近年、地域とつながる新たな販路として注目を集めているのが「直売所」です。消費者との距離が近く、生産者の想いが伝わるこの販売スタイルは、収益性だけでなくやりがいも広げてくれます。

今回のコラムでは、直売所の仕組みや消費者から見た魅力、生産者にとってのメリット・デメリットなど幅広くご紹介します。

目次

  1. 直売所とは?
  2. 直売所の種類と活用法
  3. どうして人気?消費者から見た直売所の魅力
  4. 直売所で野菜を販売する方法とは
  5. 直売所で野菜を販売するメリット
  6. 直売所で野菜を販売するデメリット
  7. 直売所での販売課題を乗り越えるには?
  8. 直売所で作物を販売しているお客さまの事例をご紹介!
  9. イノチオアグリは農業経営の安定をサポートします

直売所とは?

農産物直売所とは、生産者が卸売業者を通さずに、自分たちで育てた野菜や果物などを直接販売できる場所のことです。地元の新鮮な食材を手頃な価格で手に入れられるとあって、人気を集めています。

最近では、「あの農家さんの野菜が欲しいから行く」といったように、特定の生産者を目当てに訪れる人も増えてきています。

直売所の種類と活用法

農産物の直売所は、大きく2つのタイプに分けられます。

個人直売所

個人の生産者が自ら運営する直売所で、圃場の前や自宅の敷地など身近な場所を活用して開設されます。無人販売形式を採用することも多く、手軽に農産物を地域の消費者へ提供できます。

グループや企業、組合が運営する直売所

複数の生産者や団体が協力して運営する形態で、以下のような種類があります。

地産地消型

地元農家がグループを組み、地元の農産物を地域住民に提供する形式。

組織運営型

JAなどの組織が運営する直売所。

マルシェ型

都市部などで開催される市場形式で、生産地と販売場所が離れているのが特徴。

インショップ型

スーパーなどの一角で個人生産者の農産物を販売。

観光地型

道の駅やサービスエリアなどに設置され、農産物だけでなく加工品や土産品も扱う。

それぞれの直売所には特徴があり、自分の農業スタイルや地域のニーズに合った形を選ぶことで、より多くの人に自分の野菜を届けることができます。

消費者の声を直接聞けるのも、直売所ならではのやりがいです。

どうして人気?消費者から見た直売所の魅力

日本政策金融公庫の調査によると、農産物直売所の魅力として最も多くの消費者が挙げているのは「鮮度の良さ」です。次いで、「価格の安さ」や「地元産の食材が豊富であること」も高く評価されています。

これらの魅力は、消費者のニーズを直接反映していると捉えることができます。
そのため、直売所への出品を検討する際には、鮮度の維持、価格設定、出品場所の選定などを優先的に考慮することが重要です。

参考:日本政策金融公庫「農産物直売所に関する消費者意識調査結果 - 平成24年3月 -」

直売所で野菜を販売する方法とは

直売所に野菜を出品するには、まず運営者との契約が必要です。JAの組合員であれば、JAの職員に相談して、直売所とのやり取りをサポートしてもらうのが安心です。

直売所での販売には特別な資格は必要ありませんが、運営側としては「信頼できる農家さんにお願いしたい」という思いがあります。そのため、JAや知り合いの農家から紹介してもらうのが、話が早くスムーズに進みやすい方法です。

組合員でない場合は、自治体や道の駅などが運営するホームページをチェックしてみましょう。「出荷者募集」などの案内が掲載されていることがあるので、そこから問い合わせてみるのがスタートになります。

運営者との連絡が取れて面談まで進んだら、野菜のサンプルを持参して品質を見てもらいましょう。契約が成立すれば、必要な手続きを済ませて、早ければ2〜3日後には出荷を始めることができます。

直売所で野菜を販売するメリット

ここからは、直売所で野菜を販売するメリットとデメリットについてご紹介します。

販売機会を増やせる

直売所での販売は、多くの生産者にとって新たな販路を拡げるチャンスになります。販売の場が増えることで、売上アップにもつながります。

また、直売所への出荷は少量からでも始めることができ、ほとんどの場合は厳しい規制などもありません。初心者でも気軽にチャレンジしやすく、スタートしやすい販売方法といえるでしょう。

お客さんと直接交流できる

お客さんと直接ふれ合える距離の近さも、直売所の魅力のひとつです。収穫した作物を業者に卸すだけでなく、自分の手で棚に並べられる直売所もあり、来店したお客さんのリアルな声を聞くことができます。

さらに、直売所では生産者の個性が光ります。特定の生産者の野菜を目当てに訪れるリピーターも多く、自分の農園のファンを増やすチャンスにもなります。

農家や組合とのコネクションができる

直売所への出荷は、単なる販売の場にとどまらず、人とのつながりを広げる貴重な機会にもなります。出荷を通じて、近隣の農家や運営組合との関係が深まり、情報交換や協力のきっかけが生まれることも少なくありません。

たとえば「うちの直売所にも出してみない?」といった声がかかることもあり、思いがけない販路の拡大につながることもあります。こうしたネットワークは、地域内での認知度向上や、農家同士の連携による新しい販売スタイルの創出にもつながります。

また、直売所ではイベントやキャンペーンが行われることもあり、そうした場に参加することで、さらに多くの人とつながるチャンスが拡がります。出荷をきっかけに、地域の農業コミュニティの一員として活動の幅を広げていくことも可能です。

