認定農業者制度とは?企業の農業参入・新規就農時に活用する方法を徹底解説
認定農業者を取得することにより、新規就農や企業の農業参入に向けた多くの支援措置を受けることができるメリットがあります。その一方で、条項の理解や申請に必要な準備物の手配が複雑など、最大限活用できていない場合もあります。
本コラムでは、認定農業者制度の認定要件や活用例、受けられる支援制度について解説します。
目次
認定農業者とは?
認定農業者制度の概要
認定農業者制度とは、市区町村の農業経営目標に向けて、自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする計画を市区町村が認定した農業者に対して、支援措置を講じる制度です。複数の市区町村で農業を営む農業者が経営改善計画の認定を申請する場合は、営農区域に応じて、都道府県または国が認定します。
認定農業者制度の詳細
認定農業者を取得することで、経営改善を検討する農家を支援する制度を活用できます。
例えば、経営改善を目的とし、農地・施設・機械などの必要資金や、農業経営における運転資金などに活用できる長期低利融資、融資を活用して農業用機械等を導入する際の融資残を補助する補助金などの支援制度を活用できます。
経営改善・経営規模拡大の意欲を持つ農家や農業法人、農業参入予定者が、5年後の経営目標や目標達成のための施策を記載した「農業経営改善計画」を作成し、市区町村から認定されると認定農業者になります。
記載内容としては、下記4つです。
1:経営規模の拡大に関する目標(作付面積、作付受託面積など)
2:生産方式の合理化の目標(機械・施設の導入、新技術の導入など)
3:経営管理の合理化の目標(複式簿記での記帳など)
4:農業従事の様態等に関する改善の目標(休日制の導入など)
参考文献:農林水産省 認定農業者制度について
認定農業者になる条件を解説!
認定農業者の認定基準
もとより、認定農業者制度は「農業経営基盤強化促進法」に基づく制度です。
主に「効率的かつ安定的な農業経営」の育成を目的とし、各市区町村が定めた、他産業と同等レベルの年間農業所得・年間労働時間の基準を満たす農業経営を目指します。
そのため、認定基準に関して、国としては具体的な数値を明記していません。実際の基準は市区町村ごとに定められている基本構想に沿って、自主的かつ計画的に経営改善を行い、基準となる年間農業所得、年間労働時間を満たすことが認定のポイントになります。
〈認定基準〉
1:計画が市町村基本構想に照らして適切なものであること
2:計画が農用地の効率的かつ総合的な利用を図るために適切なものであること
3:計画の達成される見込が確実であること
認定農業者の申請方法とは?
農業経営改善計画の概要
農業経営改善計画に記載する内容は、作物や農地の所在地に加えて、売上や収量、作付面積、年間労働総時間などの事業計画で試算する数値、導入予定の設備関係になります。
必要な数値をご自身で調査し、算出することは時間と労力が必要であり、作物によっては算出が難しい場合もあります。そのため施設園芸を目指す方は、農業経営の知見を持つビニールハウスメーカーに支援して頂きましょう。
認定農業者の取得に向けた手順を解説!
そもそも、認定農業者制度は市区町村の基本構想や水準を満たす必要があります。
そのため、手順としては下記を参考にしてください。
〈新規就農&企業の農業参入のケース〉
1:就農予定の農地を見つける
2:就農予定の市区町村における基本構想や年間農業所得、年間労働時間を把握する
3:認定農業者取得に向けて、ビニールハウスメーカーに相談する
4:市区町村の基準を満たす作物を選定する
5:農業経営開始に向けた事業計画書を作成する
6:市区町村の基準を満たすべく、事業計画を修正する
7:農業経営改善計画認定申請書に各数値を記載する
8:就農予定の市区町村に申請書を提出する
認定農業者は提出した「農業経営改善計画書」に対して認定されます。そのため、5年ごとに新たな計画書を作成し、認定を取得する必要があるため、ご注意ください。
認定農業者のメリットとは?
