農業所得とは?主な分類と確定申告のポイントについて紹介
これから農業に参入しようと考えている方の中には、「農業所得とは何のこと?」「経費はどこまで認められるの?」「確定申告はどう進めればいいの?」といった不安を抱く方も多いのではないでしょうか。農業は栽培・出荷・販売などやることが多く、収入や経費の管理まで手が回るのか不安に感じる方は少なくありません。
そこで本記事では、国税庁が公開している資料をもとに、農業所得の基本から確定申告の流れまでを初心者にもわかりやすく解説します。これから農業を始める人が、必要な知識を事前にしっかり理解できるよう構成していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- 農業所得とは
- 農業所得の計算の流れ
- 農業所得の収入となるもの
- 農業の必要経費にできるもの・できないもの
- 棚卸しの基本
- 減価償却の基本
- 青色申告のメリット
- 確定申告で初心者がつまずきやすいポイント
- 新規就農者が知っておきたい実務のコツ
- 農業経営に関するお悩みはイノチオアグリへ
農業所得とは

「農業所得」とは、農産物の収穫や販売によって得られる利益のことをいいます。米や野菜、果物、花などの農産物だけでなく、家畜の飼育による収入や、副産物(わら・もみ殻・堆肥など)の販売収入も農業所得に含まれます。
また、農業共済金や農作業の受託作業料など、農業活動に関連する収入も農業所得として扱われます。これらの収入は一年間合計し、そこから必要経費を差し引いた金額が所得となります。
農業所得に含まれないもの
一方で、農協などから受け取る出資配当金、農地の貸付料(小作料)、建物の火災保険金、事業用資産の売却収入などは「農業所得」には含まれません。これらは不動産所得や配当所得、一時所得などに分類されますので、確定申告では区分を間違えないようにしましょう。
農業所得の計算の流れ
農業所得を正しく計算するには、1年間の収支をきちんと記録し、年末に棚卸や帳簿整理を行う必要があります。
1年間の基本的な流れ
農業の収支管理は、次のように進んでいきます。
- 日々の取引を帳簿につける
- 年末に棚卸しを行う
- 帳簿の内容を整理し、未収入金・未払経費などを調整する
- 収支内訳書を作成する
- 確定申告書と一緒に提出する
特に、農業では現物の在庫が多かったり、出荷と入金のタイミングがずれたりするため、初心者の方ほど帳簿の整理が大切になります。
収入は「引き渡したとき」に計上
農産物の収入は「収穫したとき」または「販売して相手に引き渡したとき」に計上します。現金を受け取ったタイミングではなく、あくまで引き渡した時点で収入が発生する点に注意が必要です。
たとえば、12月の出荷分の代金が翌年1月に振り込まれる場合でも、12月に収入として計上します。この考え方を理解していないと、収入が翌年分にずれ込んでしまい、正しく所得を計算できなくなってしまいます。
農業所得の収入となるもの
農産物に関する収入
農業所得には、農産物を収穫した時点の評価額や販売代金が含まれます。農産物によっては、収穫した時点で価値を計算する場合と、販売した時点で収入計上する場合があります。
農業に付随して得られる雑収入
農業では、さまざまな場面で副次的な収入が発生します。たとえば、
- 副産物(わら・もみ殻など)の販売
- 農業共済金
- 受託作業料
- 農協などからの事業分量配当
- 農機具などの売却収入
こうしたものも農業所得に含まれます。特に補償金や共済金は収入扱いになるため、受け取ったことを忘れず帳簿に記載することが大切です。
家事消費の取り扱い
自家用として消費した農産物も「収入」として扱われる点は、農業ならではの特徴です。たとえば、収穫した野菜を家庭で消費した場合でも、一定の計算方法により収入として計上します。これは「家事消費」と呼ばれ、農業所得計算には欠かせない考え方です。
農業の必要経費にできるもの・できないもの

