イチゴは国内で安定して消費され、売上を見込みやすい点から新規就農する上で代表的な作物の1つに挙げられます。

一方でイチゴ農家になるには栽培技術の習得、初期費用や事業計画の立て方、販路の確保など、様々な準備が必要になります。

この記事ではイチゴ農家になる上で必要な準備について解説します。

目次

  1. イチゴ農家の仕事内容や年収とは?
  2. イチゴ農家の所得や休み
  3. イチゴ農家 失敗
  4. イチゴ農家を始めるには?
  5. 新規就農した事例をご紹介!!
  6. イチゴ農家に向けた支援

イチゴ農家の仕事内容や年収とは?

内容1:代表的な栽培方法とは

イチゴの栽培方法は、ビニールハウスの中で高設ベンチと呼ばれる栽培架台を使用した高設栽培と、苗を直接土に植える土耕栽培の2つの方法があります。

それぞれメリット・デメリットがありますが、これから農業を始める方は栽培作業の負担が少なく、病気のリスクの少ない、高設栽培をおすすめしています。

詳細は別のコラムで紹介していますので、ご覧下さい。

関連記事:ビニールハウスでのイチゴ高設栽培メソッド

内容2:代表的な品種

農林水産省のホームぺージによると、国内のイチゴの品種数は約300種類あります。

品種改良や新品種の開発によって、年々増え続けています。皆さんもよく耳にする有名な品種では「あまおう」や「とちおとめ」「紅ほっぺ」「章姫(あきひめ)」「やよいひめ」などがあります。

その他にも、各地域で有名なイチゴの品種があり、味や形にもそれぞれ特徴があります。

内容3:栽培のポイント

栽培には、育苗・定植・休眠という3つのポイントがあり、繊細な技術が必要です。

育苗期は、適切な時期に花芽分化を行い、花の大きさと数を確保することが大切です。花芽分化や定植の時期によって、収穫の時期や収穫量が決まるためタイミングが重要となってきます。

また、イチゴは自然状態では秋から休眠状態に入ります。完全な休眠状態では収穫ができなくなり、低温が続いても花芽分化を止めてしまうので、半休眠状態を作るようにします。

また温度だけが高くても日照不足になり味が悪くなるので、気温と電照の管理がポイントとなります。

イチゴ農家の所得や休み

イチゴ農家は儲かるの?

お客さまからの「イチゴは儲かるのか?」と質問をいただく機会が多くあります。ここでは、その疑問について解説します。

2007年まで農林水産省から出されていた「農業経営調査 品目別経営統計」のデータによれば、1,000㎡(10a)当たりでのイチゴ栽培の粗利益は359万円、そこから経営に関わる費用を差し引いた農業所得は189万円となっています。この結果は、ミニトマトに次いで高い金額になります。

作物 農業粗収益 農業経営費 農業所得
ミニトマト 4,071,000 2,043,000 2,028,000
イチゴ 3,596,000 1,698,000 1,898,000
ナス 3,514,000 1,820,000 1,694,000
シシトウ 3,759,000 2,296,000 1,463,000
キュウリ 2,430,000 1,086,000 1,344,000


また、労働時間の点では2,092時間となっており、イチゴ栽培は育苗・栽培管理・出荷といった作業に時間がかかることから手間のかかる作物であることが伺えます。

作物 農業所得 労働時間 時給
ミニトマト 2,028,000 1,488.19 1,362.73
キュウリ 1,344,000 1,095.09 1,227.30
ナス 1,694,000 1,756.90 964.20
イチゴ 1,898,000 2,091.57 907.45
シシトウ 1,463,000 2,983.39 490.38


引用:農林水産省「品目別経営統計」

より農業所得を確保するためには、最適な設備投資や労働生産性の向上、エネルギーコスト削減、販路の工夫がポイントになります。

農業所得向上に向けて、イチゴは他の作物と比較すると出荷や直販に加えて、観光農園という方法もあり、販路の選択肢が多いことも特長の1つです。
また、クリスマスの時期や夏に合わせて早めに収穫を行えるようにすることで、より高い農業所得の確保も見込める作物となっています。

イチゴ農家に休みはあるの?

