「自分で作物を育ててみたいけど、どう育てるのが一番良いんだろう」
作物の育て方は、新しく農業をはじめる方が悩むポイントのひとつです。

今回のコラムでは、多くの農家の方に採用されている農法8選をご紹介。
長らく日本で実践されてきた農法に加え、時代の変化に合わせて消費者のニーズを取り入れたものや、従来の課題を解決するために生まれた新しい農法も解説します!

農法とは?

農法とは、農作の方法のことです。

栽培作物が成長するために最適な環境に整える方法とも言えます。

歴史ある代表的な農法3選

まずは、古くから実践されてきた長い歴史を持つ3つの農法についてご紹介します。

1.慣行農法

慣行農法は、一般的に農家の方々が行っている伝統的な農業手法のことです。戦争終結後、人口増加に伴って食料需要が高まっていたことを背景に、1950年以降に日本各地に広まりました。

農作物の生産量を安定させるために、農薬や除草剤、化学肥料を使用するなど、収穫まで人が関与して栽培を行うことが特徴です。

2.自然農法

自然農法は、農薬や除草剤を使わずに作物を栽培する方法です。

生育を自然のサイクルにすべて任せるため、環境の影響により収穫量が少なくなりやすい一方で、安全性が高く、作物本来の自然な味わいを楽しむことができます。

こうした特徴により、健康志向の消費者に支持されています。

3.有機農法

有機農法は、自然農法の考え方を残しながら、慣行農法の「人が関与する」という点を取り入れた方法です。

土を耕し、種や苗を植えた後、水やりや草刈りによる除草、肥料を与えるなどして育てます。このときに使用する肥料は、米ぬかや貝殻、卵の殻といった自然由来のものです。これにより、生産性を高めながらも持続可能な農業を実現しています。

有機農法のメリット・デメリットや、有機農法を実践している農家の方の事例は、こちらのリンクからご覧いただけます。

関連記事:有機農業(有機栽培)とは?メリット・デメリットについて解説

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新たに加わった農法5選

従来は、すでにご紹介した慣行・自然・有機農法の3つが主流な栽培方法でした。

しかし近年では、新たなノウハウや科学技術を用いることで新しい農法が生まれています。ここからは、そんな新しい農法を5つご紹介します。

1.合鴨農法

合鴨農法は有機農法で取り入れられている方法のひとつで、水田で作物を育てるときに用いるのが一般的です。

水田に合鴨を放つことで、雑草や害虫を自然に駆除します。合鴨が泳ぐことで土に酸素が供給され、根の成長が促進されます。また、合鴨の糞は有機肥料として作用し、追加の肥料が不要になります。

これにより、農薬に頼る従来の農法の環境への影響や作物の味への悪影響を避けながら、労力を軽減できるのが大きな利点です。

2.水耕栽培

水耕栽培は土を使わず、培養液で作物を育てます。屋内での栽培に適しており、除草や虫の被害がありません。

植物工場での大量生産などに導入されている農法ですが、LED照明や培養液の管理にコストがかかります。近年では、水耕栽培キットの普及により、家庭でも簡単に栽培を楽しめるようになりました。

土壌を使わないため、病害虫のリスクを減らし、クリーンな環境での栽培が可能で、都市農業や趣味の園芸にも導入できる農法です。

3.林業農法

林業農法は、名前の通り農業と林業を組み合わせた方法です。作物の栽培と同時に森を育て、家畜を放牧して土地を開拓し、糞を有機肥料として利用します。

家畜からは乳製品を得られるほか、免許を取得すれば食肉の加工や販売をすることも可能なので、多様な収入源を確保できます。さらに、森林は作物を気候の影響から守り、落ち葉が腐葉土となって、農業のための土壌を豊かにする役割も果たします。

農業・林業・酪農の連携によって、安定的に収入を得られる持続可能な農業を行いやすくなります。

4.炭素循環農法

炭素循環農法は、肥料中に含まれる窒素の影響を少なくする栽培方法です。

窒素は適量であれば問題ありませんが、作物が吸収しきれないほど過剰に与えてしまうと、余った窒素が土壌に残り、窒素の香りを好む虫による被害を招いてしまいます。

そこで炭素循環農法では、余分な窒素の使用を避けるために、キノコ菌などの微生物が作り出す栄養素を利用することで、肥料に頼らずに作物を育てます。

これにより、虫の食害や土壌・水質汚染を防ぐだけでなく、微生物の栄養成分によって作物の品質を向上させることができます。

5.永田農法

永田農法は、永田照喜治さんが考案した方法で「スパルタ農法」または「断食農法」とも呼ばれます。

永田農法では、水はけの良い土に窒素・リン酸・カリのみの液肥を加えます。作物にとって水分供給はとても重要ですが、この農法では、作物の葉が完全に萎れたときに与える程度で、収穫までにほとんど水を与えません。

