会社を辞めて農家になる「脱サラ農業」に、近年注目が集まっています。

会社員時代とは異なる農業の仕事で成功する人もいれば、理想と現実のギャップを目の当たりにして、農業を始めたことを後悔してしまう人もいます。

今回のコラムでは、大きな決断を後悔しないためにも、農業をはじめる前に知っていただきたいポイントについてご紹介します。

40代で脱サラして新規就農する
メリット・デメリットとは?

農林水産省の調査によると、2022年に新規就農した人の総数は45,840人でした。このうち、40代で新規に参入した人は1,150人にのぼります。また、40代の新規参入者数は、年々増加傾向にあります。

40代で就農する人には、会社勤めをやめる「脱サラ」を経て新たに農業にチャレンジするといったケースが多く見られます。

脱サラして新規就農するメリット・デメリットとして、よく聞かれる声をご紹介します。

脱サラ農業のメリットとは

  • 人とのコミュニケーションストレスが減った
  • 子供が自然の中でのびのびと成長できる
  • 都会での生活ストレスから解放される
  • 他者から命令されるのではなく、自らの考えで動ける
  • 規則正しく健康的な生活が無理なく継続できる

自然を相手にする仕事のため、特に前職の人間関係や企業体制をストレスに感じていた人は、開放感を感じていることがわかります。

40代はこれまでの社会人生活による知識や経験、コミュニケーション能力を活かし、「脱サラ農業」の成功事例を多く残しています。また、新規就農や移住をする資金を用意するための時間が十分確保できるところもポイントのひとつです。

脱サラ農業のデメリットとは

一方で、脱サラ農業を後悔している声も上がっています。

  • 地主や周囲の農家との価値観・意見が違う
  • 補助金や助成制度のリサーチ不足で、思ったような利益が見込めない
  • 天候不良によって収穫が減り、生活が苦しい

都会で会社勤めをしていた方が、「田舎でのんびり農家」へ過度な期待をしてしまい、現実とのギャップにショックを受けるケースは少なくありません。

また、自然を相手にするため収入が安定するまで時間がかかるという点が、会社員時代の給料体系とは大きく異なっており、脱サラ農業をする上でのリスクのひとつと言えます。

就農したあとで後悔することを防ぐためにも、次にご紹介する7つのポイントを参考に、しっかりと事前準備をすることをおすすめします。

新規就農の後悔・失敗リスクを避ける!
7つのポイントを解説

01.最重要!脱サラの前に「農業の実態」を知る

「農業=田舎でスローライフ」「時間に縛られない暮らし」と農業に憧れを抱く人は少なくありませんが、このイメージを持ったまま就農し「こんなに大変だったなんて知らなかった」と離農(農業をやめること)してしまうケースも多々あります。

就農する前に、可能な限り「農業の本当の姿」を知っておくと良いでしょう。

農業体験やボランティアで農作業を体感!

農業に興味を持ったら、まずは農業体験に参加することをおすすめします。

農林水産省が支援している農業インターンシップ、農業大学校や農業専門学校で学べる短期研修プログラムをはじめ、自治体やJA、民間企業もさまざまな農業体験の機会を設けています。

開催する団体によっては、収穫などの生産作業の体験だけでなく、加工や販売などの工程が体験できたり、実際の農家を訪問するプログラムを展開していたりと、農業を多方面から体験することができます。

また、農業は季節によって業務量が異なる仕事です。 より農業のリアルを知るためには、違う季節で複数回参加することもおすすめです。

就農支援情報やイベント参加で最新情報をチェック!

農林水産省をはじめ、各自治体が就農希望者を対象にさまざまな支援情報を公開しています。農業をはじめたい場所や作物など、具体的なことが決まっていない段階でも、少しでも広くアンテナを張って情報収集することがおすすめです。

迷った際の比較材料が増えるなど、その後の活動に役立てることができます。

就農希望者を対象としたイベントを開催している自治体もあり、プログラムによっては、先輩就農者の生の声を聞くことができる場合もあります。まずは、各自治体や支援団体のホームページなどから情報を集めましょう。

02.「やりたい農業」をイメージする

農業体験や情報収集をすすめながら、「やりたい農業」をイメージしましょう。
これが具体的であればあるほど、その後の就農に向けた活動がすすめやすくなります。

どんな作物をどこで栽培するのか、どのように販売して収益を得るのかといった細かい部分はもちろん重要ですが、大前提として「自分はどのような農業がしたいのか」という点をよく考える必要があります。

その方向性によって、それぞれに相応しい就農方法があります。
次では、農業をはじめる4つの方法について解説します。

03.農業をはじめる方法を選ぶ

副業としてはじめる

副業としての就農は、本業で最低限の収入を確保した上で農業にチャレンジできるため、比較的リスクの少ない方法です。このような農業を行う人を「兼業農家」といいます。

副業としてはじめる場合は、家庭菜園や畑のレンタル・シェアなどの利用で作物を栽培することができます。

また最近では、兼業農家だけでなく、自身が食べるものだけを栽培して生活支出を減らす「半農半X」を始める方も増えています。 農業と別の仕事・趣味である“X”と両立して、充実した人生を送ることが目的です。

