三重県松阪市でミニトマトの生産・販売を行っているうれし野アグリ株式会社。オランダ型のガラス温室、再生可能エネルギーの活用、複合環境制御システムなど活用して取り組む農業。4社コラボレーションによる農業参入に至った経緯についてインタビューをさせていただきました。

所在地等
三重県松阪市
面積
3.2ha
栽培作物
ミニトマト
導入設備
オランダ製ガラス温室 栽培ハウス「サンタルーフ」 環境制御システム「iSii」 LED(フィリップス社製) 収穫台車

辻製油が農業へ参入したきっかけ

辻製油株式会社は、創業75年(2021年時点)の植物油の製造会社です。

植物油は、製造時に大量のエネルギーが必要になります。当初、エネルギーに石油を使用していましたが、途中で国産エネルギーに代替えするということで、バイオマスボイラーを導入しました。

私たちの会社がある三重県は、県土の約65%(令和元年度の統計)が森林のため、大量に出る間伐材などを利用して蒸気を作り、蒸気をエネルギーに植物油を製造するようになりました。その際に、製油工場から発生する大量の温水の活用方法について三井物産へ相談したことが、農業参入のきっかけです。

4社コラボレーションで生まれた新事業

はじめから農業参入というわけではなく、農業を含め温水の活用方法について三井物産から提案を受けました。同じ時期に三重大学からのご紹介で浅井農園の浅井社長と出会いました。この出会いが農業参入、ミニトマトの栽培へとつながりました。

そして、肝心の栽培施設について相談すると三井物産さんが「設備だったらイノチオさんが一番信頼できる」とイノチオグループの石黒功社長を紹介していただき、4社協力による農業事業がはじまりました。

採光性バツグン!オランダ製 ガラス温室

7年前、イノチオアグリに依頼をしてオランダ製のガラス温室を輸入して建設してもらいました。

一番のメリットが採光性です。オランダの光の少ない環境の中で作られているため、施設内に取り込む光の量は日本のビニールハウスよりも圧倒的に優れていると実感しています。また、軒高も6mある高軒高の仕様になっているので、より良い環境下でミニトマトの栽培ができています。

さらに当社の温室は、強化ガラスを使用しているので、強度に関しても申し分ありません。

思うようにカスタマイズ 環境制御システム「iSii」

オランダ製の環境制御システム「iSii」は日照状況をはじめ、二酸化炭素の濃度、温度・湿度などの栽培環境を感知して、生産者が使いたいようにカスタマイズできる点がメリットです。

例えば天窓をあけたい、換気したいという要望に対して、使う側がわかりやすい仕様にできるのも特徴だと思います。そのような点は日本製の環境制御器と比べて差別化できていると思います。
※現在は、iSiiの後継機種である環境制御システムIIVOを取り扱っています。

LEDの光をプラスして収穫量増を狙う

フィリップス社製のLEDも、収量増を狙って導入しています。

太陽光にプラスして、適切な波長・角度・強さに調整されたLEDの光を当てることで、収穫量増が期待できます。日射量の少ない冬場でも、収穫量が上がっていることがはっきりと数字に表せています。

農業事業でSDGsに貢献する

現在、うれし野アグリでは正社員約10名、パート従業員約110名の雇用をしています。
パートタイマーの大半は地元で暮らすお母さん方です。
地元で新たな産業をはじめるということは、新たな雇用を創出することにもつながっています。

それから、うれし野アグリで使用している暖房は、バイオマスエネルギー。
電力は、水力や風力などの再生可能エネルギーを使用して生産を行っていくことを考えています。
まさにSDGsに沿った農業を構築していけると思います。

農業でカーボンニュートラル:バイオマスボイラーの利用

代替エネルギーを活用した農業は、持続可能性や環境保護に配慮した農業の一つとして考えられています。
親会社である辻製油株式会社では、「バイオマスボイラー」を熱源として蒸気を発生させ、その蒸気を使って植物油脂の製造を行っています。

うれし野アグリでは、ビニールハウスまでパイプラインを引き、冬の暖房エネルギーとして辻製油工場から排出される180度の蒸気と工場から排出される90度の温水を熱交換して、ビニールハウス内の暖房に使用しています。

うれし野アグリでは、暖房に化石燃料を一切使用せず、バイオマスボイラーと辻製油の工場からの熱エネルギーのみを使用しています。カーボンニュートラルの視点を持った農業は、持続可能性やエネルギー削減につながるため、今後ますます注目されることが予想されます。

コラム:農業参入に付加価値を!カーボンニュートラルとは?

一緒に日本の農業を盛り上げたい!

