新しく農業をはじめるには農地が必要です。反対に、後継者が見つからず農業を引退する場合、使用しない農地を所有している場合には、農地を手放したいと思っている方がいます。

しかし、農地は日本にとって大切な土地であり、農地法で管理されているため、土地転用や売買・賃借を簡単に行うことはできません。

このような農地の問題を解決できる方法の1つとして「農地バンク」が注目されています。今回のコラムでは農地バンクの紹介とメリットやデメリットなどについて解説していきます。

目次

  1. 農地バンクとは?
  2. 農地バンクの利用方法について解説
  3. 農地バンクのメリット
  4. 農地バンクのデメリット
  5. 失敗しない!農地バンクの仕組みについて理解しよう!
  6. 農地バンクが抱える問題点
  7. 農地が必ず賃借できるわけではないことを理解しよう
  8. 農地バンクに興味がある方は農地中間管理機構へ相談!
  9. イノチオアグリは新規就農・農業参入をサポートします!

農地バンクとは?

農地バンク制度とは、農林水産省が取り組む農地の貸し借りをサポートする事業です。
借り手と貸し手の間を農地中間管理機構が仲介する形で農地のスムーズなマッチングをサポートするという仕組みです。

農地中間管理機構は、都道府県・市町村や農業団体などが出資している第3セクターの法人で、都道府県ごとに1団体あります。詳細は省きますが、借り手の条件が異なるなど、地域に応じた運用がされています。

令和5年からは法改正がされていて、これまで順調に利用されていた農地だけでなく、所有者不明農地や遊休農地も対象となりました。借り受ける「担い手」への貸付も行い、農地の集積・集約化のこれまで以上の活性化を目指しています。

また法改正により、これまでは「人・農地プラン」として作成されていたものが「地域計画」となりました。

これまで以上に農地利用の将来像をしっかりと見定め、集約化を促進していこうとしているものといえます。

農地中間管理機構

農地バンクの利用方法について解説

農地バンクの利用方法をご紹介します。
基本的には、各地域の農地中間管理機構の条件に準じた形となりますのでご注意ください。

農地を貸す

各地域によって条件や方法は異なりますが、年に2回ほど貸付の希望を取っています。
締切日が決められている場合には、期限内に各地域の農業中間管理機構へ申し込みを行いましょう。

ただし、全ての農地を受け入れているわけではありません。利用が難しい農地や借主を見つけにくいと判断されると断られることもあります。

農地を借りる

借りる場合にも、各地域の農地中間管理機構に従うこととなります。年中募集されることが多くなっています。

地域によって異なりますが、募集用紙などに必要事項を記載して応募することが基本です。応募方法は農地中間管理機構のホームページを確認にして、希望する地域に問い合わせましょう。

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農地バンクのメリット

農地バンクが注目されている背景にあるメリットについてご紹介します。

農地契約を一本化できる

代々農業を営んでいる家系であれば、農地をいくつか所有しているかもしれません。
最初から多くの農地を所有して農業をはじめる方は少なく、事業拡大に合わせて農地を所有していくことが通例です。

その場合、徐々に新しい農地を購入したり借りていくため、農地の場所が1か所に固まっていることが稀です。また、契約先も多くなり、余計な作業が増えてしまいます。

しかし、農地バンクを活用して農地を一括して借りた場合には、支払い先は農地中間管理機構のみとなります。

さらに、農地を集積すると契約の一本化だけではなく、移動などの手間も削減され、作業の効率化や収益の向上にも効果があります。

安心して賃借できる

農地バンクを活用しなくて農地の賃借は可能ですが、賃料の未払いや近隣の農地とのトラブルで悩まされることもあります。金銭と同様に、資産でもある農地は、個人間での貸し借りは余程の信頼関係がない限りは難しいと言えます。

農地バンクを通すことで、賃料の回収も農地中間管理機構が行います。

そのため、未払いやトラブルといったことが起こりにくくなります。また、賃料は自動で引き落とされるため手間も省かれます。

何よりも、金銭のトラブル対応は心身共に疲弊します。そのようなことを避けられるのも大きなメリットです。

新規就農者でも農地が借りやすい

新規就農者が農業をはじめる際、最初の大きな壁は農地取得でしょう。
通例、農地の持ち主は知らない人には貸したがりません。

農地バンクができたいことで、農地中間管理機構が仲介に入るため、信頼性も高く、貸してくれないなどの課題も改善されてきています。

新規就農者でも農地を借りやすくなったことは、農地バンクのメリットと言えます。

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耕作放棄地や遊休農地を有効活用できる

耕作放棄地や遊休農地と呼ばれる使われていない農地は、日本の大きな課題の1つです。
例えば、相続などで使っていない農地を所有しているなどは地方に行けばざらにあります。

