これからビニールハウスを使用した農業、いわゆる施設園芸を始めようとしている方のなかには、パイプなどの材料を自ら手配してビニールハウスを自作で作れないか?と考えている方もいるのではないでしょうか。自作で建てることができれば中間マージンや建設費を抑えることに期待できます。
しかし、趣味や家庭菜園の農業と仕事・商売としての農業では、ビニールハウスに求める条件も変わってきます。今回のコラムでは、ビニールハウスを自作で作る際の方法をはじめ、メーカーとしてイノチオが鉄骨ハウスをおすすめする理由まで解説します。

自作でビニールハウスを作る方法:準備編

ビニールハウスを自作するためには、まず準備が重要です。最初に、ビニールハウスを建てる場所を決めることから始めましょう。日当たりや風通し、排水の良さを考慮し、適切な立地を選ぶことが成功の鍵です。次に、栽培する作物に応じたビニールハウスの仕様や大きさを決定し、必要な骨材となるパイプの規格を選びます。最後に、ビニールハウスに張る被覆材を選ぶことで、耐久性や保温性を確保することができます。これらの準備をしっかり行うことで、自作ビニールハウスの基盤が整います。

では、それぞれのポイントについて解説していきます。

ビニールハウスを建てる場所を決める

ビニールハウスを自作する際、建設場所の選定は重要なポイントです。日当たりが良く、風通しの良い場所を選ぶことで、作物の成長を促進します。また、周囲の環境にも配慮し、隣接する建物や樹木が影を落とさない位置を選ぶことが大切です。

さらに、水はけの良い土地を選ぶことで、雨水による影響を軽減し、安定した栽培環境を確保できます。

栽培に必要なビニールハウスの仕様と大きさを決める

ビニールハウスの仕様や大きさは、栽培する作物の種類や数量によって大きく変わります。例えば、トマトやキュウリなどの高温を好む作物を育てる場合、ビニールハウスの空間に十分な高さと広さが必要です。また、作物の成長に合わせて、通気性や日照条件も考慮することが重要です。これらの要素をしっかりと検討し、自分の栽培計画に最適なビニールハウスの仕様を決めましょう。

骨材となるパイプの規格を決める

ビニールハウスの骨組みを支えるパイプは、耐久性や強度が求められます。一般的には、スチールパイプやアルミパイプが使用されますが、選ぶ際には直径や厚さ、長さを考慮する必要があります。安易に安価な物を選ぶと後で後悔をするかもしれません。

特に、風や雪の影響を受けやすい地域では、より頑丈な規格のパイプを選びましょう。また、パイプの接続部分や固定具も適切に選定することも、長期的にビニールハウスを使用する上で重要です。

関連記事:ビニールハウスで最適なサイズとは?間口の規格など決めるポイントについて解説

ビニールハウスに張る被覆材を選ぶ

ビニールハウスの被覆材は、作物の成長に大きな影響を与える重要な要素です。被覆材は主に2種類あり、「農ビ」と呼ばれる農業用塩化ビニルフィルムと「農PO」と呼ばれる農業用ポリオレフィン系特殊フィルムです。

農業初心者の方には、作業性・取り扱いが簡単といわれているのは農ビがおすすめです。扱いやすい反面、価格も比較的安く、耐久性が低く1~2年で張替えが必要といわれています。一方で、農POは3~5年の使用が可能といわれています。耐久性だけでなく、使用する被覆の種類によって保温効果にも差があるので、ご自身にあった被覆材を選ぶようにしましょう。

関連記事:ビニールハウスのフィルムの張り替え方法とは?手順や費用について解説

自作でビニールハウスを作る方法:材料編

自作のビニールハウスを作る際には、まず必要な材料をしっかりと揃えることが重要です。ビニールハウス本体の材料としては、主にパイプやフレーム、ビニールシートが必要です。パイプは耐久性があり、軽量なものを選ぶと良いでしょう。また、ビニールシートはUVカット機能や耐候性があるものを選ぶことで、長期間の使用が可能になります。これらの材料を適切に選ぶことで、自作ビニールハウスの品質を高めることができます。

ビニールハウス本体の材料

ビニールハウス本体の材料として、一般的には組み立てやすさから上記で説明しているようなパイプを使用します。また、接続部には専用のジョイントを使用することで、しっかりとした構造を確保できます。さらに、ビニールハウスの骨組みを支えるための基礎部分には、コンクリートブロックや杭を利用することも考慮しましょう。

作る際に役立つ道具

自作のビニールハウスを建てる際には、適切な道具を揃えることが重要です。まず、基本的な工具としては、スコップやハンマー、ドリルが必要です。これらは土を掘ったり、パイプを固定したりする際に役立ちます。また、水平器やメジャーも必須で、正確な設計を行うために欠かせません。さらに、ビニールを張る際には、専用のクリップやロープがあると便利です。これらの道具を準備することで、スムーズに作業を進めることができるでしょう。

