株へ移動できるようになります。飛翔能力は高くありませんが、風に乗ってハウスの天窓から侵入することもあります。

イチゴでは、開花期に成虫・幼虫が花に寄生し、花弁やガク、花托を加害することで、変色や萎縮を引き起こします。さらに、果実の肥大期には果面を食害し、サビ状の褐変を生じさせ、商品価値を大きく低下します。
こうした被害は、確認したときにはすでにアザミウマ類が多発している場合も多く、イチゴ栽培では特に注意が必要な害虫です。
イチゴ栽培で問題になるアザミウマ類の種類
イチゴで特に問題となるのは、ヒラズハナアザミウマとミカンキイロアザミウマです。いずれも花に集中して寄生し、組織内に卵を産み付けます。
ヒラズハナアザミウマ
ハウス内で越冬し、春から秋にかけて花で多く見られます。温暖な地域では、年間でおよそ10世代を繰り返すとされています。
卵から成虫になるまでに必要な日数は、気温が高いほど短く、15℃で約34日、20℃で約20日、25℃では約10日です。また、雌の産卵数が他のアザミウマ類に比べて多いことも特徴です。
ミカンキイロアザミウマ
海外からの侵入種で、非常に広食性のため、ほとんどの顕花植物の花器に寄生します。非休眠性のため、施設内では冬も増殖することができます。
卵から成虫になるまでの期間は、15℃で約34日、20℃で約20日、25℃で約12日と、こちらも気温が高いほど短くなります。花粉を摂食すると産卵数が増加するため、花が多い時期は注意が必要です。
アザミウマ類の侵入・増殖

侵入経路
年内にハウス内に侵入したアザミウマ類が、ハウス内で越冬し、春先の気温上昇とともに増殖します。さらに、開口部(天窓・側窓・出入口・換気部)を開ける機会が増える春先は、外部からの飛び込みも多くなります。
ハウス内外に開花した雑草があると、そこが発生源や中継地点となり、侵入後の定着・繁殖を助長してしまいます。そのため、雑草管理も非常に重要です。
繁殖しやすい環境
アザミウマ類は、高温で乾燥した環境が続くと発生が多くなります。
また、花粉が豊富にある環境も増殖を後押しします。開花が進んで花粉量が多い時期や、周辺に花粉源となる雑草が存在する場合は、産卵・繁殖が活発化しやすいため注意が必要です。
アザミウマ類防除のポイント

アザミウマ類は、単発の薬剤散布だけでは抑えにくい難防除害虫です。物理的防除・生物的防除・化学的防除を、発生初期から段階的に組み合わせることがポイントです。
1.耕種的防除
- 除草の徹底(圃場内外)
雑草は寄生場所や薬剤散布時の避難場所になりやすいため、開花している雑草は最優先で除去します。
- 色への誘引性
アザミウマ類は主に青色に誘引され、中には黄色に誘引される種もあります。圃場周辺や出入口周辺に青色・黄色の資材や物品は置かないようにします。
- 栽培終了後の蒸し込み
ハウス内に残ったアザミウマ類を一掃し、次作や周辺圃場への分散を防止します。
2.物理的対策
- 防虫ネットの被覆
目合いは0.4mmを目安に、外気が出入りする開口部(天窓・側窓・出入口・換気部)を被覆します。光反射資材入り防虫ネットは、忌避効果も期待できます。
- 赤色防虫ネットの活用
アザミウマ類は赤色を視覚的に認識できず、侵入を防ぐ効果が期待できます。目合いを0.8mmにしても防除効果が確保でき、通気性の改善にもつながることから、近年使用が広がっています。
- 粘着トラップ(ブルー)の設置
ヒラズハナアザミウマおよびミカンキイロアザミウマは、青色に誘引されます。青色の粘着板・粘着ロールを、花房付近や出入口付近などの寄生しやすい場所や侵入経路に設置すると効果的です。
さらに、発生時期及び数の見える化にも有効です。毎年多発する地点で定点観察すると、薬剤散布のタイミング判断にも役立ちます。
3.生物的防除(予防~初期対応)
生物的防除として、先ず天敵が挙げられます。天敵は、アザミウマ類の発生前から放飼しておくことが重要です。
特に、低温条件に強い
- リモニカスカブリダニ(リモニカ)
- ククメリスカブリダニ(ククメリス)
を早めに放飼し、ハウス内でしっかり定着させておくことで、アザミウマ類の発生初期の増加を効果的に抑えることができます。
また、天敵と微生物殺虫剤の併用も有効です。
ただし、薬剤との混用方法・適用作物・希釈条件などは、必ず製品ラベルや説明書を確認のうえ、正しく使用してください。
4.化学的防除(初発~多発時)
化学的防除では、初発のタイミングで速やかに薬剤散布を行うことが重要です。
薬剤散布の際は、作用機構(IRACコード)を意識したローテーション防除が不可欠です。同じ系統の薬剤を使い続けると、アザミウマ類の薬剤感受性が低下し、いわゆる「抵抗性」を助長します。異なるIRACコードの薬剤を組み合わせ、計画的にローテーション防除することが必要です。
また、アザミウマ類の卵や蛹は薬剤が効きにくいため、一度散布しても、残った個体が数日後にふ化・羽化して再び増えてしまうことがあります。そのため、散布後およそ5日後を目安に、状況を見ながら追い散布を検討しましょう。
さらに、アザミウマ類は花の内部、ガクの裏、葉裏などに潜むため、薬剤の効果を十分に発揮させるため薬液が届くように丁寧に散布しましょう。
イノチオの「防除チラシ 3月号」では、イチゴのアザミウマ類の防除薬剤について紹介しています。ぜひご覧ください。
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