このコラムにご興味を持っていただいた方の多くは、イチゴ栽培に携わっている方もしくは、これから新規就農をしてイチゴ栽培を始めようと考えられている方と思います。
今回のコラムでは、イチゴの苗をテーマに育苗方法についてご紹介します。

目次

  1. イチゴのランナーとは?
  2. イチゴの苗を植え付ける時期
  3. イチゴの苗の作り方
  4. プランターやポットを使用したイチゴの苗の増やし方
  5. イチゴの苗を夏越しさせる方法
  6. イチゴに最適な肥料選び
  7. 花芽検鏡
  8. イチゴ栽培に関するご相談はイノチオアグリへ

イチゴのランナーとは?

イチゴは、通常ランナーの先端に形成される子苗で栄養繁殖します。ランナーの発生は、温度と長日条件によって促進されます。

イチゴのランナーの見分け方は簡単です。親株から垂れている細長い茎がランナーです。ランナーは、親株から地面を這うように生えていくので、見た目にもわかりやすいです。

イチゴの苗を植え付ける時期

イチゴの本圃への定植時期は、栽培方法や地域によります。施設内で秋から冬に収穫を開始する促成栽培では9月から10月にかけて定植を行うことが一般的です。定植が遅れてしまうと、その後の生育にも影響してしまいます。

育てた苗の中から、葉の色が良く、元気なものを選んで定植します。葉がかすれたようになっている場合はハダニが寄生している可能性、葉に黒い斑点や葉柄にくぼみがある場合は炭疽病の可能性があります。

収穫量を確保するためには、元気な苗を植えることが欠かせません。できるだけ状態の良いものを選ぶようにしてください。

イチゴの苗の作り方

イチゴの苗は親株から発生するランナーから子苗を切り離して作ります。

育苗方法は生産者や地域によってさまざまな方法があります。それでは、イチゴ育苗方法についてご説明していきます。

イチゴ苗の作り方➀親株床の準備-親株植え付け前

はじめに親株を植え付けるための親株床を準備します。親株とは、収穫を目的ではなく、採苗を目的とした株のことです。

露地・土耕で育苗を行うケースもありますが、萎黄病・萎凋病などの土壌病害が問題になるため、お勧めしていません。施設内・ベンチや高設で育苗を行う場合は、培養土を入れたプランターに親株を定植します。

イチゴ苗の作り方➁親株植え付け-プランターとポリポット

親株の定植時期は、作型や確保したい苗の本数によって異なります。10月頃に定植し寒さにあてる方法と3月頃に定植する方法が一般的です。

病気にかかっておらず、健全な親株を使用することが成功への近道です。

イチゴ苗の作り方➂ランナー切り離し-採苗

親株から発生したランナーにある子苗は、子苗から子苗へとランナーを通じて連続的に形成されます。

子苗下部が土壌に接したり、湿度が高くなるなどの水分条件が整うと子苗は発根します。この発根量が苗の生育に大きく影響してきます。

地域によっては、ランナーにある最初の子苗を「太郎苗」、さらにその先の苗は「次郎苗」「三郎苗」「四郎苗」と呼ばれています。

親株から初期に発生した太郎苗は老化するため、発根しにくかったり、発根しても褐色になり活性が弱いため定植後の生育に向いていないとされています。

プランターやポットを使用したイチゴの苗の増やし方

イチゴ苗の増やし方は生産者や地域によって異なります。
私たちがお勧めするイチゴの育苗方法についてご紹介していきます。

イチゴ苗の増やし方➀ポット受け

ひとつめは施設内・ベンチで行う「受け苗」と呼ばれる方法です。

親株はプランターに定植し、ランナーが伸びてきて子苗ができたらポットやトレーに受けます。子苗が倒れないようにランナーピンで固定します。

発根が進んだことを確認できたら、親株から切り離します。発根後、親株から切り離すため、状態の良い苗を確保しやすいですが、その分、栽培面積が必要になります。

二つ目は施設・高設で行う「空中採苗」と呼ばれる方法です。

空中採苗は、高設ベンチに親株を植え、伸びたランナーが空中に浮いた状態で切り離す方法です。苗の揃いがよく、比較的小さな面積で多くの苗を確保することが可能ですが、発根・活着不良などのリスクが高くなります。

イチゴ苗の増やし方➁空中採苗

近年は炭疽病のリスク軽減のために潅水方法が改良されてきています。炭疽病は雨や潅水時の水はねで感染が広がるとされています。

そのため、特殊な形状のポットを利用し、点滴チューブで株元潅水を行ったり、トレーなどを用いて底面給水を行うなどの新たな方法が導入されています。

イチゴの苗を夏越しさせる方法

イチゴの苗は暑い夏を越す必要があります。そのためには、環境づくりが重要なポイントになってきます。

イチゴの生育の適温は18〜25℃と暑さには強くありません。
そのため、直射日光を避け、遮光・遮熱カーテンや遮光・遮熱資材を使用して日差しから守りましょう。

イチゴに最適な肥料選び

イチゴ栽培は、生育に適した肥料をあげることで開花・結実を促進します。

育苗においても同様で、窒素成分の多い肥料を使っていると、一番花が遅れてしまったり、逆に窒素が少なすぎると定植後に「芽なし」と言って葉が展開してこないなどのトラブルに繋がります。

子苗の状態をしっかりと確認して適正な肥培管理を行いましょう。可能であれば、葉汁の硝酸態窒素の計測などを実施して株の状態を把握しましょう。

花芽検鏡

本圃への定植時期を判断するには「花芽検鏡」が用いられます。

花芽検鏡とは、クラウン部にある花芽分化を顕微鏡によって観察することです。
分化したタイミングが定植に適したタイミングとされています。

分化より早くても遅くても定植後のイチゴの生育に影響を及ぼしてしまい、収量低下を招いてしまいます。花芽検鏡は地域の普及所などで行っていることが多いです。

夜冷処理と言って、苗を夜冷庫に入れる場合は9月上旬頃に定植することも可能です。
順調に生育が進めば11月には収穫をはじめられ、比較的単価が高い年内に収穫・出荷が可能です。

イチゴ栽培に関するご相談はイノチオアグリへ

イノチオアグリでは、イチゴ栽培をはじめ、さまざまな作物を栽培する生産者の支援をしています。

ビニールハウスや自動灌水制御システムなどのご相談から、栽培に欠かすことのできない農薬・肥料、営農サポートまで幅広くお客さまの農業経営や栽培をサポートします。

既に生産をされている方、新規就農・農業参入を検討されている方、まずはお気軽にお問い合わせください。