ビニールハウスと言っても、骨材や栽培作物、土地環境に応じて多岐に渡り存在します。

本コラムでは「施設園芸」の定義からビニールハウスの目的や使用用途、構成、活用できる新規就農者向けの支援制度まで、ビニールハウスに携わり50年以上の知識・経験をもとにビニールハウスについて幅広くご紹介します。

ビニールハウスとは?使用用途まで解説!

ビニールハウスとは?

ビニールハウスとは、鉄骨や曲げ加工したパイプで骨組みを作り、ビニールで覆われた農業用の施設を示します。ビニールハウスはガラス温室と比較し、安価で農業経営の基盤になります。

理想とする農業経営像や求める需要に応じて、ビニールハウスの形状や骨材、被覆材、内部設備を決定します。作物や土地環境、栽培方式に応じて、複数のビニールハウスが存在するのが特長です。

ビニールハウスの使用用途とは?

ビニールハウスと一言で表現しても、パイプや鉄骨と言った骨組みの素材が違うもの、丸型屋根や三角屋根からオランダ式と呼ばれる高軒高(こうのきだか)のフェンロー型まで、栽培する作物や環境によって多岐に渡ります。多岐に渡り、存在するビニールハウスですが、共通するビニールハウスの使用用途は主に下記が目的になります。

  1. 雨風を防ぐ
  2. 栽培環境のコントロールによる収量及び品質の向上
    (温度、湿度、採光性、病害虫リスクの軽減)
  3. 栽培時期を管理し、出荷量が落ち込む時期に出荷する

ビニールハウスは大きく分けて、営農を目的とする農業生産用と家庭菜園用があります。家庭菜園用のような簡易なものはホームセンターや通販、家庭菜園用のメーカーで購入可能です。

一方で農業生産用のビニールハウスはオーダーメイドとなるケースが多く、お客様の目的や活用用途、建設予定地、栽培作物、栽培形態に応じて、ビニールハウス本体の仕様やビニールハウスの内部設備、効率の良い栽培を実現するハウス内のレイアウトを検討した上で建設します。

ビニールハウスの建設における大まかな流れとして、農地(建設予定地)や栽培作物からビニールハウスの形状や仕様を決定し、栽培形態に応じて、内部設備を決定する流れが一般的です。新たに農業生産用のビニールハウスの建設を検討する際はハウスメーカーにお問い合わせし、形状や仕様など含めて相談しましょう。

ビニールハウスのメリット・デメリット

同じ作物でも露地で育てられている場合と、ビニールハウスで育てられている場合があります。ビニールハウスは、外部環境から遮断された環境により、理想の栽培環境を実現できるなどのメリットと、維持をするためにコストがかかるなどのデメリットの両面があります。

こちらでは、ビニールハウスのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。

メリット
  1. 天候の影響を少なくできる
  2. 病害虫のリスクを軽減できる
  3. 出荷時期を調整できる
  4. スマート農業で栽培を効率化できる
デメリット
  1. 導入・維持にコストがかかる
  2. 大型化に伴う分業制によるリスク
  3. 自然災害による倒壊リスク
  4. 連作障害が起こりやすい

ビニールハウスのメリット

1:天候の影響を少なくできる
ビニールハウスを活用した栽培では、栽培環境を外部気象環境による影響を受けないことを目的にしています。風雨などの天候による影響を排除し、気温変動を小さくすることができます。そのため、年間を通して作物を栽培することが可能になります。

2:病害虫のリスクを軽減できる
ビニールハウスは外部環境と遮断されている構造のため、病害虫の侵入を防ぐ機能も持ち合わせており、栽培上のリスクを軽減できます。

病害虫の侵入を防ぐためにビニールハウスの出入り口を2重構造にしたり、防虫ネットで隙間を埋めたりと、内部環境と外部環境を遮断する工夫が施されています。

3:出荷時期を調整できる
ビニールハウスの内部環境を調整することで、農作物の生産時期を調整することができます。市場の状況を見ながら価格の高い時期での出荷が可能となれば、収益の向上と持続的な経営を実現できます。出荷時期を遅らせる栽培方法を抑制栽培、早める方法を促成栽培といいます。

