農業に活用できる融資とは?制度と申請方法について解説
多額の設備投資が必要となる農業。新たに農業をはじめようと考える人の多くは、資金をどう準備するかという悩みを抱えています。実際に、新規就農者がもっとも準備に苦労した項目のひとつに「資金」があります。
資金調達方法のひとつとして、融資という選択肢があります。農業分野の融資制度は、無利子や低金利など、一般の融資と比べて利用しやすいものが多くあります。今回のコラムでは、農業に活用できる融資について解説します。
目次
農業の融資とは

農業融資とは、農業を営む個人や法人が経営資金や設備投資資金を調達するための資金貸付制度です。
農業は季節や天候の影響を大きく受けるため、収益が安定しにくいことがあります。そのため、事業の安定化や成長には適切な資金調達が不可欠です。
農業融資には、政府や自治体が支援する低利融資や、農業者向けに特化した金融機関の融資制度など、さまざまな選択肢があります。
農業融資を利用する際のメリットと注意点
農業融資のメリット
農業融資を利用する最大のメリットは、農業経営に必要な資金を確保し、安定した経営を維持できることです。
また、一般的な銀行融資よりも金利が低く設定されている場合が多いため、長期間の返済計画を立てやすいこともポイントのひとつです。
農業融資の注意点
農業融資は資金調達の有力な手段ですが、利用には注意が必要です。無計画に借り入れてしまうと、返済負担が経営を圧迫するリスクがあるため、慎重な判断が求められます。
まず、融資の目的を明確にし、事業計画を立てて最適な融資を選びましょう。返済計画も慎重に立て、収益の不安定さに備えることが重要です。また、融資の条件や必要書類を事前に確認し、補助金との併用も検討しましょう。
これらの準備が農業経営の安定と成長に繋がります。
「制度資金」と「一般融資」の違いとは
融資には、主に「制度資金」と「一般融資」があります。
制度資金とは、国が全額出資しており、国の制度に基づいて運用されています。
そのため、どの機関で利用しても上限金額や利率は同じです。審査基準は一般の融資よりも厳しく、審査に時間がかかるケースが多いです。多くの場合、認定農業者や認定新規就農者であることが条件となります。その代わり、利率は一般の融資よりも低めに設定されています。
一方で一般融資は、金融機関、信販会社、リース会社が独自に提供しているため、上限金額や利率は多様です。認定農業者や認定新規就農者でなくても利用できる場合があります。審査期間は短く、早ければ1カ月程度で結果が出ることもあり、制度資金に比べて審査が通りやすいです。ただし、金利は制度資金よりも高いものが多くあります。
無利子で利用できるものも!農業融資を解説

