農家の高齢化が進み、後継ぎ不足が問題になっています。しかし最近では、サラリーマンを辞めて、企業や転職という形で農業を始める人や農業に携わりたいと考える方が増えてきました。その反面、農業に漠然とした憧れを抱きつつも、都市部に住んでいると実際に仕事としての農業現場を見る機会は少ないため「どのような仕事内容なのか」となかなか想像の付かない方も多くいらっしゃいます。

今回のコラムでは、農業の仕事内容の基礎的な情報をはじめ、農業の仕事を学ぶための方法、農業法人へ就職や転職を考えている方への注意点など、幅広くご紹介していきます。

農業の仕事内容とは?

農業は、我々の生活に欠かすことのできない食べ物をはじめ、日常や特別な日を飾る花卉などを作る仕事です。

具体的な農業の仕事をイメージすると、田や畑を耕す作業や収穫作業をイメージする人が多いかもしれませんが、それ以外にも多岐に渡る仕事があります。例えば、土づくりや日々の栽培管理など、昔はすべて手作業で行っていましたが、最近では機械化が進んだことにより、手間と時間を短縮して作業ができるようになっています。

また、農家には米を主に扱う稲作農家のほか、野菜農家、果物農家、花の栽培や鉢植えを手がける花き農家など細かく分類されています。どの分野の農家にも共通するのが土作り、稲・苗などの植え込み、肥料の撒布や雑草の除去などの日々の管理、収穫、出荷などの作業です。これらの作業以外にも、自然災害への対策、市場ニーズに合わせた新品種の栽培やSNSを活用した広報活動など多岐に渡ります。

では、一般的にどのような仕事があるのか、下記にて解説していきます。

土づくり

栽培方法によりますが、農業の基本は土づくりから始まります。健康な作物を育てるためには、土壌の質が非常に重要です。まず、土壌のpHや栄養素のバランスを確認し、必要に応じて肥料や改良材を加えます。また、有機物を取り入れることで土の微生物活動を活性化させ、土壌の構造を改善することも大切です。栽培開始後も耕作方法や作物の輪作を工夫することで、土壌の疲弊を防ぎ、持続可能な農業を助けます。土づくりは、農業の成功を左右する重要な作業となっています。

田植え・苗植え

田んぼや畑の面積によって異なりますが、ある程度の面積がある稲作の場合は、田植え機などを使って苗を植えていきます。野菜や果物、花きの場合も同様に種を植え付けていきます。施設園芸などでは土壌だけでなく、ロックウールやココ培地と呼ばれる培地に苗を植えることもなります。

毎日の栽培管理

農業において、毎日の栽培管理は非常に重要な業務です。作物の成長を促すためには、適切な水やり、肥料の施用、病害虫のチェックが欠かせません。また、天候や土壌の状態に応じて、管理方法を柔軟に変更する必要があります。これにより、作物の品質を向上させ、収穫量の安定させてくれます。

収穫

収穫は農業の中で最も重要な作業の一つです。作物が成熟したタイミングを見極め、適切な方法で収穫を行うことで、品質の高い農産物を得ることができます。収穫後は、すぐに出荷や加工に進むため、効率的な作業が求められます。

出荷

育てた作物を袋や箱に入れ出荷する作業も農業の仕事のひとつです。出荷先は青果市場、農協の市場、直売所などのほかに、最近では道の駅や小売店、レストランへの直売、消費者へ直接販売するなど、売り先も多種多様になっています。農業は、この出荷を行って初めて売上が立ちます。日々のランニングコストから農業法人であれば従業員の給料もここから捻出されます。

自然災害への対策

農業は自然環境に大きく影響を受けるため、台風や豪雨、干ばつなどの自然災害に対する対策が不可欠です。農家さんや農業法人の管理責任者は、事前にリスクを洗い出し、適切な防災計画を立てることが求められます。

例えば、排水設備の整備、施設の点検、作物の選定を行うことで、被害を最小限に抑えることにつながります。台風上陸の前日などに行っていると対策用の資材が手に入らないなどのトラブルもあるため、これらの確認は日々の栽培のなかで行う習慣を持つことが重要です。

