農業を営む上では、栽培だけではなく機械の使用や整備、農薬の取り扱いなど、多方面の知識が必要になります。これらの知識を学ぶ際のひとつの指標となるのが、資格の取得です。

今回のコラムでは、農業に役立つ18の資格をピックアップしてご紹介します。

目次

  1. 農業をはじめるのに資格は必要?
  2. 必ず必要になる資格
  3. 作物・資材の運搬に役立つ資格3選
  4. 栽培設備に応じて必須となる資格3選
  5. 農業の実務に役立つ資格5選
  6. 農業ビジネスの可能性を広げる資格5選
  7. 融資・補助金獲得に必要となる資格とは?
  8. 農業をはじめるときのお悩みはイノチオアグリへ

農業をはじめるのに資格は必要?



「この資格・免許がなければ農家にはなれない」といったものはありません。しかし、栽培方法や使用する設備などによっては、資格が必要になるケースがあります。

資格取得には時間がかかる場合もあるため、ご自身が目指す農業にはどんなスキルが必要になるのか、という視点も持ちながら計画を立てることをおすすめします。

農業の資格は独学で取得できる?

農業の資格や検定の中には、他の分野と同様に、テキスト等で独学で学べるものもあれば講座受講などが必要なものもあります。挑戦する際は申込締切日や受検方法に注意し、余裕をもったスケジュールで取り組みましょう。

必ず必要になる資格



まずは、農業を営む上で欠かせない資格をご紹介します。

農地取得に必須!農家資格

資格や免許とは少し異なりますが、農家になるには、農家の定義や市町村の農業委員会の判断を受け、農家として登録される必要があります。 これがなければ、農地を買ったり借りたりすることができません。

農林水産省によると、農家は「経営耕地面積が10アール以上の農業を営む世帯または農産物販売金額が年間15万円以上ある世帯」と定義されています。販売農家の場合は、「経営耕地面積30アール以上または農産物販売金額が年間50万円以上」である必要があります。

そして農地法(農地の保護や権利関係に関する法律)によると、第3条に「農地を買ったり借りたりする場合には市町村農業委員会の許可が必要」と記載があります。 許可を得るには、市町村の農業委員会に「認定申請書」や「営農計画書」などを提出し、「農地基本台帳」に登録される必要があります。 この登録を受けることで、農地の取得が可能になります。

関連記事:農家になるには?農業従事者の仕事、年収・資格やりがいなどを解説

普通自動車免許

農業を営む中で、農作物や資材の運搬、市場への出荷などのために、日常的に車を使用する場面が多くあります。車が運転できないと不便なことも多いため、普通自動車免許は取得しておくとよいでしょう。

作物・資材の運搬に役立つ資格3選



続いて、作物や資材の運搬に役立つ資格をご紹介します。ご自身が使おうとしている農機具の操作にどういった免許が必要になるのか、あらかじめ確認しておきましょう。

大型特殊免許

大型特殊免許を持っていれば、ホイールローダーやクレーン車、ブルドーザー、トラクター、コンバインなどを運転することができます。 また、この免許は教育訓練給付制度の対象となります。詳細は、厚生労働省の下記サイトでご確認ください。

参考:厚生労働省「教育訓練給付制度」

けん引免許

けん引免許とは、自動車が750kgを超える他の車をけん引して公道を走る際に必要となる免許です。農業では、コンバインやトレーラーなどをけん引して離れた農地へと移動させるために用いられることがあります。 けん引免許には、けん引免許(第一種免許)、牽引第二種免許、牽引小型トレーラー限定免許の3種類があります。使う車両や働く環境に合わせて選びましょう。

フォークリフト運転特別教育・フォークリフト運転技能講習

荷重1トン未満のフォークリフトはフォークリフト運転特別教育、1トン以上のものはフォークリフト運転技能講習の終了証が、それぞれ必要になります。自分の働く環境や目的にあわせて、どちらを取得するか選びましょう。また、公道を走る際にはフォークリフト免許のほかに特殊免許も必要になります。

栽培設備に応じて必須となる資格3選



次に、栽培形態によって必須となる資格をご紹介します。

ボイラー技士

ボイラー技士とは、ボイラーの操作・点検を行う際に必要となる国家資格です。一定の条件を満たし、厚生労働大臣が指定する試験機関の試験に合格することで、免許を受けることができます。

農業では、ビニールハウス内を温める暖房設備としてボイラーを使用する場合があります。 ボイラー設備の燃料は、ほとんどが重油を扱うことになるので、その場合は危険物取扱者(乙種第4類)の資格取得も併せて必要です。

