農業に従事する日々は、自然との戦いです。特に施設園芸のように、ビニールハウスを使用する場合は、台風や大雨などで作物だけでなく、ビニールハウス本体への被害も心配になるでしょう。そこで今回は、万が一の事態に備えて、どのような保険がかけられるかについて解説していきます。保険の知識だけでなく、ビニールハウスへの被害を防ぐためのメンテナンスや対策についても紹介します。

ビニールハウスにおける自然災害の実態

日本は、台風や地震だけでなく、近年は線状降水帯やゲリラ豪雨による局地的な大雨災害が増えてきています。数年前になりますが、2019年に発生した台風19号では広範囲で甚大な被害が発生し、農林水産関係の被害額は3,000億円を超えました。

農林水産省の発表によてば、平成元年~令和2年の33年間での農業への自然災害被害額は16兆2,880億8,400万円とされており、地震以外の自然災害では、台風による被害が大半を占めています。

自然災害は待ってはくれないため、直前に対策をしようとしても必要資材の不足などで対策が間に合わない場合があります。万が一の事態に備えて、日常的な準備と対策が必要になってきます。

ビニールハウスを襲う自然災害の種類

自然災害による被害は、ビニールハウス本体の破損や倒壊被害だけでなく、設備や生産している農作物への被害も受けるリスクがあります。修復費の発生だけでなく、収穫もできず収入減という悪影響につながってしまう恐れもあります。

では、実際に台風や強風による被害の種類について解説します。

強風被害

台風の風速の強さは最大33m/秒以上からとされています。最大風速33m/秒とは、走行中のトラックが横転する恐れがあるレベルです。最大風速33m/秒の強風をビニールハウスが受けると、外側の被覆フィルム全体に風が当たりパイプハウスの場合だと形状が変形したり、ビニールが浮き立ち、風の力が加わりやすくなることで破損する恐れがあります。

関連記事:ビニールハウスの台風・強風対策とは?押さえておくべきポイントを解説

浸水被害

ビニールハウスの近くに河川がある場合は増水により、台風による大雨によってハウス内が浸水してしまう恐れがあります。

さらに土壌の水はけが悪い土地環境であれば地盤が緩み、基礎構造のないパイプハウスでは強度が弱まり、パイプが抜けやすい状態になります。

また、大雨は農作物に対しても悪影響を与えます。
浸水は根を腐らせハウス内に雑菌を持ち込みます。さらに、湿度が高い状態が病気の発生を助長してしまいます。

特に育苗の時期に病気が発生してしまうと、生育不良に繋がり収穫が減少、最悪の場合は収穫自体ができなくなる可能性もあります。

落雷被害

ビニールハウスは、その構造上、落雷に対して非常に脆弱です。落雷が直接ビニールハウスに当たると、ビニールハウス内の電気系統や可燃物に引火し、火災に発展するケースが最も多く見られます。
その他にも、落雷の衝撃でビニール被覆が破れる、骨組みが損傷したりする場合もあります。

また、被害はビニールハウスだけではありません。落雷による高電圧が電気設備に流れ込み、故障やショートを引き起こします。

落雷は農作物の損失だけでなく、ビニールハウスや設備の復旧に時間と費用を要するため大きな打撃となります。

積雪被害

地域は限定されますが、積雪による被害もあります。
一般的に雪が真下に降り積もると、ビニールハウスの屋根面に積もる雪の荷重と側面に堆積した雪や屋根から滑落した雪によってビニールハウスに圧がかかります。

さらに、積雪には強い風が伴います。風の影響により、積雪量にも偏りが生じて、屋根面の片方だけに多く積雪してしまう恐れがあります。

積雪は、見た目以上に重量があり、最悪の場合にはビニールハウスが倒壊してしまうケースもあります。

ビニールハウスの建設前に知っておきたい「農業保険」

ビニールハウスは決して安い買い物ではありません。毎年のように台風がやってくる日本において、ビニールハウスを建設して施設栽培を行っている農家は、自然災害が発生したときのために備えておく必要があります。

最近は、台風以外にも急な線状降水帯の発生によって、甚大な被害が増えています。今まであまり台風や大雪の被害を受けたことがない地域であっても、農業保険などで万が一の事態に備えておく必要があるでしょう。

農業保険のポイント

自然災害によってビニールハウスが被害を受けると、ビニールハウスが使えなくなるだけでなく、設備や作物にも被害が及んでしまう場合があります。そのため、農業保険を選ぶときには補償の対象に何を含めるのか注意しましょう。

