有機農業を世の中へ広めたい
株式会社オーガニックnico
京都府京都市西京区、京都市街を離れた⼭裾に株式会社オーガニックnicoはある。2019年に建設したイノチオアグリの低コスト耐候性ハウス「ドリームフィールド」。ハウスの中ではミニトマト、中⽟トマトが有機栽培で育てられている。今回は、ドリームフィールドの使⽤した感想と有機農業に取り組む社⻑の中村新さんに密着インタビュー。(2021年5月19日取材)
- 所在地等
- 京都市西京区
- 面積
- 約1260㎡
- 栽培作物
- ミニトマト、イチゴなど
- 導入設備
- ドリームフィールド
目次
農学者であった⽗の想いを継ぎ、農業の世界へ
露地栽培で九条ネギ、ビニールハウス栽培でミニトマト、イチゴを中心に有機栽培をしています。ビニールハウス栽培では、植物を健全に育てるために何よりも明るさを重視しています。ビニールハウスの採光性が一般的には50%程度とされていますが、このドリームフィールドは66%とのことで興味を持ち導入を決めました。
トップレベルのビニールハウス内環境︕
ドリームフィールドは、他社メーカー製のビニールハウスとも⽐較しましたが、明るさと通気性という2つの点でトップレベルのビニールハウスであるという印象を受けました。また、強⾵への耐候性と低コストという⾯でも満⾜して導⼊を決めました。夏場は涼しく、冬場の重油の使⽤量も他のビニールハウスに⽐べて抑えられています。ビニールハウス内の温度の制御性が優れていると実感しています。
ドリームフィールドで年間収量1.5倍を実現︕
収量を上げるために⼤切なのは光です。ドリームフィールドの導⼊によって以前に⽐べて採光性が向上しました。こちらのビニールハウスでは、年2作の作付けを⾏っています。以前は1反(300坪)あたり年間収量が10トン前後でしたが、ドリームフィールドを導⼊して年間収量15トンを達成することができました。
誰でも取り組める有機栽培技術を実現したい
オーガニックnicoには、野菜の出荷量拡大と生産技術の構築の2つのミッションがあります。私たちの生産現場は、生産技術を構築するための実証農場という役割も担っています。実証した技術を他の栽培環境や地域でも実現できるように標準化を目指すことで、誰でも取り組める農業を実現することが私たちのビジョンです。
有機農業の栽培農地25%を目指して
有機農業と聞くと「上手に栽培できない」という印象を持たれる方がいます。オーガニックnicoでは、有機農業でもしっかりと栽培できる技術が実現できています。今後は有機農業でも栽培できる技術を確立して、農林水産省が目標に掲げる有機農業の 栽培農地25%を目指して努力を続けていきたいです。
イノチオと共に農業の発展へ
ドリームフィールドは私たちの栽培に適した環境を提供してくれました。実際に栽培をはじめてからもビニールハウス内で計測した温度や光のデータを活用して、科学的に農業を追求して取り組むことがイノチオと一緒にできていると感じています。
今後は、共同で実証をしているトマトの収穫量予測システムの事業化を進めていきたいと思います。そして、ドリームフィールドの上を行くようなビニールハウスも一緒に開発していけたらと思っています。
株式会社オーガニックnicoが導入するビニールハウス
ドリームフィールドは、幅広い栽培に選ばれてきた丸型ハウスD-1と屋根型ハウスのメリットを併せ持つ高性能ビニールハウスです。ビニールハウスの間口・柱高・奥行きを標準化、一定基準の強度を保ちながら、部材数の削減を行うことでビニールハウスのコストダウンを実現。さらに、オランダ式高軒高のビニールハウスと同等水準の採光性を兼ね備えています。
特徴でもある開口部104cmの天窓は、真夏の高温を軽減させ、作物にも人にも快適な「涼しく」「明るい」優れた栽培環境で多収を実現します。新規就農者、企業の農業参入、ハウス増設をご検討中の方々にビニールハウスの価格や建設プラン、栽培開始後の事業プランまでトータルでご提案いたします。
ビニールハウスを建てる前に知っておきたいポイント
個人の新規就農や企業の農業参入で施設園芸の分野で農業をはじめる場合に、ビニールハウスの建設は不可欠です。しかし、ビニールハウスと一言に表現しても種類や規模、導入する設備によって金額感が大きく変動してきます。
こちらでは、お客さま事例のオーガニックnicoさんのように栽培を行うために、ビニールハウスを建てる前に知っておきたいポイントをご紹介します。