参考:日本ボイラ協会「ボイラー技士等関係免許」

危険物取扱者(乙種第4類)

ご紹介した通り、ボイラー設備の燃料として重油を使う場合は、危険物取扱者の資格を持っている必要があります。危険物取扱者には甲種・乙種・丙種の3種類の免状があり、それぞれ取扱いのできる危険物が異なります。乙種第4類の免状では、ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体を取り扱うことができます。

参考:一般財団法人 消防試験研究センター「危険物取扱者試験」

毒物劇物取扱責任者

農業で使用する農薬は、製品によっては毒物や劇物に指定されているものもあります。こうした毒物や劇物を製造・輸入・販売する場合は、保健所に届け出て、専任の毒物劇物取扱責任者を配置する必要があります。
毒物劇物取扱責任者は、各都道府県の薬事関係主管課主催による国家資格です。

農薬の販売などはせず、使用するだけであれば、毒物劇物取扱責任者の取得は必須ではありません。ラベルの表記を必ず守り、安全に使用しましょう。

農業の実務に役立つ資格5選



実務に役立つものとして、次の5つの資格があります。順番にご紹介します。

日本農業技術検定

日本農業技術検定は、学科試験・実技試験を通して総合的な農業のスキルをはかる検定です。受検対象となるのは、農業高校・大学や就農準備校などで学ぶ人たち、農業研修生、後継者など、農業に関わる仕事を志す人です。これから新規就農を目指す方におすすめの資格と言えます。

合格に向け、過去問題や参考書を使って勉強します。3級は学科のみ、2級・1級は学科と実技試験を受験します。知識と技術の両方を高められる検定と言えます。

参考:一般社団法人 全国農業会議所「日本農業技術検定試験のご案内」

似ている検定に「日本農業検定」がありますが、こちらは小中学生から一般の人が対象で、仕事や趣味で農業の基礎的な知識を必要とする人のための検定です。

農業簿記検定

個人事業主として農業を行っていくなら、農作業で発生する費用の処理方法を知っておくことは大変重要です。農業簿記検定の取得を通じて、一般的な複式簿記の知識に加え、農業ならではの帳簿作成の方法を学ぶことができます。

参考:一般財団法人 日本ビジネス技能検定協会「農業簿記検定」

また、農業簿記の知識を持っていれば、確定申告などでより高い節税効果を得られる可能性があります。

関連記事:農業経営における確定申告の重要性とは?経費や必要書類を徹底解説

土壌医検定

農作物を育てる際、土壌の状態を把握して適切に管理しているかどうかは、収穫量という結果に直結します。「土壌医検定」は、一般社団法人日本土壌協会が主催する資格試験で、理論的な土づくりの知識を学び、栽培に活かすことができます。

検定試験は1級から3級まであり、合格後に登録料を支払い申請すると、1級から順に「土壌医」「土づくりマスター」「土づくりアドバイザー」の称号を得られます。1級を受検するには、土づくり指導または5年以上の就農経験が必要ですが、2級と3級はオンラインで受講でき、誰でも受検可能です。

土づくりに関する客観的な知識を得たい方におすすめの検定です。

参考:一般社団法人 日本土壌協会「土壌医検定」

農薬管理指導士

「農薬管理指導士」は、農薬の適正使用を助言・指導するための資格です。農薬に関する専門知識を学び、研修と認定試験を経て都道府県から認定を受けます。

農薬を使うだけなら不要ですが、他人にアドバイスする立場の方や、安全な使用法を学びたい方におすすめの資格です。

農業機械士

「農業機械士」は、トラクターや田植え機といった農業機械の安全に関する知識や農業機械のメンテナンスや修理についての知識を得られる資格です。農業大学校で研修を受け、都道府県から認定を受けます。

農業機械士のほかに、指導者として活動するための「指導農業機械士」という資格もあります。農業機械士よりもさらに専門的な知識が求められるこの資格を受検するには、18歳以上の農業者で農業機械士養成研修を修了しており、大型特殊自動車免許を取得している必要があります。

農業ビジネスの可能性を広げる資格5選



続いて、農業ビジネスの幅を広げる資格についてご紹介します。近年の農業は作物を栽培するだけではなく、いかに付加価値をつけて販売するかが重要となっています。資格で得た知識を活かして、作物の販売方法を工夫することもできるでしょう。

