ビニールハウスにエアコンは必要?空調設備の種類を解説
季節を問わず、ビニールハウス内を作物にとって最適な環境にできるのは空調設備があるからこそです。天候によって収穫量、品質、出荷時期が左右される露地栽培とは異なり、ビニールハウス内の環境を整えることで天候に左右されない農業を実現できます。
今回のコラムでは、ビニールハウス栽培に欠かすことができない空調設備の種類とその特徴について解説します。
目次
ビニールハウスにおける空調設備の役割
ビニールハウスを使用して栽培をする施設園芸において、空調設備は不可欠です。
天候によって収穫量や出荷時期が左右されてしまう露地栽培に比べて、ビニールハウス栽培は室内環境をコントロールすることで出荷時期だけでなく、収穫量や品質まで調整することが可能になってきました。
ハウス内を温める空調設備
冬場のビニールハウス内の温度は、外気温の影響によって下がるため、栽培する作物にとって適切な環境とは言えません。
そのため、冬場のビニールハウスでは重油式暖房機やヒートポンプ(暖房)と呼ばれる空調設備が活用されています。それぞれの設備の特徴について紹介します。
重油式暖房機(加温機)
重油式暖房機は、加温機とも呼ばれています。仕様としては、重油を炊いて温めます。強力な暖房により、すぐにビニールハウス全体を温めることができます。各メーカーの製品がありますが、ビニールハウスに1台は必要な設備と言えます。
栽培する作物や、規模に合わせてさまざまな種類があります。導入をする場合には、ビニールハウス建設と合わせてご自身に最適な製品を提案してもらいましょう。
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ヒートポンプ(暖房)
ヒートポンプは、電気を使ってビニールハウス内を温めます。省エネ効果がありコスト削減にもなるとも言われています。
しかし、重油式暖房機(加温機)と比較すると温める能力が弱く、ヒートポンプのみで全体を温めようとすると複数台の設置が必要で導入コストも高くなります。重油式暖房機と組み合わせて使用する”ハイブリッド暖房”がおすすめです。
ハウス内を冷やす空調設備
夏場の日差しが強く真夏日や猛暑日と言われる日には、ビニールハウスの室温は40度以上を超える厳しい環境となります。
そのような環境下で栽培や作業をするには、冷房などは欠かせません。夏場のハウス内で使用されている空調設備を紹介します。
ヒートポンプ(冷房)
冬場でも使用されるヒートポンプは、夏場には「冷房運転」へ切り替えることでクーラーとしても使用することができます。
熱帯夜が続く夏の時期には、生育管理のために夜冷を行うケースも増えています。また、ヒートポンプには除湿機能も備わっているため、空調管理にも適しています。
ミストシステム(細霧冷房)
ミストシステムは、ハウス内にミストを噴霧することで温度を下げるのと同時に加湿もできます。夏場の高温対策としてとても効果的です。
夏場、ミストシステムを使用することでハウス内温度を3℃~4℃下げることができます。また、細霧冷房の活用は収量アップにもつながります。
ミストの過剰使用は作物が濡れてしまい病気が発生する可能性もあるので注意しましょう。
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ハウス内の空気を循環させる設備
ビニールハウス内は閉鎖された空間のため換気窓を閉じると空気の流れがほとんどなくなってしまいす。それにより、病気の発生が助長されたり温度ムラが発生したりします。
その解決にビニールハウス栽培では、一般的に循環扇と呼ばれる設備が使用されます。
循環扇
循環扇は、ビニールハウスなどの施設栽培において、効率よく空気を循環させ温度ムラを改善するために必要な設備です。
夏場に循環扇を使用することで、ビニールハウス内の熱気を外へ排出します。遮光・遮熱カーテンと併用することで暑さ対策により高い効果を発揮します。
冬場は、暖房によって温められた空気を効率よく循環させ、省エネによるコスト削減にもつながります。
ビニールハウス内の空気を動かすことで多湿による病気の被害を抑制したり、薬剤散布後に付着した散布液を早く乾かしたりすることができます。
植物の葉面境界層を破壊することで二酸化炭素を供給し、光合成の促進にも期待できます。
関連記事:ビニールハウスの循環扇とは?効果や選び方について解説
ビニールハウスの換気機能
仕様によって異なりますが、ビニールハウス本体に備わっている一般的な換気機能について紹介します。
天窓換気