直売所で野菜を販売するデメリット

季節野菜はライバルが多い

季節野菜は出荷が集中しやすく、同じ種類の野菜が棚にあふれてしまうこともあります。ライバルが多いと、せっかくの野菜が目立たず売れ残ることもあります。
そこで、種まきや定植の時期を少しずらすなど、出荷タイミングを工夫することが大切です。

ビニールハウスを活用した周年栽培を行えば、通常は流通しない時期に野菜を出荷することも可能になります。たとえば、冬にトマトを出荷したり、春先に夏野菜を先取りして販売したりすることで、他の農家との差別化が図れ、価格面でも有利になることがあります。

こうした取り組みは、安定した収益につながるだけでなく、直売所での存在感を高めることにもつながります。

関連記事:ビニールハウスのメリット・デメリット

売り上げが天気に左右される

多くの直売所は郊外に立地しているため、天候や気温の影響を受けやすいという特徴があります。たとえば、雨の日や真夏・真冬のように気温が極端な日は、来店客が少なくなる傾向があります。たとえ野菜の品質が良くても、天候によって売上が左右されることは珍しくありません。

こうした日々の売上の変動は、直売所販売の特性としてあらかじめ理解しておくことが大切です。安定した収益を目指すには、天候に左右されにくい販売チャネルとの併用や、売れ残りを見越した出荷量の調整など、柔軟な対応が求められます。

出荷・販売にコストがかかる

直売所での販売では多くの場合、農産物の搬入や陳列、売れ残った商品の回収などを生産者自身が行う必要があります。パッケージングや運搬といった作業も含めると、栽培以外の負担が増える点に注意が必要です。

販売が安定していれば、こうした手間やコストも大きな負担にはなりませんが、売れ行きが不安定な場合は、時間的・経済的な負担が重く感じられることもあります。特に売れ残った商品は再出荷が難しく、そのまま廃棄となる可能性もあるため、ロスのリスクも考慮する必要があります。

直売所での販売課題を乗り越えるには?

直売所での販売は、消費者との距離が近く魅力的な反面、競合の多さや天候による客足の変動、出荷にかかる手間やコストなど、さまざまな課題も伴います。こうした課題に対処するためにも、安定した生産体制と効率的な経営戦略が欠かせません。

特に直売所では、「見た目の良さ」や「鮮度」が売上に直結するため、品質の安定は重要なポイントです。そこで注目されるのが、ビニールハウスによる栽培です。ハウス栽培は、外気温や降雨などの自然条件に左右されにくく、計画的な収穫や品質の向上、収量の安定につながります。

イノチオアグリでは、お客さまの理想の農業について丁寧にヒアリングし、最適なビニールハウスとハウス内設備をご提案します。
ほかにも、高品質な作物の栽培に重要な農薬・肥料のご提案や栽培技術のアドバイザーサポートによって、直売所への出荷に向けて高品質な野菜を安定的に出荷する体制づくりをご支援します。

直売所で作物を販売しているお客さまの事例をご紹介!

イノチオアグリで就農を実現され、直売所で農作物を販売しているお客さまの事例をご紹介します。

直売所販売を見据えた作物選び | ソルファーム 小栁 新太郎さん

「イチゴは他の作物に比べて、お客さまと直接つながりやすい作物なんです」と語るのは、ソルファームの小柳さん。圃場や直売所での対面販売を通じて、お客さまの喜ぶ顔を見たいという思いから、イチゴ栽培を始めました。

新規就農でゼロからのスタートだった小柳さんにとって、栽培技術への不安は障壁のひとつでした。しかし、イノチオの営農サポートがその不安を支えてくれたといいます。

「イノチオさんの営農サポートを活用することで、わからないことやこちらからの質問にも全て返していただけるので、安心して農業に取り組めています」と話す小柳さん。
規模拡大も視野に入れ、地元のイチゴを盛り上げるために日々栽培に取り組まれています。

小柳さんの事例は、以下リンクからご覧いただけます。

関連事例:丸型ハウスD-1でお客さまとつながるイチゴ栽培

「街の行きつけ農園」を目指して | ネイバーズファーム 梅村桂さん

「新鮮でおいしい野菜の一番魅力的な瞬間をリアルタイムで届けたい!」という思いから、東京都日野市でトマト栽培に取り組む、ネイバーズファームの梅村さん。東京の街中で、新鮮で採れたての野菜をビニールハウス側の自販機、地元の直売所、オンラインで販売しています。

「消費者として何が欲しいか?」という視点で、品質にこだわった栽培を行っている梅村さん。お客さまに新鮮で美味しいトマトを直接届けるために、スマート農業製品を導入し、数値データをもとにした栽培に取り組まれています。

梅村さんの事例は、以下リンクからご覧いただけます。

関連事例:数字の記録がおいしいトマトにつながる

イノチオアグリは農業経営の安定をサポートします

直売所での販売は収益の安定化に直結します。販路を生かすためには、安定した農業生産体制が不可欠です。

イノチオアグリでは、ビニールハウスや栽培設備などのハード面に加え、農薬・肥料などの資材提供、営農支援などソフト面まで幅広く対応しています。どのような農業をはじめたいかを丁寧にヒアリングし、その実現に向けてご提案いたします。

「直売所で自分の野菜を売りたい」「農業を始めてみたい」そんな想いを持つ方は、ぜひ一度、イノチオアグリへご相談ください。