イチゴの促成栽培は、生産者の多くが採用している一般的な作型です。今回のコラムでは、イチゴの促成栽培の基本情報から、イチゴ栽培に適した設備やビニールハウスの紹介、栽培に取り組むお客さま事例を紹介します。

イチゴ栽培の作型紹介

作型とは、作物の栽培時期や栽培方法のことです。どの作型が自分のビジネスモデルに合っているのかを見極めることが成功の秘訣です。

特集させていただく促成栽培を含め、イチゴ栽培で選ばれている4つの作型を紹介します。

1:促成栽培

促成栽培は、イチゴ栽培で最も一般的な作型です。9月頃に花芽分化させた苗を本圃に定植して、11月中下旬頃から翌年の6月頃まで収穫をします。スーパーマーケットで販売されているイチゴ、クリスマスケーキに添えられているイチゴ、イチゴ狩りのイチゴのほとんどがこの促成栽培で育てられています。

日本では北海道から沖縄まで、全国で促成栽培が行われていますが、日照条件が良く温暖な気候のほうが、冬場の暖房コストなどの削減ができるために有利と言えます。

2:夏秋栽培

栽培に適した地域は限られていますが、次に多いのが夏秋栽培です。4月頃に苗を本圃に定植して、6月頃から11月頃まで収穫をします。夏から秋にかけては輸入イチゴも多く出回っています。

用途としては、業務用のケーキなどに限られているので、一般的に店頭で見かける機会はほとんどありません。北海道や東北、長野県など、夏期に気温が比較的低い地域で人気があります。

3:周年栽培

周年栽培とは、促成栽培と夏秋栽培の特徴を合わせた作型、または植え替えることなく、ひとつの株を長期出荷目的で長期間栽培することを指します。4月頃から9月頃にかけて苗を本圃に定植し、一年を通して収穫します。

そのためには四季成り性品種を選ぶか、もしくは一季成り品種を温度などの環境制御を導入して温度調節などを徹底して行う必要があります。主に、閉鎖型等の植物工場や環境制御を導入したビニールハウスで行われている作型です。

4:半促成栽培

限られた地域ではありますが、春から出荷する半促成。栽培という栽培体系もあります。
9月頃に苗を本圃に定植し、翌年の4月から6月頃まで収穫をします。収穫量は促成栽培よりも少ないですが、冬の暖房コストを削減できます。そのうえで収穫を終えた株からランナーを伸ばして、採苗する手法もとることがあります。

なぜ促成栽培が選ばれるのか?

促成栽培のメリットは、作型紹介でも記載した通り、イチゴ需要が高まるシーズンに出荷ができることです。

イチゴだけでなく、単価は需要と供給のバランスに左右されます。一般的にイチゴの旬と言われる3月~5月は、供給過多となり単価も年間を通して最も低くなります。
一方で、12月のクリスマスシーズンにはケーキに使用されるイチゴとして需要が高まります。
また、11月頃は、露地栽培の出荷がないため単価があがります。そのような理由から、単価が高い時期に出荷できる促成栽培が多くの生産者に選ばれています。

促成栽培の栽培方法

それでは、イチゴの促成栽培のポイントについてご紹介します。

1:育苗

高設ベンチを活用した促成イチゴ栽培の場合、4月上旬までに親株を定植します。
親株は1株当たり25本程度の採苗数を見込み用意しましょう。10,000本の苗を用意するためには、400本の親株を目安に定植します。親株の定植時期が遅れてしまうと採苗本数が減少してしまいます。ランナーの発生を促すため、親株は肥料が切れないように注意しましょう。

ランナーの発生が多くなると先端にチップバーンや焼けが発生することがあるので、遮光や灌水を丁寧に行うように心がけましょう。

7月下旬までに採苗を行います。採苗が遅くなると、花芽の分化にばらつきが発生する可能性があります。使用するポットの大きさにより、施肥量を調整してください。肥料が切れすぎると定植後に心止まり株(芽なし)の発生が多くなるので注意しましょう。