自作でビニールハウスを作る方法:組み立て編

自作のビニールハウスの組み立てには、側面・妻面・被覆材の展張とさまざまな工程がありますので、ポイントに別けて解説していきます。
テキストの説明だけでは、わかりにくい点もあるかと思いますので、実際に組み立てる際にはYoutubeなどで説明している動画を参考にしてみると良いでしょう。

側面の組み立て

ビニールハウスの側面を組み立てる際は、まず骨組みとなるパイプを正確に配置することが重要です。パイプを地面にしっかりと固定し、水平を保つことで、後の作業がスムーズになります。

次に、側面のフレームを組み立て、ビニールを張るための支えを作ります。この際、パイプ同士の接続部分にはしっかりとした固定具を使用し、強度を確保しましょう。最後に、ビニールを張る準備が整ったら、風や雨に耐えられるように、しっかりと固定することを忘れずに行いましょう。

妻面の組み立て

ビニールハウスの妻面は、構造の安定性を確保するために非常に重要な部分です。まず、妻面のフレームを組み立てる際には、正確な寸法を測り、パイプを適切にカットします。

次に、妻面の骨組みを組み立てるために、パイプ同士をしっかりと接続し、強度を持たせるために補強材を使用します。組み立てが完了したら、妻面の上部にビニールを張る準備をします。この際、ビニールが風で飛ばされないように、しっかりと固定することが大切です。妻面の組み立てが完了すれば、ビニールハウス全体の形が見えてきます。

被覆材の展張方法

ビニールハウスの被覆材を展張する際は、まずハウスの骨組みがしっかりと組み立てられていることを確認しましょう。次に、被覆材を均等に広げ、風で飛ばされないようにしっかりと固定します。特に、端部はしっかりと留めることが重要です。被覆材を引っ張りながら、全体にシワができないように注意しつつ、均一に張ることが求められます。

最後に、被覆材の端を土に埋めるか、重しを置いて固定することで、風や雨からの影響を軽減できます。この工程を丁寧に行うことで、ビニールハウスの耐久性が向上し、作物を守ることができます。

自作のビニールハウスのメリット

自作のビニールハウスには、いくつかのメリットがあります。まず、費用を抑えられる点が挙げられます。中間マージンを省くことで、材料費を安く抑えることが可能です。また、自分のペースで農業を始められるため、初心者でも安心して取り組むことができます。さらに、ビニールハウスを自作することで、季節や天候の影響を受けにくくなり、安定した栽培環境を整えることができます。

ビニールハウスの費用を安く抑えられる

自作のビニールハウスを建てる最大の魅力の一つは、費用を大幅に抑えられる点です。市販のビニールハウスを購入する場合、材料費だけでなく、施工費や中間マージンが加算されるため、全体のコストが高くなりがちです。しかし、自作であれば、必要な材料を自分で選び、手配することができるため、無駄なコストを削減できます。

さらに、パイプや被覆材などの材料を安価で入手できる場合も多く、特に地元の資材店やオンラインショップを利用することで、コストを抑えることが可能です。

自分のペースで農業を始められる

自作のビニールハウスを利用する最大のメリットの一つは、自分のペースで農業を始められる点です。会社員など、他の仕事と両立しながら農業を始めたい場合、自分の都合に合わせて作業時間を調整できます。

しかし、作物には適切な栽培時期があるので、そこから予定を逆算して取り組む必要があります。また、自作でビニールハウスを建てる場合には、予期せぬトラブルも想定されるため余裕を持ったスケジュールを立てると安心できるでしょう。

季節や天候の影響を受けにくくなる

自作のビニールハウスを利用することで、季節や天候の影響を受けにくくなるという大きなメリットがあります。特に、温度管理や湿度調整が重要な作物を栽培する際には、外部の気象条件から保護されることが非常に重要です。ビニールハウスは、外気温が低い冬場でも内部を温かく保つことができ、逆に夏場の強い日差しから作物を守る役割も果たします。

また、雨や風から作物を守ることで、病害虫の発生を抑えることができ、収穫量や品質の向上にもつながります。特に、突然の大雨や強風による被害を避けることができるため、安定した栽培環境を維持することが可能です。このように、自作のビニールハウスは、農業を行う上でのリスクを軽減し、より安心して作物を育てるための強力なツールとなります。

自作のビニールハウスのデメリット

自作のビニールハウスには、いくつかのデメリットがあります。まず、台風や大雨などの自然災害に対する耐候性が弱く、強風や豪雨によって損傷を受けるリスクが高まります。また、スマート農業製品などの機能拡張がしにくく、最新の技術を取り入れることが難しい点も挙げられます。さらに、理想とする収量や品質を担保することが難しく、特に商業目的での農業には不向きな場合があります。

