スマート農業とは?と質問をされると多くの方はドローン、収穫用ロボット、自動トラクター、環境制御システムなどを想像するのではないでしょうか。しかし、これらを実際に購入するとなると数百万円~数千万円の導入コストが掛かってきます。

また、その製品を使いこなせるのかと不安もあるかと思います。例えば、10万円を超えるスマートフォンを購入して、機能の10%くらいしか活用できていないなどということは良くある話。

しかし、農業経営において10%の効果しか得られない高額なスマート農業製品を導入することは正しい経営判断とは言えません。

今回のコラムでは、そのような高額で複雑なスマート農業製品ではなく、今日からはじめられて経営改善につながるスマート農業製品をご紹介します。

スマート農業とは?

農林水産省では、スマート農業を「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業を実現」と定めています。

ビニールハウスを使用した施設園芸では、環境制御システムやモニタリングシステム、自動灌水制御システムなどの作物の栽培を管理するシステム、カメラやセンサなどを活用した病害虫診断アプリなどがあります。水稲や露地栽培では、農薬散布などの重労働を担う自動飛行ドローンなども導入されています。

さらにわかりやすく説明をすると、「農業」×「先端技術」=「スマート農業」ということになります。近年のスマート農業の推進背景には、生産者の高齢化、担い手の減少、労働力確保、省力化、負担や危険性の軽減、女性の活躍など、現在の日本農業が抱えているさまざまな問題があります。

「これらの問題を解決できる!」と期待されるのが「スマート農業」です。

高騰するコストと対策

農業は、栽培した農産物を出荷・販売することで収益を得る業務形態です。近年、農産物の価格は多少の変動があるものの、おおむね平行線となっています。

一方で、栽培に不可欠な重油や電気などのエネルギー、肥料や資材、生産にたずさわる方々の人件費が高騰しており、それが利益を圧迫している状況です。

エネルギーコストの高騰

2021年後半以降、全世界を巻き込んでエネルギー価格が高騰し続けています。

新型コロナウイルス感染拡大後の経済回復に伴うエネルギー需要の増加、ロシアによるウクライナ侵攻、天候不順などによってエネルギーの需要と供給のバランスが崩れ、エネルギー価格が高騰しています。

原油価格は、経済回復に伴う需要の増加、2020年の原油価格低迷による生産減少やOPECプラス(石油輸出国機構とロシアなど非加盟主要産油国で構成)の協調減産による石油在庫の低下が原油価格の上昇に影響しています。

また、欧米主要国のロシア産原油禁輸措置の発表や、欧州のロシア産ガスからの脱却方針、ロシアの欧州向け天然ガス輸出削減といった国際情勢も重なり、原油価格やガス価格が高騰をしています。

ご存知の通り、日本でも世界的なエネルギー価格高騰の影響を受けています。

発電に石油を多く用いるため電気料金は、2021年8月から2022年8月にかけて家庭用は約20%、産業用は約40%上昇しました。同様に都市ガス料金の月別平均単価も、2021年8月から2022年8月の期間で家庭用が約30%、産業用が約80%上昇しています。

そのため、日本では2022年1月から「燃料油価格激変緩和対策」が実施され補助がでています。原油価格の高騰によってコロナ禍からの経済回復が阻害されることを防ぎ、小売価格の急騰を抑制して消費者負担を低減することを目的としています。

各国でもエネルギー料金を補助する政策が実施されていますが、エネルギー価格の高騰がいつ収束するのか、見通すことは非常に難しい状況です。

肥料コストの高騰

日本では、化学肥料に含まれる尿素、りん酸アンモニウム、塩化カリウムなどの原料を海外輸入に頼っているため、国際情勢の影響を受けやすくなっています。

2008年に肥料の需要増加などを理由に肥料価格が高騰して一度落ち着きを見せましたが、2021年頃から再び肥料の原料価格が値上がりしはじめました。
そのような状況化でロシアによるウクライナへの侵攻が始まり、さらに深刻化しました。

現在起きている高騰の理由については、アンモニアや塩化カリウムの主要生産国であるロシアへの経済制裁による供給の停滞や中国の輸出規制、運搬に利用される船舶の燃料高騰、円安などが関係していると見られています。※2023年6月現在

人件費の高騰

ニュースでも取り上げられているように、年々人件費が高騰しています。背景としては、最低賃金の上昇だけでなく、働き手の不足が上げられます。

日本では、総人口が減少しているだけでなく、生産年齢人口も減少しており、労働市場では慢性的な人手不足となっています。
2030年には、日本の人口の約三分の一が65歳以上の高齢者になると言われており、今のところ出生率の改善もなく未婚化も進んでおり、若年世代の急激な増加は見込めていないのが実情です。

以上のように我々の生活と同様に、農業界にも価格高騰の波が押し寄せてきています。

だかこそ、スマート農業には栽培技術をサポートするだけでなく、コスト削減と業務を適正化するという点でも大きく期待をされています。

経営者ができるコスト対策

エネルギーコストや肥料は、国際情勢に大きく左右されますが、人件費に関しては賃金の高騰はあるものの、経営者の手腕によって大きく削減することができます。言わば、コントロールができる経費です。そこで重要になってくるのが労務管理です。

労務管理について考えてみよう!

