循環型農業とは?メリット・デメリットについて解説
近年、気候変動や資源の枯渇といった環境問題が深刻化する中、農業のあり方にも持続可能性が求められるようになってきました。
その中で注目されているのが「循環型農業」です。
本コラムでは、循環型農業の基本的な考え方から、メリット・デメリット、そして関連する取り組みについてわかりやすく解説します。
循環型農業とは

循環型農業とは、化学肥料や農薬の使用を抑え、資源を循環させることで自然環境への負荷を軽減する農業を指します。
家畜の排せつ物を堆肥化したり、食品残さを飼料化するなど、資源の再利用を重視する方法です。
循環型農業のメリット

ここからは、循環型農業を行って得られるメリットについてご紹介します。
持続可能性の向上
循環型農業は、資源の再利用や環境への配慮を通じて、持続可能で安定した農業生産を可能にします。具体的には、次の3点が挙げられます。
資源の適切な利用
副産物や廃棄物を堆肥などに再利用することで、化学肥料の使用を抑え、土壌や人体への悪影響を軽減します。
生態系への負荷低減
化学肥料や農薬の使用を減らし、生物農薬や天敵動物などを活用することで、生態系との調和を図ります。
循環経済の促進
廃棄物の再利用により、資源の枯渇や廃棄物の増加を防ぎ、循環型の経済活動を推進します。
消費者・生産者の安全性が向上
化学的な肥料や農薬の使用を最小限に抑えるため、農作物を食べる人にとっての安心感に繋がります。また農業に従事する人々にとっても、農薬散布などによって有害物質へ触れてしまうリスクが減ります。
結果として、消費者と生産者の双方にとって、より安全な環境が整うのです。
ブランドイメージの向上
循環型農業の導入は、企業や生産者の社会的評価を高めることにも寄与します。環境保全や資源の有効活用といった持続可能な取り組みを重視することで、SDGs(持続可能な開発目標)への積極的な姿勢を外部に示すことができます。
近年では、政府や企業による啓発活動の影響もあり、環境に配慮した商品を選ぶ消費者が増加傾向にあります。こうした流れの中で、循環型農業は環境保全を重視する層からの支持を得やすく、ブランド価値の向上にもつながるといえるでしょう。
参考:イノチオグループ – SDGs志向型経営
交付金・補助金の対象になる
持続可能な農業への転換を支援する制度として、国はさまざまな交付金を設けています。
循環型農業や有機農業の推進、環境負荷の低減、地域資源の活用などに取り組む農業者に対して、経済的な支援が行われています。
以下では、代表的な2つの制度について概要と注意点を紹介します。
環境保全型農業直接支払交付金(令和7年度)
概要:化学肥料・化学合成農薬の使用を原則50%以上削減する取り組みとともに、有機農業の実施や堆肥の施用など、環境に配慮した営農活動を支援する制度です。
注意点:予算の範囲内で交付されるため、申請額が全国合計で予算を超える場合は交付額が減額される可能性があります。また、農地の所在する市町村によって申請の可否や条件が異なるため、事前に確認が必要です。
参考:農林水産省「環境保全型農業直接支払交付金」
みどりの食料システム戦略推進交付金(令和6年度)
目的:持続可能な農業への転換を目指すため、有機農業の推進や環境負荷低減、地域資源活用、エネルギー導入などの活動を支援します。
注意点:事業ごとに申請様式や窓口が異なります。また交付対象の要件が細かく定められていることもあるので、申請にあたっては事前の下調べや準備が不可欠です。
参考:農林水産省「令和6年度みどりの食料システム戦略推進交付金(当初予算)」
循環型農業のデメリット
続いて、循環型農業のデメリットをご紹介します。
生産の安定に時間がかかる
環境保全と持続可能な生産を目指す一方で、安定した収穫体制の確立には一定の時間がかかる傾向があります。
循環型農業は、従来の化学肥料や合成農薬の使用を控え、土壌の健全性や生態系への影響を重視した方法を採用します。そのため、新しい栽培技術や管理方法に慣れ、生産量や品質を安定させるまでには、数年単位の試行錯誤が必要となる場合もあります。
病害虫被害のリスクが高まる
循環型農業には、病害虫による被害リスクが高まる可能性があるという課題もあります。化学合成農薬の使用を控え、自然由来の防除手段に依存するため、従来の農薬に比べて即効性や安定性に欠ける場合があります。
たとえば、天敵の導入や植物の持つ防御機能を活用する方法は、環境には優しいものの、効果が現れるまでに時間がかかることや、状況によって成果が左右されることもあるため、病害虫対策としては慎重な運用が求められます。
初期投資が必要
循環型農業の導入には、一定の初期コストが伴う点も見逃せません。栽培を始める際は有機肥料や有機資材の確保が不可欠であり、それらの購入費だけでなく、信頼できる供給元を探すための時間や労力も必要になります。
さらに、堆肥化のプロセスやバイオマスエネルギーの活用を視野に入れる場合は、専用の設備投資も求められるため、導入初期には資金面・運用面での準備が重要となります。
技術の習得に時間がかかる
循環型農業の実践には、従来の農業とは異なる専門的な知識が求められる点も課題のひとつです。
循環型農業では、資源の循環利用を前提としており、有機資材の管理や堆肥化のプロセス、資源の再活用などに関する理解が不可欠です。
環境への配慮や独自の栽培技術を取り入れる必要があるため、現場での作業と並行して新しい知識を身につけることは、簡単ではない場合もあります。
環境に配慮した農業を実践するお客さま事例をご紹介!

循環型農業は、持続可能な農業の一つの形として注目されていますが、同じく環境への配慮を重視した農業として「有機農業」も広がりを見せています。
次にご紹介するのは、こうした環境志向の農業を実践されているお客様の有機農業の取り組みです。
有機農業を世の中へ広めたい | 株式会社オーガニックnico
京都市西京区にある株式会社オーガニックnicoは、有機農業の普及と技術の標準化を目指して活動しています。ミニトマトやイチゴなどを有機栽培しており、イノチオの高性能ビニールハウス「ドリームフィールド」の導入によって、採光性を確保し、年間収量を1.5倍に向上させました。
有機農業の技術を誰でも実践できる形にすることを目標に、実証農場としての役割も担っているオーガニックnico。社長である中村新さんは「実証した技術を他の栽培環境や地域でも実現できるように標準化を目指すことで、誰でも取り組める農業を実現することが私たちのビジョンです」と語っています。
将来的には、農林水産省が掲げる「有機農業の栽培農地25%」の達成に貢献するべく、日々有機農業に取り組まれています。
農業を始めるなら、まずはイノチオアグリへご相談ください

循環型農業は、持続可能な農業の一つの形として注目されていますが、環境に配慮した農業の取り組みはそれだけではありません。
有機農業や施設栽培など、多様なアプローチが現場で実践されています。
イノチオアグリでは、ビニールハウスの設計・施工・販売を中心に、個人の新規就農や企業の農業参入支援、資材提供など、農業のスタートと運営を幅広くサポートしています。
持続可能な農業や施設栽培にご関心のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。