天窓換気は、ビニールハウスの屋根面に設置され、ハウス内の上昇気流をそのまま外部へ排出することができます。また、反対に外気を導入することでハウス内が高温になった際には効率的に換気を行うことができます。
天窓には両天窓と片天窓、千鳥天窓などの種類があります。
両天窓は、屋根面の両側に天窓が設置された仕様です。開口面積が大きく換気効率が高く、換気によるハウス内温度の低下をより期待できます。
また両天窓は、片側ずつ独立して開閉させことができ、強風時には風上側を閉じ風下側を少し開けるとことも可能です。強風によってハウス内に外気が強く入り込むことを防ぐだけでなく、換気装置の保護のために行う動作にもなります。
片天窓は屋根面の片側のみに天窓が設置されたもので、両天窓のような細かな動作はできませんが、設備コストを抑えられます。千鳥天窓は、高軒高のフェンローハウス特有の仕様です。
谷換気
谷換気は、丸屋根型タイプのビニールハウスで見られる仕様です。屋根面の谷部に外張りフィルムの巻上げ装置を設置し、巻上げによって開口面積を調節して換気を行います。
谷換気装置のコストは、天窓換気装置に比べて安価ですが、換気効率は天窓換気に比べて劣ります。
また、丸屋根の上部にたまった熱気を排気することができない構造となっています。
谷換気装置の巻上げ動作も細かく行うことは可能ですが、天窓換気装置に比べると少しラフとなり、ハウス内の温度変化にも影響が生じることがあります。
イチゴの場合には谷換気のみで充分ですが、トマトの場合にはオプションで天窓を付ける方もいらっしゃいます。
側窓換気
側窓換気は、ビニールハウスの側面にある側窓フィルムの巻上げによる開閉動作により、外部の風を側面からハウス内に取り込むような換気となります。
単棟ハウスでは、開口面積を大きく設けることで、ハウス内を風が水平方向に抜けることで高い換気効率に期待できます。
連棟ハウスでは、水平方向への風の抜けは悪くなるため、天窓換気や谷換気との併用がおすすめです。
側窓フィルムの巻上げの多くは手動によるものですが、谷換気装置で同様に巻上げモーターにより自動開閉を可能です。
また、軒高によっては側窓換気を2段設置し、換気量を多くしたい夏の高温期には2段とも開け、換気量の少ない冬期には1段のみ使用するという場合もあります。
温度管理に環境制御システムの活用も検討しましょう!
ビニールハウス内の温度制御は、作物の品質と収量を安定させるためには不可欠です。
そうした制御には、環境制御システムの活用がおすすめです。
環境制御とは、光・温度・湿度・CO2濃度・換気などを作物にとって最適な状態に整えることです。作物の光合成を最大限に高めて成長を促進させて、収穫量と品質向上を計ります。これまで人の手で行っていた作業を自動化するだけでなく、あらかじめ設定しておいた設定値に合わせて最適な環境となるように各種装置が連動して制御を行います。
関連記事:スマート農業で生産力向上!環境制御システムの役割とは?
環境制御システム エアロビート
使いやすく高性能!日本農業に最適な環境制御システム
施設園芸に携わり50年以上の歴史を持つイノチオアグリが、これまで培ってきた自社実績と、生産者の声を取り入れて開発した生産者目線の環境制御システムです。
環境制御と合わせて、モニタリング機能も搭載。エアロビート本体とコンピュータ1台で最大10区画または、ハウスを最大10棟まで管理することができるので、管理時間と導入コストの両方を削減できます。オリジナルの管理画面に設定することができ、はじめての方にも使いやすい仕様となっています。
関連製品:環境制御システム「エアロビート」
環境制御システム iisi
栽培の全工程を IIVO 1台で高性能に管理
IIVO(アイボ)は、オランダのホーヘンドールン社が開発した高性能環境制御システムです。
機能的なソフトウェアと最先端のハードウェアで構成されています。それにより、作物の力を最大限に引き出します。ハウスの規模や天候に関わらず、ハウス内の環境をすばやくモニタリングし、作物にとって最適な環境を維持することができます。
関連製品:環境制御システム「IIVO」
ビニールハウスに関するご相談はイノチオアグリへ!
イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトに、ビニールハウスに携わり50年以上、培ってきたノウハウを活かし、これから農業をはじめられる方をご支援します。
換気機能をはじめ、ビニールハウスの建設前にみなさまが抱えている疑問やお悩みについてお気軽にお問い合わせください。各種専門知識を持った社員が対応させていただきます。