日に日に注目が集まるスマート農業。
ビニールハウスを活用して栽培をする施設園芸の分野では、どのようなスマート農業製品があるのか?そして、どのように活用できるのか?
このような疑問を持たれている方もいらっしゃるかと思います。

今回のコラムでは、スマート農業が注目される背景から、スマート農業製品の活用方法と導入目的を中心にご紹介します。

施設園芸の現状を見つめる

農業界では、人手不足が深刻な課題となっています。
高齢化だけでなく、担い手の不足も大きな要因です。

以前は、農業は長年積み重ねてきた経験と知識がものを言う世界でした。そのため、新たに農業を仕事として始めることが困難であるという印象がありました。
また、昔からのイメージが先行して、今でも農業を3K労働(きつい・汚い・危険)と偏った認識を持たれている方がおられます。

加えて、地球温暖化や資材・エネルギー資源の高騰により安定した農業経営を継続していくことに関しても課題を抱えています。

なぜスマート農業が求められているのか?

スマート農業の登場によって、これまで経験と勘に頼っていた農業は大きな変革期を迎えました。

かつては個人に委ねられていた栽培技術をデータにして見える化することで、高品質かつ高収量の栽培が実現しやすくなりました。また、これまで人の手に頼っていた作業を自動化する製品も登場しています。

このように、これまで農業が抱えている課題を解決できる役目として、スマート農業が注目を集めています。

そもそもスマート農業とは?

農林水産省では、スマート農業を「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業を実現」と定めています。
ビニールハウスを使用した施設園芸では、環境制御システムやモニタリングシステム、自動灌水制御システムなどの作物の栽培を管理するシステム、カメラやセンサなどを活用した病害虫診断アプリなどがあります。水稲や露地栽培では、農薬散布などの重労働を担う自動飛行ドローンなども導入されています。

さらにわかりやすく説明をすると、「農業」×「先端技術」=「スマート農業」ということになります。
近年のスマート農業の推進背景には、生産者の高齢化、担い手の減少、労働力確保、省力化、負担や危険性の軽減、女性の活躍など、現在の日本農業が抱えているさまざまな問題があります。「これらの問題を解決できる!」と期待されるのが「スマート農業」です。

スマート農業が解決できる農業課題

スマート農業には、農業が直面してきた課題を解決する大きな可能性があります。

1:農作業の省力化・労力削減

栽培は、ビニールハウス内の環境を作物に最適となるようにコントロールすることが重要です。
しかし、環境管理は換気、遮光、温度、湿度、潅水など多種にわたります。そのうえ所有するビニールハウスが点在していると、環境管理をすることで手一杯になってしまうことも危惧されます。

そのような課題を解決するため、環境制御システムや自動潅水システムを導入することで、作業の自動化や遠隔監視・遠隔コントロールを行うことができ、省力化や労働力削減を実現できます。

2:栽培課題・経営課題の見える化

これまで、栽培の知識・技術・ノウハウは、農業者の経験や知識に基づく匠の技となっていました。作物の生育不良や予期せぬ事象など、経験の浅い新規就農者や、大型農業法人の栽培担当者(グロワー)などは、どこに課題があるのかを見つけ出すことが困難でした。
そこで、スマート農業の特徴であるデータの「見える化」の活用が課題の解決に役立つと言われています。

各種センサでビニールハウス内外の環境をリアルタイムで判断をし、あらかじめ設定した条件でビニールハウス内の装置を自動制御させることで、経験や知識ではなく、データに基づく理想的な栽培環境を生み出すことが可能です。

また、作業上で発生する労務コストも「いつ・どこで・誰が・どのような作業をしたか」ということをデータとして見える化できることで、必要以上にコストが掛かっている問題点を見つけ、改善につなげることができます。

3:品質と生産性の向上

品質の向上には、栽培している生産物にとって最適な環境や条件を把握し、その環境と条件をビニールハウス内に再現する必要があります。上記でも述べているように、こうした作業は長い年月をかけて培ってきた経験と知識に頼っていました。

しかし、スマート農業の発展によって、ビニールハウス内外や培地内のデータ、気象データなどを組み合わせることで、ロスなく高品質かつ生産性の高い栽培ができるようになりました。

