持続可能な農業とは?意味や注目される背景、取り組み例をわかりやすく解説
近年、「持続可能な農業」という言葉を耳にする機会が増えています。日本の農業は、担い手不足や高齢化、気候変動による生産リスクの増加など、多くの課題に直面しています。一方で、食料の安定供給や環境保全への関心が高まるなか、将来にわたって農業を継続できる仕組みづくりが求められています。
こうした背景から、農林水産省を中心に持続可能な農業の推進が進められており、新規就農者や農業参入企業にとっても重要なテーマとなっています。
本記事では、持続可能な農業の意味や注目される背景、メリットや課題、農林水産省の取り組み、そして実際に持続可能な農業の実現に挑戦している事例について詳しく解説します。
目次
- 持続可能な農業とは?
- 持続可能な農業に取り組むメリット
- 持続可能な農業の課題
- 農林水産省が推進する持続可能な農業
- 持続可能な農業の実現を目指す取り組み事例
- 持続可能な農業の実現はイノチオアグリにご相談ください
持続可能な農業とは?

持続可能な農業は、近年の農業政策や企業の農業参入において重要なキーワードとなっています。しかし、「具体的にどのような農業を指すのか」「従来の農業と何が違うのか」がわからない方も多いのではないでしょうか。まずは持続可能な農業の意味と、注目されている背景について解説します。
持続可能な農業の意味
持続可能な農業とは、現在の世代だけでなく将来世代も農業を継続できるように、環境・経済・社会のバランスを取りながら行う農業のことです。
農業は食料を生産するだけではありません。地域経済の維持や自然環境の保全、農村コミュニティの形成など、多くの役割を担っています。しかし、生産性だけを重視した農業は、土壌の劣化や水資源の枯渇、環境負荷の増加につながる可能性があります。
そのため、環境負荷を抑えながら安定した収益を確保し、農業を継続できる仕組みを作ることが重要視されています。
持続可能な農業が注目される背景
持続可能な農業が注目される背景には、日本の農業が抱えるさまざまな課題があります。
まず深刻なのが農業従事者の高齢化です。農林水産省の調査でも基幹的農業従事者の高齢化が進んでおり、後継者不足が大きな問題となっています。
また、近年は猛暑や豪雨、台風などの異常気象が頻発しており、農作物への被害リスクも高まっています。さらに、肥料や燃料価格の高騰により、農業経営のコスト負担も増加しています。
こうした状況のなかで、効率的な生産体制を構築しながら環境に配慮した農業経営を実現することが、持続可能な農業の重要な目的となっています。
持続可能な農業に取り組むメリット

持続可能な農業は環境保全のためだけの取り組みではありません。農業経営の安定化や生産効率の向上、企業価値の向上など、経営面でもさまざまなメリットが期待できます。ここでは、持続可能な農業に取り組むことで得られる主なメリットをご紹介します。
環境負荷を低減できる
持続可能な農業では、化学肥料や農薬の適正利用、省エネルギー設備の導入、土壌保全などに取り組みます。
これにより、農地や水資源への負担を軽減しながら農業を続けることが可能になります。
また、温室効果ガスの排出削減にも貢献できるため、脱炭素社会の実現にもつながります。
農業経営の安定化につながる
環境制御技術やスマート農業技術を導入することで、生産の効率化や収量の安定化を図ることができます。
例えば、温度や湿度、CO2濃度を適切に管理することで作物の生育環境を最適化できるため、気象条件の影響を受けにくい栽培が可能になります。
結果として、安定した収益確保につながり、長期的な経営基盤の構築が期待できます。
企業価値やブランド力の向上が期待できる
近年は消費者や取引先企業の間で、環境に配慮した商品やサービスへの関心が高まっています。
持続可能な農業に取り組んでいることは、経営姿勢や社会的責任を示す重要な要素となり、企業価値の向上にもつながります。
特に企業の農業参入においては、ESG経営やSDGsへの取り組みの一環として持続可能な農業が注目されています。
持続可能な農業の課題

持続可能な農業には多くのメリットがある一方で、実現に向けて乗り越えるべき課題もあります。設備投資や人材育成、技術導入など、事前に理解しておくことでスムーズな経営計画の立案につながります。ここでは代表的な課題について解説します。
設備投資コストが必要になる
持続可能な農業を実現するためには、高機能な施設や環境制御設備、スマート農業システムの導入が必要になる場合があります。
これらの設備は生産効率の向上に寄与する一方で、導入時には一定の投資負担が発生します。
そのため、事前の収支計画や資金調達計画が重要になります。
専門知識や人材が必要
持続可能な農業は、従来の経験則だけでなく、データ活用や施設管理、経営管理など幅広い知識が求められます。
特に新規就農者や異業種からの農業参入企業にとっては、人材育成や技術支援体制の整備が大きな課題となります。
気候変動への対応が必要
気候変動による影響は今後さらに大きくなると予想されています。
猛暑や豪雨などの異常気象は収量や品質に大きな影響を与えるため、環境変化に対応できる栽培技術や設備を導入することが不可欠です。
持続可能な農業の実現には、こうしたリスクに備えながら生産を続ける仕組みづくりが求められています。
農林水産省が推進する持続可能な農業