また、どれくらいの保険金を受け取れるのか、どのような状況のときに保険金が支払われるのかについても確認しておきましょう。

ビニールハウスを対象とした保険

それでは、具体的にどのような保険があるのか見て行きましょう。今回する内容は、一部抜粋にてのご紹介になるため詳細が気になる方は個別にご相談をしてみることをおすすめします。

NOSAI(全国農業共済協会)の「園芸施設共済」

NOSAIは、農業保険法に基づく保険商品を提供しています。掛け金(保険料に相当)の50%を原則として国が負担するため、少ない支出で大きく備えられるという点が特徴です。

各共済制度に加入することで、自然災害などで損害を受けたときに共済金(保険金に相当)を受け取れるという仕組みになっています。

施設園芸を行う農家は「園芸施設共済」に加入することで、ビニールハウスなどの施設やハウス内の作物に対する補償を受けられるのです。

園芸施設共済では台風や大雪などの自然災害だけではなく、「車両が衝突した」、「飛行機が墜落した」といった幅広い事故にも対応しています。

基本補償として、施設の資産価値の8割を上限とした共済金が支払われます。復旧に掛かる費用や撤去に掛かる費用などに対応した補償をオプションでつけることも可能です。

また、新築のビニールハウスだけでなく、耐用年数が経過したビニールハウスへも最大で再建築に必要な費用の4割を受け取れます。

掛け金は補償内容によって異なりますが、共済金の1.2%程度となります。例えば500万円の共済金を受け取るには年間60,000円ほどの掛け金が必要になります。

参考サイト:全国農業共済協会(NOSAI協会)「園芸施設共済」

ビニールハウスメーカーの独自保証

ビニールハウスを販売するメーカーの中には、独自の補償制度を設けている会社もあります。イノチオアグリでも、新築ビニールハウスを対象に「新築ハウス3年補償」という制度を設けております。

イノチオアグリの「新築ハウス3年補償」では、「風災・ひょう災・雪災」「火災」「落雷」「水災」「不足かつ突発的な事故」「農業用付帯設備の故障」などを対象に一部費用を補償しています。

こちらの内容はあくまで概要となりますので、詳しくはお近くの営業所またはホームページよりお問い合わせください。

関連ページ:グループ企業-イノチオアグリ株式会社

民間の火災保険

民間の火災保険のなかには、自然災害による建物などの被害を補償する特約が付いたものがあります。それにより、自然災害によるビニールハウスの被害に備えられることもあるでしょう。

こちらは各損害保険会社・地域・規模など、さまざな要件によって内容が異なってくるので、ご自身でお調べになるか、ビニールハウス建設を依頼する会社に相談してみると良いでしょう。

ビニールハウス以外の被害に備える「収入保険」

自然災害によってビニールハウスや作物に被害があるだけではなく、収入面での被害も想定できます。

先ほどもご紹介したNOSAIでは、自然災害によって収入が減少したときに補償を受けられる「収入保険」も提供しています。国が保険料の50%を負担してくれるだけでなく、保険金の1.08%という低い負担で加入できる点も魅力です。ビニールハウスの損害に備える保険や共済と一緒に加入しておくことで、万が一のときにも安心できます。

参考サイト:全国農業共済協会(NOSAI協会)「収入保険」

日々のメンテナンスと対策で被害を最小限に抑える!

台風や大雪などの自然災害によるビニールハウスへの被害を最小限に抑えるためには、日々のメンテナンスと対策が重要です。

例えば、ビニールハウスの本体や被覆材に破損箇所はないか?補修できる箇所はないか?と日常のなかで確認をして対処することが被害を未然に防ぐことにつながります。

自然災害はいつ起こるか分かりません。特に近年、異常気象が起こりやすくなってきているため、従来よりも災害に備える意識を高める必要があります。

万が一の事態に備え、日頃からビニールハウスの点検や補強を行うとともに、罹災した場合でも自身の負担が少なくなるよう農業保険に加入しておくなどの対策を行うことが、安定した農業経営につながります。

ビニールハウス建設のご相談はイノチオアグリへ!

農業用ビニールハウスにたずさわり50年以上の歴史を持つイノチオアグリは、数多くお客さまの農業用ビニールハウスの建設をさせていただきました。

イノチオアグリでは、農業ビニールハウスやスマート農業製品だけでなく、新規就農や農業参入の支援、収支シミュレーションに基づく作物や栽培方法のご提案や各種資材の提供まで、お客さま一人ひとりの状況に合わせて総合的にサポートさせていただきます。

農業用ビニールハウスをはじめ農業に関するお悩みは、ぜひイノチオアグリへご相談ください。