従業員(正社員・パートスタッフ)を雇用している経営者や農場責任者の方の中には、日々の作業内容を作業日誌という形でノートやPCに記録をしている方、特に記録をしていない方と別れるかと思います。

記録をしている方は、作業の振り返りや次の作業タイミングの検討などに役立てられているかと思います。反対に記録をしていない方は、その日ごとの作業計画をこれまでの経験と感覚に任せている傾向にあります。
どちらの経営が正しいかと考えると、記録をしている方が正しいのは明白です。

しかし、その記録が「今日誰が○○作業をした」「明日誰が○○作業をする」といった作業を進めるのみの視点になっていることはないでしょうか。

一歩先を行く農業経営者になるために「時間」という視点を持つことが重要です。
経営視点に「時間」が加わることで、作業計画の精度向上、数字ベースのコミュニケーション、人件費や作業スピードの可視化ができることで経営改善につながります。

 しかし、これらのデータをまとめるとなると、従業員10名程度の圃場でも週に約400件/週3時間の集計やグラフ作成が発生します。データ管理も含めると月15時間以上、10カ月以上なら合計150時間が事務作業に取られてしまいます。

これらの事務作業を簡略化でき、経営改善を行えるのが労務管理ソフト「agri-board」です。

スマホでだれでも簡単に労務管理
agri-boardでムリ・ムダ・ムラを無くす!

agri-boardは、作業情報(いつ・どこで・だれが・なにを・どのくらい)を現場で記録してデジタル化できる、はれると社(イノチオグループ企業)が開発した労務管理ソフトです。

エクセル不要でデータをグラフ化、必要なデータが自動更新されるので毎日の事務作業が発生しません。データはクラウド管理なのでスマホ、タブレット、PCで作業情報と労務情報をいつでも・どこでも確認することができます。

初期費用は0円(ご利用料金1アカウントに付き950円~/月)、高価なスマート農業製品と比較しても無理なく導入をすることができます。デジタル化に不安な方には、サポート専門の担当者が付くので、難しそうな初期設定や現場導入も安心して行え、他社活用事例の紹介やデータ分析まで幅広くサポートします。

作業時間を記録することで、自然と作業スピードを意識したり、従業員同士で上手くできるコツを教えあったり、「みんなで頑張る」意識が芽生えます。工夫や成長を数字で伝えることで従業員のモチベーション向上にもつながります。

「どの時期にどのくらい忙しくなるのか」を従業員とグラフで共有できるので、経営者・農場責任者としての意見に納得感が生まれ、シフトなどの相談がスムーズに行えます。作業に余裕がある時に休みをとってもらい、ムリのない予定立てで作業遅れを解消できます。
このような点から、agri-boardは誰でも簡単に導入でき、今日からはじめられるスマート農業と言えます。

agri-boardを導入したお客さまの声

agri-boardを導入されて経営改善に取り組まれているお客さまをご紹介します。

株式会社宮本農園 宮本清一さん
「労務管理者の事務作業を年間で240時間、時給換算で24万円を削減することに成功!」

agri-boardの導入は、管理者の交代や新規パートさんの対応における労務管理の継続を目指すために行われました。

従来の紙とバインダーでは効率が悪く、エクセルへの入力や集計に追われる状況でした。agri-boardはデータの転記や集計作業を不要にし、自動的に表やグラフを作成してくれるため、管理者は本来の業務に集中できるようになりました。

現在は半年分の記録をもとに週ごとの平均作業時間を特定し、それに基づいてシフトを組んでいます。作業時間のチェックにより遅れや持ち越しをほぼなくすことができています。

作業者たちはagri-boardを上手に活用しており、数日でタブレットの利用に慣れました。外国籍のスタッフにも丁寧に説明を行い、スムーズに操作できるようになりました。

経営面では、労務管理者の業務時間削減により年間で24万円のコスト削減を実現しました。作業時間や学習時間も考慮すると、労務管理者の負担が大幅に軽減されました。
2年目の導入では前年対比で作業時間5%削減を目指しており、その目標を上回る効果があり、月間のパート人件費も25万円近く削減されています。

今後は、agri-boardを活用して問題の箇所を把握し、改善策を実施する予定です。
また、効率や速さだけでなく、安全でゆとりのある作業現場と雰囲気作りにも力を入れ、さらに働きやすい環境を作り上げる予定です。

イノチオアグリが提供するスマート農業

イノチオアグリは施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)にたずさわり50年以上、培ったノウハウを活かし、農業参入・新規就農の支援から営農の拡大まで幅広くお客さまの農業経営をサポートします。

スマート農業の発展以降、農業先進国オランダの環境制御システムの導入からはじまり、自社で環境制御システムAEROBEAT、自動灌水システムAQUA BEAT Exをはじめとするオリジナルのスマート農業製品の開発を進めてきました。今では、本社を置く愛知県を中心に日本全国の施設園芸にたずさわるお客さまへの導入実績があります。

今回紹介した労務管理ソフトagri-bordは、「時間」という観点に着目して、これまで目に見えなかった作業状況を見える化することで、農業経営の課題を解決してくれるスマート農業製品です。