新規就農をめざす選択肢の一つとして、農家の後継ぎになるという方法があります。農家の後継ぎになるには、必ずしも農家の親族である必要はありません。最近では事業継承マッチングサービスなども拡充してきており、第三者であっても農業後継者をめざすことができます。

今回のコラムでは、後継者として農業をはじめるメリットをはじめ、農業後継者として新たに農業をはじめる際に利用できる補助金制度について解説します。

農業における後継者不足の現状



2020年の農林水産省の農林業センサスによると、2010年に2,054千人だった農業従事者は、10年で33.6%減少の1,363千人となっています。また、2010年に66.2歳だった農業従事者の平均年齢は、10年で1.6歳上がり67.8歳となっています。 では、なぜ農業従事者の減少と高齢化が続いているのでしょうか。

一つは、農業特有の労働条件が上げられます。一般的な企業勤めのサラリーマンと比べて、有給休暇や労働時間の管理、人材育成評価の仕組みといった労働条件が定められていないことがあるようです。さらに、真夏や真冬の過酷な条件下での作業や、旬の野菜等を生産する場合は年間を通して作業量にバラつきがあるなど、これらの理由により続けるのが難しいと思ってしまうのも無理はありません。

もう一つは、地方の人口減少と高齢化です。メディアでも取り上げられているように、日本全体でも人口減少や高齢化が問題となっています。中でも地方はその傾向が強く、そもそもの働き手が少ないないこともあり、農業の労働力を確保することは容易ではありません。

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農業後継者になる方法とは?



農業を継ぐには、必ずしも農家の親族である必要はありません。ここでは、新規就農者が農業後継者になる2つの方法についてご紹介します。

親族内継承

親族内継承とは、現経営者の親族の家業を受け継ぐ形で農業に従事することで、親元就農がこれにあたります。家業継承のため新規就農よりもリスクが低いことや、親族が培ってきた技術と経験を継承できることなど多くの魅力があります。

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第三者継承

第三者継承とは、先代農家に後継者がいない、または家族が事業を継ぐ意志がない場合、農家の有形・無形の資産を家族以外の人が引き継いで事業を継続する取り組みのことです。一から農家の後継ぎを目指す場合は、まず後継者を募集している農家を探す必要があります。

農家を探す方法としては、事業継承のマッチングサイトを活用する方法があります。全国から後継者を探している農家の情報が集まっているため、都道府県を問わず、希望に沿った農業継承を探すことができます。

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後継者として農業をはじめるメリット



農業後継者として農業をはじめる場合には、主に次のようなメリットがあります。

初期費用を抑えられる

一般的に、新しく農業をはじめるには、平均570万円の資金を用意する必要があると言われています。後継者として農業を始める場合は、必要な機械や設備などが整っていることが多いため、新規就農に必要な初期費用を大幅に削減することができます。

技術と経験が継承できる

農業は、熟練の経験から培われる知識と技術が要求される場面が多い職業です。親元就農や第三者継承では、その知識や技術を継承できる環境が整っており、苗の育成、土づくり、栽培管理、収穫のタイミングなど、現場での感覚や勘を教わることができます。

地域とのコミュニティができている

地域の人々や農業関連の団体や企業との協力は、農業を営む上で不可欠です。その点、農家を継ぐ形で就農した場合は、先代が築いてきた地域コミュニティとの繋がりを活かせるというメリットがあります。経営基盤や販路をそのまま活かせることもあり、就農直後から売上を確保することも可能です。

農業後継者を支援する補助金制度



農業後継者として新たに農業をはじめる際に、利用できる補助金や制度がいくつかあります。ここでは、「経営継承・発展等支援事業」「就農準備資金」「経営開始資金」の3つをご紹介します。

経営継承・発展等支援事業

経営継承・発展等支援事業とは、これまで地域農業を担ってきた農業従事者から、農業経営を継承した後継者に対して、国と市町村が一体となり、必要経費を補助する制度のことです。この事業では、継承にあわせて経営発展の取組を行った後継者のうち、8割以上が5年後にも経営を継続していることを目標にしています。