認定農業者になることの一番のメリットは、支援制度や補助金取得の対象となることです。主な支援制度をご紹介します。
メリット1:農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)
経営改善のための長期低利融資です。スーパーL資金の特長として、融資額が大きい、返済期間が長い、融資対象となる範囲または資金の使い道が幅広いことが挙げられます。
特に、融資限度額が個人は3億円、法人は10億円と大きく、ビニールハウスや設備導入の資金源として、力強い支援制度になります。
関連記事:スーパーL資金(農業経営基盤強化資金)とは?審査ポイントを徹底解説!
メリット2:強い農業・担い手づくり同号支援交付金
ビニールハウスをはじめ、農業機械・施設を導入する際の融資残を支援する国庫補助です。
メリット3:経営基盤強化準備金制度
農業経営に必要な農地やビニールハウス、設備、機械などに、農林水産省から受けた交付金を活用した際、税制面の優遇を受けることができます。
本来、交付金は利益にあたるため、課税対象となります。経営基盤強化準備金制度を活用することで、交付金を経費として算入できる特例措置になります。
認定農業者のメリットまとめ
農業経営を行うにあたり、経営数値を確認、改善しながら経営基盤の強化を進める必要があります。売上拡大に向けた、ビニールハウスや設備の導入を行う必要があるかもしれません。
認定農業者制度は農業経営者にとって、数多くの支援制度対象となるため、とても力強い制度です。農業経営開始または発展を検討する際は、認定農業者の取得を検討してみましょう!
【新規就農者必見!】新規就農者の支援制度の特徴
新規就農を行う際は、就農プランや農地の確保、ビニールハウス、設備の見積取得、各申請書類の作成と多くの労力が必要です。特に就農プランは各制度の理解を行った上で進める必要があります。
その一方で、就農の際に導入するビニールハウス、設備の金額変動により、活用する新規就農者制度が変わることも少なくありません。新規就農者を支援する制度、選ぶポイントをご紹介します。
認定新規就農者に関する内容
- 認定新規就農者として
認定されるための要件 -
- 対象要件①
- 青年(原則18歳以上45歳未満)
- 対象要件②
- 効率的かつ安定的な農業経営を営むために
活用できる知識・技能を有する65歳未満 - 対象要件③
- 対象要件①又は②の者であり、法人が営む農業に従事すると認められるものが役員の過半数を占める法人
- 補足
- 農業経営を開始してから一定の期間(5年)以内の者を含み、認定農業者をは含みません。
- 認可機関
- 各市区町村
関連記事:認定新規就農者制度とは?メリット・デメリットまで解説
認定農業者に関する内容
- 認定農業者として
認定されるための要件 -
- 対象要件①
- 年齢・性別に関する条件なし
- 対象要件②
- 特性に関する条件なし
- 対象要件③
- 個人または法人に関する条件なし
- 補足
- 農業経営を開始した期間に関する条件なし
- 認可機関
- 各市区町村
認定新規就農者・認定農業者の選択するポイントについて
認定新規就農取得後は、無利子無担保の融資制度(青年等就農資金)、就農後の交付金(経営開始資金)、補助対象事業費上限1,000万円の支援制度(経営発展支援事業)の対象となります。
青年等就農資金の融資限度額は3,700万円(特認1億円)になります。返済終了まで無利子であることも、新規就農者にとって力強い支援制度です。返済期間は12年で、据置期間は最大5年以内と設定されています。資金の使い道も幅広く活用可能であり、施設・機械の導入費や農地の借地料・機械のリース料に関する一括支払いなどでご活用いただけます。
一方で、認定農業者の取得後は低金利のスーパーL資金や補助金対象になります。特にスーパーL資金は融資限度額が高いことが特長です。(個人:3億円、法人:10億円)
そのため、新規就農時の規模・ビニールハウスなどの設備導入に必要な金額から活用する制度を選択する必要があります。
青年等就農資金に関する内容
青年等就農資金の融資限度額は3,700万円(特認1億円)になります。利子は返済終了まで無利子であることも新規就農者にとって、力強い支援制度です。返済期間は12年で、据置期間は最大5年以内と設定されています。
資金の使い道も幅広く活用可能であり、施設・機械の導入費や農地の借地料・機械のリース料に関する一括支払いなどでご活用いただけます。