ここでは、農業分野で利用できる融資を5つご紹介します。
1.青年等就農資金
新規就農者の夢をサポートするために、無利子の青年等就農資金が提供されています。この制度は45歳未満の認定新規就農者を対象としており、就農に必要な機械や施設の購入、運転資金など幅広い用途に利用できます。
一人あたり最大3,700万円まで借り入れ可能で、据置期間は最長5年、返済期間は最長17年と、新規就農者の経営安定を考慮した条件です。このように、青年等就農資金は新たな農業の担い手を支える重要な支援制度です。
これから農業をはじめるという方に、ぜひ検討していただきたい融資です。
青年等就農資金の概要
分類 | 制度資金 |
提供元 | 日本政策金融公庫 |
対象者 | 認定新規就農者 |
最大融資額 | 3,700万円 |
金利 | 無利子 |
返済期間 | 17年以内(うち据置期間5年) |
どんな人が青年等就農資金を利用できるのか、どんな用途に使えるのかなど、詳細はこちらのコラムで解説しています。
関連記事:農業融資を無利子で借りられる!新規就農者は知っておきたい青年等就農資金とは?
2.スーパーL資金
スーパーL資金は、すでに農業を開始している人に向けた、農業経営の規模拡大や効率化を支援する代表的な融資制度です。この制度では、認定農業者を対象に、経営改善に必要な長期資金を低金利で提供します。
また、すでにご紹介した青年等就農資金では使用用途の対象外となっている「農地の取得」にも活用できる点もポイントです。
個人では最大3億円、法人では最大10億円まで借り入れ可能で、返済期限も最長25年と長期にわたります。
スーパーL資金の概要
分類 | 制度資金 |
提供元 | 日本政策金融公庫 |
対象者 | 認定新規就農者 |
最大融資額 | 個人:3億円、法人:10億円 |
金利 | 一般:1.25%~1.90%、特例:0%※ |
返済期間 | 最長25年(うち据置期間10年) |
※特例とは、公益財団法人農林水産長期金融協会より、貸付実行日から5年後の応当日の前日まで利子助成を受けた場合を指します。また利率は変更になる場合があります。
スーパーL資金を利用するための要件や使い道など、詳しくはこちらのコラムで解説しています。
関連記事:スーパーL資金(農業経営基盤強化資金)とは?審査ポイントを徹底解説!
3.農業近代化資金
農業者の経営改善や施設整備を支援するための重要な制度として、農業近代化資金があります。
この制度は、都道府県や農協などの民間金融機関を通じて融資が行われます。手続きがより身近な窓口でできるのが特徴のひとつです。
融資の限度額は、個人で最大2億円、法人で最大20億円までで、金利は実質1%以下に抑えられており、返済期間は最長15年です。
農業近代化資金の概要
分類 | 制度資金 |
提供元 | JAバンク |
対象者 | 認認定農業者、認定新規就農者、ほか一定の要件を満たす農業者 |
最大融資額 | 個人:1,800万円、法人:2億円 |
金利 | 市町による補助の有無により異なります。 詳しくは提供元にお問い合わせください。 |
返済期間 | 15年以内(うち据置期間3年〜7年) |
4.農業改良資金
農業改良資金は、農業者が新しい技術や経営方法を導入する際に無利子で融資を受けられる制度であり、経営革新を強力に支援しています。
この制度で特に注目したいのは、融資期間全体を通じて無利子であるという画期的な条件です。農業者が新しい取り組みに挑戦する際の資金面での障壁を大幅に下げ、革新的な農業経営への転換を促進します。
支援の例として、有機農業への転換、新品種の導入、6次産業化の取り組みなどが含まれます。
個人は最大5,000万円、法人は最大1億5,000万円までの融資を受けることが可能です。さらに、据置期間は最長5年と長めに設定されており、新規事業の立ち上げ期間における返済負担を軽減するよう配慮されています。
農業改良資金の概要
分類 | 制度資金 |
提供元 | 日本政策金融公庫 |
対象者 | 一定の要件を満たす農業者 |
最大融資額 | 個人:5,000万円、法人:1億5,000万円 |
金利 | 無利子 |
返済期間 | 12年以内(うち据置期間3年) |
5.アグリマイティー資金
農業者の多様な資金ニーズに対応するために、アグリマイティー資金という制度が設けられています。
この制度は、農地の購入や施設の整備、運転資金など、幅広い用途に利用できるのが特徴です。
融資限度額は事業費の80%以内で、返済期間は最長15年と設定されており、担保や保証人の設定も柔軟に対応できます。
アグリマイティー資金の概要
分類 | 一般融資 |
提供元 | JAバンク |
対象者 | JA組合員、農業者 |
最大融資額 | 窓口へ相談 |
金利 | 無利窓口へ要相談(変動金利性が選択可能) |
返済期間 | 原則借入期間10年以内(最長20年)うち据置期間3年以内 |
支援を受けやすくなる?認定農業者とは
認定農業者制度とは、市区町村の農業経営目標に向けて、自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする計画を市区町村が認定した農業者に対して、支援措置を講じる制度です。すでにご紹介している通り、数々の融資や資金の対象者要件のひとつとなっています。つまり、認定農業者を取得することで、利用できる資金の幅が広がるのです。
認定農業者になるための条件や申請方法は、こちらのコラムで詳しく解説しています。
関連記事:認定農業者制度とは?企業の農業参入・新規就農時に活用する方法を徹底解説
農業融資を受けるための条件・申請方法

申請に必要な書類
農業融資を申請する際は、経営状況を証明できる書類の提出が必要になります。例えば、次のような書類を求められることがあります。
・決算書
・確定申告書
・事業計画書
・資金計画書
・認定農業者証明者
・農地の権利に関する書類
これらの書類の準備には時間がかかるため、各書類を用意する期間も考慮し、融資利用に向けて計画的に準備を行いましょう。
申請手続き
申請手順としては、まず融資を提供している機関へ相談し、段階的に進めていくのが一般的です。
多くの場合、次のようなステップで申請を行います。
1.融資の事前相談
2.必要書類の提出
3.金融機関の融資審査
4.審査通過後、融資の実行
農業の融資はどこで受けられる?
農業融資はどこに相談すれば利用できるのでしょうか。融資を利用したいときの相談先や、融資の提供元についてご紹介します。
日本政策金融公庫
もっとも一般的なのが、日本政策金融公庫から融資を受けるケースです。低金利、無担保、無保証人で利用できる融資がそろっており、就農したばかりの方も相談しやすいのが特徴です。
JAバンク
JAバンクは、農業者に寄り添い、地域の農業事情に精通した独自の融資サービスを提供している機関です。年間約1,000億円規模の農業融資実績があり、運転資金から設備投資まで、幅広い資金ニーズに対応しています。
銀行や信用金庫
一般の金融機関も農業融資に積極的に取り組み、新たな資金調達先として注目されています。農業特有の評価手法を導入し、専門チームを設置する地方銀行が増加しています。
補助金、助成金
補助金や助成金は、返済不要の支援制度です。国や地方自治体が提供する各種支援制度は、農業の持続的発展や地域活性化を目的としています。
中には融資と組み合わせて利用できるものもあります。合わせて活用することで、設備投資や技術導入の際の重要な資金源となります。
農業に活用できるさまざまな補助金については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
関連記事:農業で使える補助金一覧!新規就農・設備導入・販路拡大まで幅広く紹介
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