ワークライフバランスが注目されている現代では、休みも重要なポイントです。

結論から話すとイチゴ農家に休みはあります。
上記で記載した労働時間2,092時間をベースに解説します。

1日8時間労働を基準に計算をすると、イチゴ栽培を行うのが約262日。残り約100日ほどは休みになる計算となります。これは一般企業と比較しても大きな差がない結果と言えます。

しかし、自分のペースで作業ができるとはいえ、生き物を相手に経営を行う農業ではまとまった休みは取りにくいのが実情です。特に収穫シーズンは作業が立て込むため、忙しくなる傾向にあります。

収穫シーズン後半では来作の育苗期間と重なるため、なかなか休みも取りづらい日が続くかもしれません。

イチゴ農家 失敗

失敗1

農業における失敗事例の1つとして、作業の遅れが挙げられます。

例えば、雨や台風による水害、豪雪による積雪被害、猛暑による作物の枯死など天候による農業の遅れや人手不足、管理ロスによる農作業の遅れなどもあります。
特に作業計画からの遅延が生じた際は、収量減少が生じることで農業経営に大きな影響を与えます。

イチゴ農家の場合、作業の遅れによる病害虫の発生が生じる可能性もあり、結果的には収量や売上、農業所得の低下を引き起こします。作業の遅れはイチゴ農家に限らず、ビニールハウスを活用する施設園芸の生産者の共通課題であり、経営を圧迫する要因の1つです。

特に新たに農業を始める新規就農者の場合、農業経営の開始に向けて、融資や補助金を取得していることから、作業を計画通りに行うことが重要です。

失敗2

イチゴ農家が直面する問題の1つに、水質が挙げられます。農地を見つけたとしても、その土地の水質がイチゴ生産に適さない場合があり、計画通りの収量が得られないことがあります。

特にイチゴの生育には、適切なpHやEC値が必要であるため、事前の水質診断や水質の管理が非常に重要です。そのため、イチゴの新規就農時には事前に水質診断を実施し、イチゴ生産に最適な水質かどうか確認することが大切です。

イチゴ農家を始めるには?

イチゴ農家を始めるには、多くのことを考慮する必要があります。例えば、農地の選定、水質の確認、栽培方法、販路の確保、設備投資、などです。

イチゴは売り上げを見込みやすい作物として、新規就農者からも注目されています。しかし、営農計画が甘く失敗するケースも少なくありません。

イチゴ農家として成功するためには、事前に経営計画を立て、綿密な営農計画を立てるなど、多角的な視点での就農に向けた準備が必要になります。

その一方で、いつ、何を準備するのが最適的なのか分からないことも多く、潜在的なリスクも存在します。

ここからはイチゴ農家を始めるにあたり、代表的な準備について解説していきます。

準備1:栽培技術

イチゴは栽培技術が難しい作物の1つです。日本の代表的なトマトやキュウリと比較すると高い栽培技術が必要になります。そのため、イチゴ農家を始めるにあたり、しっかりと栽培技術の習得に向けた準備を行うことが必要です。

栽培技術の習得は就農時に苦労したことの中で、農地や資金に次いで苦労したと回答される方の割合が多く、イチゴ農家になるためには必須の準備と言えます。

イチゴに限らず、栽培技術の習得において、「実践的な経営技術が学べる」、「希望の作物の研修ができる」の理由から一般農家や農業生産法人を選ぶ方の割合が70%以上となっています。他にも農業大学校で技術習得するケースもあり、状況と相談しながら通う先を検討しましょう。

関連記事:新規就農・農業参入のポイント

準備2:農地

イチゴ農家になるための2つ目の準備として、農地の確保が必要です。

新規就農者のアンケートによると、農地の確保が最も苦労したと回答した方が多いことから、栽培技術の習得と同時並行で探す必要があると伺えます。

農地を探す方法としては、以下の2つが代表的です。

1.農地中間管理機構に相談する
農地中間管理機構は、農地の仲介業務を行っている機関です。農地を探している人と農地を持っている人を繋げることができます。

2.行政に相談する
地方自治体の担当部署に相談し、把握している農地の情報をもとに候補地を選択する方法があります。

農地を確保するにあたり、大きな課題として貸し主と借り主のマッチングが思うように進まないことが多くあります。

例えば、貸す側からすると、面識のない人に農地を貸し出すことに抵抗を感じる場合があることや代々受け継いできた農地を手離すことに抵抗を感じることも少なくありません。

加えて、農業を行う目的や意図、栽培作物、栽培方法、目指す生産量、ビニールハウスの規模、販売先に応じて確保すべき農地の条件が変化します。そのため、候補となる農地を見つけても水質や周囲の環境によって、農業に適さない場合もあります。

耕作放棄地が増加しているとはいえ、候補地を見つけ、希望の条件を満たした農地を確保することは容易ではありません。
そのため、早いうちから農地確保を準備することが重要です。 代表的な農地条件は下記の関連記事をご確認ください。

準備3:資金

新規就農した方が農地の次に苦労した資金確保の準備も欠かせません。

農業を新たに始める上で必要な資金は、栽培形態によって大きく変わります。イチゴ農家のような施設栽培では795.3万円となってなります。物価高騰が起こる現代では1,000万円以上の設備投資が必要となる可能性もあり、早い段階から資金確保の準備が必要です。