- ご利用いただける方
-
- 資格
- 認定新規就農者
- 対象
- 市区町村から青年等就農計画の認定を受けた個人または法人
- 資金の使い道
-
青年等就農計画の達成に必要な次の資金。ただし、経営改善資金計画を作成し、市町村を事務局とする特別融資制度推進会議の認定を受けた事業に限ります。
- 施設・機械
- 農業生産用の施設・機械のほか、農産物の処理加工施設や販売施設も対象。
- 果樹・家畜
- 家畜の購入費、果樹や茶などの新植・改植費のほか、それぞれの育成費も対象。
- 借地料などの
一括支払い - 農地の借地料や施設・機械のリース料などの一括支払いなどが対象。
※農地等の取得費用は対象となりません。 - その他の経営費
- 経営開始に伴って必要となる資材費などが対象
- ご融資条件
-
- ご返済期間
- 17年以内(うち据置期間5年以内)
- 融資限度額
- 3,700万円(特認1億円)
- 利率(年)
- 無利子(お借入の全期間にわたり無利子)
- 担保
- 原則として、融資対象物件のみ
- 保証人
- 原則として個人の場合は不要、法人の場合で必要な際は代表者のみ
関連記事:「青年等就農資金」とは??メリット・デメリットまで解説
経営発展支援事業に関する内容
農業への人材の一層の呼び込みと定着を図るため、経営発展のための機械・施設等の導入を地方と連携して親元就農も含めて支援する制度になります。
制度内容としては、新規就農をされる方に機械・施設等の導入にかかる経費の上限1,000万円(経営開始資金の交付対象者は上限500万円)に対し、都道府県支援分の2倍を国が支援する取り組みになります。
関連記事:新規就農者1,000万円の補助? 経営発展支援事業を徹底解説
経営開始資金に関する内容
制度内容としては規定の要件を満たす認定新規就農者に対して、経営開始から最長3年間、月12.5万円(年間最大150万円)の給付になります。要件としては、就農時の年齢が原則49歳以下の認定新規就農者であることなど5項目を全て満たす方が対象となります。
認定農業者に関するよくある疑問を解決!
疑問1:認定新規就農者との違いは?
認定農業者は新規就農者から既存生産者まで幅広い方が対象となります。一方で認定新規就農者は新規就農(就農後5年以内も含む)を対象とする支援制度です。
そのため、新規就農の際は認定新規就農者を軸に就農プランを立案し、既に農業生産を開始している場合は認定農業者制度を活用しましょう。
疑問2:認定農業者の対象は?
認定農業者の対象は幅広く受け入れられます。性別や規模などの制限もなく、新規就農者も対象になります。
疑問3:認定新規就農者のメリットは?
認定農業者のメリットは低利な融資獲得の利用、補助事業の活用などが挙げられます。
疑問4:認定農業者のデメリットとは?
認定農業者になるデメリットとしては、5年ごとに新たな計画書を作成し、認定を取得する必要があることです。特に認定農業者取得の計画書作成は非常に労力がかかります。そのため、5年ごとの認定農業者取得に向け、計画を立てて準備しましょう。
疑問5:認定農業者に年齢制限はあるの?
認定農業者制度の概要を確認すると、国として一律の年齢制限は設けておらず、特定の年齢以上は取得不可などといった制限はありません。
疑問6:認定農業者制度の申請先は?
申請は、農地のある市町村に対して行います。また、申請書類は多くの場合、市町村のホームページからダウンロード可能です。農地のある市区町村が定める条件を確認の上、認定農業者制度の申請書を提出しましょう。
認定農業者取得に向けた支援
イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトとし、お客さまを多岐に渡り支援することを掲げております。ビニールハウスに携わり、50年以上培ったノウハウや知見を活かし、新規就農・企業の農業参入に向けた、認定農業者の制度紹介から他制度との違い、お客さまのご状況に沿った、就農プランの立案から支援しております。
お客さまのご要望や条件に基づいてビニールハウス、内部設備を設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの事業計画策定をご支援いたします。
更に、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農場運営をトータルサポートします。