認定新規就農者は厳しい?新規就農者制度の条件について徹底解説
新規就農には多大な時間と事前準備が必要です。特に農地確保や資金確保などの準備段階で新規就農は「厳しい」、「苦労する」といったアンケート結果もあります。今回は認定新規就農者の認定が実際に厳しいのか?、また新規就農者制度の条件について徹底解説します。
新規就農の厳しさ
2019年に総務省から新規就農者の定着状況における実態についての調査結果が発表されました。それによると新たに新規就農に向けて、研修を開始し、支援が行われた新規就農者1,591人のうち、調査時点までに35.4%が離農しています。
この割合は全産業における3年以内の離職率35.9%(2019年)に近しい数値から新規就農の厳しい実態が垣間見えます。実際に新規就農の厳しい実態を解説します。
その1:就農条件が整わない
研修受講時の就農準備資金交付終了後に新規就農を断念するケースも少なくありません。
新規就農を断念した理由の第1位は「就農条件が整わない」との回答が多く、就農断念の理由のうち59.8%にも上ります。新規就農するためには、「農地」、「資金」、「営農技術」、「ビニールハウスや設備」をはじめ、数多くの準備が必要になり、就農条件が整わないことも少なくないのが実態です。
実際に「新規就農者の就農実態に関する調査結果」において、「農地の確保(72.8%)、「資金の確保」(68.6%)、「営農技術の習得」(57.7%)の順に苦労したと回答した方の割合が多く、新規就農した方のアンケートでも「新規就農の厳しさ」が見て取れます。
特に新規就農者にとって厳しい「農地の確保」は農地バンクやemaffナビの仕組みはあるものの、貸し主と新規就農者のマッチングが思うように進まないこともあります。
例えば、貸す側からすると、面識のない新規就農者に農地を貸し出すことに抵抗を感じる場合があります。また、代々受け継いできた農地を手離すことに抵抗を感じることも少なくありません。
加えて、就農を行う目的や意図、栽培作物、栽培方法、目指す生産量、ビニールハウスの規模、販売先に応じて確保すべき農地の条件が変化します。
そのため、候補となる農地を見つけても水質や周囲の環境によって、農業に適さない場合もあります。
耕作放棄地が増加しているとはいえ、候補地を見つけ、希望の条件を満たした農地を確保することは容易ではありません。
その2:営農技術や農業経営などのスキル習得
40歳以下の農業従事者は2013年の31万1,000人から2017年の32万6,000人と増加傾向にあります。将来の農業を支える人財を確保し、40代以下の新規就農者を大切な存在と位置づけて実施してきた様々な支援制度が功を奏し、増加しています。
ただし、新規就農者数は増加傾向にあるものの、就農後に目標とする所得を達成できたのは全体の14.3%にとどまっており、離農するリスクも残されています。
目標とする所得が未達となった理由として、病害虫被害を始めとした栽培管理上の課題や計画以上の規模拡大の要因による経費増加など、経営上の課題があげられます。
農業の特性上、想定外のリスクが付き物です。例えば、栽培や収穫に予定以上の時間がかかり人件費が増加する、作業遅れやミスにより計画通りに出荷ができない、作業内容の理解と育成が追い付かない、害虫の発生によって計画や収量が狂うなど、日々目まぐるしく変わる状況に応じて、対応していかなくてはいけません。
そのため、営農技術と農業経営を双方とも身につけて、就農する必要があります。
新規就農に向けて準備すべきこと
営農技術や農業経営のスキル習得
農業の特性上、作物ごとに最適な環境は変化します。ビニールハウス栽培は、外的な栽培環境や外部気象環境による影響を受けないため、最適な栽培環境をビニールハウス内部に実現します。
ただし、栽培環境の実現は可能な一方で、新規就農時に必要な営農技術は気温や湿度などの栽培条件が毎年変わることから、農業生産携わった年数に比例して、営農技術が身についてきます。
また、営農技術を持ち合わせているかどうかは、資金獲得に向けて判断基準の1つになることから、最低でも1年、場合によっては2年~3年に渡り、栽培研修を受講する必要があります。
そうは言うものの新規就農の準備に向けて、2~3年もかけることは自身の生活も鑑み、非常に難しいのが実情です。加えて、農業経営は収量×単価による売上と生産に必要な農薬や肥料などの生産原価、人件費や減価償却費などの販売原価で構成され、非常にシンプルな事業です。
特にビニールハウスを活用する施設園芸では、人件費、エネルギーコスト、減価償却費の3大コストをいかに最適化するかが重要であり、新規就農に向けた計画が非常に重要になります。
そのため、研修受講と就農時の計画からビニールハウスの説明、新規就農後まで様々な支援が行き届いている企業と一緒に就農を成功に導くことが成功の鍵かもしれません。
何をするのか?よりも誰と行うのか?がより重要になります。
農地確保の実施
新規就農に向けて農地を確保するには、一般的に市区町村の農政課や農業委員会、農地バンクを活用し、探されるケースが多いです。市区町村の農政課や農業委員会、農地バンクで候補地を複数ピックアップすることが最初のアクションになります。
1つの農地のみをピックアップしてしまうと、栽培に適さない条件があるなど、新規就農後の課題が浮彫となるケースも少なくありません。
