露地栽培に比べて外部環境の影響を受けにくいビニールハウス栽培では、作物を安定的に栽培することができます。

それでは、肝心の作物をどのような基準で選ぶとよいのでしょうか?

農林水産省の統計データをもとに、ビニールハウス栽培で収益を得やすい作物5選とそれぞれの特徴について解説します。

目次

  1. ビニールハウス栽培とは?特徴を解説
  2. ビニールハウス栽培でおすすめ!儲かる野菜・果物5選
  3. ビニールハウス栽培のメリット
  4. ビニールハウス栽培のデメリット
  5. あなたにぴったりのビニールハウスは?
  6. 作物・ご予算に合わせたビニールハウスをご提案

ビニールハウス栽培とは?特徴を解説

ビニールハウス栽培は、ビニールハウスやガラスハウスなどの施設で作物を栽培する方法です。

ほとんど自然の状態に近い露地栽培とは異なり、作物にとって最も適した温度・湿度、日射量などの条件を人工的に再現した環境下で栽培を行います。

露地栽培に比べて天候や害虫の影響を受けにくいので、年間を通して農作物を安定して栽培することが可能です。

ビニールハウスは農業経営における基盤であり、お客さまが想い描く理想の農業経営を実現するため、ビニールハウスに携わって50年以上のノウハウと農業生産者のさまざまな課題を総合的に支えるグループ事業でご支援いたします。詳細は下記からご確認ください。

ビニールハウス栽培でおすすめ!儲かる野菜・果物5選

農林水産省は、作物と栽培形態ごとに経営収支をまとめた「品目別経営統計」※を公表しています。
※この調査は平成19年をもって終了しています。

調査対象となったビニールハウス栽培の野菜・果物から、もっとも農業所得(農業粗収益から農業経営費を引いたもの)が高い作物5選を以下にまとめました。

作物 農業粗収益 農業経営費 農業所得
ミニトマト 4,071,000 2,043,000 2,028,000
イチゴ 3,596,000 1,698,000 1,898,000
ナス 3,514,000 1,820,000 1,694,000
シシトウ 3,759,000 2,296,000 1,463,000
キュウリ 2,430,000 1,086,000 1,344,000


営農する上では農業所得だけでなく、労働時間も考慮する必要があります。
農業所得が高い5つの作物の、10aあたりの栽培にかかった労働時間から時給金額を割り出したのが以下の表です。 

作物 農業所得 労働時間 時給
ミニトマト 2,028,000 1,488.19 1,362.73
キュウリ 1,344,000 1,095.09 1,227.30
ナス 1,694,000 1,756.90 964.20
イチゴ 1,898,000 2,091.57 907.45
シシトウ 1,463,000 2,983.39 490.38


引用:農林水産省「品目別経営統計」

それではここから、各作物の栽培や収支の特徴について解説します。

最も高収益!ミニトマトの栽培

もっとも農業所得が高かったのはミニトマトです。

時給ランキングでも1位となっており、ビニールハウス栽培では最も収益性の高い作物と言えます。

ミニトマトは、露地栽培の場合は5月頃に植え付けを始め、6月末頃から収穫を迎えます。しかし、トマトを主軸として営農する場合には、市場価格の優位性やその土地の気候を考慮して収穫時期をコントロールし、収量・品質を上げる必要があるため、ビニールハウスなどの施設を活用した栽培が主流です。

収益性があるにも関わらず、ミニトマト農家が溢れない理由として、ビニールハウスの建設費や動力光熱費など、経営に関わる費用が高額であることが挙げられます。

収益を上げる方法として、パッケージや商品名を工夫することで「ブランド化して付加価値を高める」という方法があります。

ミニトマトは比較的育てやすい一方で、栽培方法によって見た目や甘さが大きく変わり、他作物と比べてその違いが分かりやすい作物です。

また、ブランド化されたミニトマトの卸売価格は普通のミニトマトの1.5〜2倍ほどになることもあるため、ブランド化に成功すれば、さらなる収益アップが期待できます。

新規就農でおすすめ!イチゴの栽培

ミニトマトの次に農業所得が高かったのはイチゴです。

総務省による過去30年間の「国民1人あたりのフルーツの年間支出金額」を見ると、イチゴはりんご・みかんとともに、上位ベスト3の位置を常にキープしています。安定して消費されていることから、イチゴは今やスイーツの定番です。

