キク栽培ではさまざまな害虫が発生します。その中でアブラムシ類は、露地ギクを中心に多く発生します。アブラムシ類が発生すると、葉の黄化や生育不良、商品価値の低下などを引き起こし、さらにウイルス病の媒介という見逃せないリスクもあります。

本コラムでは、キクにおけるアブラムシ類の基礎情報から、侵入・増殖の流れ、現場で実行しやすい防除のポイントなどを整理してご紹介します。

イノチオでは、病害虫診断や対策のご提案も行っています。アブラムシ類以外でも、お困りの症状があればお気軽にご相談ください。

キク栽培におけるアブラムシ類

アブラムシ類は、雑草にもよく寄生する、身近な昆虫です。体長1~2mmと小さく、無翅虫(翅なし)と有翅虫(翅あり)の両タイプが同一種の中で条件に応じて出現することが特徴です。

キクでは、キクヒメヒゲナガアブラムシやワタアブラムシなど数種類が寄生することが知られています。茎・新芽・葉裏・花蕾などに寄生し、生育点や幼蕾を好む傾向があります。

被害としては、成虫・幼虫が生育点や幼蕾などに寄生するため、生育が阻害されます。さらに、発生量が増えると、虫の排泄物(甘露)による「すす」(黒い汚れ)を併発するため、商品価値が著しく低下します。

特に、開花時に発生した場合には、美観が損なわれるため、少発生でも被害が大きくなります。

また、アブラムシ類はCVB、CMV、TAVなどウイルス病を媒介します。ウイルス病は一度感染すると治療できないため、初期段階での発見と対策が重要になります。

キク栽培で問題になるアブラムシ類の種類

キクヒメヒゲナガアブラムシ

キクで最もよく確認されるアブラムシが、キクヒメヒゲナガアブラムシです。成虫・幼虫ともに新芽の伸長部分によく群生し、茎や葉以外に若い蕾も加害します。

無翅の雌成虫は体長1.8mmほどで、体色は暗赤褐色~赤黒褐色、光沢があるのが特徴です。

茎では頭を下にして寄生し、ときどき腹部を左右に振るような独特の動きを見せます。

ワタアブラムシ

広食性で、非常に多くの作物や雑草に寄生します。キクでは葉裏や茎に群生し、新葉や花弁にもよく寄生します。

無翅の雌成虫は体長1.2mmほどで、体色は暗緑色・緑色・黄色・黒色と変化に富みます。

合成ピレスロイド系などの殺虫剤に薬剤抵抗性が発達している報告があるため、ローテーション散布が重要です。 

アブラムシ類が増えやすい条件とは?

アブラムシ類は、温暖で雨が少ない環境を好みます。

さらに、風通しの悪い場所で、軟らかい新芽が多い時期になると発生が多くなります。

アブラムシ類はいつ増える?季節ごとの発生傾向

アブラムシ類の多くは単為生殖で、卵を介さず直接幼虫を産むため(クローン)、発育が速く、好適条件下ではおよそ1週間で成虫になることがあります。そのため、わずか1頭でも短期間で増大してしまうのが特徴です。

発生が多い時期は4~6月及び9~11月で、春~秋に10世代以上を繰り返します。盛夏は一時的に減少します。

キクヒメヒゲナガアブラムシは越冬株の芽の部分で越冬し、新芽の伸長に伴って先端の柔らかい芽や若葉の部分に寄生して増殖します。春から秋まで良く繁殖し、ハウス内では冬でも繁殖します。夏期には一時的に減少します。

ワタアブラムシは、雑草や周辺作物からの飛来が主と言われています。繁殖は、春から初夏にかけて盛んになり、ハウス内では冬でも大繁殖することがあります。

アブラムシ類防除のポイント

アブラムシ類が多発すると、排泄物(甘露)による「すす」(黒い汚れ)を併発するため、商品価値が著しく低下します。そのため、早期発見と早期防除が有効です。

効果的に防除するには、耕種的防除・物理的防除・天敵利用・薬剤ローテーションといった対策を組み合わせ、アブラムシ類の発生を総合的に抑えることが大切です。

耕種的防除

  • 除草の徹底(圃場内外)

アブラムシ類は、圃場内外の雑草を発生源や中継地点として侵入してくることが多いため、除草は耕種的防除の基本となります。特に、圃場周辺の3〜5mほどの範囲をしっかり除草しておくと、飛来や定着のリスクを大きく減らすことができます。

特に春から初夏は、アブラムシ類の繁殖が盛んになるため、その前に除草することをおすすめします。

  • 色への誘引性

アブラムシ類は黄色に誘引されやすいため、圃場周辺や出入口周辺に黄色の資材や物品を置かないようにします。

化学的防除(薬剤ローテーション)

ワタアブラムシは、合成ピレスロイド剤などの殺虫剤に対する抵抗性が報告されています。そのため、同じ薬剤を繰り返し使うと十分な効果が得られず、結果的に密度を抑えにくくなることがあります。

こうした抵抗性の発達を防ぐためには、作用機構(IRACコード)の異なる薬剤を組み合わせたローテーション防除が重要です。複数の系統を計画的に使い分けることで、薬剤の効き目を維持し、長期的に安定した防除効果が期待できます。

また、アブラムシ類は葉裏や新芽、花蕾のすき間など薬液が届きにくい部分に寄生するため、散布液の“到達性”も大きく左右します。葉をめくるように散布角度を工夫したり、水量やノズルを調整したりして、しっかり薬剤が付着するよう丁寧な散布を行うことが欠かせません。

その他、成分に「浸透移行性」の特徴を持つ薬剤を使用することもおすすめです。「浸透移行性」を持つ薬剤は、散布液がかかっていない部分にも成分が移行してくれるため、隠れた場所にいるアブラムシ類に有効です。

※薬剤の使用にあたっては、必ず製品ラベルを確認のうえ、正しく使用してください。

イノチオの「防除チラシ3月号」では、キクのアブラムシ類の防除薬剤について紹介しています。ぜひご覧ください。


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