4:農業技術の継承

農業は担い手の不足や高齢化から起きている農業人口の減少が問題となっています。それによって代々受け継いできた農業技術が次の世代へ共有・継承しにくい状況にあります。
家族経営をしている生産者では、担い手の子どもが農業に従事しない、従事する場合でも親が高齢になってからなど、受け継いできた技術が途絶えてしまう恐れがあります。

そのようなリスクを避け、農業を次の世代へ継承していくためにも、データとして記録に残せるスマート農業が期待されています。

5:持続可能な環境づくり

現在、注目されているSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)とも、自然との調和が求められる農業は密接に関係しています。
スマート農業の技術を活用することによってムダな水や農薬、化学肥料の低減が期待できます。

栽培する過程で農薬や化学肥料を大量に使えば、周りの土壌や河川が汚染されてしまい、自然破壊が進んでしまいます。
一時的な収量確保だけでなく、永続的な食糧生産をするために、地球環境に配慮した持続可能な農業を行っていく責任があります。

イノチオがおすすめするスマート農業製品

農作業の省力化・労働力削減、栽培課題・経営課題の見える化、品質と生産性の向上、農業技術の継承、持続可能な環境づくり、以上5つの課題解決をご紹介しました。

それでは、このような農業の実現につながるイノチオのおすすめ製品をご紹介します。

環境制御システム AERO BEAT

施設園芸に携わり50年以上の歴史を持つイノチオアグリが、これまで培ってきた自社実績と、生産者の声を取り入れて開発した生産者目線の環境制御システムです。
環境制御と合わせて、モニタリング機能も搭載。エアロビート本体とコンピュータ1台で最大10区画または、ハウスを最大10棟まで管理することができるので、管理時間と導入コストの両方を削減できます。
オリジナルの管理画面に設定することができ、はじめての方にも使いやすい仕様となっています。

AERO BEATの製品情報を見る

環境制御システム IIVO

IIVO(アイボ)は、オランダのホーヘンドールン社が開発した高性能環境制御システムです。
機能的なソフトウェアと最先端のハードウェアで構成されています。それにより、作物の力を最大限に引き出します。ハウスの規模や天候に関わらず、ビニールハウス内の環境をすばやくモニタリングし、作物にとって最適な環境を維持することができます。

IIVOの製品情報を見る

自動灌水制御システム AQUA BEAT Ex

多系統の灌水を時間と流用で制御でき、1株あたりの灌水量と肥料倍率などの細かな設定も行えます。オプションによる機能追加で日射制御と排液管理も可能です。
エアロビートと連動することで遠隔での管理も行えます。

AQUA BEATの製品情報を見る

培地重量センサ スラブサイト

スラブサイトを使えば、作物への水分不足ポイントが一目瞭然!安定した作物成長を支援できるシステムです。
また、過去のグラフデータから振り返りができるので、栽培管理者の栽培力向上と後継者育成のきっかけ作りにもなります。

スラブサイトの製品情報を見る

防除・灌水支援システム マスプレー

ビニールハウス内における自動防除・灌水システムです。
農薬散布時の農薬の微粉末や霧を吸い込むリスクが軽減でき、かつ防除作業の省力化にもなる、人に優しい商品です。切り花栽培の方だけでなく、イチゴの高設栽培の方や鉢物のベンチ栽培の方にも導入いただいております。

マスプレーの製品情報を見る

施設内加湿 ミストシステム

収量アップを目指すためには、適切な飽差管理をおすすめします。そこで加湿するための装置がミストシステムです。45cc/分の少量ノズルを使用し、植物が濡れない程度の微粒子の霧を発生させます。
※「飽差」とは1平米の空気の中にあと何グラムの水蒸気を含むことができるかを示す数値です。

ミストシステムの製品情報を見る

イチゴ高設栽培ベンチ ストロベリーハイポ

ストロベリーハイポはイチゴ栽培専用の高設ベンチです。
観光農園向けの一本足ベンチ、一般的な栽培に選ばれる二本足ベンチの2種類から選択でき、ベンチの高さ・通路幅などお客さまの農業経営に最適な仕様を提案します。
ベンチだけでなく、栽培に使用するベッド、培土、肥料、資材、栽培支援などイチゴ栽培をトータルで支援します。