農業所得を計算する際には、収入から必要経費を差し引きます。必要経費として認められるものは幅広いため、特に農業を新しく始めた人は「どこまで経費にしてよいのか」不安に感じることもあるでしょう。
経費になるもの
農業の経費に含められるものには以下があります。
- 肥料・農薬の購入費
- 資材費(ビニール、支柱など)
- 燃料費・電気代(農業用)
- 共済掛金
- 農業用車両の維持費
- 農業用建物の固定資産税
- 農機具の修繕費
また、本年中に支払っていなくても、未払の地代家賃などは「未払経費」として計上できます。
経費にならないもの
- 所得税・住民税
- 国民健康保険料
- 罰金・延滞税
これらは経費として計上できないので注意しましょう。
家事按分が必要なもの
住居と作業場が一体になっている場合、光熱費などは家事分と事業分に分ける必要があります。
たとえば、水道代や電気代は、使用度合いに応じて適切に按分(あんぶん)し、事業に使った分だけを経費とします。
棚卸しの基本
農業では、肥料・農薬・農産物など在庫が多いため、年末の棚卸しは欠かせません。
棚卸しが必要なもの
- 農産物
- 未収穫の農産物
- 肥料・農薬
- 飼育中の販売用家畜
棚卸しは原則として12月31日に行います。
棚卸しを省略できるケース
- 家庭用に消費する作物
- 収穫から販売までの期間が短い農産物
- 少量の在庫
初心者でも取り組みやすいように、省略できるものも設けられています。
減価償却の基本
農業では、トラクターやコンバインなど高額な設備が欠かせませんが、これらは購入した年に全額経費にはできません。代わりに、耐用年数に応じて少しずつ経費にする「減価償却」という方法を使います。
農機具や建物などの資産は、決められた年数にわたって費用配分していくため、長期的な経営を考える上でとても重要な仕組みです。
関連記事:農業所得における減価償却費の計算方法とは?耐用年数も紹介
青色申告のメリット
農業を始めるなら、青色申告は非常におすすめです。青色申告には以下のようなメリットがあります。
- 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
- 家族に支払う給与を経費にできる
- 赤字を翌年以降に繰り越せる
青色申告を始めるには「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。開業後2か月以内、または3月15日までに提出すれば、その年から利用できます。
青色申告について、詳細は以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:農業の確定申告に必要な青色申告とは?方法と注意点について解説
確定申告で初心者がつまずきやすいポイント

農業初心者や、新たに副業として農業を始める方は、確定申告でいくつか共通してつまずきやすいポイントがあります。ここでは代表的な例を紹介し、注意すべき点をまとめました。
経費の漏れが起きやすい
農業は必要経費の種類が多く、レシートが細かく発生します。たとえばガソリン代や農業資材の細かな購入、農機具の修理代など、小口の支払いが多いため、記録し忘れることがあります。経費の漏れはそのまま税額に影響しますので、レシートをまとめて保管する仕組みを作りましょう。
家事按分の計算が難しい
自宅の一部を作業場にしている場合、水道光熱費や通信費の家事按分が必要です。明確に区別がつかない部分もあるため、実際の使用割合を合理的な基準で推定し、毎年同じ基準で計算することが求められます。
補助金・共済金の扱いを混同してしまう
農業では、国や自治体の補助金、農業共済金、収入保険の給付などさまざまな支援があります。これらの多くは農業所得の「収入」になるため、受け取ったまま申告を忘れてしまうと後から訂正が必要になるケースもあります。
新規就農者が知っておきたい実務のコツ
最後に、これから農業に参入する方が知っておくと役立つ、実務面でのコツをいくつか紹介します。
1. レシート・領収書は月ごとにまとめる
農業のレシートは小型のものが多いため、紛失しやすい傾向があります。クリアファイルや封筒を使い、月ごとに分けて保管するだけで、確定申告のときに大幅に楽になります。
2. 農機具・設備の購入は日付と用途をメモしておく
減価償却の対象となる資産を購入した際は、購入日や使用開始日、用途をメモしておくと後の計算がスムーズです。
特に中古農機具は耐用年数の推定方法が異なるため、記録は必須です。
3. 青色申告は早めの準備が安心
青色申告承認申請書には提出期限があります。開業後すぐに手続きを進めることで、その年からメリットを受けられます。また、記帳も早めに始めることで、確定申告時に慌てずに済みます。
農業所得と確定申告で失敗しないために
農業所得とは、農産物の収穫・販売だけでなく、副産物や補償金など農業に付随して得られる収入を含む幅広い概念です。必要経費の考え方や棚卸しの方法、減価償却など、農業ならではのポイントも多いため、早めに理解しておくことが大切です。
これから農業を始める方は、まずは日々の記帳を丁寧に行い、帳簿に慣れていくことから始めてみましょう。また、節税面で大きなメリットがある青色申告も、できるだけ早く準備することをおすすめします。
農業経営に関するお悩みはイノチオアグリへ

日々の帳簿や確定申告は、農業収入を見つめ直すきっかけになります。 収入や支出を振り返る中で、理想の農業経営に向けた改善点が見えてくることもあるのではないでしょうか。
イノチオアグリでは「農業総合支援企業」をコンセプトに、ビニールハウス事業を中心として、お客さまの農業開始から経営の安定までを総合的に支援しております。
理想とする経営状態に向けて改善可能なポイントについて、ビニールハウス設備や栽培などさまざまな視点からサポートさせていただきます。 農業経営についてのお悩みは、ぜひイノチオアグリへご相談ください。
