ビニールハウスで最適なサイズとは?間口の規格など決めるポイントについて解説
ビニールハウスを建設する際に、大きさをどのように決めたらいいのか、適切なサイズについて悩んだ経験があるのではないでしょうか。
特に独立就農や新規就農のような農業未経験の中、これからビニールハウスを建設する方にとってはイメージも湧きにくいと思います。
独立就農、新規就農のようにビニールハウスの建設を検討している方に向けて、ハウスの間口やサイズを決めるポイント、適切なサイズについて紹介していきます。
目次
ビニールハウスのサイズ
ビニールハウスのサイズは土地面積と用途によって決まります。
一般的に面積で区分けすると、大型は3,000㎡以上、中型は100~3,000㎡、小型は20~100㎡と言われています。
近年では、企業の農業参入の増加により10,000㎡以上の大規模農場や、メガハウスと呼ばれるビニールハウスも見かけられるようになってきました。
ビニールハウスの用途
ビニールハウスを用いた農業生産は施設園芸にカテゴリーされます。
独立就農や新規就農の研修で目にしたことがあるような、丸型や屋根型など様々な形状が存在します。
ビニールハウスは外部環境から隔離することで人工的に気象環境と植物の生育を制御して、出荷時期の調整や品質向上を目的に活用されます。
ビニールハウスの間口・規格に必要な名称とは
棟ごとの横幅を「間口」と呼びます。
間口は各ハウスメーカーのビニールハウスによって異なります。
なかにはパッケージ化された規格や農地に合わせて、仕様から自由に選択・調整できるものがあります。1棟あたりの間口幅は限界があるため、横幅が長くなる場合はビニールハウスを連棟にすることをおすすめします。
棟ごとの長さを「奥行」と呼びます。
ビニールハウスは同じ形状のアーチパイプを並べる構造になり、奥行は間口に比べて、自由度が高いです。奥行を選ぶ際は各ハウスメーカーの製品概要に記載された「ピッチ」をもとに選んでいきます。
製品の仕様として、50㎝ピッチの場合は50cm単位で奥行を決めていきます。 ビニールハウスの概要について下記コラムで解説しています。
ビニールハウスのサイズをどのように決める?
次にビニールハウスのサイズを決める際のポイントを解説してきます。
独立就農や新規就農の場合、就農された方の多くが、資金確保で課題を感じる傾向にあります。サイズを決める際は間口や奥行だけでなく、価格や値段を抑える方法や農地・建てる方角などポイントを踏まえて決める必要があります。
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ビニールハウスの価格・値段のポイント
まず、独立就農や新規就農する際にビニールハウスの価格や値段のポイントを抑えることが先決です。ビニールハウスは連棟が増えるほど価格があがる傾向にあります。
これは連棟数が増えることで、活用する部材や骨材が増えることに起因します。そのため、連棟数を増やすことよりも奥行方向に長い仕様を第一に考えます。
ただし、奥行が長すぎると以下のようなデメリットが生じる可能性があるため、事前に抑えておきましょう。
- 循環扇の設置数が増えてしまい、コスト高になる
- 入口側と出口側で灌水開始の時間に差が生じてしまい、生育ムラの可能性が生じる
- 巻き上げ機が重くて回せなくなる
- 温度や湿度といったハウス内環境において、差が生じる
- 作業中の集中力低下が生じてしまい、労働生産性が低下する
- ハウスの出入りや作業導線から使い勝手に課題が生じる
主にはビニ―ルハウス内の温度や湿度、灌水時間に差がでてしまうことで、生育に課題が生じる可能性があります。
また、奥行方向に長いことで労働生産性が低下するケースも考えられます。そのため、奥行方向に長くする際は労働生産性の低下を防ぐ、60m以内にするなど、注意して決めていきましょう。
