昨今、注目が続くイチゴ栽培。イチゴの栽培方法と市場での用途は多岐に渡ります。

今回のコラムでご紹介するのはイチゴの超促成栽培。以前に別のコラムでご紹介した促成栽培よりも、さらに収穫時期が早く、市場への供給が少ない11月初旬から収穫開始ができることが特徴です。

イチゴの超促成栽培の特徴と重要ポイントをご紹介します。

イチゴの市場ニーズ

イチゴの市場ニーズは、美味しさや品質にこだわる需要、高付加価値商品への需要、季節外れの需要、そして地元産のイチゴや有機栽培のイチゴなど持続可能性への関心など多岐に渡っています。

イチゴは、甘くてジューシーな果肉や鮮やかな赤色を求める人が多く、それらのニーズに応えられる高品質なイチゴには高い評価が集まります。

イチゴは可愛らしい見た目からデザートによく使われ、健康志向の高まりからフルーツ入りのヨーグルトやスムージーにもニーズがあります。

クリスマスやバレンタインデーなどのイベントシーズンでは、イチゴを使ったケーキやスイーツなどを贈り物として購入する人が増えます。その他にも、イチゴの観光農園(いちご狩り)などの需要も多く、個人農業者や企業などでもイチゴの観光ビジネスに参入するケースも増えてきました。

イチゴの基本作型とは?

超促成栽培をご紹介する前に、イチゴ栽培の基本的な4つの作型を紹介します。

1:促成栽培

促成栽培は、イチゴ栽培で最も一般的な作型です。9月頃に花芽分化させた苗を本圃に定植して、11月中下旬頃から翌年の6月頃まで収穫をします。

スーパーマーケットで販売されているイチゴ、クリスマスケーキに添えられているイチゴ、イチゴ狩りのイチゴのほとんどがこの促成栽培で育てられています。

日本では北海道から沖縄まで、全国で促成栽培が行われていますが、日照条件が良く温暖な気候のほうが、冬場の暖房コストなどの削減ができるために有利と言えます。

2:夏秋栽培

栽培に適した地域は限られていますが、次に多いのが夏秋栽培です。4月頃に苗を本圃に定植して、6月頃から11月頃まで収穫をします。

夏から秋にかけては輸入イチゴも多く出回っています。用途としては、業務用のケーキなどに限られているので、一般的に店頭で見かける機会はほとんどありません。

北海道や東北、長野県など、夏期に気温が比較的低い地域で人気があります。

3:周年栽培

周年栽培とは、促成栽培と夏秋栽培の特徴を合わせた作型、または植え替えることなく、ひとつの株を長期出荷目的で長期間栽培することを指します。

4月頃から9月頃にかけて苗を本圃に定植し、一年を通して収穫します。そのためには四季成り性品種を選ぶか、もしくは一季成り品種を温度などの環境制御を導入して温度調節などを徹底して行う必要があります。

主に、閉鎖型等の植物工場や環境制御を導入したビニールハウスで行われている作型です。

4:半促成栽培

限られた地域ではありますが、春から出荷する半促成栽培という栽培体系もあります。
9月頃に苗を本圃に定植し、翌年の4月から6月頃まで収穫をします。

収穫量は促成栽培よりも少ないですが、冬の暖房コストを削減できます。そのうえで収穫を終えた株からランナーを伸ばして、採苗する手法もとることがあります。

注目されるイチゴの超促成栽培とは?

イチゴの超促成栽培とは、促成栽培と比較して、さらに早期にイチゴを収穫するために行われる栽培技術です。

イチゴの市場ニーズが高く、高単価で取り引きされる11月初旬頃に収穫ができることが特徴です。露地栽培での供給量が減る通常栽培下では生産が困難な11月初旬頃は相場が高くなりやすく、例年クリスマスケーキの需要が高まる12月にかけて高値を維持しています。

ここからは、イチゴの超促成栽培の特徴について解説していきます。

イチゴ超促成栽培のポイント

イチゴを早期に収穫するためには、花芽分化を促進させる必要があります。イチゴの花芽分化促進に必要な条件は「低温」「短日」「窒素を切る」ことが要素となります。

この3要素を早期に行えば、その分早期に実がなり収穫ができます。では、この方法はどのように行うのでしょうか。ここからはイチゴの超促成栽培で花芽分化を促進する処理方法を紹介します。

短日低温処理(夜冷処理)

