農業の仕事について調べると「休みがない」「儲からない」「ブラックだ」「やめた方がいい」というキーワードを目にすることがあります。そのような情報を知ることで、農業に興味があって仕事にしたいという想いが揺らいでしまうことがあるのではないでしょうか?

今回のコラムでは、なぜ農業はやめておけと言われるのか?その理由と、どのような人が農業という仕事に向いているのか・向いていないのかについて解説します。

農業の仕事とは?

農業は、我々が口にする食材、玄関や仏壇などに飾られている花きなどを生産する仕事です。

食材に関しては、輸入に頼っている部分もありますが、スーパーなどの生鮮食品売り場に行けば地元をはじめとした国内で作られた野菜や果物が販売されています。

日常生活であたりまえに目にする野菜ですが、土づくりや栽培管理をはじめさまざまな過程を経て店頭に並び、食卓へと届けられています。

農業の役割

上記でも述べているように、農業の役割は我々の生活に直結しています。

近年では、輸入品を国産品として扱う産地偽装などの問題も増えており、消費者もこれまで以上に慎重になっています。他にも、農薬の使用頻度や使用の有無などにも関心のある消費者も徐々に増えてきています。

農薬は、作物も病気や害虫から守り綺麗な状態で出荷するために行っていますが、散布をする生産者にとっては健康への負担があるものです。

生産者は、消費者のニーズにも応えながら、自らの健康も気に掛けて生産を行う必要があります。

農業は作物を育てるだけじゃない!

農業という仕事は、作物を育てて終わりではありません。収入を得るためには、育てた作物も市場へ卸したり、直売所で販売するなど、販路開拓が必要です。

そのためには、消費者のニーズを把握する、商品パッケージを工夫する、SNSを活用して情報配信をするなどマーケティング分野での取り組みが求められます。

育てるための農業だけでなく、ビジネスとしての農業という2つの視点を持ち合わせることが成功への鍵となります。

関連記事:農業ビジネスを未経験から始めるには?農業参入のポイントを作物別に解説!

農業の労働環境はブラック?「やめとけ」と言われる理由とは?

農業について調べているとプラスな内容だけでなく、「儲からない」「リスクがある」などのマイナスな内容も目にします。その理由と対策方法について解説します。

農業は儲からない?

ほとんどの農家は、農作物を市場や農協に出荷します。

これらの組織に買取を依頼し、選果や梱包作業のための手数料が差し引かれた結果、わずかな収益しか手元に残らないというケースがあります。こうした理由により、農業は儲けるのが難しい仕事だと言われています。この場合、売値を農家自身で決めることができないのも難点です。

しかし、独自の人脈で販路を開拓したり、作物に付加価値をつけてブランド化したりと、他の商品や農場と差別化することで売り上げを大きく伸ばしている農家もいます。

例えばイチゴを栽培する場合、観光農園と直接販売を合わせた経営スタイルで収益を確保しているケースもあります。販売方法を工夫することで、収益の確保が可能になります。

しかし、どの作物をどのように育て、どう売るかまでをすべて自力で計画することは難しい場合があります。その際は、農業開始に向けたプランニングを支援しているメーカーなどに相談してみるのもおすすめです。

関連記事:農家・農業は儲かるのか?儲かる作物や利益率について解説

ハイリスクな仕事

農業は大切に育てていた作物が台風や大雨などの自然災害、病害虫などによる被害に突如見舞われる可能性があります。

もし、台風被害が多い地域で農業をはじめられる方は事前に保険への加入などをすることをおすすめします。

病害虫への対策も一人で判断するのではなく、相談できるパートナーや営農サポートなどを活用することで被害を素早く最小限に抑えることにつながります。

農業は大きなやりがいがある一方で、さまざまなリスクに見舞われることがあります。事前と事後の対策を怠らないようにしましょう。

体力が必要

農業は体力勝負です。ときには悪天候や炎天下で長時間作業をしなければならないこともあります。体調が良くないときでも、作物の生育状況によっては休めない日もあるかもしれません。

自分の体力や体調管理にも注意しながら、どのような作物をどのくらいの作業量で育てていくか、慎重に計画しましょう。

また、すべてを自分1人で行おうとせず、場合によっては人を雇用したり家族で作業を分担したりするなど、周囲に頼ることも重要です。

休みが少ない

農業は、自分のペースで働ける一方で、作物の状況を毎日チェックする必要があります。繁忙期には、まとまった休みが取りにくいでしょう。とくに、収穫の前後は、早朝から夜まで作業をしなければならない時期もあります。

会社員のように土日祝日の固定休みや、夏季休暇などの大型連休が決められているわけではありません。全ては作物次第です。

しかし、全く休みがないわけではありません。収穫を終えて作業が落ち着けば、まとまった大型連休を取ることができます。なかには、家族で長期間の海外旅行へ出かける方もいらっしゃいます。

休みをいつ取るのか、どこまで作業を行うかも自由ですが、すべて自己責任となることは覚えておきましょう。

多額の先行投資が必要

育てる作物にもよりますが、農業には多額の先行投資=初期費用が必要となります。
施設園芸で農業をはじめる際には、土地、ビニールハウス、内部設備などが必要となってきます。また、栽培開始後も設備の維持費、暖房に使用する燃料費なども定期的に発生します。

一般住宅を購入する際と同様に、必要な機能と設備、自己資金と補助金等、収入を踏まえて検討をしていきましょう。

関連記事:農業の資金調達は難しい?新規就農におすすめの融資・補助金を解説

農業に向いている人の特徴とは?