2:定植

花芽検鏡を行い、花芽の分化を確認後、定植を行いましょう。
花芽の分化後の定植が遅れると、心止まり株の発生を助長してしまいます。高設栽培の場合、定植後もしばらくは排液率が高くても十分に灌水を行い、活着後の排液率が安定してきたら、灌水量の調整をしましょう。
定植2週間後から順次、葉かきを行います。葉かきを行うことによりハダニなどの病害虫の発生を減少させることができます。

3:株の管理

樹勢(定植株の生育状況)に応じて摘花(果)を行ってください。摘花(果)は、残す果実が全て開花した後に行うことをおすすめします。葉かきは、傷んだ下位葉を対象に適時行います。葉数が多いと厳寒期にチップバーンやガク枯れの発生を助長してしまうので注意しましょう。

果実を採り終えた花房も適宜除去してください。この際、除去した葉・花・花房はハウス外に持ち出し、病害虫の二次感染を防ぐようにしていきましょう。

4:収穫

果実の状態を確認し、収穫のタイミングを調整しましょう。収穫後は速やかに果実を冷蔵し、環境衛生や異物混入などに注意を払い、出荷パックに詰めていきましょう。

病害虫や生理障害の対処法

栽培期間中は、病害虫の発生に注意しましょう。発生した場合は、病害虫診断などをおこない適切な処置をしていきましょう。

栽培方法として、環境保全や食の安全・安心 に対する消費者の関心の高まりに応えるために、化学農薬だけに頼らず複数の防除技術を組み合わせ、農作物の収量や品質に影響が出ない程度に病害虫や雑草の発生を抑制しようとする考え方に基づく防除手法(IPM)を利用することもできます。

本圃で導入する際は、育苗期から化学合成農薬の影響も考慮しなければなりません。専門的な知識を習得している栽培指導や栽培支援を受け、上手に導入していきましょう。

このような育苗~収穫までの情報がホームページや各書籍に掲載されていますが、まだ栽培経験の浅い新規就農者の方や栽培上の問題が継続している発生している生産者の方は、栽培に詳しい企業に依頼をしてみることもご検討ください。

参考資料
・最新農業技術 野菜vol.5: イチゴ促成栽培の新技術(農文協)
・養液栽培実用ハンドブック(日本養液栽培研究会)

作業性&収益性ならイチゴ高設栽培ベンチ

ビニールハウスでのイチゴ栽培では、作業性や収益性の観点からイチゴ高設栽培ベンチが選ばれています。

イノチオアグリでは、観光農園向けの一本足ベンチ、一般的な栽培に選ばれる二本足ベンチの2種類から選択できます。ベンチの高さ・通路幅などお客さまの農業経営に最適な仕様を提案します。

労力を削減して作業性&品質UP!

イチゴ高設栽培ベンチは、立ち姿勢でイチゴを管理でき、土耕栽培のような重労働の畝立て作業もなくなり、身体への負担が軽減できます。また、手間のかかる土づくりや土壌消毒も必要ありません。

給液を自動化することで人による作業を削減でき、病害虫の発見、葉かき、芽かき、摘花など、管理作業が行き届き、生産物の品質向上につながります。

安定栽培で収益性UP!

イチゴ高設栽培の場合、生育状況に適した施肥灌水管理を簡単かつ適切に行えるので、収量と品質が安定した栽培を行えます。土耕栽培と異なり、イチゴ高設栽培は果実が宙に浮いているので軟化しにくく、収穫期間を延長し収量UPを目指せます。

イチゴ高設栽培におすすめビニールハウス

ビニールハウスとひとことで言っても多岐に渡ります。ビニールハウス建設は、理想とする栽培環境と実現にかかる費用と確保できる予算を比較しながら検討していきます。

今回は、イノチオのイチゴ生産者のお客さまに最も選ばれているビニールハウスをご紹介します。

丸型ハウスD-1
耐久性と経済性を追求したロングセラー

自社⼯場でスチール⾓パイプを加⼯し、独自のアーチ形状を実現。安価でありながら、パイプハウスと比較して強度と耐久性を⾼めることで、安心して長期間の使用ができます。


アーチ状のハウス内空間と谷部の換気機能が、イチゴ栽培に最適な温度と湿度を実現することで、ハダニやうどんこ病をはじめとする病害虫を抑制します。丸型ハウスD-1の持つビニールハウス性能は、暖房機、光合成促進機などの一般的に導入される設備以外のコストを最小限に抑えられることが特徴です。