しかし、農地は農地法で守られているため簡単には農業以外の活用ができず、放置される農地が増えてしまいます。

そのような際に農地バンクを利用することで、使われていない農地が活用されるきっかけなり、借り手が見つかれば賃料も入ってきます。

節税対策になる

土地には所有してるだけで固定資産税が発生します。

そのため、耕作放棄地などの農地を所有しているだけで固定資産税が掛かってしまうので、農地を貸し出して賃料を得られるだけでも、貸し出すメリットがあります。

さらに、農地バンクに貸し出した場合の減税というメリットがあります。
面積や貸し出し年数の条件を守れば、3年間は固定資産税と都市計画税が減税されます。

以上のように放置していた農地であれば、農地バンクへの貸し出しはメリットがある方法です。

農地バンクのデメリット

続いて、農地バンクのデメリットについて確認しましょう。

貸付期間が決まっている

農地バンクの貸付期間は自由に設定できるわけでなく原則10年です。
貸し出し後、期間満了を迎えない限り農地は返却されません。

一部5年まで期間を短縮できますが、ほとんどの場合は10年となるため、貸し出す前に慎重に判断しましょう。

長期間の貸し出しは、定期的な更新作業も必要なくメリットも多いですが、貸付先も農地バンクが決定するため貸し手側での判断はできません。

しかし、農地の管理や賃料の振り込みは農地バンクが行うため、貸し先が誰であっても心配する必要はないでしょう。

借り手の意見が強い

農地の賃料は、農地バンクと貸し手が決めるのではなく、借り手との協議で決定されます。これは、借り手が少ないことが原因です。借りて欲しい場合には借り手が希望する額に賃料を合わせる必要も出てきます。

貸し手が所有する農地とはいえ、借り手の意見が強くなる傾向にあることは理解しておきましょう。

失敗しない!農地バンクの仕組みについて理解しよう!

貸し手、借り手の双方がしっかりと農地バンクを仕組みを理解することでマッチングが成立します。そのために、仕組みについてしっかりと理解をしておきましょう。

貸付後10年は返却されない

デメリットでも説明した通り、農地バンクは基本的に原則として10年間が貸し出し期間です。自己都合で農地を譲ったり売却したくなっても、契約期間中は勝手な行動はできません。10年という期間を考慮した上で、農地バンクへの登録をしてください。

また、借り手の場合にも最低10年間という期間が付いてきます。10年以上農業を続けることは、会社を経営することと同様に簡単なことではありません。

新規就農する前と後では、理想と現実のギャップを感じることも多々あるかと思いますが、農地を借りている以上、続けなければトラブルの元にもなります。農地を借りたら農業を辞められないということではありませんが、最低限の責任感は必要です。

農地バンクの賃料

借り手が農地を選択できる優位な立場にいるため、どうしても賃料に関して借り手の意見が強くなりがちです。

しかし、固定資産税の軽減措置を考慮すれば、多少でも賃料は入ってくるため、放置するよりは良い方法です。

また、農地中間管理機構に農地の賃借を仲介してもらっても仲介手数料などは発生しません。発生する費用は賃料のみです。安心してご登録ください。

農地バンクが抱える問題点

そもそも農地バンクに土地を貸すことへのメリットを感じられず、自分から農地を貸すことを申し出る人が少ないという現状があります。

農地を知らない人に使われるということに抵抗がある、雑に使われても困るなどの不安を貸し手側も抱えています。

一方で、借り手側も自分が農業をはじめたい地域で農地を借りたいが、農地がなかなか見つからないという課題を抱えています。

どれだけ農業をはじめたいという想いがあっても、農地がなければ農業をはじめることができません。そのためにも、農地を所有している貸し手にメリットを感じてもらえる様な仕組み作りが必要です。

農地が必ず賃借できるわけではないことを理解しよう

勘違いされがちなのが「農地バンクを利用すると必ず賃借できる」と思われていることです。誰でも、どんな農地でも必ず賃借できるわけではありません。

例えば、立地が悪い農地であれば、借り手を見つけるまでに時間がかかってしまいます。場合によっては貸し出せないこともあります。

また、借り手も条件に合った農地が必ず借りられるわけではなく、探しはじめてから見つかるまで時間がかかることも多いです。

借り手に有利な条件が多い農地バンクは、地域によっては貸し手が少ないこともあり、条件の合う農地が見つからないこともあります。農地バンクは画期的なシステムですが、必ず賃借ができるわけではないため、時間がかかる可能性があることも理解しておきましょう。

農地バンクに興味がある方は農地中間管理機構へ相談!

農地の貸借、農地バンクのおかげで少し身近になりました。地域とのつながりが少ない方でも所有の農地を貸すことができ、同様に農地を探している方も農地が見つけやすくなりました。

農地は使用していなくても固定資産税などの維持費はかかるため、貸し出したほうが有効活用できます。また、農地バンクがあることで新規就農したい人のハードルは農地を手に入りやすくなり、農業の発展にも貢献できます。

農地を貸したい方、農地を借りたい方、お近くの農地中間管理機構へ一度ご相談をしてみてください。

農地中間管理機構

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イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトに、ビニールハウスに携わり50年以上、培ってきたノウハウを活かし、これから農業を始められる方をご支援します。

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