市場全体の供給量が少ない時期に出荷すれば、高値で売れることが期待できます。また、栽培環境も土耕栽培に比べて優れているので面積当たりの収量増加も期待でき、個個人出荷のお客さまであれば、独自のブランド価値の獲得も狙えます。

4:スマート農業で栽培を効率化できる
ビニールハウスの遮断機能を高めると、内部の環境管理が容易になります。冬場の加温制御、天窓・谷部換気による温度制御ハウス内の換気、肥料・日照量・二酸化炭素濃度の制御が可能です。

ビニールハウスを活用した栽培であれば、経営規模や栽培作物によってさまざまな制御設備を導入できます。さらに、コンピュータとセンサによる環境制御を活用することで、外部環境とビニールハウス内の温度・湿度・二酸化炭素量などを測定して自動で換気や養液給液などを行うことができます。

 

ビニールハウスのデメリット

1:導入・維持にコストがかかる
ビニールハウスを長期利用するため、強風に耐えられる強度の高い柱などの部材を組み合わせて建設します。そのため、建設作業やメンテナンスを業者へ頼むことになると、導入と維持にコストが発生します。機械化による効率化も期待はできますが、導入コストと電気・燃料などの維持コストも不可欠です。

2:大型化に伴う分業制によるリスク
ビニールハウスの増設などで大型化すると、手間と時間のかかる育苗を外注業者へ依頼する生産者が増えています。

100%健康な苗を安定的に仕入れて定植することができれば生産量が確保できますが、外注先の倒産や契約切れなどにより、生産ができなくなるリスクが発生する恐れがあるので、外注先の選定が大切です。

3:自然災害による倒壊リスク
ビニールハウスのメンテナンスを怠ってしまうと、ビニールハウス隙間ができ、台風や強風などの風が内部に入り込み被覆材(ビニールなど)がはためく現象が起きます。

また冬場の雪は、ビニールの張りが弱い場所(雨が降った後に水がたまる場所)などにたまっていきます。このようなことはビニールハウスが倒壊してしまうリスクがあります。そうなってしまうと、再建費用が発生するだけでなく、生産物からの収益もなくなってしまいます。

4:連作障害が起こりやすい
土耕栽培を行う場合、同じ圃場で同じ作物を育て続けると土壌内の栄養バランスや生物の多様性が損なわれ、連作障害を起こしやすくなります。また、病害虫を発生させてしまうと駆除が難しく、蔓延させてしまうこともあります。

栽培環境を健全に保つためにも日頃の栽培管理が大切です。異変に気づいた際には、土壌や病害虫に詳しい専門機関へ相談してみることも重要です。

ビニールハウスの詳細

ビニールハウスの種類

農業生産目的のビニールハウスは「ガラスハウス」、「ビニールハウス」の2種類があります。ビニールハウスは高度経済成長の1960年台に急速成長し、毎年張り替えが必要なビニールハウスか、長期間にわたって張り替えをしない性能を持つガラスハウス(ガラス温室)の二極での選択の時代でした。

1980年代より長期展張可能な被覆資材が出始め、種別も多種多様となりました。現在では、コスト面、耐久性、安全面、光線透過によるフィルム種別選択など、様々な選択肢ができ、そのような観点からビニールハウスが主流となってきています。

ガラスハウス・ガラス温室とは

被覆材に透明フロート板ガラスを用いたもので、1975年以降に普及しました。植物園や店舗など、不特定多数が観覧するような場合に建設される傾向が多いです。現在主流のビニールハウスと比較すると用途や建設条件により、コスト面で上下の振れ幅が大きいことや建設物の取り扱いなど法令的な観点も考慮する必要があります。

ビニールハウスとは

ビニールハウスはポリオレフィン系フィルム(PO)や農業用塩化ビニルフィルム(農ビ)、長期展張型の硬質フィルムなどを被覆材として活用しているハウスのことを指します。

現在主流のビニールハウスでは土地環境や耐久性、コストなどに応じて、複数のビニールハウス製品が存在します。更にビニールハウスは主として活用する骨材から4種類に分類されます。

パイプハウス

曲げ加工した小径のパイプ鋼管を主に建設されるパイプハウス

仕様
曲げ加工した小径のパイプ鋼管を主に建設されます。
価格
もっとも安価な価格帯のものになります。
耐久性
価格が安価な分、耐風速や耐積雪の点で耐久性に課題があります。
丸型のビニールハウス

