スラブサイトを活用して取り組む大玉トマト栽培
室川農園
温暖な気候と50年以上のトマト栽培の歴史を持つ千葉県一宮町で、トマト栽培に取り組む室川典弘さん。長生フロンティアファームの代表理事として大規模なハウス栽培を行いながら、個人でも養液土耕によるトマト栽培にも従事しています。さらに、ロックウール栽培や最新の農業技術も積極的に導入し、収量と品質の向上を実現しています。今回は室川さんの挑戦と工夫、そして次世代へつなぐ農業の姿をご紹介します。
目次
室川さんが一宮町で取り組む農業
現在、長生フロンティアファームの代表理事として、全体で約5,000坪の農地を管理し、そのうち1,200坪のハウスで大玉トマトの栽培をしています。また、個人としても900坪のハウスで養液土耕栽培で大玉トマトを栽培しています。収量としては、10aあたり平均35〜40トン、主にJAグリーンウェーブ長生へ出荷しています。
私が農業を営む一宮町は、もともと温暖な気候に恵まれ、50年以上にわたるトマト栽培の歴史があります。親や先輩方から代々受け継がれてきた技術に、自分たちが学んできた知識を融合させることで、現在の栽培技術を確立しています。
ロックウール栽培の壁 土耕栽培からの挑戦

この地域でも、ロックウール栽培に取り組んでいる方は以前からいましたが、私自身はもともと土耕用液肥による栽培を行ってきました。「養液土耕栽培ができればロックウール栽培もできる」と言われることがありますが、実際に初めてロックウールで栽培してみたところ、その感覚はまったく異なるものでした。
ロックウールは、水分管理が非常に繊細で、乾かしすぎても、水を与えすぎても作物に悪影響が出てしまいます。その“ちょうどいい”水分量を見極めるのが非常に難しく、特に最初の2〜3年は灌水の加減にとても苦労しました。
トマトに最適な灌水を~アクアビート導入の背景~

アクアビートを導入する際には、全国の農家さんやメーカーを訪問して比較検討を行いました。もう10年ほど前のことになりますが、その当時アクアビートを選んだ理由は、トマトの生育状況や日射量、季節ごとのステージに応じて灌水設定を細かく調整できる点に魅力を感じたからです。
また、導入のきっかけとなったのは、当時イノチオの担当者だった方の丁寧な説明と、このハウスを建てる際に関わってくださったイノチオの方の存在でした。お二人の話を聞き、「これからトマトを作っていくには、アクアビートとイノチオだ」と確信し、導入を決めました。
操作性についても非常にシンプルで、初めて使ったときも倍率の設定方法を丁寧に教えてくれました。「この倍率でやると良いですよ」と具体的にアドバイスをいただき、CC(灌水量)も100CCから細かく設定でき、タイマーで自動的に灌水できる仕組みだったため、難しさを感じることなくスムーズに導入・運用することができました。
“少量多灌水”を可能にする アクアビートの柔軟性と精密さ

アクアビートの操作性について、これまでに使用してきた他の2種類の灌水システムと比較して、明らかな違いを感じています。特に優れている点は、トマトの生育ステージに応じて細かく設定できる「レシピ」や「グループ」、「タイマー」などの機能が非常に充実していることです。ここまで細かく調整できるシステムは他にはなく、その柔軟性が非常に魅力的でした。
また、従来のシステムでは難しかった「少量多灌水」の設定も、アクアビートでは季節に応じて細かく調整が可能です。特に春のように水分が多く必要な時期には、こまめに灌水を行うことができ、広いハウスでも均一に水を与えることができます。従来のシステムでは一度に大量の水を出すため、次の灌水までに時間が空いてしまうことがありましたが、アクアビートでは細かく水を供給できるため、トマトの生育にも良い影響を与えていると実感しています。
“感覚”から“確信”へ スラブサイトで進化する灌水管理

