ビニールハウスについて調べていると丸型ハウスや屋根型ハウスなど、形状による仕様の違い以外にも、「連棟」と言ったキーワードを目にされるのではないでしょうか。
今回のコラムでは、ビニールハウスの基礎知識をはじめ、連棟にすることで生まれるメリット・デメリットを単棟と比較しながらご紹介します。

ビニールハウスの連棟とは?

はじめに今回のメインテーマでもあるビニールハウスの連棟についてご紹介します。

ビニールハウスには、1棟が独立した単棟ハウスと連結した連棟ハウスが存在します。単棟ハウスと連棟ハウスの違いは、上記の写真でもわかるように複数のビニールハウスが連なっているかいないかです。

連棟のビニールハウスの場合は、複数のビニールハウス内を自由に行き来きできる内部構造となっています。一つの作物を栽培するのであれば温度調節などの管理面を踏まえても作業効率が高いと言えます。

一方で、複数の作物を栽培する場合は個別に温度調整のできる単棟が適している場合があります。

また、雪が多く降る地域では単棟のビニールハウスが選ばれています。連棟の場合では、ビニールハウスの屋根と屋根の間の谷部に雪が積もることで倒壊してしまう恐れがあるためです。

そもそもビニールハウスとは?

ビニールハウスの連棟のメリット・デメリットを紹介する前に、ビニールハウスに関する基本情報をいくつかのテーマに別けてご紹介していきます。

ビニールハウスのタイプ

ビニールハウスには、鉄骨でできた鉄骨ハウスとパイプでできたパイプハウスが存在します。鉄骨ハウスの方が台風などの自然災害に強い耐候性を持つ一方で、パイプハウスと比較してコストが高い傾向にあります。

また、屋根の形状違いで丸型ハウス、屋根型ハウスと呼ばれるものと、柱高が5m~6mあるオランダ型と呼ばれる高軒高ハウスが存在します。

コストとしてもそれぞれ差があり、栽培する作物や建設する土地面積、予算などによって最適なビニールハウスが選ばれている傾向にあります。

ビニールハウスのサイズ

ビニールハウスのサイズは、土地面積と用途によって決められます。一般的に面積で区分けすると、大型は1000~5000㎡、中型は100~1000㎡、小型は20~100㎡と言われています。近年では、企業の農業参入の増加により10000㎡以上の大規模農場やメガハウスと呼ばれるビニールハウスも見かけられるようになってきました。

続いて、ビニールハウスの横幅(間口)と長さ(奥行)についてご紹介します。

関連記事:ビニールハウスで最適なサイズとは?間口の規格など決めるポイントについて解説

ビニールハウスの横幅(間口)と長さ(奥行)とは?

横幅(間口)
棟(とう)ごとの横幅を「間口(まぐち)」といいます。

間口は、各メーカーのビニールハウスごとで異なっています。なかには、パッケージ化されていて規格が決まっているもの、間口を建設する土地に合わせて自由に調整できるものがあります。しかし、ビニールハウスはアーチパイプを2本組み合わせて構成するため間口には限界があります。

なお、1棟あたりの間口に限界があっても、棟をつないで「連棟」にすることで、横幅を広くすることができます。

長さ(奥行)
棟の長さを「奥行」といいます。

ビニールハウスは同じ形状のアーチパイプをひたすらならべた構造なので、奥行の自由度は高いです。パイプのピッチ(間隔)が仮に50cmなら、50cm単位で奥行を決められています。

ビニールハウスの間口と奥行は、各メーカーの製品ごとに規格が異なるため、建設前には土地のサイズをもとに相談しましょう。

ビニールハウスを建てる際の注意点

続いて、ビニールハウスを建てる前の注意点についてご紹介します。

建てる方向は南北方向がおすすめ

ビニールハウスは住宅同様に建てる方向も重要です。基本的には、朝日をたくさん取り入れるために、建てる方向は南北に長くすることが推奨されています。

光合成には、朝7:00~9:00の太陽光が最も良いとされています。そのため南北に長く建てると、側面が朝日に向くので最も効率良く光合成をすることができます。

しかし、農地が斜めになっている場合は、無理に南北にビニールハウスを建てる必要はありません。無理に南北にしようとすると割高になることもあります。農地にあわせてた最適なビニールハウスの方向をビニールハウスメーカーの担当者と検討しましょう。

関連記事:ビニールハウスで最適なサイズとは?間口の規格など決めるポイントについて解説

地域によって風向きを考慮する

海沿いの地域、山間部の地域、平地の地域、周辺の環境によって風向きや風速は大きく変わります。風向きが特定の方角に吹く場合は、風向きと同じ方向に建てることも考えられます。傾向として、妻面方向は風を受ける方がダメージを軽減できます。

地形によっては常に特定の方向から強い風が吹く地域があります。側面に強い風を受け続けるとダメージが大きく、積み重なることでビニールハウスの耐用年数にも影響していきます。そのような地域であれば、風向きに対して縦方向に建てることでダメージを軽減できます。

農地に余裕がある場合

農地に余裕がある場合のビニールハウスのサイズの決め方を説明します。広い農地でビニールハウスを建てる場合、大きさやレイアウトは比較的自由に決めることができます。

奥行は長い方がコストは割安ですが、ビニールハウスでの栽培が未経験で初めて建てる場合は50m以内がおすすめです。

ビニールハウスの奥行が長すぎると次のようなデメリットが生じます。

・換気扇の効果が薄くなる(途中に循環扇が必要になる)
・灌水装置の水圧が届きにくくなる
・巻き上げ機が重くて回せなくなる
・ハウス内環境の温度や湿度は一定に保てなくなる
・ハウスの出入りが大変になる(途中に扉を付けるとコスト高になる)

ビニールハウスでの栽培歴が長い生産者であれば、50m以上のビニールハウスも建てています。

関連記事:ビニールハウスを建設する際に農地の見るべきポイントとは?

