ビニールハウスでのイチゴ高設栽培メソッド
近年、イチゴの栽培方法が土耕栽培から養液と高設栽培ベンチを使用した「イチゴ高設栽培(養液栽培)」へと変化しています。イノチオアグリでも、お客さまからイチゴ高設栽培について数多くのご相談をいただいています。
今回は、ご相談の中でも特に多い「理想のビニールハウス」「イチゴ高設栽培のメリット・デメリット」「イチゴ栽培の作型紹介」「イチゴ高設栽培の生産者事例」についてご紹介します。
目次
- イチゴ高設栽培に理想のビニールハウス
- イチゴ高設栽培のメリット・デメリット
- イチゴ栽培の作型紹介
- イノチオアグリのイチゴ高設栽培ベンチストロベリーハイポ
- イチゴ高設栽培におすすめビニールハウス
- イチゴ高設栽培におすすめのスマート農業システム
- イチゴ高設栽培の生産者事例梅原 広隆さん(静岡県)
- いちごに最適なビニールハウスをご提案
イチゴ高設栽培に理想のビニールハウス
イチゴ高設栽培にビニールハウスは必要不可欠です。理想の栽培環境の実現にかかる費用と確保できる予算を比較しながら、目的に合ったビニールハウスを建設していきます。ひとことに理想の栽培環境と言っても、それぞれ求める条件によって変わってきますが、新規就農の場合は以下の5点を抑えましょう。
【ビニールハウス選びの5大ポイント】
➀低コスト ➁耐久性 ③保温性 ④通気性 ⑤採光性
しかし、すべての条件に高機能を追求すると予算超過をしてしまう可能性があるため、信頼できるビニールハウスメーカーの担当者と相談をしながら検討を重ねていくことをおすすめします。
ビニールハウスの基本構造
ビニールハウスの基本構造は、鉄骨やパイプなどの骨組みと被覆材と呼ばれるフィルムです。鉄骨製のビニールハウスとパイプ製のビニールハウスで比較されることがありますが、台風や強風に懸念がある場合、耐候性がある頑丈な鉄骨製のビニールハウスをおすすめします。
注意点として、ビニールハウスのコストは骨組みによって左右されますので、予算と長期的な経営視点から選ぶことが重要となってきます。ビニールハウスの大きさは、間口・柱高・長さで決まります。
柱高は高い方がビニールハウスの体積が増えるため温度変化が少なくなります。イチゴ栽培では内張りカーテンでビニールハウス内を二重構造にすることで、冬の暖房効率を高めることが一般的です。ビニールハウスの長さが長すぎてしまうと、養液の点滴チューブに十分な水圧がかかりにくく、作業効率が悪くなるため50m以内が一般的です。
イチゴ高設栽培のメリット・デメリット
養液の自動灌水制御システムを活用したイチゴ高設栽培では、土耕栽培と比べて高設ベンチの費用がかかってくるため、導入にお悩みではありませんか。そのような方のために、イノチオアグリがお客さまにご案内しているイチゴ高設栽培のメリット・デメリットをご紹介します。
- メリット
-
- 楽な姿勢で栽培できる
- 病気のリスクが少ない
- 安定した栽培が実現できる
- 栽培をマニュアル化できる
- 栽培管理が難しくない
- 拡張設備の設置ができる
- デメリット
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- コストが高い
- 養液栽培の知識習得が必要
- 自動灌水制御システムの種類が多い
- 植えられる株数が少ない
高設栽培のメリット
1:楽な姿勢で栽培できる
高設栽培ベンチを使用することで、基本的に腰よりも上の高さで栽培作業が行えます。腰をかがめたり、立ったり座ったりしないので、腰や膝や肩などに負担がありません。長時間の栽培作業も楽に行えます。イチゴ狩りなどの観光農園では、立ち姿勢で利用できる高設栽培ベンチが採用されています。
2:病気のリスクが少ない
高設栽培ベンチを使用することで果実が宙に浮いているため、土耕栽培の際に発生しやすい感染症にかかりにくいなど栽培上のリスクを減らすことができます。
3:安定した栽培が実現できる
土耕栽培の場合、圃場ごとに土壌環境が異なるため、土壌の性質に合わせた栽培が求められます。しかし、高設ベンチ栽培の場合は培養土の性質が一定しているので、どこであっても安定した栽培が行えます。時間のかかる土づくりの必要もないので、一作目から安定した栽培が行えます。
4:栽培をマニュアル化できる
養液の濃度や量などを数値として設定できるので、それを用いて誰にでも栽培を行うことができます。日々の栽培記録もマニュアルとして残せるので、次作の際の栽培改善にも使用できます。さらに、栽培管理者の育成、後継者の育成にも活用できるので、持続的な栽培や規模拡大を目指せます。