ストロベリーハイポの製品情報を見る

養液栽培用架台 ハンギングガター

ハンギングガターはトマト、きゅうり、パプリカなどの作物で誘引栽培を行う際に使用されます。ハウス本体から吊り下げることにより、ベンチ下の空間を確保できます。
数ha規模の大規模圃場の場合、従来の打込式パイプベンチと比較して部材・施工費を安価に抑えられ、工期も大幅短縮化ができます。

ハンギングガターの製品情報を見る

スマート農業を実現できるビニールハウス

イノチオアグリでは、スマート農業製品だけでなく、スマート農業に最適なビニールハウスも建設できます。
ビニールハウスに携わり50年以上、積み重ねてきたビニールハウスの建設実績をもとに、作物や栽培方式、土地環境に沿ったビニールハウスをご提案。10年間に渡る収量や収益性の試算から、お客さまの理想を実現するビニールハウス・ハウス内部設備、農業経営の開始後までトータルでご提案いたします。

今回は、主要の4つのビニールハウスをご紹介します。

丸型ハウスD-1

自社工場でスチール角パイプを加工し、独自のアーチ形状を実現。安価でありながらも、パイプハウスと比較し高い強度と耐久性を兼ね備えています。
温度・湿度面に優れたハウス内環境は幅広い作物に適しており、長期間安心して使える丸型ハウスです。

屋根型ハウス

栽培品種に合わせて最適な設計や素材を選べるハウスです。
間口・柱高を自由に選択できるため、栽培方式にあった理想の空間を実現可能。また、幅広い設計強度にも対応でき、多種多様なお客さまのニーズにお応えします。

SANTAROOF

強度の高い高軒高設計(柱高最大6.0m)により、広い栽培空間で長期多段取りが可能。
また、屋根部材を小型化することで採光性を高め、光合成を促進し、高収量・高収益を実現します。

ドリームフィールド

50 年以上施設園芸に携わってきたノウハウを活かし、設計構造を見直し標準化することで、低コストを実現しました。また、採光率66%、耐風速50m/s、2倍の換気容量(自社調査比)と、機能面にもこだわったハウスです。

スマート農業を活用するお客さま事例

イノチオのスマート農業製品とビニールハウスを活用して栽培に取り組まれ、高実績を上げているお客さま事例をご紹介します。

川名 桂さん(東京都)
「アクアビートは理想の制御ができるシステム」

東京都日野市で新規就農をしてトマト栽培をする川名桂さん。農地を借り、ビニールハウスを建設して、都市型農業に取り組んでいます。
理想のトマトの味を引き出すために、灌水の細かな数値管理を求められていました。アクアビートは、給液や廃液の数値を細かく確認でき、理想の制御が行える点で満足され導入していただいています。

川名桂さんの事例を見る

山口 仁司さん・真彦さん(佐賀県)
「システムの共通性で機能以上の効果を生む⁉」

佐賀県武雄市でキュウリ栽培をする山口仁司さん。
栽培をするビニールハウスは、天窓・カーテン・暖房・冷房・潅水・CO2、すべてエアロビートで制御。九州北部の冬場の曇りが多い気候に合わせて設定をさせていただきました。
現在は経営を息子の真彦さんへ継承し、トレーニングファームJA佐賀で特任講師として、就農を目指す若者たちへキュウリ栽培の手解きをしています。

山口仁司さん・真彦さんの事例を見る

Kさん(愛知県)
「マスプレーで消毒作業の省力化に成功」

愛知県豊川市でイチゴ栽培を40年続けているKさん。労力と時間のかかる防除作業に課題を持っていました。
そこで、マスプレーを導入したところ、これまでハウス1棟で約2時間かかっていた防除作業が約45分に短縮。以前は、出荷を終えて日中に汗を流しながら防除作業をしていたのが、自走稼働で作業をしてくれるので助かっているとおっしゃってくれています。

Kさんの事例を見る

イノチオアグリは新規就農をご支援します

イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトとし、お客さまを多岐に渡り支援することを掲げています。施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に50年以上携わり、培ったノウハウや知見を活かし、新規就農・農業参入を計画段階からご支援しています。お客さまのご要望や条件に基づいて農場を設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、融資や補助金・助成金、そして事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。

さらに、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。