注目される農業コンサルタントとは?仕事内容や必要なスキルについて解説
近年、農作物は加工や販売などの工程におけるさまざまな工夫によって、市場での差別化がはかられています。農家はただ農作物を生産していれば良い、という状況が変わりつつあります。
このような変化の中で必要となる知識やスキルも多様化しており、農家自身が栽培の傍らですべて自力で行うことは困難となっています。そこで農家をサポートするのが、農業コンサルタントです。
今回のコラムでは、農業コンサルタントの仕事内容や、農家がコンサルタントを利用するメリットについて解説します。
目次
農業コンサルタントとは
コンサルティングとは、一般的に「企業経営などに関する相談を受け、診断・助言・指導を行う」ことを指します。コンサルティングを専門とする会社(firm)はコンサルティングファームと呼ばれます。
近年、さまざまな分野で「◯◯コンサルタント」と呼ばれる人たちが活躍しています。 農業コンサルタントは、農業の専門家が農家や農業法人に対して経営や生産、販売などについてアドバイスを提供します。
農家の方は農業コンサルティングを利用することで、収穫量の増加や作物の品質の向上が期待でき、農業経営の改善に繋げられる可能性があります。
なぜ農業コンサルタントが必要なのか
農業コンサルタントが必要とされる理由は、農家が経営やビジネスに関するサポートを求めているからです。
近年は農産物の生産だけにとどまらず、6次産業化や農業による地域活性化、スマート農業の導入、海外展開など、幅広い分野に挑戦している農家が数多くいらっしゃいます。 上記のような取り組みには専門的な知識が求められるため、実際に始める際には高いハードルがあります。例えば、6次産業化を始める際には「販売ルートをどう広げるか」「魅力的な商品をどう開発するのか」など、多くの疑問が生じます。
農家は農業生産の専門家ですが、経営やビジネスの専門家ではありません。 そのため、専門的なサポートを提供する農業コンサルタントが必要とされるのです。
農業コンサルタントの仕事内容とは
農業コンサルタントは、自身の専門知識や得意分野を活かして農家を支援します。
例えば、経理に強い方は経営のサポートを行い、料理が得意な方は農家レストランのメニュー開発を支援する、といったかたちです。 農業コンサルタントの仕事は大きく分けて以下の3つに分類されます。
- 経営サポート
- 6次産業化サポート
- 人材育成サポート
それぞれの詳細についてご紹介します。
経営サポート
農業経営をサポートする経営コンサルタントは、ビジネスの視点からアドバイスを行い、目標達成を支援します。 具体的には、経営プランを策定し、そのプランに基づいて農業生産を進めるために、以下の施策を提案・実施します。
- 新しい生産技術の導入
- 人材の確保
- 生産管理システムの導入
また、経営の改善や発展、事業拡大に向けた支援も行います。
地域や農家ごとに求められるサポートが異なるため、柔軟な対応が求められます。
6次産業化サポート
6次産業化とは、生産(1次産業)・加工(2次産業)・販売(3次産業)の全てに生産者が関わることで、生産物の付加価値を高め、農業収益の向上を目指す取り組みです。
具体的な取り組み例としては、以下のようなものがあります。
- 加工品の販売
- 農家レストラン
- 農家民宿
農家は農業生産の専門家ですが、加工や流通、販売に関しては初心者であることが多く、専門知識を持つ農業コンサルタントの支援が求められています。
さらに、6次産業化には多額の投資が必要となるため、ビジネスとして成り立つかを慎重に検討しなければなりません。
これらの状況を踏まえて、農業コンサルタントは事業開始までの計画立案、価格設定や生産との両立、持続可能な体制作り、販路開拓やマーケティング戦略の策定など、収益向上に向けたサポートを行います。
人材育成サポート
農業に限らず、どの業界でも人材育成は重要です。従業員一人ひとりの能力を向上させることが、会社の成長に直結するからです。
農業界でも、近年は多くの従業員を抱える農業法人が増加しています。 農業コンサルタントは、こうした組織に対して、新人教育やリーダー育成などの人材育成に関する研修や勉強会を実施します。
人材育成は、将来の農業を担う人材の確保につながり、日本の農業を支える重要な役割を果たしています。
農業コンサルタントに必要な知識・スキル
農業コンサルタントには、以下のような知識やスキルが求められます。
- コミュニケーションスキル
- 農業や地域活性化に関する知識・経験
- 税務・労務・マーケティングの専門知識
- ロボットやAIなどのスマート農業に関する知識
- 語学力・貿易に関する知識
それぞれの項目について、詳しく説明します。
コミュニケーションスキル
農業のコンサルティングにおいて要となるのは、農業経営者と一緒になって経営戦略を企画・立案・実行することです。そのため、コミュニケーションスキルは不可欠です。
コミュニケーションにおいて大切なのは、自分が話すことばかりではありません。農家と同じ目線で、相手の意見や考えをよく聞くことが最も重要です。加えて、農業経営者のニーズを適切に把握し、相手の期待に応えようとする責任感や実行力も必要となります。