5:栽培管理が難しくない
天候状況、ハウス内の気温や湿度を踏まえて、最適な肥料を与えることができます。固形肥料だと与えすぎた場合に止めたり、減らしたりすることが難しいですが、養液を使用した場合は調整ができるためそのようなリスクへの心配が必要ありません。
6:拡張設備の設置ができる
病害虫対策設備である自走式防除機や紫外線(UV-B)蛍光灯などの拡張設置が容易です。自走式防除機を導入することで重労働な消毒作業を自動化でき、業務時間の削減にもつながります。
高設栽培のデメリット
1:コストが高い
土耕栽培と比べて栽培の安定性が高い反面、高設ベンチと自動潅水制御システムを使用するためランニングコストの大きな差はありませんが、初期のイニシャルコストが高設栽培の場合はかかってきます。
2:養液栽培の知識習得が必要
養液栽培と土耕栽培では、同じ作物でも栽培方法が異なるため、養液栽培特有の知識習得が必要になります。また、養液栽培の場合は自動灌水制御システムなどの知識習得が必要となるため、既に使用している生産者の下で研修を行う、導入するメーカーのサポートなどが必要になってきます。
3:自動灌水制御システムの種類が多い
ビニールハウスメーカー、農業資材メーカー、異業種メーカーなど、さまざま企業が自動潅水システムを出しているため、自身に合ったシステムを見つけることが未経験者では困難だと言えます。
最適な方法としてはビニールハウスからシステム、栽培方法までトータルでサポートを受けられるパートナーへ依頼することです。
4:植えられる株数が少ない
土耕栽培では通路は人の足が通れる広さがあれば十分ですが、高設栽培では人の肩幅よりも広い通路幅が必要となります。そのため、そのため、畝数(ベッド数)は高設栽培のほうが少なくなります。
それにより定植株数が数パーセントから十数パーセント減ることもあります。しかし、1株あたりの収穫量の増加や日常の作業効率を考量した上で、高設栽培を選ばれる方が増えています。
イチゴ栽培の作型紹介
作型とは、作物の栽培時期や栽培方法のことを指します。どの作型が自分のビジネスモデルに合っているのかを見極めることが成功の秘訣です。こちらでは、イチゴ栽培で選ばれている4つの作型を紹介します。
1:促成栽培
促成栽培は、イチゴ栽培で最も一般的な作型です。9月頃に花芽分化させた苗を本圃に定植して、11月中下旬頃から翌年の6月頃まで収穫をします。スーパーマーケットで販売されているイチゴ、クリスマスケーキに添えられているイチゴ、イチゴ狩りのイチゴのほとんどがこの促成栽培で育てられています。
日本では北海道から沖縄まで、全国で促成栽培が行われていますが、日照条件が良く温暖な気候のほうが、冬場の暖房コストなどの削減ができるために有利と言えます。
2:夏秋栽培
栽培に適した地域は限られていますが、次に多いのが夏秋栽培です。4月頃に苗を本圃に定植して、6月頃から11月頃まで収穫をします。夏から秋にかけてケーキに使われているイチゴは、この夏秋栽培で育てられたイチゴが多いです。
夏から秋にかけては輸入イチゴも多く出回っています。用途としては、業務用のケーキなどに限られているので、一般的に店頭で見かける機会はほとんどありません。
一般的に店頭で見かける機会はほとんどありません 。北海道や東北、長野県など、夏期に気温が比較的低い地域で人気があります。
3:周年栽培
周年栽培とは、促成栽培と夏秋栽培の特徴を合わせた作型、または植え替えることなく、ひとつの株を長期出荷目的で長期間栽培することを指します。4月頃から9月頃にかけて苗を本圃に定植し、一年を通して収穫します。
そのためには四季成り性品種を選ぶか、もしくは一季成り品種を環境制御を導入して温度調節などを徹底して行う必要があります。主に、閉鎖型等の植物工場や環境制御を導入したビニールハウスで行われている作型です。
4:半促成栽培
限られた地域ではありますが、春から出荷する半促成栽培という栽培体系もあります。9月頃に苗を本圃に定植し、翌年の4月から6月頃まで収穫をします。
収穫量は促成栽培よりも少ないですが、冬の暖房コストを削減できます。そのうえで収穫を終えた株からランナーを伸ばして、採苗する手法もとることがあります。
イノチオアグリのイチゴ高設栽培ベンチ
ストロベリーハイポ
ストロベリーハイポは、観光農園向けの一本足ベンチ、一般的な栽培に選ばれる二本足ベンチの2種類から選択でき、ベンチの高さ・通路幅などお客さまの農業経営に最適な仕様を提案します。