知っておきたいポイント➀ビニールハウスの構造体
ビニールハウスの価格は、建設面積の大型化や、軒高(柱高)が高くなることによって、ビニールハウス価格が上がる傾向にあります。それに加えて、風速や積雪等の厳しい地域では、土地環境に耐えうる構造体で設計されるためにさらなるコストアップとなります。
ビニールハウス価格を抑える際は、ビニールハウスの性能を損なわない形で、用地に基づく合理的な設計をすることで金額抑制に繋がります。弊社はお客さまの予算、栽培作物、栽培方式、土地環境をもとにビニールハウス1万棟の建設実績から仕様やビニールハウス建設プランをご提案いたします。
知っておきたいポイント➁被覆材
ビニールハウスのイニシャルのコストダウン、または費用対効果の検討ポイントの1つ目として被覆材があります。ビニールハウスの被覆材は農業用ビニール(農ビ)、ポリオレフィン系フィルム(POフィルム)、硬質フィルムなどがあり、耐用年数や製品特性に応じてフィルムの選定をします。性能や耐久性の高い製品を展張の場合、フィルムそのものの価格とともに、施工方法に伴う資材や工事費も高価となります。
耐用年数3~5年の被覆材と15年以上の長期展張型フィルムを比較すると、 100万円以上の価格差が生じるケースもあります。そのため、立地条件、栽培作物、栽培スケジュール、ご予算などから、お客さまにとって最適な性能(耐用年数、厚み、保温性、透光率、波長、流滴性)の被覆材をご提案いたします。
知っておきたいポイント➂内部設備
ビニールハウスのイニシャルのコストダウン、または費用対効果の検討ポイントの2つ目としてハウス内部設備があります。ハウス内部設備は選択する仕様によって、ビニールハウス本体の価格と同程度またそれ以上の価格になることもあります。
遮光や保温を行う内張りカーテン装置、ビニールハウス内の温度管理を行うための暖房設備やヒートポンプ設備、ハウス内の温度環境の均一化を目的とする循環扇などの空調設備、炭酸ガス施用設備、環境設備や潅水設備など、設備仕様は多岐にわたります。内部設備の選定に関しても、ビニールハウス建設実績1万棟以上の知見を活かして、栽培作物と目的に適したビニールハウスの内部設備をトータルでご提案いたします。
有機農業が注目される背景
カーボンニュートラルで農業生産に付加価値を!
近年、気候変動が深刻化しています。その原因の一つとして、温室効果ガスの排出が指摘されています。特に、二酸化炭素の排出が大きな問題となっており、その排出源は産業やエネルギー生産にあります。しかし、農業においても、燃料の燃焼による二酸化炭素、畜産や土壌管理などによるメタンガスや一酸化二窒素と言った温室効果ガスが排出されています。こうした背景から、農業においてもカーボンニュートラルが求められるようになってきました。
作物を栽培する上で使用される化学農薬や化学肥料は、製造過程で二酸化炭素が発生します。天然由来の農薬・肥料や微生物などを優先的に使用する有機栽培を導入することで、結果として、二酸化炭素の排出量を減らすことになります。また、有機栽培を行うことで、土壌の健康や生物多様性の維持にもつながります。
また2021年、農林水産省が持続可能な食料生産と消費を目標に策定した「みどりの食料システム戦略」にも、有機栽培の普及を目指し、有機栽培を行う農家や生産者の支援を行っていくという内容が明記されています。
農林水産省 みどりの食料システム戦略トップページ
企業が農業参入するまでの流れ
企業が農業参入する上で、事前準備が非常に重要です。新規就農・農業参入における流れや準備物を個人及び担当者で調査し、明確化することは非常に難しいです。そのためビニールハウスや施設園芸に携わり50年以上の知見を活かし、農業参入するまでの流れをご説明します。
農業参入するまでの流れ➀事業構想の作成
先ずは、企業が農業参入をする事業の目的、参入意図、栽培作物、販路の4つを整理します。企業の場合、目的や参入意図として、独立した事業での農業生産のみならず、既存事業との相乗効果発揮や人材の再雇用先創出、SDGsやCSRなどの観点による企業PR強化、新規事業での参入などが多く見られます。まずは企業として、どのような目的や意図を掲げて参入をするのか?どのような栽培作物を栽培するのか?生産した農産物をどこに販売するのか?を検討することからはじめましょう。
