農地を活用する方法とは?ビジネス用途の例も解説
近年では、農業従事者の高齢化が進み、それに伴う耕作放棄地の増加が問題となっています。耕作放棄地とは、「以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地のこと」を指します。
管理されなくなった農地を放置しておくと、周辺環境へ悪影響を及ぼすなどの弊害をもたらしますが、上手く活用することで新たなビジネスチャンスにもなる可能性を秘めています。
今回のコラムでは、農地を放置するリスクをはじめ、農地をビジネスとして活用する具体的な方法について解説します。
農地の定義
農地とは「耕作の目的に供される土地」を指します。また、耕作とは「土地に労費を加え肥培管理を行って作物を栽培すること」と定義されています。つまり、労力や費用をかけて肥料・水やり・整地・除草・害虫駆除等の作業を行い、作物の栽培に利用する土地が農地ということです。
また、農地には、現在耕作していないものの、耕作しようと思えばいつでもできる土地(休耕地など)も含まれます。
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農地を活用するために知っておくべき規制
農地を活用するためには、知っておくべき規制が2つあります。それは、農地法と都市計画法です。それぞれの規制についてはじめに確認しておきましょう。
農地法
農地法は、農地の適正な利用と保護を目的とし、持続可能な農業の発展を支援するための法律です。この法律は、農地の所有や転用を規制することで、乱開発や無秩序な転用を防ぎ、農業生産の安定を図ることを目指しています。これにより、農業従事者が安心して農業を続けられる環境を整え、食料の安定供給を支えることができます。
農地転用には農業委員会に届け出をしたり、都道府県から許可を得る必要がありますが、許可を受けずに無断で農地を転用した場合は農地法違反となります。場合によっては、都道府県知事等から工事の中止や原状回復等の命令がなされることもあるため、農地法を正しく理解しておくことは重要です。
関連記事:農地法の規制とは?農地オーナー向けにわかりやすく解説
都市計画法
都市計画法とは、都市の健全な発展とまちづくりのためのルールを定めたものです。この法に基づいて、土地は「都市計画区域」と「準都市計画区域」に分類され、「都市計画区域」は市街化区域と市街化調整区域に分けられます。
都市計画法における市街化調整区域とは、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るために設定される区域です。この区域では、新たな建築や開発行為が原則として制限されており、自然環境や農地の保護が重視されています。所有している土地が市街化調整区域であり、その場所に高齢者施設などの建設を検討している方は、あらかじめ建設の可否を各自治体に確認しておくようにしましょう。
農地を活用せずに放置するリスク
農地を活用せずに放置していると発生するリスクを4つ解説します。
税負担が大きくなる
農地法では、耕作されていない、かつ引き続き耕作されないと見込まれる土地を「1号遊休農地」、周辺の農地と比べて農業利用の程度が著しく低い土地を「2号遊休農地」と定めています。 通常、農地は固定資産税の優遇措置を受けており、比較的低い税率が適用されますが、所有している土地がこの遊休農地に該当してしまうと、この優遇措置が適用されず固定資産税が増加します。
また、農業をしない人が農地を相続する場合には相続税が発生します。農地の広さや資産価値によっては大きな負担になることもあるため、農地を有効活用できる方法を考えることをおすすめします。
活用・転用が難しくなる
放置されて荒廃している農地では、虫や雑草が増加したり、廃棄物の不法投棄が行われたりする可能性があります。特に、遠隔地の場合は自ら手間をかけるということも難しく、コストもかさみます。これにより、後でいざ活用しようとしたときに手入れに手間がかかったり、費用がかさんでしまったりして、活用や転用が難しくなることがあります。
周辺環境へ悪影響を及ぼすことがある
放置された農地が荒廃すると、近隣住民に迷惑をかける可能性があります。例えば、害虫や害獣が近隣の作物に被害を与えたり、悪臭が発生したりすることがあります。これが原因でトラブルや苦情が発生することもあるため注意しましょう。
資産価値の低下
管理が行き届いていない農地は、買い手にとって魅力が低くなり、資産価値が低下する可能性があります。 将来的に売却や賃貸を考えている場合は、定期的な管理または、農地を上手く活用することで資産価値を保つ必要があります。
農地をそのまま活用する方法3選!