どの仕事でも言えることですが、向いている人・向いていない人がいます。農業に向いている人の特徴について紹介します。

動植物が好き

野菜やお米、果物や花などの耕種農業、牛や豚、鶏などの畜産農業、どちらもを育てるという面において生き物が好きという想いが大切になってきます。
生き物へ注ぐ愛情は、農業を仕事にする上で最も重要かつ基本的な考え方です。

試行錯誤して地道に取り組むことができる

どのような仕事でも、ただ言われたことをやるだけでなく、試行錯誤して改善策を考えながら、生産性を向上させることが大切です。

農業は予期せぬことから失敗することも多くあります。一度や二度の失敗で凹んでいたり、投げ出しているようでは向いているとは言えません。常に試行錯誤を繰り返して改善し続ける根気や、そのような状態を楽しむ気持ちが必要です。

結果がでるまでに時間がかかることもありますが、地道に取り組む姿勢が農業には求められます。

データ管理など数字に抵抗がない

農業は、これまで熟練者の経験や勘で品質や収量を上げていましたが、スマート農業の発展に伴い、気温・水量・湿度・養分・日照時間などのデータを基に、病害虫への対策や、品質・収量の維持・向上の方法が見える化されるようになりました。

今後の農業はデータ=数字と向き合い・理解する時間もとても重要になります。データや数字に抵抗が無い人は農業に向いていると言えます。

人と関わるのが好き

農業の現場には、熟練の農場長や長年お手伝いしてくれているパートさん、若手の社員・バイトから外国人の実習生まで、年齢・性別問わずさまざまな人が働いています。

個人で新規就農をしてパートさんを雇用する場合にも、主婦の方から高齢の方までさまざまです。
スムーズに仕事を進めるためには、柔軟なコミュニケーションが欠かせません。また、同じ地域の農家さんやJA等の卸先、農業資材の会社等とも連携をする必要があります。

農業は年齢や性別、国籍を超えてさまざまな人と関わる仕事です。 人との関りが増えることが嬉しい人は向いているはずです。

農業に向いてない人の特徴とは?

続いて、農業に向いていない人の特徴についても紹介します。

「自然が好き」なだけ

農業を「自然の中でマイペースにできる仕事」と楽観的に考えている一定数の声が聞こえてきます。その考え方の全てが間違っているわけではありませんが、体力的・精神的にキツイこともたくさんあります。

夏は暑く、冬は寒い、天候によっては風雨にさらされながら作業をしなければならない日もあります。ときには、予期せぬ災害によって作業計画が崩れたり、農作物が全滅することもあります。レジャー感覚で触れ合う自然と違い、仕事として向き合う自然は脅威となることがあります。

楽観的に自然が好きではなく、農業そのものに興味がないと続けることは難しいでしょう。

計画性がない

農業は、長期的な視点で収穫や出荷を目標に動く必要がある仕事です。

収穫できる時期に合わせて植え付けの段階で品種の選定が必要ですし、作物や土の状態に合わせて土壌改良や施肥を行ない、植え付け後スムーズに作物が成長できるよう段取りをしなければなりません。

畜産農業の場合でも、通年で搾乳ができるよう出産計画を立てたり、出荷時に最適な大きさになるよう逆算して買い付けたりなどの計画が必要です。

どの仕事もそうですが、短期・中期・長期での計画を見通してくことは重要です。

臨機応変な対応ができない

農業には、計画性だけでなく、臨機応変な対応も必要となります。

自然を相手にしている仕事なので、天候不良や自然災害、病害虫の発生など予期せぬトラブルが起こることも想定しながら根気強く柔軟に対応しましょう。

人と関わらず、一人で黙々と作業したい

「農業なら他人に干渉されずに仕事ができる」このようなイメージに魅かれて農業に興味を持つ方もいますが、将来的に規模拡大をしてパートさんを雇用すれば、作業内容や結果を共有したり、作業を教えるなどのコミュニケーションは一般企業と同様に必要です。

また、他の農家さんと交流することで重要な経験や知識を学べる場面も多くなります。自営業と言えども、農業は地域の方との関係で成り立っているところが多く、その関係性はとても重要です。

自分の農業への適性を知ろう!

どのような仕事や職種も、自分自身の適正と合っているのかという判断は、長く続けていく上で重要です。

農業を仕事として一からはじめることは、起業することと似ている部分もあります。施設園芸で農業をはじめる際には、ビニールハウス建設や内部設備の導入など初期コストも掛かってきます。もちろん補助金などもありますが、決して安直な考えだけで始めることはおすすめしません。

もし、真剣に農業を仕事にしようと悩んでいる場合には、自分に合っているのか適正検査などをしてみることをおすすめします。下記は、外部のサイトになりますがお試しください。

外部サイト:農業をはじめる.JP「就農適正診断」

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