既成の基礎コンクリートに、鉄骨角パイプの主骨材を組み付けして建設する丸型ビニールハウス。(丸屋根、ドーム型、円形など)

仕様
コンクリート基礎と主骨材である角パイプのフレームで建設されます。柱間隔を持たせることにより、作業性と利便性が良いです。
価格
パイプハウスとの比較では、強度と耐久性を兼ね備えているためコストアップとなります。
耐久性
鉄骨を採用することで軒も高くすることが可能で、一定の耐久性もあります。
屋根型のビニールハウス

鉄筋コンクリート基礎とH型鋼の主骨材を組み付けして建設する屋根型ハウス 。(屋根型、切り妻、三角屋根など)

仕様
現場打ちコンクリート基礎と主骨材は溶融亜鉛鍍金処理された軽量鉄骨H鋼を用いて建設されます。
価格
丸型のビニールハウスよりもさらに強度と耐久性を兼ね備えているためコストアップとなります。
耐久性
強風地域や積雪地域(多雪地域は特別仕様による)にも対応しています。
オランダ式の高軒高ビニールハウス

オランダ型の高生産・高収量を実現するオランダ式ハウス (高軒高(こうのきだか)、ダッチライト型、フェンロー型など)

仕様
大規模栽培農場に採用されます。トラス構造を用い、軒高を高くすることで採光性と換気性能を高めています。
価格
最大の収量追求が可能な性能上、ビニールハウスの中では最も高価なものとなります。
耐久性
溶融亜鉛鍍金鉄骨とアルミ材を多用し、軒高6mも対応しています。

ビニールハウスの構成、設備を解説

ビニールハウスの構成

ビニールハウスはハウス本体の種類、骨材、ハウス全体を覆う被覆材、空調設備、暖房設備、作物ならではの設備、灌水設備、環境制御設備の組み合わせで構成されます。

ビニールハウス本体の骨材はパイプを利用するパイプハウス、鉄骨を利用する鉄骨製のビニールハウスなどの種類があり、ハウス本体の中で最も重要な箇所になります。

鉄骨製のビニールハウスとパイプ製のパイプハウスで比較されることがありますが、台風などの気象災害を考え、耐候性がある頑丈な鉄骨製のビニールハウスをおすすめします。ビニールハウスの種類や本体の骨材を選ぶ際は、下記の5つを抑えましょう。

【ビニールハウス選びの5大ポイント】

  1. コスト軸
  2. 耐久性
  3. 保温性
  4. 通気性
  5. 採光性

 すべての条件に高機能を追求すると予算超過をしてしまう可能性があるため、信頼できるハウスメーカーの担当者と相談をしながら検討を重ねていくことで最適なビニールハウスの実現に繋がります。

ビニールハウスの被覆材

ビニールハウスの被覆材は、代表例として農業用ポリオレフィン系フィルムであるPOフィルム、農業用塩化ビニルフィルムである農ビ、フッ素フィルムである硬質フィルムなどがあります。

ビニールハウスの被覆材は保温性、透光率(直達光、散乱光) 、波長、耐用年数などで各資材に特長があるため、栽培作物や土地環境、コストの軸から最適な資材を選びましょう。被覆材の用途やビニールハウスの仕様も関係するため、ご注意ください。

POフィルム
成分
ポリオレフィン系樹脂を原料に各種添加剤を配合した軟質フィルム。フィルムに多層構造を施したりすることで複数の機能を備えているのが特長
用途
ビニールハウス本体の外部に展張する外張り、ビニールハウス本体の内部に展張する内張り
耐久性
外張りは一般的に3年~5年(厚み、用途、機能により異なる)
農ビ
成分
ポリ塩化ビニール樹脂を主成分とした軟質フィルム
用途
ビニールハウス本体の外部に展張する外張り(透明性・耐候性・流滴性・防霧性・防塵性)。ビニールハウス本体の内部に展張する内張り(透明性・保温性・流滴性・防霧性)。
耐久性
外張りは一般的に1年~3年(厚み、用途、機能により異なる)
フッ素フィルム
仕様
耐久性を強化した展張期間が長い硬質フィルム
用途
鉄骨を用いたハウスの外張りで活用し、長期展張型による張替えコストの削減を実現。
耐久性
外張りは一般的に10年~30年(厚みや用途により異なる)