また、高設ベンチに設置する栽培用ベッドも2種類用意しています。生育ムラが少なく栽培管理が容易な連結式ベッド、個別にベッドの取り外しのできるプランタータイプの独立式ベッドです。
イノチオアグリでは、養液を給液するための自動灌水制御盤や給液ユニットなど、イチゴの高設栽培に最適なスマート農業システムからイチゴ苗、培土、肥料、資材、栽培支援などお客さまを総合的に支援します。
イチゴ高設栽培におすすめビニールハウス
ビニールハウスとひとことで言っても多岐に渡ります。ビニールハウス建設は、理想とする栽培環境と実現にかかる費用と確保できる予算を比較しながら検討していきます。今回は、イノチオのイチゴ生産者のお客さまに最も選ばれているビニールハウスをご紹介します。
丸型ハウスD-1
耐久性と経済性を追求したロングセラー
自社⼯場でスチール⾓パイプを加⼯し、独自のアーチ形状を実現。安価でありながら、パイプハウスと比較して強度と耐久性を⾼めることで、安心して長期間の使用ができます。
アーチ状のハウス内空間と谷部の換気機能が、イチゴ栽培に最適な温度と湿度を実現することで、ハダニやうどんこ病をはじめとする病害虫を抑制します。丸型ハウスD-1の持つ、性能は、暖房機、光合成促進機などの一般的に導入される設備以外のコストを最小限に抑えることができます。
イチゴ高設栽培におすすめのスマート農業システム
実際に導入したお客さまからもご好評いただいているイチゴ高設栽培におすすめのスマート農業システム2製品をご紹介します。
自動灌水制御システム AQUA BEAT Ex
多彩な灌水設定で作物に最適な栄養供給を実現
AQUA BEAT Exは、イノチオオリジナルの自動灌水制御システムです。イチゴの生育に必要な水や肥料を適切なタイミングで供給します。大規模から中小規模まで、さまざまなお客さまのニーズにお応えします。ネットワーク回線を利用することで、自宅に居ながら給液状況を確認でき、異常時に警告をお知らせする機能も備えています。
自走式防除・灌水システム マスプレー
作業コストを削減して時間効率UP
マスプレーは、農業用ビニールハウス内における防除・灌水システムです。実際に活用されているお客さまでは、10a規模の圃場の防除作業に手掛け散布で2時間掛かっていたのが、マスプレーを導入したことで30分に短縮されたという例もあります。
平均して月3~4回の防除が必要となるイチゴ栽培においては、目に見えた効果を実感できると思います。また、農薬散布時の農薬の微粉末や霧を吸い込むリスクが軽減できるため、人にも優しい商品です。
イチゴ高設栽培の生産者事例
梅原 広隆さん(静岡県)
イチゴの産地、静岡県伊豆の国市でビニールハウスと高設栽培を活用してイチゴ栽培に取り組む梅原広隆さん。梅原さんは、自身の農業経営だけでなく、新規就農者に栽培技術を伝授し、地域農業の発展に尽力しています。
今回のインタビューでは、イチゴ栽培のポイント、導入しているイノチオの丸型ハウスD-1の魅力、これからの農業経営への考え方についてお話しいただきました。
イチゴ栽培管理の心得
イチゴはとてもデリケートな作物で、非常に痛みが早く、中1日でハウスを回り収穫をしています。収穫は毎日の仕事なので、少しでも収穫時間が短縮できるよう、葉っぱと果房を分ける紐を設置し、時間短縮と同時に、ロスの軽減も行っています。果実に光があたり、照りや糖度、硬度も向上しています。
病害虫対策として、苗の時期は5日おきに薬剤散布を行い、定植をしてからは極力、薬剤散布をしないようにUVBライトや、4~5種類の天敵資材を導入しています。そのため、収穫期はほぼ薬剤散布をしないでイチゴの栽培が行えています。
関連事例: 丸型ハウスD-1は、想像以上に生産性が高いビニールハウス
いちごに最適なビニールハウスをご提案
イノチオアグリは施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に携わり、50年以上の知見がございます。50年以上に渡り、培ったノウハウを活かし、いちごの新規就農を計画段階からご支援しております。
お客さまのご要望や条件に基づいていちごに最適なビニールハウスを設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。
更に、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。