各目的に応じて、必要な検討材料が異なります。例えば、新規事業の場合は農業参入を行うことでのイニシャルコスト、ランニングコストをもとに検討を重ねる必要があるため、検討段階の初期からハウスメーカーに相談することが重要です。
農業参入するまでの流れ➁作物選択と事業計画・収支シミュレーション
事業構想の作成が明確になり次第、ハウスメーカーに相談を行い、事業計画を作成していきます。イニシャルコストでは、ビニールハウスの仕様やビニールハウス本体以外の内部設備、栽培1年目の準備物を検討していきます。ビニールハウスは各製品によって、適用作物、耐積雪及び耐風速、間口や奥行などの仕様が異なるため、土地を探す前に理解しておくことがポイントです。事業構想に最適なビニールハウスや導入設備をハウスメーカーに提案していただきましょう。
ランニングコストでは年間の売上原価や販売費、一般管理費の試算をもとに、必要な人員やコストを把握します。大規模な農業経営では作業時間から算出した人員の確保が非常に重要であり、人員確保できない場合は事業を軌道に乗せることが困難です。そのため事業開始時の人員を明確に把握し、準備しておきましょう。
一例としてコスト面としてはビニールハウスの修繕や頻度を事前に把握することがポイントです。ビニールハウスの被覆材は耐用年数によって修繕費用や頻度が異なるため、把握した上で信頼できるハウスメーカーとハウスの仕様を決めていきましょう。
農業参入するまでの流れ➂農地の確保と調査・測量
農地の確保は、求める農地の条件が明確になり次第、各市区町村や農業委員会に相談し、候補地を探していくのが一般的です。すでに農地の候補が複数決まっている場合は、思い描く目的や意図をもとに最適な土地なのか?建設可能なのか?栽培に適しているのか?を確認しましょう。必要に応じて、水質などの調査も行い、栽培開始に向けたリスクを事前に把握した上で対処しましょう。
加えて、大規模ビニールハウスを建設する場合は外部環境にも目を払うべきです。周辺地域への深刻な環境負荷が起きないかなどの検討も必要になります。農場から排出されるリスクを最低限にするなど、農地確保段階で周辺調査は専門的な企業へ相談しましょう。
農業参入するまでの流れ④ハウス仕様の決定
計画段階では、栽培エリアのみならず、機器設置エリア、選果エリア、集出荷スペース、そして事務所や制御室、休憩室などを併設することがあります。管理方法、作業動線などを緻密に計画、配置などのプランニングを行う必要があります。それらの建屋は栽培エリアではないため、建築や設置の考え方が大きく異なることがあります。事業計画段階で行政確認のうえで、信頼できる業者と連携して進めることが望ましいです。
農地の確保と調査、測量、行政確認が確認でき次第、土地に沿った仕様でビニールハウスと内部設備を最終確定していきましょう。特に大規模圃場の際は、イニシャルコストだけでの判断ではなく、適切な圃場運営を実現するための労働効率や作業導線、異常気象や故障のフォロー体制、栽培支援などのリスク対策も含めて総合的に判断しましょう。
一方で補助事業の場合、施設仕様の妥当性を重点に捉える必要があります。闇雲に「軒を高くする」「重装備な設備を入れる」などは、収支採算上のこと以外に、選定理由や規模の決定根拠で「過剰設備」と判断されることもあります。導入実績例や必要性を明確にして仕様決定していきましょう。
イノチオアグリは新規就農・農業参入を支援します
イノチオアグリについて
イノチオアグリは施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に携わり、50年以上の知見がございます。50年以上に渡り、培ったノウハウを活かし、農業参入・新規就農を計画段階からご支援しております。お客さまのご要望や条件に基づいて農場を設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。
さらに、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。
ビニールハウス事業
イノチオアグリでは作物や栽培方式、土地環境に沿ったビニールハウスをご提案。10年間に渡る収量や収益性の試算からお客さまの理想を実現するビニールハウスとスマート農業製品などを含めたハウス内部設備、農業経営の開始後までトータルでご提案いたします。