野菜栽培士

「野菜栽培士」は、日本インストラクター技術協会によって実施される資格です。取得によって、季節に応じた野菜の育て方、野菜に含まれる栄養成分、相性の良い食材に関する知識を持っている人であることが証明されます。 受験方法も在宅での受検ができ、資格試験の難易度もそれほど高くないため、手軽に取得できることも魅力の一つです。

資格取得後は、野菜栽培士として活動できます。自宅やカルチャースクールなどで、野菜の育て方や食べ方についての講師活動ができるようになります。

参考:日本インストラクター技術協会「野菜栽培士(オーガニック野菜資格)」

野菜ソムリエ

「野菜ソムリエ」は、日本野菜ソムリエ協会が主催する資格で、日常の食生活における野菜や果物の魅力や価値を広めることを目的としています。 この資格には3つのカテゴリーがあり、「野菜ソムリエ」は自分の生活に役立つ野菜の知識を得ることができます。

「野菜ソムリエプロ」は野菜や果物のプロとして企業・自治体との活動が可能で、さらに上級の「野菜ソムリエ上級プロ」を取得すれば、起業や開業など個人での事業展開もできるようになります。

参考:日本野菜ソムリエ協会 ホームページ

野菜コーディネーター

「野菜コーディネーター」は、野菜や果物の特性や選び方、保存方法、そして調理法やレシピについての知識を学ぶための資格です。この資格は、養成講座または通信講座を受けることで取得することができ、野菜や果物の美味しさと栄養価を最大限に引き出すノウハウの習得ができます。

一般社団法人ホールフード協会が主催するこの資格は、食事だけでなく生活全体を考慮する「Whole Food」という理念に基づいています。

参考:一般社団法人ホールフード ホームページ

食育インストラクター

「食育インストラクター」は、食育を日常の生活に活かし、広く推進できる指導者を育成するための資格です。NPO 日本食育インストラクター協会によって主催されています。

インストラクターの資格は5段階に分かれており、基礎的な食育の知識から、食育に関する幅広い知識を広める普及活動が可能なレベルまで学ぶことができます。それぞれ、通信講座や研修会を受けることで取得することができます。

参考:特定非営利活動法人NPO日本食育インストラクター協会

JGAP指導員基礎研修

GAPとは、農畜産物を生産する工程で生産者が守るべき管理基準とその取り組みのことを指します。JGAPはそのひとつで、日本国内に適した内容となっています。

「JGAP指導員」は、JGAPを導入しようとする農場に対して、指導をしたり相談に乗ったりします。指導員資格は「農産物」と「家畜・畜産物」の2つに分かれており、それぞれの分野でJGAPに沿った経営のアドバイスができます。

資格を取得するには、日本GAP協会公認の研修機関が開催するJGAP指導員基礎研修に合格する必要があります。

参考:一般財団法人日本GAP協会 ホームページ

融資・補助金獲得に必要となる資格とは?

ここまでご紹介した資格や検定とは少し異なりますが、新しく農業をはじめる際は「認定新規就農者」を取得しておくことで、補助金や融資を利用したいときに役立ちます。

認定を受けるための要件は、こちらのコラムで詳しく解説しています。

関連記事:認定新規就農者制度とは?メリット・デメリットまで解説

新規就農でイチゴ農場をオープンした立花さんは、認定新規就農者の認定について「いくつかの市区町村へお問い合わせをした中で、十分な研修の期間を受けているのか、農地を確保できているのかなどを重要視されていました」と振り返ります。



「認定新規就農者の認定を受けるためには、前もって研修先を見つけておくか、研修を終えた後に相談をしないと認定を受けることは難しいと感じました。」

関連記事:新規就農で大好きないちご農園を開園-苺屋ガルテンベーレン

認定取得を目指す際は、自分がその要件を満たしているのかしっかりと確認してから臨みましょう。

農業をはじめるときのお悩みはイノチオアグリへ



今回ご紹介した資格の取得に取り組むことで、多方面から農業の知識を得ることが可能になります。しかし、農業は自然を相手にする仕事です。たとえ長年農業に携わるベテランの方であったとしても、予想外のハプニングが起こることは十分に考えられます。そのため、いざというときに頼れる相談先を見つけておくと安心です。

イノチオアグリは、ビニールハウスに携わって50年以上ものあいだ培ってきたノウハウを活かして、お客さまの農業を総合的にサポートします。農業スタートに向けた準備はもちろん、栽培をはじめたあとのご支援も行っております。

農業をはじめる際の不安、栽培をはじめたあとの疑問など、ビニールハウス栽培に関するお悩みごとは、ぜひイノチオアグリにご相談ください。