農業や地域活性化に関する知識・経験
農業に関する知識や経験がなければ、農業経営者と話をすることができません。そのため、現場レベルでの知識・経験が必要です。
また、農業は地域との繋がりがとても重要であり、地域活性化の鍵となりうる産業です。そのため、地域活性化に関する知見をもち、地域の特性を活かした農業ビジネスを考案するスキルも求められます。
税務・労務・マーケティングの専門知識
農業経営には税務、労務、マーケティングの知識が求められますが、これら全てを農業経営者ひとりでこなすことは簡単ではありません。そのため、これらを助けてくれる専門知識を持った農業コンサルタントが必要とされています。
税理士や公認会計士、中小企業診断士などの資格を持っている、または金融機関での経験がある場合は、農家からの信頼の獲得に繋がり、活躍できる可能性があります。
ロボットやAIなどのスマート農業に関する知識
今後、ロボット技術やAIを活用したスマート農業の導入が拡大していくと考えられます。
すでに昨今、農作業を助ける機械が続々と登場していますが、システムや技術に精通している農家はそれほど多いわけではありません。そのため、スマート農業の専門家や、スマート農業情報のトレンドに詳しい農業コンサルタントの需要は今後さらに高まっていくでしょう。
語学力・貿易に関する知識
農家や農業法人の中には、収入の拡大を目指して海外市場への進出を検討している人もいます。
しかし、海外輸出を考える際には、語学と貿易の課題に直面することになります。「海外の業者とのやり取りが難しく、商機を逃してしまい輸出を断念した」というケースは珍しくありません。
海外の業者とのやり取りをスムーズに行い、公正な価格で販売するためにも、高度な語学力や貿易の専門知識を持つ農業コンサルタントの需要が高まっています。
農業コンサルタントに依頼するメリットとは
農家にとって、農業コンサルタントに依頼するメリットとはなんでしょうか。農家にとってメリットとなるポイントとは「農家が農業コンサルタントに期待すること」とも言えます。
ここからは、農家が農業コンサルティングを活用するメリットについて詳しく解説します。
農業経営全般のアドバイスを受けられる
農業コンサルティングを活用することで、農業経営の問題点を正確に捉えることができます。
詳細はサポート内容によって異なりますが、経営に関するアドバイスを依頼した際には、農業コンサルタントが正確に収支分析をして、採算状況を明らかにしてくれます。
また、販売戦略においても、多角的なアドバイスを得られる場合があります。たとえば、野菜の生産だけでなく加工・販売して付加価値を高めるといった提案や、販促における広告など、生産以外の分野でもサポートしてくれる農業コンサルタントもいます。
これらのアドバイスを改善に活かすことで、経営全体を強化でき、利益率の向上につなげられます。
農作業の効率化ができる
続いて、農作業の効率化も期待できます。農業は時間と手間を要する作業が多いため、生産性を高めるためには、効率化を図ることがたいへん重要です。
農作業の効率化は、農業をはじめる前から検討できます。たとえば栽培作物を決める際に、市場の動向や消費者のニーズを調査すれば、需要に合わせた農作物を栽培できます。需要予測が正確であれば、必要な野菜を無駄なく確実に届けることができます。
その土地での作物の流通状況や売値などを初心者が自力で調査することは難しい場合があるため、こういった場面でも農業コンサルタントのサポートが有効です。
また、生産工程では、気温や酸素濃度、水質などのデータをもとにしながら、農作物が育ちやすい環境を実現するためのアドバイスが受けられます。これにより、コストと時間を節約しながら農業経営を行うことができます。
新たなビジネスモデルを構築できる
さらに、農業コンサルティングの活用によって新たなビジネルモデルを構築できる可能性があります。
農業コンサルタントは農業全体のビジネスフローを把握して、広い視野で提案することができます。 農業コンサルティングを活用することで、中長期的なビジョンを描き、現在の農業経営にさらに付加価値を加えて、より高収益を得られるビジネスモデルへ変えていくことが可能です。
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さらに、圃場研修や各アドバイザー・コンサルタントが提供する営農サポートにより、事業開始後の運営管理に至るまで、お客さまの農場運営をしっかり支えます。
アドバイザーサポート
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スタッフのサポートのもと、生育調査を習慣化し、地上部・地下部の環境管理、栽培管理、作業の進捗と計画を1 週間単位でチェックします。集めたデータに基づいて次週の管理方針を判断・実行することで、植物体を最適な状態にコントロールしていきます。
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