キュウリ栽培の半促成栽培・抑制栽培のポイント解説!
ビニールハウス(園芸用ハウス)を活用したキュウリ栽培は、正しい栽培管理をすることで安定して高収量を目指せる品目です。本コラムでは、日照条件の悪い北部九州にて半促成栽培・抑制栽培の年2作の作型にて環境制御技術を活用している産地の現状や天候に左右されない安定した収量確保のポイントについて紹介しています。
目次
キュウリ栽培はビニールハウスでの施設栽培がおすすめ!

イノチオアグリでは、新規就農や農業参入をしてキュウリ栽培を検討されている方には、露地栽培よりも、ビニールハウス(園芸用ハウス)での施設栽培をおすすめしています。キュウリをビニールハウスで栽培する最大の利点は、天候に左右されずに安定した出荷が可能になる点です。半促成栽培や抑制栽培をうまく活用することで、収穫のタイミングを早めたり遅らせたりすることができます。
ビニールハウスを建設する場合、ハウス本体だけでなく、内部設備などのコストが掛かってきますが、外部環境の風や雨の影響を受けず、温度や湿度を適切に管理できるため、品質のよいキュウリを育てやすくなります。見た目も良く、出荷基準を満たしやすいため、販売価格にも期待が持てます。さらに、露地栽培と比べて作業効率が良く、限られた面積でも収益を上げやすいのも特徴です。
注意すべき点として、キュウリは連作障害を起こしやすい作物であり、同じ場所で栽培を続けると土壌の状態が悪化するリスクがあるため、土壌消毒などの対策が必要となってきます。連作障害が心配な方は、培地を使用した栽培方法もあります。ただし初期投資がかかりますので経営規模に応じた計画的な収支計画に基づいた判断が必要です。
また、ハウスの導入には費用対効果が大事となります。経営規模、販売計画に基づいて作型や導入するハウスの形状や付帯設備を検討しましょう。もし、既設ハウスでの設備導入を検討されている方は、自動灌水、環境モニタリング、環境制御の順番での導入をおすすめしております。
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ビニールハウスでのキュウリ栽培~定植から収穫まで~

キュウリは高温・多湿を好む野菜で、ビニールハウス(園芸用ハウス)を活用することで安定した収量と品質が期待できます。定植は地温が15℃以上に達する春先が一般的ですが、暖房を利用する周年栽培の場合は初秋ごろに定植を行う場合もあります。苗は本葉4〜5枚の健全なものを選び、根鉢を崩さずに丁寧に植え付けましょう。
定植後は活着を促すため、適度な灌水と温度・湿度管理が重要です。昼間は25〜30℃、夜間は14〜17℃を目安にし、過湿を避けながら根張りを促進します。誘引は主枝を支柱に沿わせ、側枝は定期的に摘除して風通しを確保。これにより病害虫の発生を抑え、健全な生育が可能になります。
また、ビニールハウス内では湿度が高くなりやすいため、こまめな換気と植物の観察が病害虫予防の鍵です。特に褐斑病やべと病には注意が必要です。収穫は時期にもよりますが開花後約7〜14日が目安で、長さ20cm前後の果実を朝の涼しい時間帯に収穫すると鮮度が保てます。毎日チェックし、取り遅れを防ぐことで品質と収量が向上します。自動灌水設備や環境制御技術を活かし、初心者でも安定したキュウリ栽培が可能です。新規就農を目指す方にはこれらが栽培のモノサシとなります。
キュウリの抑制栽培について
抑制栽培は夏に定植し、秋~初冬に収穫する栽培方法です。高温期に苗を育てるため、遮光や灌水管理がポイントとなってきます。近年、高単価を狙って7月上旬に定植する作型が増えていますが、高温・高夜温による樹勢低下で高温障害による品質低下や秋に弱ったキュウリに褐斑病などの重大病害が多発し、10月に植え替えするケースもでてきています。遮熱剤や外気導入やダクトを使用して夜間も常時送風などハウス内にこもった熱を逃がす工夫や土壌への酸素供給や先行した殺菌剤の予防散布などが重要となっています。早期定植してキュウリが無理するよりも健苗を高温の落ち着く8月中旬など適期に定植して安定して6ヵ月作りきる作型を検討する事も長い目でみると重要なポイントとなります。
キュウリの半促成栽培について
半促成栽培は冬に定植し、初夏まで収穫する栽培方法のため、暖房機やヒートポンプなどの加温設備が必要になります。低温期には、保温と光の確保(カーテンの調整)がポイントとなります。環境制御技術によりハウス内環境をキュウリの好む状態に整えやすい時期ですが重油や灯油など高騰中の経費の投資が大きい作型となりますので、土壌病害や湿度由来の病気の感染など失敗がゆるされない作型となります。こちらも安定した栽培を長期的にし続ける事が大事となります。どちらの作型も6ヵ月間、安定した樹勢を維持するために定植後の親づるを20~30日間でどれだけ強く仕上げられるかの初期の水管理や温湿度管理がポイントとなります。
収量確保のために欠かせない病害虫対策