超促成栽培での花芽分化促進は育苗段階で「短日低温処理」を行います。一般的に「夜冷(やれい)処理」とも呼ばれます。

その処理の時期は8月中旬から下旬がひとつの目途の時期でもあります。真夏であるこの時期に日長と低温、そして養分コントロールをするには、自然の環境下では行えません。

専用の施設と設備で行うのが一般的です。夜冷庫や夜冷ハウスと呼ばれる施設の中で人工的な環境の下で育苗を行います。

夜冷庫(夜冷ハウス)

短日:日長の長い8月に光を当てないようにし、イチゴ苗にとって暗黒の環境を作ります。
低温:イチゴ苗が暗黒環境になった状態で、同時に13~15℃程度の環境を作ります。

この人工的な環境を作るのが、夜冷庫や夜冷ハウスと呼ばれるものです。育苗トレイに苗を植え付け、そのトレイごと夜冷処理を行います。

夜冷庫(夜冷ハウス)は、ビニールハウス系のもので構築されるものがほとんどです。
その外被は光を通さないフィルムなどで被覆をします。そのビニールハウスには、エアコンまたはヒートポンプなどを設置し、夜冷庫内(夜冷ハウス内)温度が13~15℃まで下がるように稼働させます。

同時に、花芽分化を促進するために、窒素レベルを十分に下げなければいけません。花芽分化促進には、処理開始前に葉柄搾汁液中の硝酸態窒素濃度を200ppm以下が目安となります。

夜冷の時間は、夕方から翌朝(8時間から12時間)まで行うことが多いです。

夜冷庫にもさまざまな種類があり、一例として、日中は太陽光に当てて育苗し、夜冷時間になったら、フィルムを巻き下ろして庫内を暗黒にして機械的に温度を下げる「巻き上げハウス方式」や、日中は太陽光に当てて育苗して、夜冷時間になったら、育苗している架台をレールを使って夜冷庫(暗黒室)に押し込む方式など、規模や管理方法によって導入する施設も異なってきます。

このように夜冷処理を行い、花芽分化したことを確認するには、顕微鏡などを使って行うことが一般的です。

花芽分化したら、いよいよ本圃への苗の定植となります。

クラウン冷却処理

定植後にクラウン(茎にあたる部位をクラウンと呼ぶ)を冷却処理する方法もあります。

定植後、イチゴの株に密着するようにチューブを配置し、15℃設定の冷却水を流して冷やすことで花芽分化を促進し、第一次腋花房の収穫開始を早めることができます。

ただし、この方法は夜冷処理ほど早期に花芽分化するまでには至らないと言われています。

養液栽培

超促成栽培では、養液栽培が一般的です。養液には、窒素、リン、カリウムなどの栄養素がバランスよく含まれていることがポイントです。また、養液のpHやEC値なども適切に管理することも重要です。

お客さまの中には、イノチオのオリジナル自動灌水制御システムAQUA BEAT Ex を導入してイチゴにとって最適な養液供給を行っている方もいらっしゃいます。

栽培環境の管理

超促成栽培では、温度や湿度、二酸化炭素濃度、風量などの栽培環境の管理が必要です。定期的に環境を測定し、必要に応じて調整することが重要です。

より正確に管理を行い、品質の安定性を求めるのであれば、ビニールハウス栽培の代表的なスマート農業機器である環境制御システムの導入も検討内容に入ってきます。
こちらは、国内外の各メーカーが製品を出していますので、一度ご相談ください。

AERO BEAT製品情報

以上が、イチゴ超促成栽培のポイントとなります。
冷却時間やタイミングだけでなく、風量や水分管理など細かな点にも注意を払い、正確な技術で実践することが成功の鍵となります。

超促成栽培におすすめ:イチゴ高設栽培ベンチ

ストロベリーハイポは、観光農園向けの一本足ベンチ、一般的な栽培に選ばれる二本足ベンチの2種類から選択できます。

ベンチの高さ・通路幅などお客さまの農業経営に最適な仕様を提案します。

また、高設ベンチに設置する栽培用ベッドも2種類用意しています。生育ムラが少なく栽培管理が容易な連結式ベッド、個別にベッドの取り外しのできるプランタータイプの独立式ベッドがあります。

イチゴ高設栽培ベンチは、土耕栽培と比較して費用がかかるため、導入前にメリットとデメリットを理解することが重要です。

メリット
  1. 楽な姿勢で栽培できる
  2. 病気のリスクが少ない
  3. 安定した栽培が実現できる
  4. 栽培をマニュアル化できる
  5. 栽培管理が難しくない
  6. 拡張設備の設置ができる
デメリット
  1. コストが高い
  2. 養液栽培の知識習得が必要
  3. 自動灌水制御システムの種類が多い
  4. 植えられる株数が少ない


