ICT技術(情報通信技術)の発展により農業生産の現場では、スマート農業と呼ばれるシステムやロボットを活用した農業技術が登場してきています。
お客さまからも「スマート農業をやりたい」 という声が近年増えてきました。

今回のコラムでは「なぜスマート農業が注目を集めているのか?」その理由と日本の施設園芸が抱える現状の課題や解決案を交えてご紹介します。

目次

  1. そもそもスマート農業とは?
  2. 日本の施設園芸における現状課題
  3. 課題解決のきっかけは“スマート農業”
  4. スマート農業技術を活用したお客さま事例の紹介
  5. イノチオのスマート農業製品紹介
  6. イノチオアグリは新規就農をご支援します

そもそもスマート農業とは?

農林水産省では、スマート農業を「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業を実現」と定めています。

ビニールハウスを使用した施設園芸では、環境制御システムや自動灌水システムなどの作物の栽培を管理する機器、カメラやセンサなどを活用した病害虫診断アプリなどがあります。水稲や露地栽培では、農薬散布などの重労働を担う自動飛行ドローンなども導入されています。

さらにわかりやすく説明をすると、「農業」×「先端技術」=「スマート農業」ということになります。

近年のスマート農業の推進背景には、生産者の高齢化、担い手の減少、労働力確保、省力化、負担や危険性の軽減、女性の活躍など、現在の日本農業が抱えているさまざまな問題があります。「これらの問題を解決できる!」と期待されるのが「スマート農業」です。

日本の施設園芸における現状課題

農業の現場では、依然として人手に頼る作業や熟練の生産者でなければできない作業が多く、その他にも省力化、人手の確保、作業負担の軽減、エネルギーコストなどの課題が山積みです。

こちらでは、日本の施設園芸が抱える現状の課題について詳しくご説明します。

1:伸び悩む生産性

早くから生産性追求に力を入れてきたオランダは、養液栽培や炭酸ガスが普及してきた1980年代よりその技術導入が進み、面積当たりの収量が増加してきました。

さらに1985年以降からは、温度・湿度・光・炭酸ガス・養液を統合的に制御する複合環境制御が発達し、コンピューター管理により飛躍的な収量増加となりました。

 一方で、スマート農業化が発展途上の日本の収量は、低い水準で伸び悩んでいる傾向にあります。同じ面積で収量を増やしていくには、作物にとって最適な環境を作ることがもっとも大切です。

しかし、急な天候の変化や病気の発生などにより狂いが生じてしまうので、人の目だけでなく、データとしての証拠が重要です。

2:導入が進まない環境制御システム

日本の施設園芸は、野菜等の出荷期間を延長するため、簡易型 のビニールトンネルや雨よけハウス から大型ビニールハウスへと進化し、 さらにはビニールハウス内の環境制御装置の導入へと進化してきました。

しかし2020年のデータでは、ビニールハウスの総設置面積40,615haのうち、加温設備を備えたハウスは16,936ha(41.7%)、温度や湿度、光等の複数の環境を制御できる装置を備えたハウスは1,163ha(2.9%)  と、環境制御システムの導入は進展していません。

季節や天候に左右されず、野菜等の安定生産確保するためには、環境制御装置を導入したビニールハウスの割合を高め、生産性を向上させることが重要です。

3:高齢化により変化する経営構造

日本では施設園芸に従事する農家1戸あたりの施設面積は約20aと変化はありませんが、高齢化等に伴い年々農家件数は減少しています。  1戸あたりの規模拡大も進んでいないため、ビニールハウスの設置面積は年々減少しています。

一方、施設園芸先進国のオランダでも生産者数は減少しているものの、経営効率から限られた農地面積での収量向上のため、温室施設の大規模化や集約化など、さまざまな工夫を重ねており、1戸あたりの面積拡大が進んでいます。  

日本でも規模別のビニールハウス設置面積を見てみると、1ha未満では減少傾向にありますが、1ha以上の大型のビニールハウスは増加しています。

4:価格変動するエネルギーコスト

施設園芸は、経営費に占めるエネルギーコストの割合が高く、漁業と同様に燃油価格高騰の影響を受けやすい業種です。燃油は、リスクや為替、国際的な商品市況の影響により、価格の乱高下を繰り返しており、必要不可欠にもかかわらず、今後の価格の見通しを立てることが困難と言えます。

課題解決のきっかけは“スマート農業”

上記で掲げた4つの課題の他にも、農業離れによる労働力不足、重労働というイメージによる敬遠、新規就農者の知識・経験・技術の不足などの課題があります。

そのような課題を解決するきっかけになるのがスマート農業です。

1:環境制御技術の導入による生産性向上

日本の気候に適応させて耐候性を高めたビニールハウスで、ICTなどのスマート農業技術により植物の生育環境を最適にコントロールすることで、計画的な生産を実現でき、収量を飛躍的に向上させることが期待できます。

