環境制御システムを使用したスプレーマム栽培
山田裕也さん
愛知県豊川市でスプレーマムの栽培に取り組む山田裕也さん。現在は約2,400坪、10棟のハウスで栽培を行い、年間およそ170万本を出荷されています。スプレーマムは、色や形のバリエーションが豊富なことから、仏花をはじめとした多様なニーズに応えられる花として注目されています。今回の取材では、マスプレー・エアロビートといった設備の導入による作業効率化、環境制御による品質向上への工夫についてお話を伺いました。さらに、イノチオのサポート体制や、変化する農業環境の中で今後求められる生産体制についても、現場のリアルな声を交えてご紹介します。
- 所在地等
- 愛知県豊川市
- 栽培作物
- スプレーマム
目次
スプレーマム栽培の現場から 〜安定供給と品質への取り組み〜
私は現在、「スプレーマム」を栽培しています。現在の栽培面積は約2,400坪で、ハウスは10棟ほど使用しています。昨年の出荷実績はおよそ170万本にのぼり、収量としてはかなり多い方だと自負しています。
スプレーマムの魅力は、まず菊ならではの「非常に長持ちする」という点です。さらに、スプレーマムには多種多様な品種があり、基本の白・ピンク・黄色に加えて、緑・オレンジ・赤といった色合いのものもあります。花の形もさまざまで、そういった多様性がスプレーマムの大きな魅力だと感じています。
スプレーマムの主な需要が仏花などの形式花であることから、年間を通じて安定した出荷が求められています。そのため、年間を通して必要な量を安定的に供給できる体制の構築に力を入れて取り組んでいます。
マスプレーが変える現場の効率と夏の暑さ対策

マスプレーは、今や欠かせない存在となっています。
まず、自走式の防除機としての役割があり、これにより作業の労力が大幅に軽減されます。さらに、灌水機能も備えているため、1台で2つの作業をこなせる点が非常に優れています。防除と灌水の両方を効率的に行えることで、作業時間の短縮や人手不足の解消にもつながっています。
特に最近の夏は非常に暑く、マスプレーの使い方にも工夫が求められています。例えば、夏場にはマスプレーを1回だけ往復させるような運用を行い、葉に水をかけることで気化熱を利用し、葉の温度を下げるといった使い方が注目されています。これにより、高温による植物へのダメージを軽減することができるのです。
こうした使い方は、近年になってその効果がより明確になってきており、マスプレーの活用方法として今後さらに広がっていく可能性を感じています。
効率化と精密な環境管理を実現する「エアロビート」の導入効果

環境制御システム「エアロビート」を導入して、実際に使用してみてその利便性と効率性に大きな魅力を感じています。
最大のポイントは、1台のパソコンで最大10区画まで制御できるという点です。私たちの農場では複数のハウスが隣接しており、各ハウスに個別の環境制御装置を導入するとなると、コストが非常に高くなってしまいます。しかし、エアロビートであれば、1台のパソコンで複数の区画を一括管理できるため、非常に効率的で、導入の決め手となりました。
また、エアロビートの導入によって、温度や湿度の細かな管理が可能になったことも大きな利点です。たとえば、天窓の開閉がより繊細に制御されるようになり、ミスト装置と連動させることで、湿度の調整も自動で行えるようになりました。これにより、作物にとって最適な環境を維持しやすくなり、環境制御の質が格段に向上しました。
収量向上と失敗の分析に貢献するエアロビートの可能性
スプレーマム栽培においては、年間に何回作付けできるかが収量を左右する重要な要素です。エアロビートを活用することで、温度・湿度・二酸化炭素の管理を細かく設定できるようになり、光合成の効率や生育スピードを高めることが可能になりました。これにより、作付けの回転数を上げることができ、収量の向上にもつながると期待しています。
さらに、エアロビートの大きな魅力の一つが、環境データの履歴が記録として残ることです。栽培において失敗が起きた際、その原因を特定するためには、温度や湿度などの環境要因を振り返る必要があります。エアロビートでは、過去の制御履歴を確認できるため、問題の原因を分析し、次に活かすことができます。
これは、経験と知識を積み重ねていく上で非常に重要な機能であり、失敗の要因を可視化し、改善につなげるという点で、現場にとって大きな価値をもたらしています。
スプレーマム栽培における環境制御技術の意義

