ビニールハウス内は閉鎖空間なので換気窓を閉じると空気の流れがほとんどなくなり、病気の発生が助長されたり温度ムラが発生したりします。それを解決するため、ビニールハウス栽培では一般的に循環扇と呼ばれる装置が使用されます。

今回のコラムでは、農業用循環扇の役割と効果、選ぶ際のポイントや設置・使用する際の注意点を解説します。

ビニールハウス栽培のメリットと循環扇の効果とは?

循環扇は閉鎖環境であるビニールハウスなどの施設栽培において、効率よく空気を循環させるために必要な設備です。

まず初めにビニールハウス栽培のメリットと循環扇の効果について説明します。

ビニールハウス栽培のメリット

ビニールハウスを使用した栽培は、露地栽培に比べて天候の影響を受けにくいというメリットがあります。ビニールハウスでは、栽培環境を外部環境と切り離すことで、雨や風などの自然現象の影響を排除し、気温の変動を小さくすることができます。

これにより、年間を通じ作物を栽培することが可能になります。

外部環境と切り離されているので、病害虫の侵入を防ぐ機能も持ち合わせています。
より侵入率を下げるために出入り口を2重構造にしたり、防虫ネットで隙間を埋めたりと、外と内を区別する工夫もなされています。

その他にも、市場価格の動向に合わせて出荷時期を調整できる、環境制御システムや自動潅水システムなどの栽培をコントロールするスマート農業の導入に適しているなどのメリットがビニールハウスにはあります。

関連記事:ビニールハウスのメリット・デメリットはこちら

換気の重要性と循環扇の効果

循環扇は、閉鎖環境であるビニールハウスなどの施設栽培において、効率よく空気を循環させ温度ムラを改善するために必要な設備です。

夏場の高温時に循環扇を使用することで、ビニールハウス内の熱気を外へ排出します。遮光・遮熱カーテンと一緒に使用することで暑さ対策により高い効果を発揮します。

冬場に循環扇を使用することで暖房によって温められた空気を効率よく循環させ、省エネによるコスト削減にもつながります。

ビニールハウス内の空気を動かすことで多湿による病気の被害を抑制したり、薬剤散布後に付着した散布液を早く乾かしたりすることができます。
植物の葉面境界層を破壊することで二酸化炭素を供給し、光合成の促進にも期待できます。

循環扇を選ぶポイント

ここまでビニールハウス栽培のメリットと、循環扇を活用した効果についてご説明してきました。では、循環扇を選ぶ際に知っておくべきポイントについてご紹介します。

水平式と直結式

一般的に循環扇といえば、水平方向に空気を流すようにビニールハウスの天井部に設置されますが、大規模栽培施設や超大規模栽培施設では、垂直方向に向けて空気を流す循環扇が使われています。

ご自身のビニールハウスの規模を考慮した上で、水平式か直結式がどちらのタイプにするかを決めましょう。

とくに、循環扇はハンギングガターによる高設栽培を行う大規模施設向けに効果的です。

サイズと性能

一般的な水平式の循環扇の場合、各製品ごと風の到達距離について注意しましょう。
ご自身のビニールハウスの長さに対して十分な性能を兼ね備えているのか確認してください。

間違って風の到達距離が短い製品を選んでしまうと、ビニールハウス内環境の均一化を実現できないため注意が必要です。

付帯機能

一般的な水平式の循環扇では、風の向きや風量、それに風の広がり方を調節可能な製品も存在します。

また、タイマーや遠隔操作が可能なモデルも各メーカーから販売されています。
これら付帯機能にも気を配り、自身のビニールハウスにピッタリな性能を兼ね備えた循環扇を選びましょう。

循環扇を選ぶ際のポイントを3つご紹介しましたが、その他にも耐久性、作動時の音のほかに、長期間使うものだから故障時の保証についても確認しておきましょう。

ご自身で判断が難しい場合には、ビニールハウスの建設に詳しい企業に相談して最適な循環扇を紹介してらもらいましょう。

循環扇を設置する際の注意点

循環扇はただ設置すればよいというわけではありません。循環扇を設置する際に注意すべき点を確認しましょう。

制御盤

循環扇を制御するために基本的には制御盤が必要となります。制御盤とは、機械や設備を電力で制御するための電子機器や部品を収納した箱のことをいいます。

制御盤1台で制御できる循環扇の台数が違ったリ、温度センサーによってオン・オフができるものなどがあったりするため、圃場に合わせて選択しましょう。

電機工事

循環扇の設置には電気工事が伴います。感電事故や火災事故を防止するため、電気工事は必ず資格を持つ人またはビニールハウスメーカーや電気業者へ依頼しましょう。

循環扇や制御盤の準備から電気工事までを業者に一括して依頼をするのがおすすめですが、循環扇や制御盤を自分で購入・設置して電気工事を業者に依頼する場合は、事前に業者と打ち合わせしておくとよいでしょう。