台風や大雨などの自然災害への耐候性が弱い

自作のビニールハウスは、手軽に設置できる反面、耐候性においては大きな弱点を抱えています。特に台風や大雨といった自然災害に対しては、商業用のビニールハウスと比べて耐久性が劣るため、注意が必要です。自作の場合、使用する材料や構造が簡易的であることが多く、強風や豪雨の影響を受けやすいのです。

例えば、パイプの強度や接合部の設計が不十分だと、強風で倒壊するリスクが高まります。また、雨水が溜まりやすい設計の場合、ビニールが破れる原因にもなります。これらの要因は、作物の生育に直接的な影響を及ぼすため、特に注意が必要です。自作を検討する際は、耐候性を考慮した設計や材料選びが不可欠です。

スマート農業製品などの機能拡張がしにくい

自作のビニールハウスは、基本的な構造を自分の手で作り上げることができるため、コストを抑えることができる一方で、スマート農業製品などの機能拡張が難しいというデメリットがあります。近年、農業の現場ではIoT技術や自動化技術が進化し、温度管理や湿度管理、さらには病害虫の監視などを行うためのスマート農業製品が多く登場しています。これらの製品は、効率的な農業経営を実現するために非常に有用ですが、自作のビニールハウスではその導入が難しい場合があります。

例えば、温度センサーや自動換気装置を取り付けるための構造が十分でないことが多く、設置スペースや配線の取り回しが制限されることがあります。一方で、各メーカーの商業用ビニールハウスは、これらのスマート農業製品との互換性を考慮して設計されているため、機能拡張が容易です。自作の場合、こうした設計の自由度が低く、結果として最新技術の活用や機能を十分に活かすことが難しくなる傾向にあります。

このように、自作のビニールハウスは初期投資を抑えられる一方で、将来的な技術導入や機能拡張の面で制約が生じる可能性があるため、長期的な視点での計画が重要となってきます。

理想とする収量・品質を担保できない

自作のビニールハウスは、コストを抑えられる一方で、収量や品質に関しては不安が残ることがあります。特に、農業を本業とする場合、安定した収穫を得るためには、環境管理が非常に重要です。自作のビニールハウスでは、設計や施工の精度がプロのものと比べて劣ることが多く、これが結果として作物の成長に影響を及ぼす可能性があります。

例えば、温度管理や湿度管理が不十分だと、作物がストレスを受け、病気や害虫の発生を招く恐れがあります。また、ビニールハウスの構造が脆弱であれば、風や雪の影響を受けやすく、これが作物の生育に悪影響を及ぼすことも考えられます。さらに、収穫時期や品質のばらつきが生じることで、市場での競争力が低下するリスクもあります。

このように、自作のビニールハウスは初期投資を抑えることができるものの、長期的な視点で見ると、理想とする収量や品質を確保することが難しい場合があるため、慎重な判断が求められます。

関連記事:ビニールハウスのメリット・デメリット

本当に自作で大丈夫!? イノチオが鉄骨ハウスをおすすめする理由

ビニールハウスを自作することには、確かにコスト削減や自分のペースでの農業が可能になるというメリットがあります。しかし、実際に農業を営む上でのリスクや課題も無視できません。特に、自然災害や気候変動の影響を受けやすいビニールハウスは、耐久性や安全性において不安が残ります。

イノチオが鉄骨ハウスをおすすめする理由は、まずその耐候性にあります。鉄骨ハウスは、強風や大雨、さらには形状や建設方法によってはある程度の雪の重みにも耐える設計がされています。これにより、作物の生育に必要な条件をしっかりと維持できるため、収量や品質の確保に期待できます。

また、鉄骨ハウスはスマート農業製品との連携もしやすく、温度管理や湿度管理などの自動化が進めやすいのも大きなメリットです。自作のビニールハウスでは実現が難しいこれらの機能は、特にビジネスも目的とした農業を考える際には重要なポイントです。

このように、鉄骨ハウスは自作ビニールハウスに比べて多くのメリットを持っており、長期的な視点で見れば、より安定した農業経営を実現するための選択肢として非常に魅力的です。

関連記事:大解剖!初心者でもわかるビニールハウスの全体像!

ビニールハウスのご相談はイノチオアグリへ!

ビニールハウスの自作を検討している方にとって、さまざまな選択肢や方法があることは魅力的ですが、実際には多くの課題も伴います。特に、農業を本業とする場合、効率や耐久性、さらには収量や品質の確保が重要です。そこで、イノチオアグリでは、ビニールハウスの設計から施工まで、専門的な知識と経験を持ったスタッフがサポートを行っています。

自作のビニールハウスでは、手間や時間がかかるだけでなく、自然災害や気候変動に対する耐性も心配です。イノチオアグリでは、鉄骨ハウスの提案を通じて、これらのリスクを軽減し、安定した農業経営を実現するお手伝いをしています。自作に不安を感じている方や、より効率的な農業を目指す方は、ぜひ一度ご相談ください。