さらに国内だけでなく海外においても「日本のイチゴ」ファンが増えており、今後もさらなる市場拡大が期待されます。

イチゴのハウス栽培は、経営費用を抑えて栽培を始められるため、新規就農を検討中の方にもっともおすすめな作物です。

その上、栽培時期をずらすなどの工夫を行うことで高単価を狙うことも十分可能です。
本来の旬である4~6月ではなく、クリスマスケーキの需要などにより出荷のピークを迎える12~2月頃に向けて栽培する「超促成栽培」を行えば、通常より高単価で販売できる可能性があります。

関連記事:市場ニーズを捉える!イチゴの超促成栽培とは?

しかし、農業収入が多い一方で時給ランキングでは4位という点から、イチゴは手間のかかる作物であることが伺えます。

イチゴのハウス栽培には、土耕栽培・高設栽培の2つの方法がありますが、営農にあたっては、より手間が少ない高設栽培がおすすめです。
イチゴの高設栽培は自然な立ち姿勢のまま作業ができ、効率的に栽培することが可能です。

いちご狩りなどの観光農園を運営する場合でも、高設ベンチの方が果実を摘み取りやすく、来場者が快適に過ごすことができます。


日本のどこでも栽培可能!キュウリの栽培

キュウリのハウス栽培は、安定的な需給バランスと価格推移により、農業の中でも比較的安定した収入が期待できます。

キュウリ栽培の最大のメリットは、収穫までの期間が短いことです。発芽から収穫までわずか60日で成長するので、農業の運転資金に余裕のない就農1年目から収入が得られることは大きなメリットです。

また、キュウリの特性上、日本の気候と相性がよく、日本のどこでも生産が可能です。
日本のどこで農業を始めても、栽培する作物の候補に入れることができるため、多くの農家が副業として栽培しています。

キュウリを栽培する上での難点として、曲がっていると売れなくなってしまうことが挙げられます。

まっすぐなものの方が市場価値が高いため、曲がったキュウリは安価で買い叩かれてしまいます。気温や水分、栄養を意識した繊細な管理が必要です。

そんなキュウリのハウス栽培管理には、スマート農業の活用がおすすめです。
気温や水分量などをデータに基づいて確実に管理することで、労力の削減や生産性の向上、作物の品質向上に繋がります。

関連事例:システムの共通性で機能以上の効果を生む⁉


狭い農地でも高収量!ナスの栽培

ナスも、毎年安定的に生産され、安定的に消費される野菜です。
価格も安定しており、儲かりやすい作物と言えます。

キャベツや白菜などでは、豊作すぎたために価格が暴落して出荷できないということがたびたび起こりますが、ナスでそのような状況になることはまず無いと考えられます。

ナスのハウス栽培の利点として、一つの苗からたくさんの実ができる作物であるため、狭い畑でも収益を上げることが可能です。

ビニールハウス1棟の面積を10aとした場合、ナス農家なら1~2棟あれば一人で農業をするには十分な規模です。これが面積あたりの収量が少ないメロンだった場合、5~8棟のビニールハウスが必要になり、就農に向けて多額の費用がかかることになります。

ナスのハウス栽培で、さらなる収益アップを狙う場合、ブランド化のほかに大規模化するという方法があります。

他作物にも言えることですが、農業をはじめる際は、将来的な規模拡大を視野に入れ、近隣に空いた土地がある場所を選ぶことが望ましいです。

関連記事:ビニールハウスを建設する際に農地の見るべきポイントとは?

高水準の農業所得!シシトウの栽培

シシトウは露地栽培の他、ビニールハウスでの雨よけ栽培や、施設を加温して行う促成栽培などにより、一年を通して出荷されています。

高温や病害虫に比較的強い作物ですが、ストレスを与えすぎると辛い実ができやすくなりますので、灌水の頻度には注意が必要です。

シシトウは、露地栽培でもビニールハウス栽培でも10aあたりの農業収入が多く、特に露地栽培ではすべての作物の中で最も農業収入が多い作物です。

しかし、注目したいのは労働時間です。今回取り上げた5つの作物のうち、シシトウは最も労働時間が長く、時給は約490円という結果になりました。収入は多く得られる一方で、費用と時間を多く要する作物と言えます。

作物を選ぶときは労働時間にも注目!

