農地転用とは?費用相場や注意点について解説
「そもそも農地転用とは?」「許可を得るために必要な費用や期間を知りたい」など、農地転用の流れについて気になることもあるのではないでしょうか。
実際に既存の生産者の方での内を手放したいという方は数多くいます。自分で手続きを行うには、農地法「第3条」「第4条」「第5条」の内容を知っておくことも大切です。
今回は、農地を宅地に変える際などに必要な農地転用の手続き方法や費用、必要書類等を分かりやすく解説します。
目次
農地転用とは?
農地転用とは、言葉の通り、農地を農地以外のものにすることです。ここでは農地の定義や農地の現状について詳しく解説します。
農地とは
農地は、農地法第2条第1項より「耕作の目的に供される土地」と定義されています。
家畜の飼料用の牧草を育てる土地は、「採草牧草地」に分類されており農地には該当しません。
農地は不動産登記簿に「畑」「田」と登記されています。
現在は、高齢化や担い手不足の影響から農作業を行わず遊休農地として放置されている土地が多く見受けられます。
参考記事:農地とは?農地法上の定義や種類について徹底解説!
農地の現状
日本の農地面積は、国土面積の約8分の1を占めています。
時代の流れとともに宅地・工場等への転用・荒廃を理由に、一貫して減少しており、令和4年の面積は433万haで、ピーク時(昭和36年)の約7割となっています。
参考資料:農林水産省「農地法制をめぐる現状と課題」
農地転用とは
先述した通り、農地転用とは、農地を農地以外のものとして活用することです。日本は、決して国土面積が広いわけではないため、農地転用によって土地の有効活用することは、国としても力を入れている政策の一つでもあります。
近年、農業者の減少により、今まで使われてきた農地が引き継がれずに農地だけ残されていることも少なくありません。
そのほかにも土地だけ親から引き継いだが「農業はやらない」「農地としてではなく別の方法で今後活用していきたい」など、引き継いだ農地を農地以外に活用していきたいという人も多くいます。
農地転用に関する法律
農地転用する際、勝手に転用してはいけません。
農地転用に関する規則は農地法によって定められています。ここでは農地を転用する際に必要な法律をご紹介します。
農地法第3条
農地法第3条が適用される場面は、「所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合」と定められています。
条文だけではわかりづらいですが、「農地を農地のまま」他人が譲り受けるなどの場合には農地法第3条の許可が必要になります。農地法第3条は、正確には農地の転用ではありませんが、農地に関する非常に重要な規定といえます。
参考資料:農林水産省 農地制度
農地法第4条
農地法第4条が適用される場面は、「農地を農地以外のものにする者」と規定されています。
「農地を農地以外のものにする」つまり、農地を宅地や駐車場などに転用したいときは農地法第4条の許可が必要になるということです。
規定文の「者」の意味は自身の農地を自身で転用する場合という意味です。
参考資料:農林水産省 農地制度
農地法第5条
農地法第5条が適用される場面は、「農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合」と規定されています。
「農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため」とはまさに農地の転用のことををさしています。
農地法第5条は、農地を宅地や駐車場などに転用するために土地を売ったり貸したりする場合ということです。
参考資料:農林水産省 農地制度
農地転用するには農地転用許可証が必要になる場合がある
農地転用許可証とは、「農地転用許可」を申請し、都道府県知事から許可を得ると交付されます。
農地転用するには具体的にどのようにすると許可を得られるかを解説していきます。
農地転用許可制度とは
農地転用許可制度は農地法に基づく制度で、計画的かつ合理的な土地利用の観点から、農地以外の土地利用計画との調和を図りながら優良な農地を保全、人々の食料を生産するため一定の規制を設ける許可制度となっています。
参考資料:農林水産省「農地転用許可制度について」
農地転用許可証が不要なケース
農地転用に許可が不要なケースは下記の通りです。
・市街化区域内の土地についてあらかじめ農業委員会に届出ている場合
・国、都道府県または指定市町村が転用する場合
・市町村(指定市町村を除く)が、道路、河川等の土地収用法対象事業のため転用する場合等
無断で農地を転用するのは法律違反
許可を受けずに無断で農地を転用した場合や、転用許可にかかる事業計画通りに転用していない場合には、農地法違反となり、都道府県知事等から工事の中止や原状回復等の命令がなされる場合があります。