イノチオアグリでは、ビニールハウスのレイアウトやサイズに関するご相談を数多くいただいております。
間口やサイズで迷う際は下記からご相談ください。
間口の選び方
次に、間口の選び方を解説します。
選ぶ際の前提条件として、ビニールハウスは建設予定の農地境界線から左右2mほどのスペースを空ける必要があります。
このスペースは、ビニールハウスの建設や定期的なビニールの張り替え時に活用します。積雪地域の場合は、ハウスの屋根面に雪が積もることで倒壊の可能性があるため、雪を落とすのに必要なスペースを確保しましょう。
ビニールハウスの間口を選ぶ際はこれらのポイントを考慮して、計画を立てていきます。
作物ごとに最適なビニールハウスを選んだ上で、ビニールハウスの間口を規格から選択していきましょう。
製品 | 間口 |
丸型ハウスD-1 | 6.0m、6.5m、7.2m |
屋根型ハウス | 6.0m~12.9m |
SANTAROOF | 8.0m、9.0m |
ここからは、イノチオのビニールハウスを例として説明します。
建設時に必要なスペースを除いた農地の幅が28mとします。この場合、丸型ハウスD-1であれば、間口7.2mの3連棟、または間口6.5mの4連棟が考えられます。
価格の観点で選択すると、間口7.2mの3連棟が最適です。
間口を広くすることで畝やベンチ本数も確保でき、結果的に定植本数や収量を増やすことができます。
奥行の選び方
次に奥行の選び方を解説します。
間口と同様に奥行も農地境界線から前後2mほどスペースを空けます。
このスペースは間口の選び方で記載した用途と同様です。
また、その他にも井戸や貯水タンク、ハウスカオンキで活用する防油堤のスペースも考慮し、奥行を決めていきます。井戸や貯水タンクに必要なスペースはハウスレイアウトによって大きく変わるため、ハウスメーカーに相談するようにしましょう。
ビニールハウスの建設可能な奥行が70m、丸型ハウスD-1の建設を検討していると想定します。その場合、丸型ハウスD-1のスパンから奥行は60m、63m、66m、69mが考えらえます。
独立就農や新規就農の際はビニールハウスのサイズを最大限確保する傾向にある一方で、労働生産性の観点から60m、63m、または66mが候補となってきます。奥行を決めた後に、ハウス内の通路幅、ベンチ長なども考慮しながら、奥行を微調整していきましょう。
ビニールハウスの建設は、将来の作物の成功に影響を与える重要な決定です。適切なサイズを選ぶために、熟考して計画を立ててください。
建てる方角の基本とは
間口や奥行きの他に、ビニールハウスを建てる際の方角も重要なポイントの1つです。
一般的に、ビニールハウスは南北方向に建設することが推奨されています。
太陽が東から西に沈むため、南北方向に建てることでハウス内に差し込む日射が均等に当たるようになります。これにより、作物の生育が揃い、管理がしやすくなります。
実際に南北方向のビニールハウスは、朝7時から9時の時間帯で多くの光をハウス内に届けることができるため、方角を決める際に注意しておくとよいでしょう。 風の影響も、建てる方角を決める上でポイントになります。
台風などの強風が来た場合、南北からの風は比較的強い傾向にあります。南北方向に建てることで、風に対する耐性が高まり、倒壊のリスクを軽減できます。したがって、ビニールハウスを建てる際には、南北方向を選ぶように心がけましょう。
建てる方角のポイントを説明しましたが、建てる方角は農地の向きによって決まります。そのため、上記のポイントを抑えた上で農地を探すことが重要です。
ビニールハウスを建設する際に農地の見るべきポイントは下記コラムで詳しく解説しています。
関連記事:ビニールハウスを建設する際に農地の見るべきポイントとは?