イノチオグループには、日本の農業を背負っていって欲しいと思います。
そして、お互いに切磋琢磨して成長し合える関係を作っていきたいです。

また、グローバルに活躍するイノチオグループには、世界のトレンド情報や農業資材を生産者へ提供していただき、収量増や利益増につなげてくれることにも期待しています。
そして、一緒に日本の農業を盛り上げていくことができたら嬉しいです。

うれし野アグリが導入するビニールハウス

SANTAROOF
高収量を実現するオランダ式高軒高のビニールハウス

SANTAROOFは、トラス構造を用いた設計で、ビニールハウスの柱高を最大6.0mまでとした広い栽培空間を実現できるオランダ式高軒高のビニールハウスです。

作物を上部に伸ばすことで高収量を目指せるハイワイヤー栽培にも対応。トラス構造の採用や部材の強化によって高強度を実現。さらに、屋根部材の小型化によってビニールハウス全体に太陽光が行き届く高い採光性を確保し、作物の成長を促進させます。

広い栽培空間による高い換気効率が温度や湿度のムラを減らし、栽培を安定できることも特徴です。企業の農業参入や大型施設を中心にビニールハウスの価格や建設プラン、栽培開始後の事業プランまでトータルでご提案いたします。

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Bosman Van Zall社製ハウス

イノチオアグリでは、施設園芸先進国オランダでもトップクラスの技術力を持つボスマン・ファン・ザール社の大規模温室をはじめとした、施設・設備を日本国内で施工・販売を行っています。

特筆される技術の一つが、温室の屋根にプラスチックフィルムを展張する「テンション技術」。屋根構造を省部材化することで、ビニールハウスの採光率を向上させるとともに、低コスト化を実現しています。

野菜、花き、医療品作物など、作物生産のための園芸施設やシステムを開発、設計、施工する創業100年のメーカーです。60名以上のエンジニアが在籍。専門知識を活かし、世界で高度なプロジェクトを展開しています。

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うれし野アグリが導入するスマート農業製品(内部設備)

環境制御システム IIVO
作物・環境とテクノロジーをつなげる!

IIVO(アイボ)は、オランダのホーヘンドールン社が開発した高性能環境制御システムです。

機能的なソフトウェアと最先端のハードウェアで構成されています。それにより、作物の力を最大限に引き出します。ビニールハウスの規模や天候に関わらず、ビニールハウス内の環境をすばやくモニタリングし、作物にとって最適な環境を維持することができます。

大規模で農業参入を検討されている方、高品質・高収量を目指している方へおすすめの環境制御システムです。
※IIVOは、うれし野アグリが導入しているiiSiの後継機種です。

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ビニールハウスを建てる前に知っておきたいポイント

個人の新規就農や企業の農業参入で施設園芸の分野で農業をはじめる場合に、ビニールハウスの建設は不可欠です。しかし、ビニールハウスと一言に表現しても種類や規模、導入する設備によって金額感が大きく変動してきます。

こちらでは、お客さま事例のうれし野アグリのように栽培を行うために、ビニールハウスを建てる前に知っておきたいポイントをご紹介します。

知っておきたいポイント➀ビニールハウスの構造体

ビニールハウスの価格は、建設面積の大型化や、軒高(柱高)が高くなることによって、ビニールハウス価格が上がる傾向にあります。それに加えて、風速や積雪等の厳しい地域では、土地環境に耐えうる構造体で設計されるためにさらなるコストアップとなります。

ビニールハウス価格を抑える際は、ビニールハウスの性能を損なわない形で、用地に基づく合理的な設計をすることで金額抑制に繋がります。弊社はお客さまの予算、栽培作物、栽培方式、土地環境をもとにビニールハウス1万棟の建設実績から仕様やビニールハウス建設プランをご提案いたします。

知っておきたいポイント➁被覆材

ビニールハウスのイニシャルのコストダウン、または費用対効果の検討ポイントの1つ目として被覆材があります。ビニールハウスの被覆材は農業用ビニール(農ビ)、ポリオレフィン系フィルム(POフィルム)、硬質フィルムなどがあり、耐用年数や製品特性に応じてフィルムの選定をします。性能や耐久性の高い製品を展張の場合、フィルムそのものの価格とともに、施工方法に伴う資材や工事費も高価となります。

耐用年数3~5年の被覆材と15年以上の長期展張型フィルムを比較すると、 100万円以上の価格差が生じるケースもあります。そのため、立地条件、栽培作物、栽培スケジュール、ご予算などから、お客さまにとって最適な性能(耐用年数、厚み、保温性、透光率、波長、流滴性)の被覆材をご提案いたします。

知っておきたいポイント➂内部設備

ビニールハウスのイニシャルのコストダウン、または費用対効果の検討ポイントの2つ目としてハウス内部設備があります。ハウス内部設備は選択する仕様によって、ビニールハウス本体の価格と同程度またそれ以上の価格になることもあります。

遮光や保温を行う内張りカーテン装置、ビニールハウス内の温度管理を行うための暖房設備やヒートポンプ設備、ハウス内の温度環境の均一化を目的とする循環扇などの空調設備、炭酸ガス施用設備、環境設備や潅水設備など、設備仕様は多岐にわたります。