数は少ないですが、電気を使わず外気の循環を利用して空気を動かすタイプの循環扇もあります。

設置位置

設置作業時に作物を傷めてしまう可能性があるため、作替えのタイミングなどのビニールハウス内に作物がない時期に設置をするようにしましょう。

循環扇は、製品よっては10kg近くあるものもあります。強度がない場所への設置は循環扇の落下や振動の原因となります。循環扇の重量を確認したうえで、強度が十分でない場合は補強してから設置しましょう。

循環扇の風が直接植物体に当たると作物が傷つき病気の原因になることがあります。直接当たらないよう作物の正面には設置しないように注意しましょう。
基本的に循環扇は、作物の生長点とハウスの天井の間に設置します。

ビニールハウス内の空気がうまく循環するよう、循環扇と循環扇の間隔は製品の送風距離を考慮して決めましょう。

間口が狭いビニールハウスでは同じ方向に風が流れるように、連棟ハウスや間口が広いハウスでは風の流れが複数発生するように、循環扇の台数や配置、風の向きなどに注意が必要です。

循環扇を使用する際に注意すること

作物によって最適な環境を作るためにも、循環扇をより効果的に使う必要があります。内張カーテンやサイドなどが閉まっていてビニールハウス内の空気の動きが少なくなる場合には、循環扇を稼働させましょう。

夏場の暑さ対策に、内張カーテンなどと合わせて循環扇を活用することでビニールハウス内の温度上昇を抑えます。

薬剤散布後に薬液が乾きにくい状況が続くと、病気の発生を助長してしまう可能性があります。その際に、循環扇を活用することで薬液を乾かすことを助けてくれます。

同様に、梅雨などの多湿の時期に稼働させることで、多湿による病気の発生を抑制します。

ビニールハウス栽培におすすめの循環扇

イノチオアグリが取り扱う各種メーカーから販売されている循環扇のなかから4製品をピックアップしてご紹介します。

風来望Ⅱ/日農工業株式会社

風来望Ⅱは、日農工業株式会社が発売している空気循環扇装置です。

高耐熱性で錆びにくく、安全設計のステンレス製ボディーとモーターを備えています。
防水仕様のモーターで長期間の使用が可能で、異常温度時に自動停止し、安全に復旧します。

羽根のバランスにこだわり、静かで柔らかい風を提供。軽量で専用スタンドと風向き調整ノブを備え、メンテナンスが簡単です。

フルタエアビーム/フルタ電気株式会社

フルタエアビームは、フルタ電機株式会社が発売している空気循環扇装置です。

作物の光合成を促進し、風を30m先まで送風することができます。独自開発されたビームドラムと整流翼により、静音小出力でありながら栽培に最適なやわらかな風を送ることができます。

また、農薬の影響を受けにくい構造を実現しています。

ネポンファン/ネポン株式会社

ネポンファンは、ネポン株式会社が発売しているハウス内で作物に最適な気流を作り出す施設園芸用ファンです。

暖房の効率化、温度ムラや作物育成のムラの改善、病害発生の抑制が期待できます。
通常の水平固定の製品だけでなく、高軒高ハウス向けの上下気流の製品なども取り揃えています。

すくすくファン/株式会社スイデン

すくすくファンは、株式会社スイデンが発売している施設園芸や栽培施設内での循環と送風に使用されるファンです。

夏場の高温対策や冬場の暖房の効率化に使用できます。専用設計のプロペラファンと効率的な空気の流れを生むフロントガイドベーンを組み合わせることで、作物にやさしい風をハウスの隅々まで効果的に循環させます。循環扇の有効活用でコスト削減と栽培環境を改善!

地球温暖化の影響で年々、夏の暑さは人にとっても作物にとっても厳しくなってきています。暑さを乗り越えるために、循環扇は欠かせない設備です。

ただ設置するだけではなく、より効果的に、また圃場に合ったものを設置することでハウス内の環境をよりよくすることができます。

ビニールハウス栽培と循環扇のご相談はイノチオアグリへ

循環扇は、ビニールハウス栽培において欠かすことのできない設備です。
イノチオアグリでは、これまで1万棟以上のビニールハウスを作ってきた経験をもとに、循環扇をはじめお客さまに最適な栽培環境に必要な内部設備をご提案します。

その他、新規就農や農業参入などこれから農業をはじめる方々を応援しています。
農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農業経営をトータルサポートします。