土地を最大限活用する場合の注意点

次に農地に余裕がない場合のビニールハウスのサイズの決め方を説明します。

農地の大きさに限りがある場合や、農地の形状が変わっている場合もあります。その場合、何を優先するかによってビニールハウスの建て方が変わってきます。

ビニールハウスの周囲を1m以上あける

ビニールハウスを建てる際は、下記の理由を目的に周囲を1m以上あける必要があります。

作業スペース
ビニールハウスを経てる際やビニールの張り替えの際、作業スペースが必要となります。高所での作業となるため脚立が安定して置けるスペースが必要です。

通路
農地を横切る通路の確保が必要となります。
道に接していない土地がビニールハウスの向こう側にある場合、通路の確保は必須です。トラクターなどの車両が通るのであれば、その分の幅が必要です。

雨水対策
雨が降ると側面から滝のように流れ落ちます。
その影響で土がえぐれてしまうため作物は育てることが困難となります。必然的に耕作はできない土地となります。

積雪対策
積雪が多い地域であれば滑り落ちた雪が積もる場所をあけておく必要があります。雪が溶けるまでの間は、完全なデッドスペースとなってしまいます。

また、その他にも単棟を並べる場合にも棟と棟の間を1m以上あける必要があります。
特に積雪の多い地域では、単棟のビニールハウスを建てることが一般的です。上記で説明した積雪対策と同様にビニールハウスの間と間に雪が積もる場所を確保しましょう。

ビニールハウスの連棟と単棟のメリット

それでは、ビニールハウスの連棟と単棟、それぞれのメリットについてご紹介します。

連棟と単棟どちらがおすすめ?

コストの面だけを考えれな単棟が有利でしょう。とくに小さなハウスを1棟建てるだけなら単棟をおすすめします。

しかし、新規就農で仕事として農業をする、農業参入である程度の投資を見込んでいるのであれば連棟がおすすめです。

連棟の方が機能面で充実しているので、理想的な栽培環境を作りやすいです。
あらゆる点を考慮して、ビニールハウスメーカーにも相談をしながら総合的に判断しましょう。

ビニールハウス連棟のメリット

ビニールハウス連棟のメリットをご紹介します。

温度・湿度管理がしやすい
暖房装置などで温度・湿度をコントロールする場合、連棟の方が温度・湿度環境を維持しやすくなります。形状は正方形に近い方が、全体の温度・湿度のムラが少なくなるからです。

ビニールハウス内の移動が楽
同じ面積であれば、どこからでも隣の棟へ移動できる連棟の方がビニールハウス内の移動が楽です。一方、単棟は細長く出口が妻面しかないので移動が大変です。途中に扉をつけると相当なコスト高になってしまいます。

横風に強い
連棟の方が単棟に比べて横風に強いです。年間を通して風の強い地域だけでなく、日本は台風の上陸が多い地域のため、そのような被害を考慮するとビニールハウス連棟の方が安全だと言えます。

ビニールハウス単棟のメリット

次に、ビニールハウス単棟のメリットをご紹介します。

妻面が少ない分、割安
妻面のコストは側面のコストより高くなります。妻面に扉や換気扇などを付けるとさらにコストがかかります。狭い面積であれば妻面が少ないビニールハウス単棟の方が、割安になります。

谷部が無く割安
ビニールハウス連棟の場合、雨水が溜まらないようにするため棟の間に谷部と呼ばれる雨樋が必要になります。ビニールハウス単棟であれば、連結していないため谷部が無く割安になります。

谷部が無く雪が積もりにくい
ビニールハウス単棟は谷部が無いため雪が積もりにくくなっています。
一方、ビニールハウス連棟は谷部があるため雪が積もりやすいです。
さらに、雪がとける前に雨が降ると、水分を吸ってさらに重量が増すため倒壊をしてしまう恐れがあります。

ビニールハウス連棟と単棟のデメリット

ビニールハウス連棟の場合は、コストは高くなるものの機能面が優れています。
一方、ビニールハウス単棟の場合は、コストは安くなるものの機能面は連棟に比べて劣ります。

別の項目でも書かせていただきましたが、積雪などの影響がない地域で、ある程度の規模で収益性を見込んでいる新規就農や農業参入、規模拡大であればビニールハウス連棟がおすすめであると言えます。

ビニールハウス連棟は、単棟に比べて機能面が優れているので理想とする栽培環境が作りやすいです。また、連棟にとって不利に思われる項目も、ある程度のコストをかけることで解決できます。

お悩みの方は、コスト面、理想とする栽培環境などを整理してビニールハウスメーカーへ相談してみてください。

関連記事:ビニールハウスのメリット・デメリット

ビニールハウス連棟の価格を知りたい

ビニールハウスの価格は、面積や土地形状などによって異なるため一概に金額を示すことができません。

ビニールハウスの建設を検討していて、土地面積や形状、栽培する作物などある程度の条件が決まっている場合にはお問い合わせください。

ビニールハウスのご相談はイノチオアグリへ

今回のコラムでは、「ビニールハウスの連棟とは?」をテーマにご紹介しました。

ビニールハウス連棟・単棟それぞれにメリット・デメリットがあります。ご自身が目指す理想の農業、土地環境を踏まえてご検討ください。

イノチオアグリでは、ビニールハウス建設関するご相談を随時お待ちしております。規模拡大をはじめ、新規就農・農業参入までお気軽にお問い合わせください。