一般的に環境制御技術は、バラやイチゴ、トマト、ミニトマトなど、1株から複数の果実や花が収穫できる作物に対して導入されることが多く、費用対効果の面でも非常に優れているとされています。
しかし、菊の場合は1本植えて基本的に1本しか育たないという特性があり、環境制御の導入に対して慎重な見方をされることもあります。そうした中で、私の考えとしては、いかにロスを減らすか、そしていかに作付けの回転数を上げていくかという点が重要だと考えています。
そのためには、1日あたりの成長量をどのように高めていくかという視点が欠かせません。環境制御技術を活用することで、成長の観察と実践を同時に行うことが可能となり、より効率的かつ安定した栽培が実現できます。
環境制御は単なるコストではなく、生産性向上のための投資として捉えるべきだと感じています。
環境制御による収量向上と病害虫対策の効果
植物の成長をいかに高めるかという点は、収量を上げるための重要な要素です。収量が増えれば、それに伴って費用面も回収しやすくなり、環境制御技術の導入による投資効果が見えてくると考えています。
加えて、もう一つ重要な点が病害虫の予防です。環境制御によって温度や湿度を適切に管理することで、病気が発生しやすい条件を避けることができ、健全な栽培環境を維持することが可能になります。
特に夏場は虫の発生が多く、夜間にハウス内の照明に引き寄せられて侵入するケースが見られます。そうした状況に対しても、夜間だけ天窓を閉めるといった細かな管理ができることで、完全に防ぐことは難しくても、被害を軽減することは十分に可能です。
このように、環境制御は単に成長促進だけでなく、病害虫対策にも効果を発揮する重要な技術であると実感しています。
スプレーマム栽培における成長段階の切り替えと環境制御の重要性

スプレーマム、菊の栽培では、栄養成長と生殖成長を途中ではっきりと切り替えるという点が特徴です。これは栽培管理において非常に重要なポイントです。
ハウスの形状にもよりますが、定植してから短日条件に切り替えるまでの栄養成長期間では、光合成をしっかり促すような制御を行います。そして、短日条件に切り替えて花を咲かせる段階に入ると、それに合わせた制御に切り替えることができます。
このように、成長段階に応じて制御を切り替えることで、品質に大きく影響していると感じています。ただし、その切り替えのタイミングや制御の内容については、品種ごとに異なるため、それぞれ模索していく必要があります。
エアロビート導入へのイノチオのサポート

エアロビートの導入にあたっては、イノチオのサポートが非常に手厚く、心強いものでした。導入当時は、エアロビートがまだ新しく市場に出たばかりのタイミングだったこともあり、インターフェースや使用感について、こちらの意見を非常に丁寧にヒアリングしてくださいました。
「ここにこういうボタンがあると便利だよね」「こういう仕様があったらもっと使いやすいよね」といった、現場の声を細かく拾い上げ、それを実際のシステムに反映してくれるような対応をしていただきました。現場のニーズに寄り添った開発姿勢がとても印象的で、安心して導入を進めることができました。
さらに、特に良かった点として挙げられるのが、マスプレーとエアロビートの環境制御システムを連動させてもらえたことです。この連携によって、作業の効率化や環境管理の精度が大きく向上し、実際の栽培現場において非常に大きな効果を感じています。
落雷トラブルにも即対応!安心を支えるイノチオの営業力

もちろん、すべての業務をイノチオにお願いしているわけではありませんが、営業の方が頻繁に足を運んでくださるという点は非常にありがたく、大きな安心感につながっています。
最近特に感動した出来事がありました。落雷によって機械にダメージが発生した際、営業担当の方がすぐに電気業者と連携を取り、落雷証明の書類を迅速に作成してくれました。その結果、共済保険の申請がスムーズに進み、なんと翌週には保険金が支払われるという驚きのスピード感でした。
こうした対応をしてくれる担当者がついてくれていることは、現場にとって非常に心強く、何か問題が起きたときにも気軽に相談できる関係性が築けていると感じています。
変化する時代に対応するための施設園芸のあり方

これまでの農業の規模感ややり方が、少しずつ通用しなくなってきている――。これは、どの品目を扱っている方にとっても、共通して実感されていることではないかと思います。だからこそ、この変化にどう対応していくかが、今後の農業経営において非常に重要なテーマになってきています。
施設園芸においても、かつては一反ほどのハウスを建て、少しずつ規模を拡大していくというスタイルが一般的でした。しかし、これからは農業者の数が減少し、農地が余っていく時代に突入します。そうした中で、限られた人材でより多くを生産するためには、生産性の向上が不可欠です。
生産者の母数が減っていく中で、一人ひとりが担う規模を拡大していく必要があり、そのためには、環境制御や自動化といったインフラの整備がますます重要になってくると感じています。これからの農業は、従来の延長線上ではなく、新しい発想と技術を取り入れた生産体制の構築が求められる時代に入っているのではないでしょうか。
イノチオアグリは農業参入を応援しています!
イノチオアグリはビニールハウスに携わり、50年以上の知見と全国1万棟以上の建設実績がございます。培ったノウハウを活かし、企業の農業参入における計画から計画生産や労働生産性を考えたビニールハウス設計、建設をトータルでご支援しております。
お客さまのご要望や条件に基づいて、事業計画を立案し、ビニールハウス、内部設備を設計し、栽培方法や作業計画の立案を伴走いたします。
さらに、圃場研修や専門指導員による就農後のサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。