農地の転用が難しい場合や初期投資の資金が不足している場合でも、農地を活用して収益を上げる方法はあります。ここでは、農地をそのまま活用して利益を生み出す事例をご紹介します。
第三者へ貸し出す

農地を第三者へ貸し出す手段として、農地バンク(農地中間管理機構)を活用するという方法があります。農地バンク制度とは、農林水産省が取り組む農地の貸し借りを支援する事業です。借り手と貸し手の間を農地バンクが仲介する形で、農地のスムーズなマッチングをサポートしてくれます。これを利用することで、賃料の回収や農地の管理を任せられ、手間もかかりません。また、農地バンクの管理が公的機関であるため、安心して貸し出すことができます。
関連記事:農地バンクとは?新規就農・農業参入の農地探し
市民農園を開く
市民農園とは、サラリーマン家庭や都市の住民の方々のレクリエーション、高齢者の生きがいづくり、生徒・児童の体験学習などの多様な目的で、農家でない方々が小さな面積の農地を利用して自家用の野菜や花を栽培する農園のことをいいます。農園そのものを貸し出すことで、元手がかからず、利用料を受け取ることができます。
営農型太陽光発電を導入する
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農地に太陽光パネルを設置し、農業と発電を同時に行う仕組みです。具体的には、農地に支柱を立ててその上に太陽光パネルを設置し、パネルの下では農作物を栽培します。農業収入と売電収入の両方を得ることができるとともに、再生エネルギーを利用することで環境負荷を軽減し、持続可能な農業を実現できます。
参考サイト:営農型太陽光発電について(農林水産省)
農地転用をして活用する方法5選!
農地をそのまま活用するほかにも、農地を転用してビジネスにつなげる方法がいくつかあります。ここではメジャーなものを5つご紹介します。
関連記事:農地転用とは?費用相場や注意点について解説
アパート・マンションを経営する
アパート・マンション経営では、賃貸住宅として部屋を貸し出し、賃料を受け取ることで利益を得ます。定期的な家賃収入が得られるほか、農地を宅地に転用することで土地の資産価値が上がる点も魅力の一つです。アパート・マンションは、都心部、郊外問わず賃貸住宅の入居者が期待できる立地であれば、経営することが可能です。賃貸住宅の管理や運営には手間がかかりますが、管理会社に委託することで効率的に運営できます。
月極駐車場を運営する

月極駐車場とは、1ヵ月単位で賃貸借契約を結ぶ駐車場のことです。利用者がいれば毎月安定した収入が得られ、初期費用も抑えやすいのが特徴です。建物や設備を用意する必要がなく、最も簡単なものでは、整地した土地に砂利を敷いて駐車スペースを区分けするだけでも経営を始められます。そのため、気軽に始められる農地活用方法として人気があります。
資材置き場として貸し出す
資材置き場は、建築会社や土木会社が木材・石材・砂利などの資材を一時的に保管する場所です。広い土地が必要で、会社が自前で土地を持たない場合、貸し出し用の土地を借ります。農地の所有者にとっては、初期費用や管理の手間がかからないため、手軽な農地活用法となっています。資材置き場にするには、不動産会社に依頼して借り主を探してもらいます。多くの場合、地元の企業に打診をするか、近隣エリアで工事がある会社へ問い合わせをして、借り主を探します。
太陽光発電を設置する
太陽光発電は、ソーラーパネルで生産した電気を電力会社に買い取ってもらう仕組みです。電気の買取価格が法律で決まっており、一定価格で20年間買い取ってもらえるため、非常に収益性の高い活用方法の一つとなっています。電気の生産量が収益に直結するため、日照時間が長く、遮蔽物(しゃへいぶつ)が少ない場所が適しています。 ソーラーパネルの設置には初期費用がかかるほか、定期的なメンテナンスが必要ですが、運用開始後は比較的低コストで維持できます。
高齢者施設を建てる
高齢者施設は施設利用を目的とした人が多いため、立地に左右されず十分経営していくことができます。また、ある程度の広さがあるほうが好ましい建物であるため、農地からの転用にも向いています。利用者と保険会社の両方から利用料金を得られるため、安定した収益が見込めます。 しかし、建物の建設には多額の費用が必要になるため、初期費用が大きくなる点には注意が必要です。
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