収益を確保するあたって、粗利益から農業経営費を引いた単純な農業収入だけではなく、ハウス栽培にかかる労働時間を考慮することはとても重要です。

ビニールハウス建設費(材料費)や動力光熱費などの農業経営費は年々高騰傾向にある一方で、これらを個人の力で削減・縮小することは困難です。

しかし、労働時間であれば、工夫して効率化をはかることで改善が期待できます。
労働時間の改善のためには、まず「いつ・誰が・何の作業を・どのくらいの時間で・どのくらい行ったのか」といった現場の状況を記録し、きちんと把握することが大切です。

このデータをもとに、より効率的に作業する方法はないか?という視点で工夫・改善することによって、結果的により多くの収益を確保することができます。

現場を把握して労働時間削減!agriboard

ビニールハウス栽培のメリット

ここまで、ビニールハウス栽培におすすめの作物・果物5選をご紹介しました。

ここからは、ビニールハウスで栽培するメリット・デメリットについて、より詳しく解説いたします。まずビニールハウス栽培のメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

1:天候の影響を少なくできる
ビニールハウスを活用した栽培では、栽培環境を外部気象環境による影響を受けないことを目的にしています。
風雨などの天候による影響を排除し、気温変動を小さくすることができます。
そのため、年間を通して作物を栽培することが可能になります。

2:病害虫のリスクを軽減できる
外部環境と遮断されている構造のため、病害虫の侵入を防ぐ機能も持ち合わせているので、栽培上のリスクを軽減できます。

3:出荷時期を調整できる
ビニールハウスの内部環境を調整できれば、農作物の生産時期を調整することができます。市場の動向を伺いながら、価格の高い時期での出荷ができれば、収益の向上と持続的な経営を実現できます。

4:スマート農業で栽培を効率化できる
ビニールハウスの遮断機能を高めると、内部の環境管理が容易になります。
冬場の加温制御や、天窓・谷部換気による温度制御ハウス内の換気、肥料・日照量・二酸化炭素濃度の制御などが可能です。

ビニールハウス栽培のデメリット

ビニールハウス栽培のデメリットとして、以下の4つが挙げられます。

1:導入・維持にコストがかかる 
ビニールハウスは、長期的に利用するためにある程度の強度が必要です。
建設作業や、機能維持のためのメンテナンスを業者へ頼むことになると、導入コストだけでなく維持コストも必要になります。

2:大型化に伴う分業制によるリスク
ビニールハウスの増設などで大型化した際、手間と時間のかかる育苗を外注業者へ依頼する場合があります。
健康な苗を安定的に仕入れて定植することができれば生産量が確保できますが、外注先の倒産や契約切れなどにより生産ができなくなるリスクもあるため、外注先の選定がとても重要です。

3:自然災害による倒壊リスク
ビニールハウスのメンテナンスを怠ってしまうと、ハウスの隙間から台風や強風などの風が内部に入り込み、被覆材(ビニールなど)がはためく現象が起きてしまいます。

また冬場は、雪がビニールの張りが弱い場所(雨が降った後に水がたまる場所)などにたまっていき、これによりビニールハウスが倒壊してしまう場合があります。

ハウスが倒壊してしまうと、再建費用だけでなく、生産物からの収益もなくなってしまいます。

4:連作障害が起こりやすい
土耕で行う場合は、同じ圃場で同じ作物を育て続けると土壌内の栄養バランスや生物の多様性が損なわれ、連作障害を起こしやすくなります。

また、病害虫を発生させてしまうと駆除が難しく、蔓延させてしまう可能性もあります。 栽培環境を健全に保つためにも、日頃の栽培管理が大切です。
異変に気づいた際には、土壌や病害虫に詳しい専門機関へ相談してみることも重要です。

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