水分が不足することにより、作物は根を広げ、茎や葉に産毛を生やして空気中の水分を吸収しようとします。このため作物は大量の栄養を吸収し、結果的に栄養価の高い作物が育ちやすくなるのです。

施設栽培と露地栽培

ここまで、8つの農法についてご紹介しましたが、そもそも農業の栽培形態には、大きく分けて「施設栽培」と「露地栽培」のふたつがあります。

ここでは、それぞれの特徴とメリット・デメリットについてご説明します。

施設栽培の特徴

ビニールハウスなどの管理された環境の中で栽培する施設栽培では、天候や病害虫発生などの外部環境の影響を最小限に抑え、年間を通して安定的に作物を栽培できるのが特徴です。

さらに、農作業を自動化するスマート農業を取り入れることで、灌水(水やり)や温度・湿度などの制御がすべて自動化された栽培環境を実現することも可能です。

施設栽培のメリット

施設栽培を行うメリットとして、ハウス内で栽培するため病害虫の被害を受けにくい上、出荷時期をコントロールできることが挙げられます。

施設栽培のデメリット

デメリットとしては、ハウスをはじめとした設備の導入のためにコストが発生することや、災害が起きた際にハウスが倒壊してしまうリスクなどが考えられます。

露地栽培の特徴

自然の中で作物を栽培する露地栽培は、よくも悪くも天気や気候の影響を大きく受ける点が特徴です。

その作物が本来生育する時期に栽培するため、旬の味を出荷することができます。また、その土地の気候や土壌の特性に合った、その土地ならではの作物を栽培することも可能です。

露地栽培のメリット

メリットとして、自然の中で育てるため低コストで始められること、畑を規模拡大しやすいことが挙げられます。

露地栽培のデメリット

デメリットとしては、悪天候の影響を受けてしまうことや、出荷時期をコントロールできないことが挙げられます。

自分に合った農法の3つの選び方

ここまでさまざまな農法をご紹介しましたが、どの農法を選ぶべきなのか、なにを軸として判断するべきか悩んでしまう場合があるかもしれません。

その際は、次の3つのポイントを参考に考えてみましょう。

作物に適した栽培方法か

栽培方法を選ぶ際には、育てる作物に合った方法を確認することが重要です。

例えば、温度管理が必要なトマトやキュウリには施設栽培が適しています。 一方、耐候性の高いジャガイモやキャベツには露地栽培が向いています。

作物の生育条件に合わせた栽培方法を選ぶことで、効率的な収穫が期待できます。

安定して収穫できるか

収穫量の安定性は収益に直結するため、非常に重要です。

例えば、天候や病害虫の影響を受けやすい露地栽培に対し、施設栽培や水耕栽培では、温度や湿度などの栽培環境を制御できるため、年間を通じて安定した収穫が期待できます。さらに、病害虫のリスクを軽減し、品質を均一に保つことが可能です。

作物の特性に応じた、安定した栽培方法を選ぶとよいでしょう。

費用対効果があるか

栽培方法を選ぶ際には、費用対効果も重要です。農業経営を成功に繋げるには、発生するコストと回収の可能性を計算しておく必要があります。

例えば、施設栽培ではビニールハウスの建設や設備導入に1,000万円以上の初期費用がかかりますが、高品質な作物を安定して収穫でき、長期的には高収益が期待できます。

一方、露地栽培では初期費用が150万〜300万円程度と少ないですが、天候や病害虫の影響を受けやすく、収穫量の安定性に欠けるリスクがあります。

コストと収益のバランスを考慮し、長期的に費用対効果の高い栽培方法を選ぶことが重要です。

自分に合った農法を選ぶのが大切

農業の栽培方法には、場所や目的に応じてさまざまな選択肢があります。

最適な栽培方法を選ぶために、作物の特性、環境条件、経済的な要因を総合的に考慮しながら、同じ条件で農業を行っている事例なども参考にすることをおすすめします。

農業のスタート・栽培のお悩みはイノチオアグリへ!

ここまで、農法の選び方のポイントも含めてご紹介しましたが、農業を始める場所や将来のビジョンなど、他の要因で迷ってしまうことがあるかもしれません。その際は、農業に詳しいビニールハウスメーカーなどに相談するのも一つの手です。

イノチオアグリでは、個人での新規就農・企業の農業参入をお考えの方のサポートを行っております。事業計画の相談や、将来的な収支計画を踏まえた栽培作物の選定などはもちろん、農業開始後もより理想的な栽培・農業経営にの実現に向けてご支援いたします。

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