内部設備の選定に関しても、ビニールハウス建設実績1万棟以上の知見を活かして、栽培作物と目的に適したビニールハウスの内部設備をトータルでご提案いたします。

企業が農業参入するまでの流れ

企業が農業参入する上で、事前準備が非常に重要です。
新規就農・農業参入における流れや準備物を個人及び担当者で調査し、明確化することは非常に難しいです。そのためビニールハウスや施設園芸に携わり50年以上の知見を活かし、農業参入するまでの流れをご説明します。

農業参入するまでの流れ➀事業構想の作成

先ずは、企業が農業参入をする事業の目的、参入意図、栽培作物、販路の4つを整理します。

企業の場合、目的や参入意図として、独立した事業での農業生産のみならず、既存事業との相乗効果発揮や人材の再雇用先創出、SDGsやCSRなどの観点による企業PR強化、新規事業での参入などが多く見られます。
まずは企業として、どのような目的や意図を掲げて参入をするのか?どのような栽培作物を栽培するのか?生産した農産物をどこに販売するのか?を検討することからはじめましょう。

各目的に応じて、必要な検討材料が異なります。
例えば、新規事業の場合は農業参入を行うことでのイニシャルコスト、ランニングコストをもとに検討を重ねる必要があるため、検討段階の初期からハウスメーカーに相談することが重要です。

農業参入するまでの流れ➁作物選択と事業計画・収支シミュレーション

事業構想の作成が明確になり次第、ハウスメーカーに相談を行い、事業計画を作成していきます。
イニシャルコストでは、ビニールハウスの仕様やビニールハウス本体以外の内部設備、栽培1年目の準備物を検討していきます。ビニールハウスは各製品によって、適用作物、耐積雪及び耐風速、間口や奥行などの仕様が異なるため、土地を探す前に理解しておくことがポイントです。
事業構想に最適なビニールハウスや導入設備をハウスメーカーに提案していただきましょう。

ランニングコストでは年間の売上原価や販売費、一般管理費の試算をもとに、必要な人員やコストを把握します。大規模な農業経営では作業時間から算出した人員の確保が非常に重要であり、人員確保できない場合は事業を軌道に乗せることが困難です。そのため事業開始時の人員を明確に把握し、準備しておきましょう。

一例としてコスト面としてはビニールハウスの修繕や頻度を事前に把握することがポイントです。
ビニールハウスの被覆材は耐用年数によって修繕費用や頻度が異なるため、把握した上で信頼できるハウスメーカーとハウスの仕様を決めていきましょう。

農業参入するまでの流れ➂農地の確保と調査・測量

農地の確保は、求める農地の条件が明確になり次第、各市区町村や農業委員会に相談し、候補地を探していくのが一般的です。
すでに農地の候補が複数決まっている場合は、思い描く目的や意図をもとに最適な土地なのか?建設可能なのか?栽培に適しているのか?を確認しましょう。必要に応じて、水質などの調査も行い、栽培開始に向けたリスクを事前に把握した上で対処しましょう。

加えて、大規模ビニールハウスを建設する場合は外部環境にも注意するべきです。
周辺地域への深刻な環境負荷が起きないかなどの検討も必要になります。農場から排出されるリスクを最低限にするなど、農地確保段階で周辺調査は専門的な企業へ相談しましょう。

農業参入するまでの流れ④ハウス仕様の決定

計画段階では、栽培エリアのみならず、機器設置エリア、選果エリア、集出荷スペース、そして事務所や制御室、休憩室などを併設することがあります。管理方法、作業動線などを緻密に計画、配置などのプランニングを行う必要があります。
それらの建屋は栽培エリアではないため、建築や設置の考え方が大きく異なることがあります。事業計画段階で行政確認のうえで、信頼できる業者と連携して進めることが望ましいです。

農地の確保と調査、測量、行政確認が確認でき次第、土地に沿った仕様でビニールハウスと内部設備を最終確定していきましょう。
特に大規模圃場の際は、イニシャルコストだけでの判断ではなく、適切な圃場運営を実現するための労働効率や作業導線、異常気象や故障のフォロー体制、栽培支援などのリスク対策も含めて総合的に判断しましょう。

一方で補助事業の場合、施設仕様の妥当性を重点に捉える必要があります。
闇雲に「軒を高くする」「重装備な設備を入れる」などは、収支採算上のこと以外に、選定理由や規模の決定根拠で「過剰設備」と判断されることもあります。導入実績例や必要性を明確にして仕様決定していきましょう。

イノチオアグリは新規就農・農業参入を支援します

イノチオアグリについて

イノチオアグリは施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に携わり、50年以上の知見がございます。50年以上に渡り、培ったノウハウを活かし、農業参入・新規就農を計画段階からご支援しております。お客さまのご要望や条件に基づいて農場を設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。

さらに、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。

ビニールハウス事業

イノチオアグリでは作物や栽培方式、土地環境に沿ったビニールハウスをご提案。10年間に渡る収量や収益性の試算からお客さまの理想を実現するビニールハウスとスマート農業製品などを含めたハウス内部設備、農業経営の開始後までトータルでご提案いたします。