自然の中で作物を栽培する露地栽培と、ビニールハウスなどの管理された環境の中で栽培する施設栽培。それぞれメリット・デメリットも違えば、必要な資金、適している作物も違います。

今回のコラムでは、露地栽培と施設栽培の違いと、それぞれの特徴についてご紹介します。

目次

  1. 露地栽培と施設栽培の違いとは?
  2. 初期費用が安い!露地栽培のメリット・デメリット
  3. 1年通して栽培できる!施設栽培(ハウス栽培)のメリット・デメリット
  4. 儲かる栽培方法はどっち?露地栽培・施設栽培の選び方とは
  5. 露地栽培・施設栽培でおすすめの野菜とは?
  6. 農業のスタート・栽培のお悩みはイノチオアグリへ!

露地栽培と施設栽培の違いとは?

露地栽培の特徴

露地栽培は、よくも悪くも天気や気候の影響を大きく受ける点が特徴です。

その作物が本来生育する時期に栽培するため、旬の味を出荷することができます。
また、その土地の気候や土壌の特性に合った、その土地ならではの作物を栽培することも可能です。

施設栽培の特徴

一方で施設栽培は、天候や病害虫発生などの外部環境の影響を最小限に抑え、年間を通して安定的に作物を栽培できるのが特徴です。

施設栽培なら、国が推奨しているスマート農業を取り入れることで、灌水(水やり)や温度・湿度などの制御がすべて自動化された栽培環境を実現できます。

製品によっては遠隔操作も可能なため、家から環境制御を行うこともできます。

初期費用が安い!露地栽培のメリット・デメリット

露地栽培のメリットとは

低コストではじめることができる

露地栽培は、施設栽培とは異なり設備などへの投資が少なくて済むため、コストを大幅に削減することができます。比較的短期間でコストの回収が可能で、失敗のリスクを軽減できます。

また、コストがかからないために農地拡大へのハードルが低いという点もメリットの一つです。同じ予算であっても、施設栽培より露地栽培の方がより広い面積で栽培することができます。

圃場の規模を拡大しやすい

初期投資が少なく済むため、圃場の規模拡大がしやすいのも露地栽培の特徴です。

農地を広く使えるので、1つの作物の作付面積を増やすことができます。 大型農機や出荷調整の機械化などを導入すれば、作業の効率化やコストダウンが可能です。

また、農地全体を自由に使えるため、輪作による連作障害の抑制したり、農地を区切って複数の作物を栽培したり、圃場を有効に活用することができます。

露地栽培のデメリットとは

栽培管理が難しい

露地栽培は自然の環境の中で栽培するため、毎年の天候によっても最適な栽培手法が異なります。そのため高品質な作物を栽培するには、施設栽培で必要とされる以上の栽培経験が必要になります。

出荷時期をコントロールできない

農作物は、旬ではない時期には供給が減るため、市場単価が上がりやすいです。

施設栽培であれば、栽培時期をずらして出荷時期をコントロールすることで単価の高い時期に販売することが可能ですが、露地栽培でこれを行うことはとても難しいのが現状です。

1年通して栽培できる!
施設栽培(ハウス栽培)のメリット・デメリット

次に、施設栽培のメリット・デメリットについてご紹介します。

施設栽培のメリットとは

出荷時期をコントロールできる

施設栽培のメリットとして、まず挙げられるのは出荷時期を調整できることです。

施設内の温湿度や日射量などを調節することで、通常の栽培スケジュールより出荷を早めたり、遅らせたりすることができます。市場単価が高い時期に合わせて出荷できれば、さらなる収益が見込めます。

また、コントロールできる環境下だからこそ、他で販売されている作物と差別化することもできます。 たとえば、肥料を供給する液肥装置を導入している場合は、施肥作業を省力化できるだけでなく、特定の養分を強化した機能野菜など、付加価値をつけた作物の栽培も可能です。

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病害虫の被害を受けにくい

病害虫の多くは、ほ場の外から風や雨、害虫の飛来などによって侵入し、発生します。 施設栽培の場合は、外の環境から遮断されているため、害虫や病原菌の侵入リスクが低くなります。

ただし、害虫や病原菌の侵入を全て防ぐことは困難です。購入した苗や培土から病害虫が発生することもあります。 一度発生してしまうと、かえって施設内が病害虫の温床となり、被害が一気に全体に広がるリスクもあります。

施設内だからといって油断せず、病害虫への対策はしっかり行うことが大切です。

施設栽培のデメリットとは

初期費用がかかる

施設栽培のデメリットは、ビニールハウス建設や内部設備導入などの初期費用がかかることです。 栽培の自動化など、施設栽培のメリットを享受するには、それだけの投資が必要となります。

さらに、初期の設備投資費用のみならず、その減価償却費、設備の維持費、燃料費などが継続してかかります。

燃料費は年間を通して発生する上に、原油価格の高騰によってコストが跳ね上がるリスクもあります。 そのため、作物を安定的に出荷できていたとしても、利益は燃料価格に左右されることが少なくありません。

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災害などにより施設の損壊リスクがある

施設栽培は設備への依存が大きいため、台風や地震などの災害により施設が損壊した場合、露地栽培よりも復旧に時間や費用がかかってしまいます。 地震によりハウスが壊れ、復旧している間は収入がなくなってしまったというケースもあります。

災害発生に備え、ビニールハウスの老朽化した部分をしっかり修理しておくなど、平時からメンテナンスを怠らないことが大切です。

施設栽培は環境への負荷があるって本当?