新規就農時に活用できる代表的な資金をご紹介します。

代表的な資金制度の1つとして、青年等就農資金があります。青年等就農資金は新たに農業を始める、新規就農者を対象に最大3,700万円の融資を行う制度です。最大3,700万円の資金確保が可能な制度であり、就農時に必要な設備をはじめ、幅広く活用できることから力強い制度になります。

その他、新規就農者の支援制度を下記関連記事で説明していますので、ご覧ください。

関連記事:【新規就農者必見!】 新規就農者の支援制度を解説

準備4:販路

イチゴは市場出荷、直売所、スーパーマーケット、EC販売、加工品、観光農園などの販路があります。販路によっては価格を自ら決定できる一方、販路開拓を行う必要がある場合もあります。

観光農園の場合は摘み取り体験に価値を感じてもらうため、付加価値がつき、高い値段になります。ただし、集客のための立地選定や広告費用が必要となり、場合によっては労働時間や人件費などが発生する可能性があります。

販路を選択する際には、販路の特性を理解し、希望の販路で事業計画書を試算の上、見極めることが大切です。

準備5:ビニールハウス

イチゴはトマトやキュウリと比較すると葉の量が少ない作物です。

空間が広いビニールハウスを建設してしまうとハウス内が乾燥し、イチゴの生育が低下することがあります。また、乾燥空間を好むダニなどの害虫が発生し、イチゴの生育に悪影響を及ぼす可能性もあります。そのため、ある程度の湿度を保つことができる丸型ハウスがおすすめです。

丸型ハウスを選択することで栽培しやすい環境を実現することが可能になります。

関連製品:丸型ハウスD-1 耐久性と経済性を 追求したロングセラー

準備6:ビニールハウス内部設備

イチゴのハウス栽培には高設栽培と土耕栽培の2つの方法がありますが、営農するにあたり、より手間の少ない高設栽培がおすすめです。

イチゴの高設栽培ベンチは腰よりも上の⾼さで⾝体に負担なく栽培作業が⾏うことができます。作業中に腰をかがめる、立つ座わるといった動作がないため、腰や膝や肩などに負担が軽減され、長時間の栽培作業も楽に行えます。

イチゴの観光農園の場合は来場者の方がイチゴを立ち姿勢のまま、見栄えのいい位置で摘み取り体験を行うことができ、快適に過ごすことができます。

関連製品:作業性&品質から栽培現場で選ばれるイチゴ高設栽培ベンチ

準備7:就農後の相談先

農業は年々変化する気温や湿度、栽培環境の中、栽培する技術が求められるため、容易ではありません。イチゴ農家になるにあたり、気軽に栽培についての相談先を準備することも重要です。

イノチオでは就農後の栽培を伴走する営農サポート事業を展開しています。

この事業では栽培管理や栽培技術のマニュアル化を圃場に最適な形で伴走し、就農初年度から収量獲得に向けて伴走いたします。

新規就農した事例をご紹介!!

イチゴ農家になりたいと思ったきっかけ

大阪府はイチゴで新しく新規就農する方を応援するためにイチゴアカデミーを主催しています。そこでイチゴ農家になった方と知り合ったことがきっかけで、私も挑戦したいと考えるようになりました。

イチゴ農家への道① 農地取得

非農家である私は、農地を借りることも、農地を買うこともできない難しい状況に直面していました。

新規就農を考える際、異業種出身者が農地を借りるためには、理解のある地主を見つけることが最も難しい課題でした。

 行政が提供する農地マッチングサービスも、農業従事者でないと農地を借りることができないという制約がありました。 私はイチゴの観光農園を開くためにビニールハウスを建設したかったため、すべての農地を借りるのではなく、一部の農地を所有したいと考えました。

そのため、自分が農業を始めたい場所に根差している地元の不動産会社に相談しました。 地元の不動産会社によると、想像以上に農地を売りたい地主がいることがわかりました。

ビニールハウスを建てやすい地質や地形を検討しながら、実際に農地を見て選定しました。 農地の売買が成立しても、登記の所有権移動まで新規就農者の認定を受け、市町村が定める一定期間の営農実績が必要でした。

幸い、土地の専門家である不動産会社が仲介してくれたおかげで、スムーズに契約を進めることができました。

イチゴ農家への道② 青年等就農計画の作成

新規就農者として認定を受けるための青年等就農計画には、初年度と5年後の所得見込みを記入する欄があります。

青年等就農計画の書面上には、1年目と5年目という項目しかありませんが、農業経営に掛かる経費と作物の売り上げなどをもとに計算をした上で、結果の数字だけを記載しなければなりません。