ビニールハウスの単棟と連棟の違い
単棟と連棟の概要
ここではビニールハウスのサイズを決める上で重要な連棟について説明します。
ビニールハウスには、1棟が独立した単棟ハウスと連結した連棟ハウスが存在します。 単棟ハウスと連棟ハウスの違いは、上記の写真でもわかるように複数のビニールハウスが連なっているかいないかの違いです。
連棟のビニールハウスは、複数のビニールハウス内を自由に行き来きできる内部構造となっています。1つの作物を栽培するのであれば、温度調節などの管理などを考えると、自由に行き来きできることで労働生産性の観点から作業効率が高いと言えます。
一方で、複数の作物を栽培する場合は個別に温度調整のできる単棟が適している場合があります。 特に雪が多く降る地域では、単棟のビニールハウスが選ばれています。
連棟の場合では、ビニールハウスの屋根と屋根の間の谷部に雪が積もることで倒壊してしまう恐れがあるためです。単棟・連棟を選ぶにあたり、栽培する作物の数や地域環境、労働生産性の観点から選択しましょう。
単棟と連棟の違いとは
独立就農や新規就農で仕事として農業をする、農業参入である程度の投資を見込んでいるのであれば連棟がおすすめです。
連棟の方が機能面で充実しているので、理想的な栽培環境を作りやすい特長があります。
一方でコスト面を優先する場合、単棟の方が安いのでは?と思う方が多いと思います。
確かに、小さいビニールハウスを検討している場合、妻面が増える連棟よりも単棟の方がおすすめになります。
ここでは同じ面積かつ同じ棟数の条件で単棟と連棟を比較してみます。
内容 | 単棟 | 連棟 |
温度・湿度管理 | × | 〇 |
労働生産性が高い | × | 〇 |
妻面の風に強い | × | 〇 |
コスト面 | × | 〇 |
積雪への耐久性が強い | 〇 | × |
ビニールの張り替えがしやすい | 〇 | × |
農地を最大限活用できる | × | 〇 |
ビニールハウスの単棟ではいくつか特長があります。
特に雪国での利用において、以下のポイントが挙げられます。
積雪への耐久性- 単棟ハウスは谷部がないため、雪が積もりにくく、倒壊リスクを最小限に抑えることができます。
- 雪国では実際に単棟ハウスが多く見られ、積雪の多い地域では冬場にビニールを剥がすなどの対応を行うことが一般的です。
ビニールの張り替えの容易さ
- 独立就農や新規就農後のランニングコストとして、ビニールの張り替えが必要です。
- 単棟ハウスは自身でビニールの張り替えを行いやすいため、メンテナンスが容易です。
一方でビニールハウスの連棟では、下記のような特長があげられます。
栽培管理- 暖房装置などで温度・湿度をコントロールする場合、連棟の方が温度・湿度環境を維持しやすくなります。 ハウスの形状は正方形に近い方が、全体の温度・湿度のムラが少なくなる傾向にあります。
- どこからでも隣の棟へ移動できる連棟の方がビニールハウス内の移動が楽になり、単棟に比べて労働効率が高いです。
妻面の風に強い ・年間を通して風の強い地域だけでなく、日本は台風の上陸が多い地域のため、そのような被害を考慮するとビニールハウス連棟の方が安全だと言えます。
関連記事:ビニールハウスの連棟とは?メリット・デメリットについて解説
ビニールハウスは規格から選ぶべき?
先ほども述べたようにビニールハウスの建設は農地の形状に大きく影響を受けます。
ハウス標準仕様の間口や奥行を考えると計画する面積に達しないケースも少なからず存在します。 ここではビニールハウスの標準使用・規格以外の特注で建設する際のポイントを解説していきます。
農地だけに限らず、ハウス内の栽培設備やベンチ長、労働生産性の都合により、特注サイズを建てたいケースが存在します。 特注の間口、奥行によるビニールハウスを建てることは可能です。
一方で、面積が確保できるなど、メリット・デメリットがあるので事前に知った上で発注したいところです。
特注のメリット
特注のメリットとして、希望の面積を建設できる、農地を最大活用できる、希望の栽培設備に沿ったハウス建設が可能といった点が挙げられます。
特にイチゴやミニトマトなど、高設栽培ベンチ、隔離養液設備を導入するケースが増えています。このような作物では設備をハウス1棟にして、何列導入できるかどうかが重要になってきます。
1列減るだけで独立就農・新規就農に取って重要な定植本数や収量に大きく左右します。 そのため、農地を最大限活用したい、希望の栽培設備に沿ったハウス建設を行いたい方にとって特注の間口や奥行はメリットと言えます。
特注のデメリット
特注の間口や奥行を選択する上でのデメリットはコスト面です。
特注するケースは標準的な仕様と比べると建設コストが高騰します。独立就農や新規就農にとって、資金調達の課題が多い中で特注を選択するかどうかは慎重に考えなくてはいけません。
最初から特注ありきでなく、標準仕様と特注仕様のコストと資金調達する予算の双方をもとに検討するようにしましょう。
サイズで迷ったらイノチオに相談
ビニールハウスのサイズを決める上で様々なメリット・デメリットがあります。理想の農業経営、農地を踏まえてご検討ください。
イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトとし、お客様を多岐にわたって支援することを掲げています。農業ハウスやビニールハウスに携わり、50年以上のノウハウや知見を活かし、新規就農に向けた間口や奥行、サイズのご提案を支援しております。
お客さまのご要望や候補農地に基づいてビニールハウスを設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。規模拡大をはじめ、ビニールハウスの間口や奥行、サイズに迷ったらお気軽にお問い合わせください。