【交付対象者】
地域の中心経営体等である先代事業者(個人事業主または法人の代表者)から経営に関する主宰権の移譲を受けた後継者         
※ 親子や第三者など先代事業者との血縁関係は問わない

【交付額】
最大100万円

【交付主体】
・国      
・市町村      
(国と市町村が1/2ずつ負担)

【主な交付要件】
  1. 経営発展計画※を策定している
  2. 後継者の名義で税務申告を行っている
  3. 青色申告者である
  4. 家族経営協定を締結している(後継者が家族農業経営の場合)等
※ 「経営発展計画」とは、担い手から経営を継承した後継者が、その経営を発展させる取組やその成果目標等を記載した計画のこと

下記のような、経営発展に向けた取組に必要な経費に対して助成されます。

  • 法人化
  • 新たな品種
  • 部門等の導入
  • 認証取得
  • データ活用経営
  • 就業規則の策定
  • 経営管理の高度化
  • 就業環境の改善
  • 外部研修の受講
  • 販路開拓
  • 新商品開発
  • 省力化
  • 業務の効率化、品質の向上
  • 農畜産物等の規格
  • 出荷方法の改善
  • 防災・減災の導入

就農準備資金

就農準備資金とは、就農に向けて必要な技術等を習得する研修期間中の研修生に資金を交付するという補助金です。

【交付対象者】
就農予定時に49歳以下の者

【交付額】
12.5万円/月(150万円/年)を最長2年間

【交付主体】
・市町村      
・都道府県域の研修機関(農大等)の場合は都道府県等      
・全国型教育機関の場合は全国農業委員会ネットワーク機構

【主な交付要件】
  1. 独立・自営就農、雇用就農又は親元就農を目指すこと
  2. 都道府県等が認めた研修機関等で概ね1年以上かつ概ね年間1,200時間以上の研修を受けること
  3. 常勤の雇用契約を締結していないこと
  4. 原則、前年の世帯所得が600万円以下であること
  5. 研修中の怪我当に備えて傷害保険に加入すること


※ 適切な研修を行っていない場合等は、交付停止となります。また、研修終了後1年以内に49歳以下で就農しなかった場合は、就農後に交付期間の1.5培(最低2年間)の期間農業を継続しない場合等は、返還になります。

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経営開始資金

経営開始資金は、次世代を担う農業者となることを目指し、新たに経営を開始する者に資金を交付するという補助金です。

【交付対象者】
独立・自営就農時に49歳以下の者

【交付額】
12.5万円/月(150万円/年)を最長3年間

【交付主体】
・市町村

【主な交付要件】
  1. 独立・自営就農する認定新規就農者であること
  2. 経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画であること
  3. 経営を継承する場合、経営発展に向けた取組を行い、新規就農者と同等の経営リスクを負っていると市町村長に認められること
  4. 目的地図に位置付けられている、若しくは農地中間管理機構から農地を借り受けていること
  5. 原則、前年の世帯所得が600万円以下であること

※ 前年の世帯所得が600万円を超えた場合、適切な経営を行っていない場合等は、この補助金の交付は停止となります。また、交付期間終了後に交付期間と同期間以上、同程度の営農を継続しなかった場合は、変換となりますのでご注意ください。

関連サイト:農林水産省「就農準備資金・経営開始資金」

農業の経営承継で失敗しないためのポイント

新規就農者は、中長期的な経営計画を作成し、収益性を判断する必要があります。移譲する農家から土地の状態や栽培作物、販路などの情報を収集し、実績を基に具体的な数字を予測しましょう。さらに、移譲する側の農家から技術や知識などを教えてもらえる場合は、栽培計画も同時に作成しておくと安心です。

また、継承後の取り決めに第三者機関を入れることもおすすめです。土地の所有権が関係してくると、農地に関わらず移譲する側とされる側の間でトラブルに発展する場合があります。こうした問題を防ぐためにも、移譲者と後継者とは利害関係のない、中立的な立場を取れる第三者期間に仲介してもらうことで、トラブルがあった際にも安心して対処できます。

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