イチゴ高設栽培におすすめのスマート農業システム

実際に導入したお客さまからもご好評いただいている、イチゴ高設栽培におすすめのスマート農業システム2製品をご紹介します。

自動灌水制御システム AQUA BEAT Ex
多彩な灌水設定で作物に最適な栄養供給を実現

AQUA BEAT Exは、イノチオオリジナルの自動灌水制御システムです。イチゴの生育に必要な水や肥料を適切なタイミングで供給します。大規模から中小規模まで、さまざまなお客さまのニーズにお応えします。

ネットワーク回線を利用することで、自宅に居ながら給液状況を確認でき、異常時に警告をお知らせする機能も備えています。

防除・灌水制御システム マスプレー
作業コストを削減して時間効率UP

マスプレーは、農業用ビニールハウス内における防除・灌水システムです、
農薬散布時の農薬の微粉末や霧を吸い込むリスクが軽減でき、かつ防除作業の省力化にもなる、人に優しい商品です。イチゴ高設栽培の生産者や鉢物のベンチ栽培の生産者にも導入していただいています。

イチゴ栽培のお客さま事例

株式会社ブルーチップ(愛知県)
「農業と食でお客さまへ幸せを届けたい」

新規事業として農業に参入された株式会社ブルーチップ。愛知県常滑市でイチゴの観光農園、レストラン、ワイナリーなどを運営しています。

イノチオグループの営農支援(栽培技術サポート)をご活用いただいている感想、アメリカのライフスタイルやカルチャーに憧れを抱き築き上げた事業を通して、お客さまに伝えたい「デリバリングハピネス」への想いについてお話ししていただきました。

株式会社ブルーチップの事例を見る

梅原 広隆さん(静岡県)
「丸型ハウスD-1は、想像以上に生産性が高いビニールハウス」

イチゴの産地、静岡県伊豆の国市でビニールハウスと高設栽培を活用してイチゴ栽培に取り組む梅原広隆さん。自身の農業経営だけでなく、新規就農者に栽培技術を伝授し、地域農業の発展に尽力しています。今回のインタビューでは、イチゴ栽培のポイント、導入しているイノチオの丸型ハウスD-1の魅力、これからの農業経営への考え方について伺いました。

梅原 広隆さんの事例を見る

イチゴ生産者Kさん(愛知県)
「マスプレー導入で防除作業の省力化に成功」

防除・潅水システム「マスプレー」を導入して、防除作業の省力化に成功したKさんへ取材しました。ビニールハウス内は栽培管理が行き届き、おいしそうなイチゴがたくさん実っていました。約40年に渡り続けるイチゴ栽培へのこだわりと、マスプレー導入により実現した栽培への効果について伺いました。

Kさんの事例を見る

イノチオアグリは新規就農を支援します

イノチオアグリについて

イノチオアグリはビニールハウス)に携わり、50年以上の知見がございます。50年以上培ったノウハウを活かし、新規就農・農業参入を計画段階からご支援しております。

新規就農・農業参入に向けて、お客さまのご要望や条件に基づいてビニールハウスを設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。

更に、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。

イノチオアグリで行う新規就農支援とは?

新規就農は一次産業ですが、会社を興すことと何ら変わりません。新規就農後の農業経営を行うための経営資源である資金確保や経営、営農技術の習得からビニールハウス・機械などの経営基盤構築が必要になります。新規就農には、十分な事前準備が不可欠です。

弊社は新規就農までの課題である、就農計画の提案や新規就農で活用できる融資制度のご紹介、就農までに必要な事業計画書作成支援やビニールハウスの図面、概算見積をトータルで支援いたします。ご要望ございましたら、下記お問い合わせからお申込みください。