メリット・デメリットの詳細は、別のコラムでまとめていますので、詳細はそちらにてご確認ください。

イノチオアグリでは、養液を給液するための自動灌水制御盤や給液ユニットなど、イチゴの高設栽培に最適なスマート農業システムからイチゴ苗、培土、肥料、資材、栽培支援などお客さまを総合的に支援します。

イチゴ栽培におすすめのビニールハウス

ビニールハウスとひとことで言っても多岐に渡ります。ビニールハウス建設は、理想とする栽培環境と実現にかかる費用と確保できる予算を比較しながら検討していきます。

今回は、イノチオのイチゴ生産者のお客さまに選ばれているビニールハウスをご紹介します。

丸型ハウスD-1
耐久性と経済性を追求したロングセラー

自社⼯場でスチール⾓パイプを加⼯し、独自のアーチ形状を実現。安価でありながら、パイプハウスと比較して強度と耐久性を⾼めることで、安心して長期間の使用ができます。

アーチ状のハウス内空間と谷部の換気機能が、イチゴ栽培に最適な温度と湿度を実現することで、ハダニやうどんこ病をはじめとする病害虫を抑制し、安定した収量確保の栽培環境を実現いたします。

丸型ハウスD-1の持つビニールハウス性能は、暖房機、光合成促進機などの一般的に導入される設備以外のコストを最小限に抑えることができます。

丸型ハウスD-1紹介動画を見る


屋根型ハウス
自由設計が魅力の販売実績No.1ハウス

丸型ハウスD-1よりもさらに良い栽培環境をお求めであれば、屋根型ハウスもおすすめです。栽培作物に合わせて最適な設計や素材を選べます。間⼝・柱⾼を自由に選択でき、幅広い設計強度に対応。

 ⾼度な環境制御にも対応可能なため、⾼品質・⾼収量のイチゴ栽培が可能です。

こちらのビニールハウスは、一般の生産者をはじめ、イチゴの観光農園などに多く導入されています。
※自社販売実績 2006年~2020年範囲にて算出

屋根型ハウス紹介動画を見る

イチゴ栽培におすすめのスマート農業システム

実際に導入したお客さまからもご好評いただいているイチゴ高設栽培におすすめのスマート農業システム2製品をご紹介します。

自動灌水制御システム AQUA BEAT Ex
多彩な灌水設定で作物に最適な栄養供給を実現

AQUA BEAT Exは、イノチオオリジナルの自動灌水制御システムです。

イチゴの生育に必要な水や肥料を適切なタイミングで供給します。大規模から中小規模まで、さまざまなお客さまのニーズにお応えします。ネットワーク回線を利用することで、自宅に居ながら給液状況を確認でき、異常時に警告をお知らせする機能も備えています。

AQUA BEAT Ex製品情報

自走式防除・灌水システム マスプレー
作業コストを削減して時間効率UP

マスプレーは、農業用ビニールハウス内における防除・灌水システムです。

実際に活用されているお客さまでは、10a規模の圃場の防除作業に手掛け散布で2時間掛かっていたのが、マスプレーを導入したことで30分に短縮されたという例もあります。平均して月3~4回の防除が必要となるイチゴ栽培においては、目に見えた効果を実感できると思います。

また、農薬散布時の農薬の微粉末や霧を吸い込むリスクが軽減できるため、人にも優しい商品です。

イノチオアグリは新規就農を支援します

イノチオアグリについて

イノチオアグリは施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に携わり、50年以上の知見がございます。50年以上に渡り、培ったノウハウと1万棟以上のビニールハウス建設実績をもとに新規就農実現まで総合的にご支援しております。

お客さまのご要望や条件に基づいて新規就農の計画を立案し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業計画の策定をお手伝いします。

さらに、新規就農に向けたプラン策定のサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。

イノチオアグリで行う新規就農支援とは?

新規就農は一次産業ですが、会社を興すことと何ら変わりません。新規就農後の農業経営を行うための経営資源である資金確保や経営、営農技術の習得からビニールハウス・機械などの経営基盤構築が必要になります。新規就農には、十分な事前準備が不可欠です。

弊社は新規就農までの課題である、就農計画の提案や新規就農で活用できる融資制度のご紹介、就農までに必要な事業計画書作成支援やビニールハウスの図面、概算見積をトータルで支援いたします。ご要望ございましたら、下記お問い合わせからお申込みください。