ビニールハウスの内部設備

ビニールハウスの内部設備は作物の特長や栽培環境、理想とする農業経営体、規模に応じて必要な設備を選択していきます。

ビニールハウスは栽培環境をコントロールし、収量や品質の安定化を図る目的から、冬場の温度をコントロールする暖房設備やハウス内の空気を循環させ、ハウス内環境の均一化を図る空調設備などは一般的な設備に位置づけされ、数多く導入されています。

環境制御設備は予算感から優先度を下げて導入を見送る傾向にありますが、ハウス内部に雨の流入を防止する自動換気、ハウス内温度に応じて、内張カーテンを自動で開閉する設備は導入を推奨しております。

これらの設備を導入することで、気象変動にも自動で対応し、新規就農者の労務軽減に貢献します。

ビニールハウスの価格に関する考え方

ビニールハウスの価格に関する知識

ビニールハウス本体の価格は、一般的に連棟数が増える、軒高(柱高)が高くなることで、使用する骨材の強化や骨材の数が増え、ビニールハウス価格が上がる傾向にあります。

それに加えて、風速や積雪等の厳しい地域では、土地環境に耐えうる構造体で設計されるために、さらにビニールハウス本体のコストアップとなります。

初期投資を抑える際は、ビニールハウスの性能を損なわない形で、用地に基づく合理的な設計をすることで金額抑制に繋がります。

ビニールハウスの価格に関する判断軸

ビニールハウスの価格は、イニシャルやランニングコスト、減価償却、農産物の売上と収益をトータルで把握し、投資に見合う農業経営を実現できるかを軸に考える必要があります。

初期投資はビニールハウス本体、被覆材、ハウス内部設備、各種施工費の費用、ランニングコストでは暖房機をはじめとする水道光熱費、農業生産に関わる諸経費から構成されます。

初期投資を抑制する際はビニールハウスの仕様変更や被覆材の変更、加えて環境制御システムも必要最小限にすることで価格を抑えられるケースがあります。

ただし、被覆材を軟質フィルムに変更した際は気象災害の被害を除いて3~5年目安に張替えが必要となるため、ランニングコストに跳ね返るために注意が必要です。

ビニールハウスを検討する際は求める機能が含まれているのか、必要以上の機能が含まれていないか、栽培支援などのサービスが存在するのか、気象災害や機器故障の際にメンテナンス可能かどうかなども確認し、最終的には投資に見合う農業経営が実現できるかを判断軸にしましょう。

ビニールハウスの建設に活用可能な
新規就農者向け支援制度とは?

認定新規就農者制度の活用

認定新規就農者制度はこれからの農業を支える 新規就農者を増やし、安定的な新規就農者を地域農業の担い手として育成することを目的にしています。

新たに農業を始める方が作成する青年等就農計画(事業計画書)を各市区町村が認定し、認定を受けた方に対して、早期の経営安定に向けた措置を集中的に実施する制度になります。

認定新規就農者制度を取得することで、独立して農業を始める際に必要な設備や機械の初期投資資金や所得確保の給付金等の支援策が優先して、取得できる等のメリットがあります。

支援策として、日本政策金融公庫から青年等就農資金(最大3,700万円の融資)や就農後の所得又は生産資材に活用できる経営開始資金(年間最大150万円の給付金)の対象となります。

青年等就農計画(事業計画書)の作成に向けて、イニシャル及びランニングコストの算出が必要です。コストの算出は農地の形状と農地面積に応じて変動し、加えて農地の形状や土地環境に応じて、ビニールハウスの建設が困難な場合もあるため、青年等就農計画(事業計画書)の作成を進める前に候補となる農地を複数ピックアップしておくことが重要です。

候補となる農地をピックアップした後は新規就農を支援しているハウスメーカーに依頼し、青年等就農計画の作成から新規就農・農業参入まで伴走してもらいましょう。

最適なビニールハウスをご提案

イノチオアグリは施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に携わり、50年以上の知見がございます。50年以上に渡り、培ったノウハウを活かし、新規就農・企業の農業参入を計画段階からご支援しております。

お客さまのご要望や条件に基づいてビニールハウスを設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの策定をお手伝いします。

さらに、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。