自治体の農業委員会では少なくとも年に1度は農地パトロールを行いますので、違反転用は見つかるようになっています。
農地転用の費用や期間などの手続きの流れ
初めに、対象の農地がある市区町村の農業委員会事務局に出向き、対象の農地の種別を確認します。対象農地の地図や登記情報などを持参するとスムーズです。
対象農地が原則不許可となる農地である場合は、転用の目的等を説明し転用許可となる可能性があるかどうかも併せて確認しておきます。転用が可能なようであれば、必要書類も教えてもらいましょう。窓口は農林課や農政課になりますので併せて確認しておきましょう。
期間としては、農業委員会への届出の場合は1~2週間程で、都道府県知事への許可申請の場合は40日から90日前後かかるのが一般的です。
申請に必要な費用
農地転用の申請を自分で行えば、転用そのものに費用はかかりません。ただし、申請に必要な書類の発行などには一定の手数料が必要になります。
申請に必要な書類
申請に必要な書類は下記の通りです。
・許可申請書
・土地登記簿謄本の原本
・住民票の原本(登記事項証明の表示名義人の住所が、申請書に記載された住所と異なる場合)
・位置図・公図の写し
・周辺土地利用図(住宅地図)
・事業計画書
・預金残高証明・融資証明書などの資金を証明できる書類
・土地利用計画図
・申請地の現況写真
・建設予定の建物の平面図と立面図
・排水計画図
・建築費などの資金計画書
・建築費などの見積書
・水利権者などの同意書(取水や排水の権利者の同意が必要な場合)
・土地改良区の意見書(土地改良区にある場合)
・土地家屋調査士などが作成した地積測量図
転用できる農地
自身で所有していれば、全ての農地が転用できるわけではありません。転用できる農地は、許可基準をもとに決められています。
農地転用の許可基準は2つあり、立地基準と一般基準です。ここでは許可される場合とされない場合は、どのような違いがあるのかを解説します。
立地基準
原則として「農用地区域内農地」「甲種農地」「第1種農地」の転用は不可とされています。農用地区域内農地は、農業振興地域整備計画によって定められた区域内にある農地のことです。
日本の農業の生産性を落とさないために重要な土地として定められており、農地転用は難しくなっています。
甲種農地や第1種農地は、農業に良好な条件を備えている土地です。
農業生産の基盤を整えるため、転用が認められないケースがほとんどです。
条件を満たせば許可を得られますが、そのハードルが非常に高く設定されているため、許可を得るのが難しいのが実態です。
一般基準
転用後の目的の確実性や、周辺農地への影響などの基準を満たしているかも確認されます。
申請された転用目的を達成する資金力がないとみなされた場合や、転用することによって土砂の流出が起きるなど、近隣に迷惑をかける恐れが高い場合は、許可が下りない可能性があります。
また「過去に虚偽の申請をしている」「工事完了後に提出が必要な書類を出していない」など、農業委員会が不適切とした人物に当てはまる場合も不許可になり得ます。
農地転用して土地活用する
農地転用後の代表的な土地活用としては、以下のようなものが挙げられます。
・マンションやアパートを建設し経営する
・駐車場などの経営する
・店舗やビルなどの経営する
・太陽光パネルなどの設置場所として活用する
・別荘や駐車場、倉庫などでの自己使用
自己使用を除いて、いずれも農業とは一切関係がない活用方法です。
新たな形で土地活用をする場合は、必要な知識を身につける必要もあります。
農地転用に関する注意点とは
農地転用をして住宅を建てたい、土地を別の活用をしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
農地転用の手続きは完了までに時間がかかることもあります。また、場合によっては土地改良が必要なケースもあるため、余裕をもってスケジュールや資金計画を立てておけると安心です。
登記地目の変更
土地の用途を変更する際には、地目(ちもく)変更を行うことが法律で定められています。例えば、農地転用をして家を建てる場合には、「宅地」に地目変更しなければなりません。
農地転用後の固定資産税
地目変更をすると、固定資産税の課税額が変わります。
これは、地目が変更されることで、固定資産税の計算に使われる固定資産税評価額が変わるためです。「農地(田や畑)」から「宅地」に地目が変わると、土地の価値が上がり、評価額は上がるのが一般的です。
農地転用の申請やお困りごとは各市区町村の農業委員会事務局へ相談!
農地転用の申請やお困りごとは各市区町村の農業委員会事務局へ相談してください。農地転用は、申請に時間がかかることが想定されます。お早めの相談をおすすめします。
参考資料:農林水産省「農地転用許可制度について」
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