栽培した作物で収益を得る農家にとって、急激な気候変動や悪天候による病害の発生はできるなら避けたいものです。そうした災害から作物を守る方法の1つに、農業用ビニールハウスでの栽培があります。そこで、農業用ビニールハウスの基本情報をはじめ、メリットや種類、価格などについて詳しくご紹介します。

農業ビニールハウスとは?

農業用ビニールハウスとは、文字通り農業で使用する栽培施設「ビニールハウス」のことです。鉄骨や曲げ加工したパイプで骨組みを作り、ビニールで覆われた仕様が基本となります。
ビニール以外ですと、ガラスを使用したガラス温室、硬質フィルムを展張したハウスなどがあります。硬質フィルムを使用したハウスも一般的には、ビニールハウスと呼ばれることが多いです。

農業用ビニールハウスは、理想とする農業経営像や求める需要に応じて、形状や骨材、被覆材、内部設備を決定します。作物や土地環境、栽培方式に応じて、複数のビニールハウスが存在するのが特長です。

農業用ビニールハウスの歴史

農業用ビニールハウスの歴史は意外にも古く、日本では約400年前と言われています。当時、紙を利用した促成栽培を行ったことが起源とされています。明治時代に入ると海外からガラスの温室による栽培技術が導入され、紙を用いた栽培方法と融合し、ペーパーハウスが誕生しました。

しかし、第二次世界大戦の頃は、収穫時期をずらして出荷する作物は贅沢品と捉えられて姿を消しました。

戦後の1950年代に入ると塩化ビニールの開発によってビニールハウスが登場しました。気候や災害などの影響を受けにくいビニールハウスは、栽培条件を向上させることもでき、安定した生産ができると評判になりました。また、農作物の出荷時期をずらして販売することができるため、収益性の面からも急速に広がりました。

かつて、ハウス栽培は露地栽培に比べて、作物の味や色が劣ると言われていましたが、今では技術の発展によって作物の色合いもきれいになり、また旬に合わせて作ることで栄養価もほとんど変わらないとも言われています。

農業用ビニールハウスの種類

農業用ビニールハウスは、基本的に使用する被覆資材と骨材によって分類されます。

被覆材による分類

農業用のハウスは、農業用ハウスは、覆われてい被覆資材によって「ビニールハウス(プラスチックハウス)」と「ガラスハウス」に分類されます。

ビニールハウス(プラスチックハウス)

農業用ビニールハウス(プラスチックハウス)の被覆資材としては、「農ビ(農業用塩化ビニルフィルム)」という安価で透明度が高いビニールをはじめ、「硬質フィルム」という耐候性の高いフィルムなど、価格や耐久性などに応じてさまざまな種類があります。

とくに、価格は高いですが「硬質フィルム」は、ガラスに近い透過率があると言われています。また、耐用年数も通常の被覆フィルムよりも長く、選ばれる方が増えてきています。

ガラスハウス

ガラスハウスは、その名の通り被覆資材にガラスをしようした農業用ハウスのことです。

以前は目にすることも多くありましたが、近年は台風や強風被害での破損、破損による作物への飛散などの影響もあり数は減ってきています。
また、ガラスは割れると鋭利な刃物のように切れるため安全面からも選択肢から減っている様に感じています。

関連記事:ビニールハウスの台風・強風対策とは?押さえておくべきポイントを解説

骨材による種類

遠くから見ただけではわかりにくいですが、農業用ビニールハウスの骨材には、鉄骨を使用したハウスとパイプ使用したハウスがあります。

鉄骨ハウス

基礎や骨組みに鉄製の柱を使うタイプの農業用ビニールハウスは「鉄骨ハウス」と呼ばれています。ハウス形状は、栽培する作物や規模感によって最適な仕様が異なります。一般的には、丸型・屋根型・高軒型の3タイプがあります。

パイプハウスと比べて頑丈な作りをしているため、台風や大雪にも強い構造となっています。自然災害による被害リスクや経年劣化による耐久性に優れている一方で、鉄骨を使用しているためパイプハウスよりも建設費が高価になる傾向にあります。

