農業従事者の高齢化が進展する中で、新規就農者は非常に大切な存在です。そのため新規就農者の増加により、世代間バランスのとれた構造にしていくことを目的に、国・各市区

町村を中心に新規就農者のための支援策を行っています。今回は新規就農者の支援する制度の1つである、認定新規就農者制度についてご紹介いたします。

新規就農者・農業参入の課題

新規就農・農業参入には時間と事前準備が必要となります。「新規就農者の就農実態に関する調査結果」のアンケートでは新規就農・農業参入時に「 農地の確保 」(72.8%)、「 資金の確保 」(68.6%) 、「 営農技術の習得 」(57.7%)、の順に苦労したと回答した方の割合が 多い状況です 。

就農初期段階の「相談窓口探し」や「家族の了解」の割合は低く、就農準備段階における農地・資金・技術の3つが主な課題となります。新規就農される多くは経営基盤、経営資源(人、モノ、金、情報、知的財産など)を確保する状態からスタートします。

アンケート及び就農の実例から、農地、資金、営農技術、新規就農までの手順で苦労するケースが大半です。実際に資金を獲得しようにも、営農技術や栽培技術を持ち合わせているかどうかなども1つの判断基準にもなるため、これらの経営資源は事前に準備することが新規就農に向けて必須となります。

後ほど紹介する認定新規就農者制度を活用することでビニールハウスや機械、設備における資金を確保することが可能になります。それでは制度について詳しくご説明します。

認定新規就農者制度とは

認定新規就農者の概要

認定新規就農者制度とは、これからの農業を支える新規就農者を増やし、安定的な新規就農者を地域農業の担い手として育成することを目的にしています。

新たに農業を始める方が作成する青年等就農計画(事業計画書)を各市区町村が認定し、認定を受けた方に対して、早期の経営安定に向けた措置を集中的に実施する制度になります。

認定新規就農者として認定されるための要件

対象としては下記内容に当てはまる方々になります。

認定新規就農者として
認定されるための要件
対象要件①
青年(原則18歳以上45歳未満)
対象要件②
効率的かつ安定的な農業経営を営むために
活用できる知識・技能を有する65歳未満
対象要件③
対象要件①又は②の者であり、法人が営む農業に従事すると認められるものが役員の過半数を占める法人
補足
農業経営を開始してから一定の期間(5年)以内の者を含み、認定農業者をは含みません。
認可機関
各市区町村

 

認定を受ける上で新規就農者が提出する青年等就農計画が市町村の基本構想に照らし適切であること、 その計画が達成される見込みが確実であること等がポイントになります。

認定新規就農者の取得に向けて、青年等就農計画を提出する際はポイントに沿って適切かどうかを確認した上で提出しましょう。

参考文献:農林水産省 認定新規就農者制度について

青年等就農計画の作成から認定までの流れ

青年等就農計画における流れ
新規就農者が「青年等就農計画認定申請書」を作成。就農先の市区町村へ申請。
申請した市区町村が青年等就農計画を審査・認定を実施。
申請した市区町村は青年等就農計画を認定後、申請者に通知を実施。
市区町村、都道府県等関係機関により、計画達成に向けたフォローアップ

 

青年等就農計画の記載する事項として、就農先である農地の場所や栽培作物、農業経営開始日、就農に関する形態、農業経営の規模感から生産方式に関する目標まで幅広い領域の記載を求められます。

また、市区町村の構想に適しているのかの観点も満たす必要があるため、計画作成の段階で事前に市区町村の新規就農担当者へ確認や相談をしておきましょう。

認定新規就農者と認定農業者の違いとは?

認定新規就農者は文字通り、新規就農する方又は就農後5年以内の方を対象にしています。一方で認定農業者制度では、意欲ある農業者が自らの経営を改善するために作成する農業経営改善計画を各市区町村の基本構想に沿って認定し、認定を受けた認定農業者に対して、計画が着実に達成されるよう支援する制度になります。

認定農業者は経営の改善を進めようとする既に農業生産を行っている生産者や農業法人からこれから農業経営を営もうとする方まで幅広く対象にしてます。認定農業者の認可を受けることでスーパーL資金や農林水産省が行う補助金の対象となるケースもあります。

結論として、認定農業者は新規就農者に重きを置き、対象とした制度でなく、対象者が幅広いのが大きな違いです。そのため、幅広い方を対象とする認定農業者の取得を第一に考えるのではなく、新規就農者に重きを置いた認定新規就農者制度の活用を第一に考えましょう。

関連記事:認定農業者制度とは?企業の農業参入・新規就農時に活用する方法を徹底解説

認定新規就農者制度のメリット

認定新規就農者制度のメリット概要

認定新規就農者を取得することで、独立して農業を始める際に必要な設備や機械の初期投資資金や所得確保の給付金等の支援策が優先して、取得できる等のメリットがあります。

支援策として、経営開始資金(農業経営を始めてから経営が安定するまでの最大3年間月12.5万円(年間150万円)の定額交付や青年等就農資金(最大3,700万円融資)などの対象となります。そのため、認定新規就農者制度を活用することで新規就農における資金確保の課題を解決しうる制度と考えています。

認定新規就農者制度のメリット① 
就農後の所得確保を後押しする経営開始資金

経営開始資金は経営を始めて間もない時期の所得を確保したい方におすすめです。制度内容としては規定の要件を満たす認定新規就農者に対して、経営開始から最長3年間、月12.5万円(年間最大150万円)の給付になります。

要件としては、就農時の年齢が原則49歳以下の認定新規就農者であることなど5項目を全て満たす方が対象となります。詳細は下記資料請求からご確認ください。

関連記事: 新規就農者育成総合対策「経営開始資金」とは?