新品種の栽培やSNSの活用

新品種には、収量や品質の向上、病害虫への対策につながる可能性があります。生産圃場では、これらの新品種を試験的に栽培し、その結果をもとに今後の生産計画を立てる場合があります。特に、近年は暑い時期が増えているので気候に適した品種の発掘は、売上の確保にもつながってきます。

また、SNSの活用も農業において重要な要素となっています。農業法人は、自社の取り組みや新商品の情報を発信することで、消費者や販売先との距離を縮め、ブランドの認知度を高めることができます。SNSを通じて得られるフィードバックは、商品改良や新たなマーケティング戦略に役立つため、積極的に活用されるようになっています。

農業法人へ就職して農業の仕事を学ぶ

農業法人での就職は、実践的な経験を通じて農業の仕事を学ぶ絶好の機会です。多くの農業法人では、働きながら専門的な知識や技術を習得できる環境があり、初心者でも安心してスタートできます。また、作物ごとに異なる栽培方法や管理技術を学ぶことができ、自分の興味や適性に応じた作物や会社を選ぶ楽しさもあります。農業法人での経験は、将来的に独立を目指す際にも大いに役立つでしょう。

働きながら学べる

農業法人での就職は、実際の現場で働きながら農業の知識や技術を身につける絶好の機会でもあり、サラリーマンと同じように給料を受け取って働けるというメリットもあります。安定した収入を得ながら農業の知識や技術を習得できることも、個人の就農とは異なり安心できるポイントとなっています。

作物ごとに選らべる

農業法人での仕事は、扱う作物によって大きく異なります。例えば、野菜や果物、穀物など、各作物には特有の栽培方法や管理技術が求められます。自分が興味を持つ作物を選ぶことで、より充実した農業体験が得られるでしょう。

また、特定の作物に特化した農業法人では、その分野の専門知識や技術を学ぶことができ、スキルアップにもつながります。自分の好きな作物を育てることで、仕事へのモチベーションも高まるため、選択肢をしっかりと考えることが重要です。

農業法人へ就職する前に確認すべき注意点

農業法人に就職する際は、まず自分の希望や条件を明確にすることが重要です。具体的には、栽培したい作物や勤務地域、年収などを事前に考えておくことで、より自分に合った職場を見つけやすくなります。

栽培したい作物を明確にする

農業法人に就職する際、まず重要なのは自分が栽培したい作物を明確にすることです。農業は多様な作物が存在し、それぞれに特有の栽培方法や管理技術が存在します。トマト一つ取っても、土耕栽培なのか隔離栽培なのか、学べる技術はことなってきます。また、スマート農業に興味がある方であれば、候補先の農業法人がどのような設備を導入しているのかも重要な視点となるでしょう。自分の興味やライフスタイルに合った作物を選ぶことで、仕事に対するモチベーションが高まり、より充実した農業生活を送ることができるでしょう。

さらに、作物によっては栽培時期や気候条件が異なるため、地域の特性も考慮する必要があります。自分が希望する作物がどの地域で栽培されているのか、またその地域の農業法人がどのような作物を扱っているのかをリサーチすることも大切です。これにより、就職先の選定がスムーズになり、自分に合った職場環境を見つけやすくなります。

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勤務・転居できる地域を決める

農業法人への就職を考える際、勤務する地域の選定は非常に重要です。農業は地域によって気候や土壌、作物の種類が大きく異なります。また、転居を伴う場合は、生活環境や交通の便、地域のコミュニティなども考慮する必要があります。
転居する地域によっては、都市部では必要になかった自動車なども必需品となる場合もあります。勤務先の農業法人の場所も、公共交通機関が整ったエリアにあるとは限りません。

農業は季節に応じた作業が多いため、地域の特性を理解し、自分に合った環境を選ぶことが、長く続けるためのポイントとなります。

希望の年収や雇用条件を決める

農業法人に就職を考える際、希望の年収や雇用条件を明確にしておきましょう。農業の仕事は、地域や作物、企業の規模によって給与水準が大きく異なるため、自分が求める条件をしっかりと把握しておく必要があります。例えば、都市部の農業法人では比較的高い給与が期待できる一方、地方の小規模な農業法人では給与が低めに設定されていることが多いです。また、雇用条件についても、正社員としての雇用か、契約社員やアルバイトとしての雇用かによって待遇が異なるため注意が必要です。

