「ビニールハウス」とひとことで表現しても、パイプや鉄骨と言った骨組みの素材が違うもの、丸型屋根や三角屋根からオランダ式と呼ばれる高軒高(こうのきだか)のフェンロー型まで、栽培する作物や環境によって多岐に渡ります。

今回のコラムでは「ビニールハウスの基礎知識」と「ビニールハウスのメリット・デメリット」のご紹介をはじめ、イノチオアグリが展開する農業ハウス事業の紹介までビニールハウスについて幅広くご紹介します。


ビニールハウスの基礎知識

ビニールハウスを選ぶ際に考えることとして「栽培する生産物や栽培方法に適した仕様となっているのか?」「建設予定地域の環境に適しているのか?」「準備できる予算に見合っているのか?」など、重要となるポイントは条件によって変わってきます。誰しもが理想の栽培環境を目指していますが、新規就農の場合は以下の5点を押さえましょう。

【ビニールハウス選びの5大ポイント】
➀低コスト ➁耐久性 ③保温性 ④通気性 ⑤採光性

雨風を防ぐフィルムも多種多様にあり、目的や用途によって異なります。
フィルムは大きく分類すると、数年程度で張り替える軟質系と、長期展張を目的とする硬質系に分けられます。光線の透過性もさまざまで、波長や透明性などの選択肢もあります。

しかし、すべての条件に高機能を追求すると予算超過をしてしまう可能性があるため、信頼できるビニールハウスメーカーの担当者と相談をしながら検討を重ねていくことをおすすめします。

関連事業:ビニールハウス事業

ビニールハウスのメリット・デメリット

同じ作物でも露地で育てられている場合と、ビニールハウスで育てられている場合があります。

ビニールハウスは、外部環境から遮断された環境により、理想の栽培環境を実現できるなどのメリットと、維持をするためにコストがかかるなどのデメリットの両面があります。

こちらでは、ビニールハウスのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。

メリット
  1. 天候の影響を少なくできる
  2. 病害虫のリスクを軽減できる
  3. 出荷時期を調整できる
  4. スマート農業で栽培を効率化できる
デメリット
  1. 導入・維持にコストがかかる
  2. 大型化に伴う分業制によるリスク
  3. 自然災害による倒壊リスク
  4. 連作障害が起こりやすい

メリット

1:天候の影響を少なくできる
ビニールハウスを活用した栽培では、栽培環境を外部気象環境による影響を受けないことを目的にしています。風雨などの天候による影響を排除し、気温変動を小さくすることができます。そのため、年間を通して作物を栽培することが可能になります。

2:病害虫のリスクを軽減できる
外部環境と遮断されている構造のため、病害虫の侵入を防ぐ機能も持ち合わせているので、栽培上のリスクを軽減できます。

侵入を防ぐ下げるためにビニールハウスの出入り口を2重構造にしたり、防虫ネットで隙間を埋めたりと、内部環境と外部環境を遮断する工夫が施されています。

3:出荷時期を調整できる
ビニールハウスの内部環境を調整できれば、農作物の生産時期を調整することができます。市場の状況を見ながら価格の高い時期での出荷が可能となれば収益の向上と持続的な経営を実現できます。

出荷時期を遅らせる栽培方法を抑制栽培、早める方法を促成栽培といいます。市場全体の供給量が少ない時期に出荷すれば、高値で売れることが期待できます。また、栽培環境も土耕栽培に比べて優れているので面積当たりの収量増加も期待でき、個人出荷のお客さまであれば、独自のブランド価値の獲得も狙えます。

4:スマート農業で栽培を効率化できる
ビニールハウスの遮断機能を高めると、内部の環境管理が容易になります。冬場の加温制御、天窓・谷部換気による温度制御ハウス内の換気、肥料・日照量・二酸化炭素濃度の制御が可能です。

ビニールハウスを活用した栽培であれば、経営規模や栽培作物によってさまざまな制御設備を導入できます。さらに、コンピュータとセンサによる環境制御を活用することで、外部環境とビニールハウス内の温度・湿度・二酸化炭素量などを測定して自動で換気や養液給液などを行うことができます。

デメリット

1:導入・維持にコストがかかる
ビニールハウスを長期利用するため、強風に耐えられる強度の高い柱などの部材を組み合わせて建設します。そのため、建設作業やメンテナンスを業者へ頼むことになると、導入と維持にコストが発生します。機械化による効率化も期待はできますが、導入コストと電気・燃料などの維持コストも不可欠です。

2:大型化に伴う分業制によるリスク
ビニールハウスの増設などで大型化すると、手間と時間のかかる育苗を外注業者へ依頼する生産者が増えています。100%健康な苗を安定的に仕入れて定植することができれば生産量が確保できますが、外注先の倒産や契約切れなどにより、生産ができなくなるリスクが発生する恐れがあるので、外注先の選定を大切になってきます。

3:自然災害による倒壊リスク
ビニールハウスのメンテナンスを怠ってしまうと、ビニールハウス隙間ができ、台風や強風などの風が内部に入り込み被覆材(ビニールなど)がはためく現象が起きます。

また冬場の雪は、ビニールの張りが弱い場所(雨が降った後に水がたまる場所)などにたまっていきます。このようなことはビニールハウスが倒壊してしまうリスクがあります。そうなってしまうと、再建費用だけでなく、生産物からの収益もなくなってしまいます。

4:連作障害が起こりやすい
土耕で行う場合、同じ圃場で同じ作物を育て続けると土壌内の栄養バランスや生物の多様性が損なわれ、連作障害を起こしやすくなります。また、病害虫を発生させてしまうと駆除が難しく、蔓延させてしまうこともあります。

栽培環境を健全に保つためにも日頃の栽培管理が大切です。異変に気づいた際には、土壌や病害虫に詳しい専門機関へ相談してみることも重要です。


関連事業:土壌分析・病害虫診断事業

<プロが解説> ビニールハウス

イノチオアグリでは、お客さまが想い描く理想の農業を実現するため、ビニールハウスに携わって50年以上のノウハウと、農業を総合的に支えるグループ事業でトータルにサポートします。コスト、栽培作物、栽培環境を踏まえて、おすすめのビニールハウスと内部の付帯設備をご提案します。

丸型ハウスD-1
自社工場でスチール角パイプを加工し、独自のアーチ形状を実現。安価でありながらも、パイプハウスと比較し、高い強度と耐久性を兼ね備えています。温度・湿度面に優れたハウス内環境は、幅広い作物に適しています。長期間安心して使えるビニールハウスです。

屋根型ハウス
栽培品種に合わせて最適な設計や素材を選べるビニールハウスです。間口・柱高を自由に選択できるため、栽培方式にあった理想の空間を実現可能。また、幅広い設計強度にも対応でき、多種多様なお客さまのニーズにお応えします。

SANTAROOF
強度の高い高軒高設計(柱高最大6.0m)により、広い栽培空間で長期多段取りが可能。また、屋根部材を小型化することで採光性を高め、光合成を促進します。高収量・高収益を実現します。

ドリームフィールド
50 年以上施設園芸に携わってきたノウハウを活かし、設計構造を見直し標準化することで、低コストを実現しました。また、採光率66%、耐風速50m/s、2倍の換気容量(自社調査比)と、機能面にもこだわったビニールハウスです。

最適なビニールハウスをご提案

イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトとし、お客さまを多岐に渡り支援することを掲げています。ビニールハウスに50年以上携わり、培ったノウハウや知見を活かし、最適なビニールハウスをご提案しています。

お客さまのご要望や条件に基づいてビニールハウスを設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、融資や補助金・助成金、そして事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。

更に、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。