実際、農業生産に適さない水質が就農後に判明し、新規就農がうまくいかないケースもあります。そのため、市区町村の農政課や農業委員会、農地バンクなどを活用し、複数の農地をピックアップしましょう。
その後は複数候補地の中から最適な農地をビニールハウスメーカーの担当者と選んでいくのが新規就農後のリスクを軽減するポイントと言えます。ビニールハウスの建設を検討されている場合は下記の条件をもとに農地を探すことを推奨します。
資金の確保
新規就農者は、農地や住宅、ビニールハウス、機械を用意する費用のほか、生産に関する農薬や肥料、種苗などの生産資材、売上が安定するまでの所得を考える準備をする必要があります。
実際に、新規就農者の就農実態に関する調査結果にて、資金確保は農地の次に苦労した方が多いため、新規就農を実現する上で事前準備は欠かせません。
資金を獲得しようにも、営農技術や栽培技術を持ち合わせているかどうかに加えて、新規就農後の青年等就農計画又は事業計画書が資金獲得の判断基準となります。
そのため、農地や営農技術も含めて同時に進める必要があり、最も苦労する障壁の1つです。新規就農者を後押しする制度を理解の上、資金獲得の方法を準備しましょう。
最近では新規就農者制度の1つである、日本政策金融公庫の無利子無担保の融資制度を主の資金確保とし、その他の支援制度と組み合わせて新規就農される方が増えています。
新規就農者制度をご紹介
農業従事者の高齢化が進む中で、今後の農業生産を担う新規就農者は非常に大切な存在です。一方で農業生産を開始するにあたり、必要な設備、資材、経営基盤を支援なく、準備することは困難を極めます。
そのため、新規就農者の増加を目的に、様々な支援制度を行っております。今回は新規就農の代表的な制度をご紹介いたします。
認定新規就農者制度
新規就農者制度の代表的な位置づけとして認定新規就農者制度があります。
認定新規就農者制度とは、これからの農業を支える新規就農者を増やし、安定的な新規就農者を地域農業の担い手として育成することを目的に、新たに農業を始める方が作成する青年等就農計画(事業計画書)を各市区町村が認定し、認定を受けた方に対して、早期の経営安定に向けた措置を集中的に実施する制度になります。
例として、認定新規就農者を取得することで、独立して農業を始める際に必要な設備や機械の初期投資資金や所得確保の給付金等の支援策が優先して、取得できる等のメリットが挙げられます。
関連記事:認定新規就農者制度とは? メリット・デメリットまで解説
青年等就農計画
認定新規就農者の取得を行うため、申請する書類を青年等就農計画と呼びます。
青年等就農計画では、農業経営開始時における農業経営、農業従事に関する目標を経営開始から5年後まで記載します。記載する代表的な内容として、就農形態(新たに農業経営を開始、親の農業経営とは別に新たな部門を開始、親の農業経営を継承)、作目、作付け面積、生産量、生産方式に関する目標、目標を達成するために必要な措置や設備になります。
そのため青年等就農計画を提出する前に、農業経営における収支や必要な設備、活用する新規就農者支援制度を準備しておきましょう。
経営発展支援事業
経営発展支援事業は経営発展のための機械・施設等の導入を地方と連携して親元就農も含めて支援する制度になります。
経営発展支援事業の制度内容としては、新規就農者に機械・施設等の導入にかかる経費の上限1,000万円(経営開始資金の交付対象者は上限500万円)に対し、国が1/2、県が1/4、本人1/4となる支援制度になります。
1,000万円の施設や機械導入費が1/4に抑えられること、助成対象も幅広い用途で活用でき、青年等就農資金と併用して活用できる点から、新規就農者が苦労する資金確保を解決する可能性のある力強い制度です。
関連記事:新規就農者1,000万円の補助? 経営発展支援事業を徹底解説
経営開始資金
新規就農を開始した数か月後に売上や利益が創出されます。そのため、新規就農者は就農直後の所得も確保する施策を検討する必要があります。
この悩みを解決する新規就農者制度が経営開始資金です。
経営開始資金は規定の要件を満たす認定新規就農者に対して、経営開始から最長3年間、月12.5万円(年間最大150万円)の給付になります。
加えて、夫婦ともに就農する場合(家族経営協定、経営資源の共有などにより共同経営者であることが明確である場合)は夫婦合わせて1.5人分の交付となり、複数の新規就農者が法人を新設し、共同経営を行う場合は、新規就農者それぞれに最大150万円を交付する内容となっており、幅広い新規就農形態に適した支援制度になります。
新規就農実現に向けた支援内容
イノチオアグリは施設園芸(農業ハウスやビニールハウス)に携わり、50年以上の知見がございます。50年以上に渡り、培ったノウハウと1万棟以上のビニールハウス建設実績を活かし、新規就農を計画段階からご支援しております。
お客さまのご要望やご状況に基づいて就農プランを作成し、新規就農後の栽培方法や作業計画を一緒に考え、認定新規就農者取得に向けた事業計画の策定、場合によっては現地に赴き、候補となる複数の農地から最適な農地選びのお手伝いをさせていただきます。
さらに、圃場研修や専門指導員によるサポートで、就農準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの新たな門出をサポートします。