パイプハウス

鉄骨ハウスとは異なり、鋼管と呼ばれるパイプを支柱に使用した農業用ビニールハウスは「パイプハウス」と呼ばれています。ハウス形状は、最も多く見かける丸型となります。

シンプルな構造のため建設費は鉄骨ハウスより安価ですが、耐久性は弱く台風や大雪などで破損や倒壊するリスクが高くなります。

単棟ハウスと連棟ハウスの違い

農業用ビニールハウスは、簡易な数十万円のものから鉄骨やパイプを使用した数百万円~数千万円のものまで、価格はピンキリです。
間口や奥行き、導入設備、工事費などによって大きく変動するため、費用の目安は一概には表せません。
特に、台風や降雪量が多い地域では、基本の仕様よりも強度が必要になるため、必然的に価格が高くなります。

購入の際は、ネットだけの情報を鵜呑みにせず、ハウスメーカーに相談してご自身にあった農業用ビニールハウスの価格を把握しましょう。

関連記事:ビニールハウスの値段・価格の相場とは?業者の選び方を徹底解説

農業用ビニールハウスの価格相場



ビニールハウスの価格は、種類や骨材、栽培する作物や規模感によって変動しますが、今回は目安として10a規模を基準にご紹介します。価格に関しては、各ハウスメーカーごと仕様によって異なるので、気になる方はお問い合わせをしてみましょう。

パイプハウス

一般的にパイプハウスとは、アーチパイプを天井で接合して組み立てた丸屋根型のビニールハウスのことです。被覆資材には、主に農ビや農POが使用され、簡易なつくりで最も低コストのタイプです。

標準的な単棟のパイプハウスの場合、建設費用は10a規模で約500万円~が目安となります。鉄骨タイプのビニールハウスと比較して、低コストではありますが、台風や強風などの自然災害への耐久性が低いとされています。

丸型ビニールハウス

丸型ビニールハウスは、既成の基礎コンクリートと主骨材に角パイプを使用した丸屋根型が特徴です。パイプハウスと比較して耐久性に優れているため長期間の使用が可能です。
また、屋根型ハウスよりもコストを抑えられる、強度と経済性を兼ね備えたタイプです。

建設費用は10a規模で約1,000万円~が目安となりますが、連棟数が多い場合、内部設備によっては費用が上がってきます。

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屋根型ビニールハウス

屋根型ビニールハウスは、鉄筋コンクリート基礎とH型鋼と呼ばれる軽量鉄骨を主骨材とした三角屋根が特徴です。台風や雪害などにも強く、日本の気象に適した仕様を兼ね備えています。

また、間口・柱高を自由に選択でき、土地形状に左右されにくいので栽培面積を最大限確保できます。

単価は高めで、10a規模で約2,000万円~が目安となります。

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オランダ式高軒型ビニールハウス

オランダ式高軒型ビニールハウスは、農業大国オランダに代表される高い軒高が特徴です。採光性と換気性能に優れ、高品質・高収量を狙える栽培環境を実現しています。

企業参入に代表される、1ha以上の大規模ビニールハウスを建設される際に多く選ばれています。単価は他のビニールハウスと比較しても高価で、10a規模で約3,500万円~が目安となります。

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農業用ビニールハウスで栽培をするメリット

天候の影響を少なくできる

骨材とはハウスの支柱部分のことを指します。一般的に鉄骨ハウスでは「H鋼」や「角パイプ」、パイプハウスでは「丸パイプ」が用いられています。耐風性や耐雪性を向上させるには太く丈夫な骨材を選択する必要があります。骨材は錆びると耐久性が下がりますので、亜鉛メッキなどの加工も重要です。

病害虫の被害を抑えられる

外部環境と遮断されている構造のため、病害虫の侵入を防ぐ機能も持ち合わせているので、栽培上のリスクを軽減できます。

侵入を防ぐ下げるために農業用ビニールハウスの出入り口を2重構造にしたり、防虫ネットで隙間を埋めたりと、内部環境と外部環境を遮断する工夫が施されています。

出荷時期を調整できる

農業用ビニールハウスの内部環境を調整できれば、農作物の生産時期を調整することができます。市場の状況を見ながら価格の高い時期での出荷が可能となれば収益の向上と持続的な経営を実現できます。

出荷時期を遅らせる栽培方法を抑制栽培、早める方法を促成栽培といいます。市場全体の供給量が少ない時期に出荷すれば、高値で売れることが期待できます。また、栽培環境も土耕栽培に比べて優れているので面積当たりの収量増加も期待でき、個人出荷のお客さまであれば、独自のブランド価値の獲得も狙えます。