スラブサイトの導入によって、これまで感覚や経験に頼っていた灌水の判断が、より正確かつ効率的になりました。特に春先は夜間の蒸散が激しくなり、朝方の灌水が不足しがちでしたが、従来は排液の有無を見てから判断していたのに対し、スラブサイトではパソコン上のグラフで水分値のラインが可視化されているため、排液が出ないタイミングを事前に把握し、早めに灌水を行うことができます。これは非常に大きなメリットです。
また、春だけでなく、日射量が少ない厳寒期の冬にもスラブサイトは役立ちます。これまではスラブ内をリフレッシュするために迷いながらも水を打っていましたが、スラブサイトのデータをもとに「打つべきか、打たなくてよいか」の判断が明確にできるようになり、無駄な灌水を避けることが可能になりました。
もともと私は「根っこで作るトマト作り」を意識しており、スラブサイトを導入する前は、良いスラブ(培地)もあれば根張りの悪いスラブもあり、ばらつきが目立っていました。しかし、スラブサイトを使うことで、必要な分だけ正確に水を与えることができ、無駄な灌水を避けることで根の環境が安定し、全体的に根が守られるようになりました。その結果、年々収量も向上しており、今期はこれまでで最も根の状態が良く、非常に楽しみにしています。
スラブサイトによって「灌水をかける理由」と「かけない理由」が明確になり、判断に迷う時間が減ったことで、より深くトマト栽培に向き合えるようになりました。灌水に迷わずに済むことで、トマトの生育も安定し、より良い結果につながっていると実感しています。
見える灌水、伝わる技術 スラブサイトが育てる次世代のトマト栽培

私自身、これまで1つひとつのスラブからどれくらい灌水されているかを手作業で調査し、かなりの時間を費やしてきました。しかし、スラブサイトを導入すれば、その調査にかけていた時間を大幅に削減できると気づきました。実際、スラブサイトは水分量の変化をグラフで「見える化」してくれるので、状況を一目で把握でき、判断がとてもスムーズになります。
トマト栽培では、今行った管理の効果が2ヶ月後の収穫に現れるため、過去の灌水データを時系列で振り返ることができるのは非常に有益です。「あの時、どれだけ水をかけていたか」「その判断は正しかったか」をデータで確認できるのは、栽培の精度を高めるうえで大きな強みです。
さらに、スラブサイトのデータは記録として残るため、次の世代や研修生に技術を伝える際にも役立ちます。数字という共通言語で「こうするとトマトはこう育つ」と説明できるので、経験の浅い人にも理解しやすく、再現性の高い栽培が可能になります。
実際に今、研修生がスラブサイトを活用しながら灌水を学んでいますが、私が2〜3年かけて経験から学んだことを、彼らは初年度から実践できています。失敗を減らし、安定したスタートを切れるという点でも、スラブサイトは非常におすすめできるツールです。
スラブサイト導入を支えた、営農支援のサポート
私はイノチオの営農支援サポートを受けながらスラブサイトを導入しました。現場には渡辺さんが担当として来てくださっており、導入初年度は実際に現地に足を運んで、状況を見ながら丁寧にサポートしてくれました。その場で話を聞きながら進められたことで、安心して使い始めることができました。
2年目になると操作にも慣れてきたため、サポートも電話やメールでポイントだけを教えてもらう形に変わりましたが、それでも十分に対応できるほどシンプルで分かりやすかったです。
特に意識したのは、昼夜の水分DIF(日較差)と日中のDIF。この2点を押さえることで、これまでの自分の灌水経験とうまく結びつけることができ、スラブサイトを活用できるようになりました。サポートが非常に分かりやすく、導入もスムーズに進んだと感じています。
朝トマトの街を目指して、一宮町とともに歩む農業

私はこの一宮町が大好きです。ここには、ウミガメが産卵に訪れる美しい海があり、夜にはホタルが舞う静かな里山もあります。そんな自然豊かな環境を守りながら、持続可能な農業経営を続けていくことが、私の大切な目標です。
そして、私が育てているのは、真っ赤に熟した「木熟(きじゅく)」のトマト。このトマトを毎朝、一宮町の皆さんに食べていただき、健康で元気な一日をスタートしてもらいたい。そんな想いから、私はこの町を「朝トマトの街」にすることを夢見ています。
室川農園さまも導入するおすすめ製品
培地重量センサ スラブサイト

培地内の見える化でミスを早期発見!ベストな灌水管理が収量・品質を守る
作物に合わせた灌水設置をしていても、本当に灌水設定が適切なのか、心配になったことありませんか?
培地重量センサ スラブサイトなら、培地内水分をグラフで見える化するので、作物に必要な灌水量を把握することができます。
イノチオアグリは農業参入を応援しています!
イノチオアグリはビニールハウスに携わり、50年以上の知見と全国1万棟以上の建設実績がございます。培ったノウハウを活かし、企業の農業参入における計画から計画生産や労働生産性を考えたビニールハウス設計、建設をトータルでご支援しております。
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