施設栽培による環境への負荷として問題視されやすいのが、暖房やCO2の施用などに、燃油やLPG(液化石油ガス)といった化石燃料を燃焼することで発生するCO2です。

ハウス内環境の維持のため、施設栽培では暖房設備が重要です。また、CO2を人為的に発生させ、作物の光合成を促進させる方法も現在では一般的となっています。 ただし、いずれも温室効果ガスの発生原因となるため、電力をはじめ水力、風力、太陽光などが代替エネルギーとして注目されています。

農業に参入した企業の中には、施設栽培による環境への影響を、代替エネルギーによって軽減しているケースが多くあります。

たとえば、大分県別府市でミニトマトの栽培に取り組むウェルファームMINORIは、温泉地の別府市という地の利を生かし、冬場の暖房には温泉熱を利用しています。

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このように、代替エネルギーを活用した農業は、環境保護への取り組みの一つとして考えられています。

SDGsやカーボンニュートラルの視点を持った農業は、事業の持続可能性やエネルギー削減に繋がるため、今後ますます注目を集めることが予想されます。

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儲かる栽培方法はどっち?露地栽培・施設栽培の選び方とは

露地栽培と施設栽培では、栽培環境は大きく異なります。 では、農業をはじめるにあたってはどちらを選べばよいのでしょうか。

栽培方法を選ぶ際のポイントについてご紹介します。

作りたい作物で選ぶ

作物によって露地向きのものと、施設向きのものがあります。 作物の種類のほか、品種によっても異なります。

例えば、露地栽培では大根やじゃがいもなどの根菜類や、大量生産が望ましいキャベツ・白菜など、大規模な圃場を活かせる作物が選ばれやすいです。

一方、施設栽培では初期にかけた設備投資などの費用を回収するために、短期間で栽培しやすくある程度の高単価が望める作物や、収穫期間が長くより多い収量を望める作物が多く栽培されます。トマトやきゅうり、イチゴなどが挙げられます。

特に果菜類は、「実がなる高さを揃えて管理しやすい」「付加価値を付けやすい」「長期間収穫できて、狭いほ場でも収益性が高くなりやすい」などの理由から施設栽培が好まれます。

イメージとして、「少量or大量で高単価」な作物は施設栽培、「大量で低単価」な作物には露地栽培が適しています。

市場や小売店で単価の低い野菜は安く大量に求められるため、広い面積で露地栽培を行う方が望ましいです。その一方で、単価の高い野菜は見た目を含めた品質の良いものが求められるため、施設栽培に向いていると言えます。

準備できる資金・労働力で選ぶ

投入できる資金や労働力、時間で作物を決めるという方法もあります。

初期の設備投資に回せる資金が少ないという場合は、露地栽培を選べば、技術を磨きながら資金を貯めることが可能です。

十分な資金がある一方で、理想とする経営規模に対して投入できる労働力や人材が不足している場合や、体力に自信がない場合は、環境制御システムをはじめとしたスマート農業製品を導入することを前提に施設栽培を選ぶとよいでしょう。

しかし、高単価・高品質をめざし栽培に手間がかかる作物(イチゴなど)は、露地栽培の作物に比べて労働時間が長くなりやすく、労働時間当たりの収益性が低くなるというデータもあります。

安易に決めず、実際に地域で施設栽培や露地栽培を行っている先輩農家を訪ねてみることも大切です。市区町村の農政部署や、圃場見学を実施している企業等に問い合わせてみることをおすすめします。

露地栽培・施設栽培でおすすめの野菜とは?

ここからは、露地栽培・施設栽培で高収益が実現できる、おすすめの栽培作物についてご紹介します。 農林水産省が調査・発表している「品目別経営統計」の数値をもとに解説していきます。

参考リンク:農林水産省「品目別経営統計」

露地栽培でおすすめの野菜

露地栽培で最も高い農業粗利益が出るのはシシトウで、10a当たり201万円、最も少ない大根や玉ねぎが32万円であるのに比べて169万円もの利益が出る計算です。 しかし、シシトウは労働時間も全品目の中で圧倒的に長く、合計で2,155時間かかります。

そこで農業粗利益から経費を差し引いた所得を労働時間で割って時給を算出すると、キャベツが時給2,000円で最も高収益であることがわかりました。

キャベツは農業粗利益が10a当たり39万円と低いですが、経費が少ないことと労働時間が90時間に抑えられることが高収益の要因となっています。

またキャベツは栽培に求められる技術もあまり高くなく、初心者が取り組みやすい作物ですが、圃場の規模によっては定植機や収穫機などの導入も必要となります。

施設栽培でおすすめの野菜

施設野菜作で農業粗利益が最も高い作物は407万円のミニトマトです。 最も低いスイカの75万円と比較して332万円も多く利益を上げています。

ミニトマト栽培における労働時間は1488時間で、最も多いシシトウの2983時間や、イチゴの2092時間に比べるとかなり少ない労働時間となっています。時給換算をしても、ミニトマトは約1400円と最も高収益の出る作物となっています。

施設野菜は全体的に高水準にあり、収穫期間が長くて収量も安定していることが大きなメリットだといえます。

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農業のスタート・栽培のお悩みはイノチオアグリへ!

今回は、露地栽培と施設栽培の特徴について解説しました。

栽培方法の選び方のポイントもご紹介しましたが、農業をはじめたい場所や将来のビジョンなど、その他の要因によって選択に迷ってしまう場合があるかもしれません。 その際は、農業について知見のあるビニールハウスメーカーなどに相談するのもひとつの方法です。

イノチオアグリでは、毎年多くの新規就農者や農業参入企業のサポートを行っています。 事業計画の相談から栽培作物の選定など、農業をスタートする段階はもちろん、その後の農業経営・栽培の安定に向けてもお手伝いさせていただきます。

ぜひお気軽にお問い合わせください。