未経験から新規就農する

個人事業主として独立して新規就農すれば、「どの作物を作るか」「どのような働き方をするか」など、すべて自分で決めることができます。

現在の情勢や今後のトレンドなどを読み解き、独自性のある農業を行うことで高収益を得られる可能性もありますが、やり方次第では赤字に陥る場合もある、ハイリスク・ハイリターンな就農方法と言えます。

国や自治体は、農家が減っている現状を鑑み、さまざまな経済的支援策を講じています。
新規就農する際は、こうした支援策を活用することが大変重要です。

未経験から新規就農する方法や重要なポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:新規就農に向けて必要な準備とは?

農業法人に就職する

大規模農場などを運営する農業法人に就職する場合は、サラリーマンと同じように、給料を受け取って働きます。脱サラというより、他業界へ転職する方法です。

ほかの就農方法とは異なり、すべてを自分の思う通りにはできないというデメリットはありますが、安定した収入を得ながら、農業の知識や技術を習得できる点が大きなメリットです。まず農業法人に就職し、知識や技術を習得してから独立するという人も数多くいらっしゃいます。

農業法人への就職で、資格や学歴が問われることはそれほど多くありません。
その中で企業を選ぶ際には、自分がどうして農業をやりたいのか、どのような能力・技術を得たいのか、どのように働きたいのか、といった視点で理想の働き方を洗い出し、条件に合う農業法人を探すことが重要です。

農業後継者になる

少子化が進むなかで、農家の後継者不足の問題も深刻化しています。その一方で、就農希望者は増えています。しかし、新規就農する際の資金不足などから、農家になることを諦めてしまう人は少なくありません。

この両方を解決し得るのが、「農業後継者」という選択肢です。引退する農家が、血縁でない人へ、農地や設備・器具、経営権など、農業に関する一切の権利を譲るという方法です。

農家にとっては後継者が確保でき、就農希望者にとっては初期費用が大幅にカットされるというメリットがあります。

ただし、注意するべきは権利関係などのトラブルが発生しうるという点です。
これを避けるために、弁護士などの第三者を介入させながら、確実に手続きを行う必要があります。

04.栽培技術を習得する

農業をはじめるにあたり、栽培技術の習得は欠かせません。

技術の習得には、農業大学校に通う、農業研修を受講するといった方法があります。

農業大学校で学ぶ

農業を学ぶ手段として代表的なのは、農業大学校や就農準備校といった学校に通うことです。きちんと座学として知識を得たいという人に適しています。

農業大学校は、新規就農者や経営発展を図る農業従事者を対象にした研修教育機関で、全国の42道府県に設置されています。1~2年で農業の技術や経営を学ぶことができ、その多くが専門学校(専修学校専門課程)として認定を受けています。

教科は稲や野菜、果樹、酪農、肉牛、養豚、養鶏などがあり、各分野で専門的な知識、技術を学びます。短期間で農業生産の技術や経営など、農家になる上で必要なことを総合的に学べる点が農業大学校の最大の特徴です。

農業研修で学ぶ

栽培したい作物が決まっているなど、具体的なイメージができている方に適しているのが、地方自治体が行う農業研修への参加です。

地方自治体が行う農業研修は、農業の入門講座から農作物の専門講座までさまざまな授業があるのがポイントです。さらに、地域によって栽培する作物が異なったり、農業に対する知識の度合いに応じた複数のコースがあったりと、研修内容は多岐にわたります。

期間はおおよそ1週間から半年で、月に数回や土日に開催している場合もあり、平日は忙しい社会人や学生も参加することができます。農業大学校よりもさらに短期間で、より実践的に農業を学ぶことができるのが、農業研修の特徴です。

05.農地を準備する

農地の準備は難易度が高く、就農希望者の多くがつまづくポイントです。

ただ場所が確保できればよいのではなく、作物の栽培に適している土地なのか、農業をすることで周辺の環境に悪影響がないか、資材などを運搬できる場所なのかなど、数々の条件をすべてクリアする必要があります。

そのため、下調べなしに農地探しを行うと、結果的に大幅な時間・手間のロスになってしまう可能性があります。

農地として利用できる土地にはどんな条件があるのか、事前にしっかりと把握しておくことがおすすめです。以下の記事では、農地の選び方や具体的な準備方法などを詳しく解説しています。

関連記事:ビニールハウスを建設する際に農地の見るべきポイントとは?

06.融資・補助金活用で資金を準備する

農業はほかの事業と比べ、農地や設備・器具などに多額の初期費用がかかります。

国や各自治体が展開している融資や補助金をうまく活用し、資金を準備する必要があります。

農業にかかるお金はどのくらい?

