連作障害はなぜ起こる?その原因と対策方法について解説
毎年の収量が安定している状態は、そのまま収入の安定に繋がります。
しかし、同じ土壌で同じ作物を栽培し続けていると「連作障害」が起きてしまう場合があります。連作障害が発生してしまうと、作物の品質だけでなく土壌の健康を大きく損なう可能性があります。
今回のコラムでは、連作障害が起こる原因とその対策方法について、作物ごとに解説していきます。
※ここでの連絡障害への対策はあくまでも参考ですので、お悩みの方は土壌分析の専門家などへご相談ください。
連作障害とは

毎年同じ場所で同じ野菜や同じ科の野菜を育てることを「連作」と呼びます。連作を続けると、その野菜に感染する病原菌や害虫が増えたり、土の養分が偏ったりして、野菜の育ちが悪くなります。この現象を「連作障害」といいます。
連作障害が起きやすい作物一覧
とくに、ナス科やウリ科、マメ科、アブラナ科にあたる次の作物は連作障害を起こすため、注意が必要です。
- ナス科:トマト、ナス、ピーマン
- ウリ科:スイカ、キュウリ、メロン
- アブラナ科:キャベツ、白菜、ブロッコリー
- マメ科:枝豆、インゲン
代表的な連作障害の種類
連作障害として発生しやすい病気は下記の通りです。
つる割病(つるわりびょう)
キュウリやメロンなどのウリ科作物に発生する病気です。カビ(糸状菌)の一種が原因で、最初は葉がしおれ、やがて枯れて落ち、症状が株全体に広がって最終的には枯死に至ります。
萎黄病(いおうびょう)
キャベツなどのアブラナ科作物に見られる病気です。カビ(糸状菌)の一種が原因で、下葉から黄色く変色してしおれ、やがて枯れてしまいます。
線虫害(せんちゅうがい)
さまざまな作物に被害を及ぼします。土壌中に生息する線虫が植物の根に寄生し、養分の吸収を妨げることで生育不良を引き起こします。
青枯病(あおがれびょう)
ナス、トマト、ピーマンなどに発生する細菌性の病気です。葉が緑色のまま急にしおれて枯れるのが特徴で、特に夏(7~9月)に多く見られます。
半身萎ちょう病(はんしんいちょうびょう)
ナス科の作物に発生しやすい病気で、カビ(糸状菌)の一種が原因です。株の片側の葉が巻き上がってしおれ、やがて枯れていきます。気温が低めの初夏から秋にかけて発生しやすいです。
根こぶ病(ねこぶびょう)
アブラナ科作物に発生する病気で、カビ(糸状菌)の一種が原因です。根にこぶ状のふくらみができるのが特徴で、収穫後も地中に休眠胞子が残るため、継続的な管理が必要です。
連作障害の原因とは
連作障害を避けるためには、土壌の化学性、生物性、物理性をそれぞれ良好な状態に保つことが必要です。これらが悪化してしまうと、土壌の健康を損なうとともに連作障害を引き起こす可能性があります。
土壌化学性の悪化
「肥料の与えすぎ」などにより土壌の化学性は悪化します。過剰な施肥で塩類がたまりEC値が必要以上に上がってしまうほか、カルシウムやマグネシウムなどの養分が不足し、pHが下がることで微生物の働きも悪くなります。これを防ぐために定期的ににpHとECをチェックし、pHを6.0〜6.5に保つようにしましょう。必要に応じて、苦土石灰を施すと効果的です。
土壌生物性の悪化
土壌の生物性の悪化によって善玉菌が減り、逆に病原菌や害虫が増えることで、根の周りの微生物の多様性が低下します。対策としては、ヘアリーベッチやクローバーなどの緑肥作物※を土壌に取り入れることに加え、完熟堆肥を施して善玉菌を回復させる方法が効果的です。
※緑肥とは、土壌改良などを目的として、成長した植物をそのまますき込むことです。緑肥作物は、そのために栽培される植物を指します。
土壌物理性の悪化
土壌の物理性の悪化も連作障害の要因となります。
農業機械(トラクター等)で耕うん作業を行った際、作物を栽培する表層の土である作土層の直下に、硬い「耕盤層」ができます。これは農業機械の重みなどによってできるものです。
この耕盤層ができると排水が悪くなり、土が固くなって根の張りが悪くなります。そのため定期的にサブソイラーで耕盤層を粉砕し、約50cmの深さまで貫通させて排水性を改善する必要があります。
自家中毒(アレロパシー)が影響することも
自家中毒(アレロパシー)が影響を及ぼすことも考えられます。トマトやナス、キュウリなどは、自分を守るために、ほかの植物や虫を抑制・忌避する作用を持つ物質を分泌します。こうした物質が土壌にたまると、同じ作物が育ちにくくなります。これを防ぐために、連作を避ける必要があります。また、ネギやニラなど病害に強い作物を間作に取り入れることも効果的です。
連作障害の基本の対策とは
基本的な対策としては、輪作や土壌改良剤の投入、土壌のリフレッシュが有効です。
輪作
連作障害を防ぐためには、そもそも連作をしないというのが重要です。
例えばナス科を栽培したら次作はネギ類、その後は大豆など、異なる科の作物を組み合わせていく方法が有効です。これを「輪作」といいます。
輪作を行うにあたって、「輪作年限」を知っておきましょう。輪作年限とは「同じ野菜を同じ場所でつくるために何年間空けるべきか」という目安です。連作を避けて野菜を育てたい場合は、4~5年の栽培計画を立てましょう。
以下の表は、いくつかの野菜の輪作年限です。