ビニールハウス(園芸用ハウス)でのキュウリ栽培にて安定した生産を実施するには病害虫への対策が不可欠です。特に注意すべき病害虫として地下部では「ネコブセンチュウ」、地上部では糸状菌が引き起こす「褐斑病」「べと病」「うどんこ病」「べと病」「つる割れ病」、害虫の「コナジラミ」や「スリップス」が媒介する「退緑黄化病」や「黄化壊疽病」などとなります。
病害虫対策の基本は、土壌消毒と殺菌剤の予防や換気による湿度管理と風通しの良い樹形づくりとなります。過湿状態は病気の温床となるため、こまめな換気と葉の整理が重要となります。また、毎日の植物の観察は病害虫の初期発見にも繋がっており、被害の拡大を防げます。
農薬は必要に応じて使用しますが、ローテーション散布や登録農薬の確認を徹底し、耐性の発生を防ぎましょう。天敵昆虫の導入や黄色粘着シートなど、物理的防除も効果的です。病害虫対策は、品質と収量を守るための重要な管理作業です。日々の観察と適切な早期対応が求められます。
栽培の不安は、栽培のプロに相談しよう!
おすすめしたいイノチオアグリの営農コンサルティング
新規就農をされた方にとって、一作目は初めての経験ばかりになるでしょう。研修先で学んだとはいえ、教えてくれる方が常に側にいる環境と一人で栽培をする環境とでは、不安に思われることも多くあると思います。そこでおすすめしたいのが、イノチオアグリの営農コンサルティングです。
営農コンサルティングのアドバイザーサポートでは、経験豊富な専門スタッフが、お客さまの栽培をサポートします。ハウス内の環境管理、作物の栽培管理、作業の進捗と計画を1週間単位でチェックします。集めたデータに基づき、状況に応じた適切な栽培管理の方針をお伝えさせていただきます。
農業は、収益化のタイミングが収穫して出荷した一定の期間ですが、その成果を生むのは日々の適切な栽培管理です。しかし、初年度や栽培歴が浅い内は、適切な判断をする経験値が少ないので、不安を払拭するためにもこのようなサービスを活用することも検討してみてはいかがでしょうか。
キュウリ栽培のお客さま事例 山口仁司さん

環境制御で引き出すキュウリの力
佐賀県武雄市の山口仁司さんは、「作物の力を引き出すこと」を目標に環境制御技術を活用したキュウリ栽培に取り組んでいます。以前は土づくり中心でしたが、現在はイノチオの高軒高ハウス「SANTAROOF」、環境制御システム「AERO BEAT」、灌水制御システム「AQUA BEAT」を導入してハウス全体の環境づくりに着目した栽培を取り組んでいます。日射比例灌水や温度・湿度の自動管理により、病害虫リスクを抑えつつ、年間45〜47トンの安定した収穫を実現しています。
技術継承とスマート農業への挑戦
現在は息子の真彦さんが経営を継承し、仁司さんはJA佐賀のトレーニングファームで講師も務めており、若手への技術指導にも力を入れています。毎年、多くの研修生へキュウリ栽培の極意について指導されています。
関連事例:システムの共通性で機能以上の効果を生む!?
外部サイト:JAさが トレーニングファーム
キュウリ培におすすめのビニールハウス