私が一番困ったことは、苗代、肥料代、電気代などの経費に関して全く予想できなかったことです。そのようなときに、イノチオさんに相談したら、私の栽培する面積と作物単価を踏まえた収支シミュレーションを出していただきました。

実際の農業経営をしたことがない新規就農者がわからないことも、イノチオさんに相談することで、明確にできました。

イチゴ農家への道③ 認定新規就農者の資格取得

新規就農者として認定を受けるためには、市区町村の決定と、その地域で農地を確保することが最初のステップです。

いくつかの市区町村に問い合わせた結果、研修の期間や農地の確保状況が重要視されていることがわかりました。 認定新規就農者になるためには、研修先を事前に見つけておくか、研修を終えた後に相談する必要があります。

私自身はすでにイチゴの研修を受けていたため、認定を受けることができました。

イチゴ農家への道④ 資金の確保

新規就農に取り組む際、私は土地の取得、ビニールハウスの建設、そして就農後の経営を考慮し、自己資金を用意しました。


新規就農者の場合、認定新規就農者になることで、青年等就農資金などの国からの支援を受ける資格が得られます。様々な選択肢を検討しながら計画を立てました。
融資を受ける際には、ハウスメーカーを複数社比較し、最終的にどこでビニールハウスを建てるか検討することが重要でした。

イノチオさんは新規就農に関する経験と実績を活かして、必要な資料を提供してくれ、青年等就農資金を活用することができました。

イチゴ農家への道⑤ ビニールハウス建設

農地の取得、認定新規就農者の資格取得、資金の確保などが完了したら、次はビニールハウスの建設が待っていますね。

私の場合、他のハウスメーカーさんも含めて検討した結果、イノチオさんに依頼することを決めました。その決定にはいくつかの理由があります。

まず、見学したビニールハウスが私の理想に近かったことが大きな要因でした。また、イノチオさんにはビニールハウスの建設予定地の計測や水源の水質調査などをお願いしました。 実際に現場を見ていただき、水質調査結果を踏まえて具体的な相談が進められ、不安材料が一つずつ解消されていきました。

私は農業についての知識がほとんどなかったため、イチゴに関する本を読んだり、知り合いのイチゴ農家さんに相談したりしましたが、イノチオさんへの問い合わせが一番詳細な回答を得られることがわかりました。

お問い合わせした際も、すぐにオンラインで説明してくれ、わからないことも丁寧に教えていただけたので、非常に安心感を持ちました。他のメーカーの内容も検討しましたが、イノチオさんはハウス建設だけでなく、その後の営農サポートも充実していることが選定の理由となりました。

最初はビニールハウスのここ、農薬や肥料のあそこと、細かく考える必要があると感じていましたが、営業担当の方が苗の準備から栽培に関することまで先に進めてくれ、農薬や肥料だけでなく、ビニールハウス周りの外構工事まで、イノチオさんにお願いすれば全てが整うことがわかりました。

ビニールハウスを作るだけでなく、「農業を総合的に支援できる」ことが、私にとって最も嬉しく驚いたことでした。

イチゴ農家を目指す方へ

新規就農を考えている方々にとって、農業は全く異なる世界かもしれません。周囲からは応援してくれる人もいれば、心配してくれる人もいることでしょう。

しかし、自分が新規就農を決意したなら、その覚悟を曲げずに進んでいただきたいです。強い意志と計画性が求められます。

実際にイチゴ園を開業した経験から言えることは、準備期間での研修や農地取得、資金確保などが重要だと感じています。 わからないことは遠慮せずに周りに尋ね、一歩ずつ進んでいくことが大切です。

イチゴ農家に向けた支援

イノチオアグリについて

イノチオアグリは、ビニールハウスに50年以上の経験を持ち、新規就農者の方々にトータルで支援しています。

具体的には、就農プランの立案からビニールハウスの設計・建設、収支シミュレーションの提案まで幅広くサポートしています。
お客様の要望や条件に基づいて、ビニールハウスや内部設備の設計を行い、栽培方法や作業計画を共に考え、事業収支の試算をサポートしています。

さらに、就農後のサポートも行い、農場運営をトータルで支えています。

新規就農に向けた支援とは

新規就農者の方々には、就農プランの立案から実際の就農まで、トータルで支援しています。

特に新規就農時には、農地選定や支援制度の説明から申請書作成、ビニールハウスの設計・建設までサポートしています。

ビニールハウス完成後も、作物の定植や肥培管理、病害虫対策など、営農サポートを提供し、安心して農業経営を行えるよう支えています。