環境制御システムを有効活用するためにも、その能力に適合したビニールハウスや栽培設備を導入し、作物に最適な環境を実現することが重要になります。

また、これまでは長年の経験と勘による部分が多かった農業でしたが、スマート農業の導入により作物の状態と環境を見える化することで、新規就農者や家業を引き継いだ方でも、品質の高い生産を行えるようになりました。

2:労働力を最適化した大規模経営

大規模施設であれば数十名~100名近くの雇用が必要であり、中小規模の個人の生産者であっても数名のパートスタッフさんが必要になる場合があります。
適切な作業計画の策定・見直し、適正配置や作業の標準化等により、雇用労働力を活用した効率的な生産が求められます。

大規模施設の場合は、作業に対しての必要な労働力が見えにくく、無駄な人件費を割いてしまう恐れがあるので、労務管理システムの活用をおすすめします。
労務管理、目標管理を日々することで「ムリ」「ムラ」「ムダ」をなくします。さらに、作業進捗を見える化し、生産性の改善するPDCAサイクルを行えます。

労務管理システムagri-board(アグリボード)の詳細はこちら

3:エネルギー活用の最適化でコスト削減

上記でも説明した通り、施設園芸は経営費に占めるエネルギーコストの割合が高く、燃油価格高騰が経営に大きな影響を与えます。

しかし、環境制御システムで最適な温度設定を把握することで、必要以上の燃油消費を抑えることができ、長期的な視点でコストを削減することにつながります。

大規模 施設の場合では工場の排熱、木質バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーを活用して燃油のエネルギーコストを削減している事例もあります。

スマート農業技術を活用したお客さま事例

うれしのアグリ株式会社(三重県)
「環境制御システムと再生可能エネルギーを活用したスマート農業」

三重県松阪市でミニトマトの生産・販売を行っている株式会社うれし野アグリ。
オランダ型のハイテクハウスと高性能環境制御システムを活用し、木質バイオマスボイラを活かしたエネルギーの有効活用に取り組んでいます。

関連記事:企業の農業参入4社コラボでの大規模施設園芸

山口仁司さん・真彦さん(佐賀県)
「システムの共通性で機能以上の効果を生む⁉」

キュウリ栽培の名人、山口仁司さん(佐賀県武雄市)。現在は経営を息子の真彦さんへ継承し、トレーニングファームJA佐賀で特任講師として、就農を目指す若者たちへキュウリ栽培の手解きをしています。イノチオのビニールハウスと環境制御システムを活用した栽培方法についてお話しいただきました。

関連記事:システムの共通性で機能以上の効果を生む⁉

キングファーム(愛知県)
「現場責任者を支える!農業経営のブレないモノサシ」

キングファームは、「ものづくり」をしている製造会社である大野精工株式会社(愛知県西尾市)がイチゴの生産販売・観光農園、ミニトマトの生産販売、カフェ運営を行っている農園です。イノチオアグリのグループ企業である株式会社はれるとが開発した農業専用の労務管理ソフト「agri-board」を活用して取り組む農業経営について伺いました。

関連記事:現場責任者を支える! 農業経営のブレないモノサシ

イノチオのスマート農業製品紹介

環境制御システム AERO BEAT(エアロビート)
「使いやすく高性能!日本農業に最適な環境制御システム」

施設園芸に携わり50年以上のイノチオアグリがこれまで培ってきた施設園芸の経験と生産者の声をもとに、ハウスを複数等管理している日本のビニールハウス栽培向けに開発した環境制御システムです。
エアロビート本体とコンピュータ1台で最大10区画または、ハウスを最大10棟まで管理することができるので、管理時間と導入コストの両方を削減できます。

AERO BEATの製品情報を見る

自動灌水制御盤 AQUA BEAT Ex(アクアビート)
「多彩な灌水設定で作物に最適な栄養供給を実現」

多系統の灌水を時間と流用で制御でき、1株あたりの灌水量と肥料倍率などの細かな設定も行えます。オプションによる機能追加で日射制御と排液管理も可能です。
エアロビートと連動することで遠隔での管理も行えます。

関連記事:アクアビート/ アクアビート メビウス

労務管理システム agri-board(アグリボード) 
「農業の記録をデジタルへ、労務と目標管理をカンタンに」

イノチオアグリのグループ企業の株式会社はれると が開発した労務管理システムagri-boardを活用することで作業時間の最適化や経費・労務費の削減を行い、施設園芸の労務管理・目標管理から「ムリ」「ムラ」「ムダ」をなくすことをサポートします。
さらに作業進捗や実績の見える化など、コスト削減だけではなく生産性改善に向けた新しいアプローチを提案します。

関連記事:農業の記録をデジタルへ、労務と目標管理をカンタンに。

イノチオアグリは新規就農をご支援します

イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトとし、お客さまを多岐に渡り支援することを掲げています。施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に50年以上携わり、培ったノウハウや知見を活かし、新規就農・農業参入を計画段階からご支援しています。お客さまのご要望や条件に基づいて農場を設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、融資や補助金・助成金、そして事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。

さらに、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。