丸形ハウスD-1
丸形ハウスD-1は、全国的に目にするスタンダードなビニールハウス(園芸用ハウス)で、新規就農者から熟練の生産者まで幅広くご利用していただいています。特長として、屋根の合掌にアーチ状のスチール角パイプを採用、採光性と耐久性に優れ、トマトをはじめ幅広い作物に対応可能です。側部谷部の巻き上げや自動天窓による換気も可能で、環境制御と連動した生産性向上にも期待できます。オプションで天窓、フッ素フィルム、骨材強化も選べます。
屋根型ハウス
屋根型ハウスは、丸形ハウスD-1と比較し広い栽培空間を確保できるため、よりトマトにとって最適な栽培環境を作り出すことに適したビニールハウス(園芸用ハウス)です。80種以上の作物・8,000棟超の導入実績があります。建設方法によっては、積雪地域での栽培も可能となります。本体の間口・柱高を自由に選べ、土地形状に左右されず栽培面積を最大限確保できます。最大柱高4.0m・強度鋼材により誘引栽培にも対応しています。
高軒高ハウス サンタルーフ
サンタルーフは、高軒高ハウスとも呼ばれ、柱高最大6mの設計できます。屋根型ハウスと比べて、小さな屋型ハウスが連結している見た目の通り、建設面積と栽培空間を最大限に活かすことができるため、高品質・高収量の栽培に期待できます。1ha規模の大型菜園でのトマト栽培では、サンタルーフのような高軒高ハウスが採用されているケースが多いです。屋根部材の小型化で採光性が高く、換気効率にも優れ、安定した栽培環境を提供します。トラス構造と複合部材により強度を高め、耐風速50m/s・耐積雪10〜20cm/㎡の高耐久設計です。
キュウリ栽培におすすめの栽培設備
環境制御システム エアロビートシリーズ
エアロビート
施設園芸に携わり50年以上の歴史を持つイノチオアグリが、これまで培ってきた自社実績と、生産者の声を取り入れて開発した生産者目線の環境制御システムです。環境制御と合わせて、モニタリング機能も搭載。エアロビート本体とコンピュータ1台で最大10区画または、ハウスを最大10棟まで管理することができるので、管理時間と導入コストの両方を削減できます。オリジナルの管理画面に設定することができ、はじめての方にも使いやすい仕様となっています。
関連製品:環境制御システム エアロビート
エアロビートmini
エアロビートminiは、必要な機能だけを備えた環境制御システムです。これまで⼈の⼿で別々に管理していたハウス内の各設備を、パソコンとスマートフォンから⼀括で管理できます。栽培作物や規模に捉われず、多くの⽣産者さんが導⼊できる製品です。栽培規模に合わせて、3つのラインナップ(制御点数:8点/16点/24点)から最適な製品を選べます。
関連製品:環境制御システム エアロビートmini
自動灌水制御 アクアビートシリーズ
アクアビート
アクアビートは、時間制御・流量制御・液肥倍率制御による多様な灌水が可能です。特に流量制御による1株あたりの設定は、マニュアル化や異なるハウス間での管理、部会などでの情報共有に役立ちます。「灌水レシピ」「灌水グループ」「灌水グループ-バルブ」の組み合わせにより、時間帯ごとに灌水量や肥料濃度を調整でき、1日最大99回の灌水が可能。隔離栽培から土耕栽培まで対応しています。
関連製品:自動灌水制御 アクアビート
アクアビートメビウス
アクアビートメビウスは、通常のアクアビートの制御機能に加え、EC・pH・日射での制御が可能です。さらに、AIが設定したEC・pH値に応じて最適な肥料混入量を学習・制御します。新開発の「メビウスユニット」はインラインミキシング方式を採用し、液肥の濃度ムラを抑えるだけでなく、系統ごとの濃度調整にも対応しています。
関連製品:自動灌水制御 アクアビートメビウス
キュウリ栽培に関するお悩みはプロへ相談!
今回のコラムでは、ビニールハウス(園芸用ハウス)でのキュウリ栽培を検討されている方、これから農業を始められる方向けに栽培のポイントやおすすめのハウスと設備についてご紹介しました。実際に具体的に検討をしていくと、今回紹介したこと以外いにもさまざまな課題が出てくるでしょう。そのような際には、イノチオアグリへ一度ご相談ください。施設園芸に携わり50年以上、農業の現場を知り尽くした社員がサポートさせていただきます。