出典:新・農業人ハンドブック2022

認定新規就農者制度のメリット② 
青年等就農資金

青年等就農資金は新たに農業経営を開始する新規就農者を対象に、国が無利子で資金を融資する制度になります。実際には国の出資金をもとに、株式会社日本政策金融公庫が融資に関する審査及び諸手続きを行います。

資金の取得により就農準備に幅広く活用できる為、新規就農の課題である「資金の確保」を支援する制度になります。青年等就農資金を検討するにあたり、日本政策金融公庫の窓口機関、市区町村の農政課に相談ください。

対象となる条件として、認定新規就農者として市区町村から認定を受けた青年(原則18歳以上45歳未満)、効率かつ安定的な農業経営を営むために活用できる知識・技能を有する65歳未満、これに該当する人が役員の過半数を占める法人、農業経営を開始してから5年以内の方も対象になります。

青年等就農資金の融資限度額は3,700万円(特認1億円)になります。利子は返済終了まで無利子であることも新規就農者にとって、力強い支援制度です。返済期間は12年で、据置期間は最大5年以内と設定されています。

資金の使い道も幅広く活用可能であり、施設・機械の導入費や農地の借地料・機械のリース料に関する一括支払いなどでご活用いただけます。

関連記事:「青年等就農資金」とは?? メリット・デメリットまで解説

 

認定新規就農者制度のメリット③
新規就農者育成総合対策 経営発展支援事業

新規就農者育成総合対策 経営発展支援事業は農業への人材の一層の呼び込みと定着を図るため、経営発展のための機械・施設等の導入を地方と連携して親元就農も含めて支援する制度になります。

制度内容としては、新規就農される方に機械・施設等の導入にかかる経費の上限1,000万円(経営開始資金の交付対象者は上限500万円)に対し、都道府県支援分の2倍を国が支援する取り組みになります。

新規就農者育成総合対策 経営発展支援事業は認定新規就農者であり、就農時の年齢が49歳以下の方が対象となります。経営発展支援事業を申請する際は就農予定の市区町村へ青年等就農計画を提出し、認可取得が必要です。

認定新規就農者を取得することで本制度に加えて、経営開始資金(年間150万円の交付金が最長3年間に渡り取得できる)や青年等就農資金(最大3,700万円の融資)を取得できるなど、多くのメリットがあります。

新規就農者育成総合対策 経営発展支援事業は補助対象事業費上限1,000万円のうち県支援分の2倍を国が支援する内容です。補助率の例として、国が1/2、県が1/2、本人1/4になります。1,000万円の施設や機械導入費が1/4に抑えられること、助成対象も幅広い用途で活用できることから新規就農者の苦労する資金確保を解決しうる力強い制度です。

関連記事:新規就農者1,000万円の補助?経営発展支援事業を徹底解説

認定新規就農者制度のデメリット

認定新規就農者のデメリットとして、青年等就農計画の作成から提出まで新規就農者が行う場合、非常に障壁が高いことが挙げられます。

青年就農計画を作成するにあたり、農地の確保は勿論のこと、農地に合わせたビニールハウスの見積や図面、農業経営におけるイニシャルコスト及びラニングコストの算出を研修受講と同時並行且つ独自で進めることは非常に難しいのが実情です。

特に農業業界の特性上、各コストは理想とする農業経営や栽培作物、栽培方式、農地などに応じて変化するため、独自で青年等就農計画を作成することが進めることは大変な労力が必要になります。

そのため、事業計画からビニールハウスの設計、提案まで可能なハウスメーカーに相談し、支援してもらいましょう。

認定新規就農者取得に向けた進め方

青年等就農計画(事業計画書)の作成ではイニシャル及びランニングコストの算出が不可欠です。

コストの算出は農地の形状と農地面積に応じて変動し、加えて農地の形状や土地環境に応じて、ビニールハウスの建設が困難な場合もあるため、青年等就農計画(事業計画書)の作成を進める前に候補となる農地を複数ピックアップしておくことが重要です。

候補となる農地をピックアップした後は新規就農を支援をしているハウスメーカーに依頼し、青年等就農計画(作成)から新規就農・農業参入まで伴走してもらいましょう。

  1. 「農地の候補地」を複数ピックアップ
  2.   理想とする農業経営の実現に向けて、各機関またはハウスメーカーへ相談
  3.  認定新規就農者の取得に向けて、青年等就農計画をハウスメーカーと作成
  4.   各市区町村に青年等就農計画を提出

認定新規就農取得の支援

イノチオアグリは施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に携わり、50年以上の知見がございます。50年以上に渡り、培ったノウハウを活かし、新規就農・農業参入を計画段階からご支援しております。

お客さまのご要望や条件に基づいて農場を設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの新規就農実現に向けた計画をお手伝いします。

更に、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。