自分のライフスタイルや将来設計をしっかりと考え、農業法人への就職活動を進めることが成功への第一歩となります。

就職先の農業法人の探し方

農業法人への就職を考える際、どのようにして自分に合った法人を見つけるかが重要なポイントとなります。まずは、インターネットを活用した求人サイトの利用が効果的です。農業専門の求人サイトでは、全国各地の農業法人の求人情報が集約されており、職種や勤務地、雇用条件などを細かく絞り込んで検索することができます。これにより、自分の希望に合った求人を効率的に見つけることが可能です。

また、地域の農業協同組合や農業関連のイベントに参加することもおすすめです。これらの場では、実際に農業法人の担当者と直接話す機会があり、仕事内容や職場の雰囲気を知る良いチャンスとなります。さらに、SNSを活用して農業法人の情報を収集するのも一つの手段です。多くの法人がSNSを通じて日々の活動や求人情報を発信しているため、リアルタイムでの情報収集が可能です。

このように、さまざまな方法で情報収集を行うことで自分に合った農業法人を見つけることができるでしょう。

おすすめ求人サイト

農業法人への就職を考える際、求人情報を効率的に探すことが重要です。最近では、農業専門の求人サイトが増えており、これらを活用することで自分に合った職場を見つけやすくなっています。例えば、「農業求人ナビ」や「アグリジョブ」などのサイトでは、地域や職種、雇用形態に応じた求人情報が豊富に掲載されています。

また、これらのサイトでは、農業に関するセミナーやイベント情報も提供されているため、実際に農業に触れる機会を得ることも可能です。さらに、農業法人の特徴や働き方についての詳細な情報も掲載されているため、応募前にしっかりとリサーチを行うことができます。自分の希望に合った農業法人を見つけるために、ぜひこれらの求人サイトを活用してみてください。

農業法人として農業に取り組むお客さま事例

最後に農業法人の事例として、農業法人として農業に取り組まれているイノチオアグリのお客さまをご紹介します。

うれしのアグリ株式会社

うれし野アグリ株式会社さんは、三重県松阪市でミニトマトの生産・販売を行っています。

三重県内の間伐材の木質チップを利用した「バイオマスボイラー」を熱源として蒸気を発生させ、その蒸気を使って植物油脂の製造を行っています。その際に発生する180度の蒸気と工場から排出される温水を熱交換して、冬場の暖房としてエネルギーとして使用しています。木質バイオマスを使用する背景には、三重県は県土の約65%(令和元年度の統計)が森林のため、大量に出る間伐材などを有効する目的があります。

また、うれし野アグリ株式会社さんでは正社員約10名、パート従業員約110名の雇用をしています。パート従業員の大半は地元で暮らすお母さん方です。地元で新たな産業をはじめるということは、新たな雇用を創出することにもつながっています。

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株式会社ブルーチップ

愛知県常滑市でレストランをはじめ、イチゴ観光農園、ブドウ園、ワイナリーなどを経営する株式会社ブルーチップは、社是として「デリバリングハピネス」(お客さまへ幸せを届けたい)を掲げています。飲食事業だけでなく、農業事業で育てたイチゴやブドウをお客さまに食として提供することでブルーチップでしか体験を提供しています。

イチゴ観光農園を始めるまで、農業の経験はありませんでしたが、スマート農業を活用することで栽培技術を補っています。現在は、イチゴ観光農園を運営するだけでなく、新規就農をして農業で生計を立てたいと考えている従業員の就農支援も行っています。

関連事例:農業と食でお客さまへ幸せを届けたい 株式会社ブルーチップ

農業に関するご相談はイノチオアグリへ!

イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトに、50年以上ものあいだ農業用ビニールハウスに携わってきた中で培ったノウハウを活かして、お客さまの農業を多角的にサポートします。

お客さまのご要望や条件に基づいて、農業開始に向けた事業計画の作成や収支シュミレーションをご提案します。その後のビニールハウス・内部設備の設計もお任せください。その他、労務管理のアドバイスや気象災害時のアフターフォロー、機器メンテナンスまで、お客さまの農業をトータルでご支援いたします。農業法人への就職ではなく、個人や企業として農業を新たに始めることを検討している方はお気軽にご相談ください。