全国新規就農相談センターの経営シミュレーションでは、新規就農のための平均的な準備資金額、また土地以外の機械や施設を取得するのに必要な平均額が発表されています。

必要な資金は、栽培形態により異なります。
この調査は、水田で稲を育てる水稲栽培、ビニールハウスなどの施設で栽培する施設栽培、リンゴやモモといった果物を育てる果樹栽培の3つに分けて行われました。

栽培形態 平均準備資金額 土地を除く機械・施設準備費
水稲 6,258,000 4,327,000
施設野菜 5,285,000 7,953,000
果樹 5,093,000 3,675,000


機械や施設の準備に最もお金がかかっているのが施設野菜で、準備資金の528.5万円を260万円以上も超過しています。

施設野菜はビニールハウス建設や冷暖房などの設備が必要になるため、水稲や果樹と比べると初期費用が高くなる傾向にあります。

また水稲栽培では、田植え機やトラクター、コンバイン、果樹ではトラクターや運搬車、作目を問わずに草刈機や軽トラックなどが必要になります。

全作目で機械や施設を取得する際にかかった平均額は561.8万円です。
水稲と果樹は、全作目平均よりも比較的安い金額で機械や施設を用意することが可能です。

機械や施設は、高い性能を望めばそれだけ費用がかかりますが、就農したばかりの頃は栽培作物の現金化まで時間がかかってしまい、経営がうまく回らない可能性もあります。
このため、自己資金がない状態で就農することは大きなリスクが伴います。

国や自治体による経済的支援制度を活用しながら、就農に向けて準備をすすめることが大切です。
自分の理想の農業を実現するためにはどのくらいの費用がかかるのか、ハウスメーカーなどに依頼して一度試算してみると、資金計画や今後の見通しが立てやすくなります。

新規就農で利用できる融資や補助金とは

前述のように、農業には多額の初期投資が必要なほか、就農したばかりのころは収入が安定せず、赤字が続き離農してしまうといったケースが少なくありません。

このようなリスクを背負う新規就農者を支援するべく、国や自治体は融資や補助金といった経済的支援策を講じています。支援策の種類や、支援を受けられる条件については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:農業の資金調達は難しい?新規就農におすすめの融資・補助金を解説

これらの支援策を利用する際は、条件だけでなく必要書類の準備期間を含めた申請のスケジュール等、細部まで調べた上で進めていく必要があります。

資金調達に不明点がある際は、融資・補助金を提供している各機関や、ハウスメーカー等に相談することもおすすめです。

脱サラの前にするべき!お金の注意点

独立して新規就農する場合、会社を辞める前にクレジットカードの発行を済ませておくことをおすすめします。

新規就農者は個人事業主となります。会社員時代に比べて収入が不安定になる可能性があることから、審査に通りづらくなってしまう場合があります。

また、職種によって金利が変わる自動車ローンなども、脱サラの前に組んでおくのが良いでしょう。

07.経営の知識を深める

独立して新規就農した場合、一会社の経営者と同じ立場になります。

多くの収益を得るためには経営の知識を深めることが大切です。

ブログやSNSを活用する

近年はさまざまな媒体で農業の知識を得られるようになりました。
特に、農家の生の声を拾うことができるSNSは、情報収集に大変役立ちます。

先輩農家のブログやSNSをフォローして横のつながりを作ることで、その周りのさまざまな農家による栽培のリアルな場面を見ることができます。

さらに農家だけでなく、企業や農林水産省、農業大学校などもSNSやYouTubeチャンネルを開設しています。栽培情報や経営資金についてなど、複雑で自力では調べることが難しい内容をわかりやすく解説した動画も数多く投稿されています。

また、情報収集を行うだけではなく、情報発信を行うことも重要です。
ブログやSNSなどのフォロワーは、ビジネスを生み出す無形資産です。就農前から情報発信をして、自分のファンを作る努力をしましょう。

農家の中には、SNS経由で販売し、収益を伸ばしている人も多くいます。

経営セミナーを受けて学ぶ

農業経営に関する知識は農業大学校等でも学ぶことができるほか、農業関連企業等が開催するセミナーを受講することもおすすめです。多くのセミナーでは、自力での情報収集が難しい内容をわかりやすく解説しています。

イノチオアグリでも、農業経営のポイントを解説するセミナーを開催しています。
多くの新規就農者・新規参入企業を支援してきたからこそお伝えできる、農業経営の成功のヒントについて解説します。イノチオアグリが開催する農業経営セミナーは、以下のリンクからお申込みいただくことでご視聴いただけます。

脱サラ農業の不安・疑問はイノチオアグリへ!

ビニールハウスにたずさわり50年以上の歴史を持つイノチオアグリは、「農業総合支援企業」として数多くの方の新規就農をご支援してきました。

農業を開始するにあたり必須となる農地や資金の準備、栽培技術をサポートするだけではなく、ビニールハウスの設計と建設、収支シミュレーションに基づく作物や栽培方法のご提案などを行っています。

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