土壌改良剤の投入
輪作は連作障害対策として有効ですが、土壌の構造や有機物の減少といった根本的な原因を解消するには、有機物などの土壌改良剤の投入がおすすめです。
牛ふん・鶏ふんの堆肥や緑肥作物を取り入れたり、土壌の状態に合った土壌改良資材を活用することで、土壌部生物相が豊かになり、病害菌の蔓延を防ぐことに繋がります。
土壌のリフレッシュ
連作障害を起こさない・繰り返さないために、土壌のリフレッシュも効果を発揮します。太陽熱消毒(夏場など日差しの強いときに土をビニールマルチで多い、高温で病害菌を死滅させる方法)や、蒸気消毒といった方法があります。
作物別の連作障害対策
続いて、連作障害のリスクがある各作物に焦点を当て、よくある障害の内容と対策について解説していきます。
ナス科作物(トマト・ナス・ピーマン)
ナス科の作物(トマト・ナス・ピーマン)では、青枯病や半身萎ちょう病などの病害が発生しやすくなります。このリスクを減らすためには、同じナス科を続けて栽培せず、数年間は間隔を空けることが重要です。
また、水稲や麦類などを間作として取り入れ、土壌中の病原菌をリセットする方法も効果的です。さらに、適量の完熟堆肥や苦土石灰などの資材を施用し、必要に応じて太陽熱による土壌消毒を行うことで、予防効果を高めることができます。
ウリ科作物(スイカ・キュウリ・メロン)
ウリ科作物(スイカ・キュウリ・メロン)では、つる割病や根こぶ病の発生が考えられます。
対策としては、線虫を抑える効果のクロタラリア(緑肥作物)を栽培して土にすき込むことや、排水性を高めるために畝を20cm以上の高さに設計する方法があります。
アブラナ科作物(キャベツ・白菜・ブロッコリー)
アブラナ科作物(キャベツ・白菜・ブロッコリー)では、萎黄病や根こぶ病の発生に注意が必要です。これらの病害を防ぐためには、根こぶ病に強い品種を選び、土壌のpHを6.5以上に保つよう、適切な量の苦土石灰を施用することが重要です。
マメ科作物(枝豆・インゲン)
マメ科作物(枝豆・インゲン)では、立枯病や線虫による被害が懸念されます。これらのリスクを軽減するためには、栽培前に完熟堆肥を施用し、排水性の良い圃場環境を整えることが効果的です。
定期的な土壌診断でリスク管理を

土壌の健康状態を把握するために、定期的に土壌診断を行いましょう。露地栽培では3~4年に1回、ビニールハウス栽培では毎年の実施が目安です。
pHやEC、主要な土壌成分を測定し、この結果をもとに施肥設計を行うことで土づくりを可視化できます。これにより、長期的に圃場の健康に保つことができます。
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