スマート農業で効率的に栽培ができる

農業用ビニールハウスの遮断機能を高めると、内部の環境管理が容易になります。冬場の加温制御、天窓・谷部換気による温度制御ハウス内の換気、肥料・日照量・二酸化炭素濃度の制御が可能です。

農業用ビニールハウスを活用した栽培であれば、経営規模や栽培作物によってさまざまな制御設備を導入できます。さらに、コンピュータとセンサによる環境制御を活用することで、外部環境と内部の温度・湿度・二酸化炭素量などを測定して自動で換気や養液給液などを行うことができます。

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イノチオの農業用ビニールハウスの紹介

最後に、タイプ別にイノチオアグリが取り扱う農業用ビニールハウスを紹介します。

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イチゴ栽培におすすめ!丸型ハウスD-1

丸型ハウスD-1は、耐久性と経済性を追求したロングセラーのビニールハウス。80種類以上の作物で導入された建設実績があり、近年ではイチゴ高設ベンチとセットで数多くのお客さまに選ばれています。シンプルな設計構造で建設期間の短縮を実現。それによって、ビニールハウスの価格を抑えることにも成功しました。

また、屋根、樋部に上りやすい構造によって、屋根面の被覆材補修やフィルム交換、遮光剤散布などをお客さまにて行うこともできるので、事業開始後のビニールハウスのランニングコストを抑えることも可能です。

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土地環境に合わせた設計!屋根型ハウス

屋根型ハウスは、鉄筋コンクリート基礎とH型鋼の主骨材を組み付けし、広い空間を必要とする栽培形態に対応できるビニールハウスです。丸型のビニールハウスよりもさらに強度と耐久性を兼ね備えております。80種類以上の作物、8,000棟以上のビニールハウス導入実績があり、高い耐久性を兼ね備えているため、台風や積雪の多い地域でも安心して栽培できるという声をお客さまからいただいております。

ビニールハウスの間口・柱高を自由に選択できるため、農地形状に左右されず、最大限の栽培面積確保が可能です。農地測量調査を行い、農地を最大限活用した、ビニールハウス価格や建設プラン、事業プランまでトータルでご提案いたします。

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大型施設栽培に最適!サンタルーフ

サンタルーフは、トラス構造を用いた設計で、ビニールハウスの柱高を最大6.0mまでとした広い栽培空間を実現できるオランダ式高軒高のビニールハウスです。作物を上部に伸ばすことで高収量を目指せるハイワイヤー栽培にも対応。トラス構造の採用や部材の強化によって高強度を実現。さらに、屋根部材の小型化によってビニールハウス全体に太陽光が行き届く高い採光性を確保し、作物の成長を促進させます。

広い栽培空間による高い換気効率が温度や湿度のムラを減らし、栽培を安定できることも特徴です。企業の農業参入や大型施設を中心にビニールハウスの価格や建設プラン、栽培開始後の事業プランまでトータルでご提案いたします。

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高性能を低コストで!ドリームフィールド

ドリームフィールドは、幅広い栽培に選ばれてきた丸型ハウスD-1と屋根型ハウスのメリットを併せ持つ高性能ビニールハウスです。ビニールハウスの間口・柱高・奥行きを標準化、一定基準の強度を保ちながら、部材数の削減を行うことでビニールハウスのコストダウンを実現。さらに、オランダ式高軒高のビニールハウスと同等水準の採光性を兼ね備えています。

特徴でもある開口部104cmの天窓は、真夏の高温を軽減させ、作物にも人にも快適な「涼しく」「明るい」優れた栽培環境で多収を実現します。新規就農者、企業の農業参入、ハウス増設をご検討中の方々にビニールハウスの価格や建設プラン、栽培開始後の事業プランまでトータルでご提案いたします。

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農業用ビニールハウスを建てるなら総合的にサポートできるイノチオアグリがおすすめ!

農業用ビニールハウスにたずさわり50年以上の歴史を持つイノチオアグリは、数多くお客さまの農業用ビニールハウスの建設をさせていただきました。

イノチオアグリでは、農業ビニールハウスやスマート農業製品だけでなく、新規就農や農業参入の支援、収支シミュレーションに基づく作物や栽培方法のご提案や各種資材の提供まで、お客さま一人ひとりの状況に合わせて総合的にサポートさせていただきます。

農業用ビニールハウスをはじめ農業に関するお悩みは、ぜひイノチオアグリへご相談ください。