持続可能な農業の普及に向けて、農林水産省ではさまざまな政策や支援策を推進しています。特に「みどりの食料システム戦略」は、今後の日本農業の方向性を示す重要な取り組みとして注目されています。ここでは、その概要と関連する施策について紹介します。
みどりの食料システム戦略
持続可能な農業の実現に向けて、農林水産省が中心となって推進しているのが「みどりの食料システム戦略」です。この戦略は、気候変動への対応や生産資材価格の高騰、農業従事者の減少といった課題に対応しながら、将来にわたって安定した食料供給を実現することを目的としています。
従来の農業は、生産性向上を重視するあまり、化学肥料や農薬への依存度が高くなる傾向がありました。一方で近年は、環境への負荷を軽減しながら持続的な生産を続けることが求められています。みどりの食料システム戦略は、生産性と環境負荷低減の両立を目指す取り組みとして位置付けられています。
この戦略では2050年を見据え、次のような目標が掲げられています。
- 農林水産業のCO2ゼロエミッション化
- 化学農薬使用量の低減
- 化学肥料使用量の低減
- 有機農業の拡大
- スマート農業技術の普及
これらの取り組みを通じて、生産性向上と環境負荷低減の両立を目指しています。
特に施設園芸分野では、環境制御技術や再生可能エネルギーの活用、省エネルギー設備の導入などが進められており、持続可能な農業経営の実現に向けた取り組みが広がっています。これらの技術は、環境への配慮だけでなく、生産性向上や経営の安定化にもつながるため、多くの農業経営体や農業参入企業から注目されています。
さらに、みどりの食料システム戦略は、新規就農者や企業の農業参入にとっても追い風となっています。国や自治体による補助事業や支援制度が整備されており、環境負荷低減に取り組む設備や技術の導入を後押ししています。
スマート農業の普及
持続可能な農業を実現するうえで、重要な役割を担うのがスマート農業です。スマート農業とは、ICTやAI、IoT、ロボット技術などの先端技術を活用し、農作業の効率化や生産性向上を目指す取り組みを指します。
日本の農業では、高齢化や担い手不足が深刻化しており、限られた人員で安定した生産を続ける仕組みづくりが求められています。スマート農業は、こうした課題を解決する有効な手段として注目されています。
例えば、施設園芸では環境制御システムを活用することで、温度や湿度、日射量、CO2濃度などを自動で管理できます。作物の生育に適した環境を維持することで、収量や品質の向上が期待できるだけでなく、経験や勘に頼りがちだった栽培管理をデータに基づいて行えるようになります。
また、センシング技術やクラウドシステムを利用すれば、離れた場所からでも圃場の状況を確認できるため、作業負担の軽減や省力化にもつながります。これにより、新規就農者や農業経験の少ない企業でも、効率的な農業経営に取り組みやすくなります。
さらに、スマート農業は環境負荷の低減にも貢献します。必要な量の水や肥料を適切なタイミングで供給できるため、資源の無駄を抑えながら生産性を維持することが可能です。農薬や肥料の使用量削減にもつながり、持続可能な農業の実現を後押しします。
農林水産省も、みどりの食料システム戦略のなかでスマート農業の普及を重要施策の一つに位置付けています。今後はさらにデジタル技術の活用が進み、生産性向上と環境負荷低減を両立する農業経営が広がっていくことが期待されています。
持続可能な農業の実現を目指す取り組み事例

持続可能な農業の実現に向けて、全国各地でさまざまな取り組みが進められています。なかでも、再生可能エネルギーや環境制御技術を活用し、生産性向上と環境負荷低減を両立する施設園芸への注目が高まっています。ここでは、イノチオアグリがご支援したうれし野アグリ株式会社の取り組みをご紹介します。
うれし野アグリ株式会社の挑戦
持続可能な農業を実践する事例として注目されているのが、三重県松阪市でミニトマトの生産・販売を行ううれし野アグリ株式会社です。約3.2haの大規模施設で栽培を行い、先進的な施設園芸技術を活用した農業経営に取り組んでいます。
同社の特徴の一つが、高い採光性を実現したオランダ製ガラス温室の導入です。軒高約6mの高軒高設計により、作物の生育に適した栽培環境を確保するとともに、高収量生産を支える施設づくりを実現しています。
また、栽培環境の管理にはオランダ製の環境制御システムを導入しています。温度や湿度、二酸化炭素濃度、日射量などを総合的に管理することで、作物が持つ能力を最大限に引き出し、安定した品質と収量の確保につなげています。
さらに、持続可能性の観点からエネルギー活用にも力を入れています。親会社である辻製油株式会社が運用するバイオマスボイラーの熱エネルギーを活用し、工場から発生する蒸気や温水を温室暖房に利用しています。暖房に化石燃料を使用せず、再生可能エネルギー由来の熱を有効活用することで、環境負荷の低減と効率的な農業生産を両立しています。
加えて、LED補光による収量向上にも取り組んでおり、日射量の少ない冬季でも安定した生産を実現しています。こうした先端技術の活用は、生産性向上だけでなく、資源利用の最適化にも貢献しています。
同社は農業を通じた地域貢献にも積極的です。多くの地域住民を雇用し、新たな産業と雇用機会の創出を推進しています。再生可能エネルギーの活用と地域活性化を両立する取り組みは、持続可能な農業のモデルケースとして注目されています。
詳しい内容は下記よりご覧ください。
【イノチオお客さま事例】企業の農業参入4社コラボでの大規模施設園芸
持続可能な農業の実現はイノチオアグリにご相談ください

持続可能な農業を実現するためには、農地や作物だけでなく、事業計画や設備設計、栽培技術、人材育成まで総合的に考える必要があります。
特に新規就農者や農業参入企業の場合、「何からはじめれば良いのかわからない」「設備投資の規模が適切かわからない」「安定した収益を確保できるか不安」といった悩みを抱えることも少なくありません。
イノチオアグリでは、施設園芸分野で長年培ってきたノウハウを活かし、新規就農や農業参入を目指すお客様を幅広くサポートしています。
新規就農や農業参入をご検討の方は、豊富な実績とノウハウを持つイノチオアグリへぜひご相談ください。農業の未来を見据えた持続可能な経営づくりをサポートします。
